- Amazon.co.jp ・本 (211ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101236018
感想・レビュー・書評
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38歳で重度の肺がんにより逝去したルポライターの、癌発覚から絶筆するまでの壮絶な99日間を、本人および妻による手記で綴る。
猛烈な左肩の痛みに襲われ、きっと神経痛に違いないと町医に行くも釈然とせず、レントゲンを取ると肺に大きな影が発見される。結核か、それとも…。
かなり久しぶりに、本職関連というか、周辺書籍である。まあ、サイエンスの話ではなく、本職では患者と接することがないので役に立つというのではないが、こういう視点を読んでおくのも重要であろう。
本の前半部は、児玉氏(本人の名前を隠しているのはよくわからないが)の手記で、かなり軽やかで愉快な口調で語られる。つい、北杜夫などを思い出してしまう。癌なのか、そうでないのかなどということは、タイトルからわかっているので、壮絶な何かというのはない。
その中でやはり興味深い(面白いって書いたら怒る人がいそう。面白いんだけどさ)のは、やはり「戦友」と呼ぶ、病棟の患者同士の繋がりであろう。以前に、中島らもの「今夜、すべてのバーで」(https://booklog.jp/users/tikuo/archives/1/4061856278)でも感じたが、医者や看護師視点で小説を書く人は多くても、患者視点で書く作家が少ないのは、なぜなのか。
奥さんの手記は、どうしても悲壮感が漂うし、見えているものがほとんど夫と家族になってしまう。緊迫感は有るが、「面白い」というのとはまた違う。
あと、ページ数の関係上からか、基盤となっているメモが付与されているが、無駄なく手記に組み込まれていることの確認でしかなかった。
ちょっと避けていたけど、科学関係の面白い本が有るわけでもなし、中島梓(栗本薫)などの、患者視点のエッセイも、少しは読んでみようかなという気になった。詳細をみるコメント0件をすべて表示