明るい夜に出かけて (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.65
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本棚登録 : 845
レビュー : 67
  • Amazon.co.jp ・本 (403ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101237367

作品紹介・あらすじ

富山は、あるトラブルがきっかけで、大学を休学し、実家を離れ、期間限定の自立を始めた。人に言えない葛藤、臆病な自分……。相変わらず人間関係は苦手なまま。深夜ラジオのリスナーであることも変わらない。だが、コンビニでバイトをするうち、チャラい見掛けによらずバイトリーダーとして仕事をこなす鹿沢や、同じラジオ番組のヘビーリスナーらしい女子高生の佐古田と親しくなり、世界が鮮やかな色を取り戻していく。──『しゃべれども しゃべれども』『黄色い目の魚』『一瞬の風になれ』などの代表作をもつ著者が描く、青春小説の傑作! 第30回山本周五郎賞受賞作、待望の文庫化!

感想・レビュー・書評

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  • まず第一印象は、「学生時代に読むべき本」が的を射てるなぁと。笑 青春ストーリーで成長物語なので、共感とか抉られるものはないかなぁ〜
    佐藤多佳子の作品ってみんな話口調だったんだっけ。そこが1番主人公たちの若さを強調させてた。逆にいうと、自分はもう大分大人になってしまったのかも。
    でも、物語そのものはとっても素敵。金沢文庫が舞台であることもあいまって、情景が思い浮かびやすく、ロマンチックというか頭で想像できる絵が素敵になる。あとテーマになってるラジオ!実際に存在するラジオがたくさんでてくるんだけど、読んでるだけですごく聴きたくなった。
    朝井リョウの解説で気づいたけど、佐藤多佳子って好きなものをテーマに本を書いてるのね…(陸上や音楽、落語) 好きなテーマをちゃんと本として浄化できるってすごいと思った。
    主人公のまだ不完全な感じもよかったなぁ。若い!と思ってしまう自分が少し悲しくなるけども(笑)
    佐藤多佳子って書く登場人物たちが温かいというか包み込む優しさを持ってる気がして素敵だなって思う。

  • 深夜ラジオを聞いていた頃は学生だった。
    いつの間にか、ラジオを聴くことが減り、だんだん生活は変わっていった。
    あの時の熱量は何処に行ってしまったのだろう。

  • 暑い夏の夜に読みたくなる小説


    2020/8/1

  • 何かの紹介で見て、購入したんだけど、コロナ禍でなかなか届かず、ようやく読めた作品。

    でも、届いたタイミングが今なのは、ある意味「呼ばれた」のかもしれない。

    この作品は、コンビニバイトと深夜ラジオを中心に成り立っていて、アルコ&ピースの実在したラジオ番組が展開されるのだけど、文中ではナインティナインの岡村さんの番組にも触れられている。

    私がこの作品のレビューという場所で、岡村さんの発言自身をどうこう言うつもりはないけれど、この本を読んでいると、深夜ラジオの持つ妙な熱気が伝わってきて、そういう場から発信し続けている姿が、とてもリアルに伝わってきたのだった。

    主人公富山の一人称の語りは、実があるんだかないんだか分からない進み方をするのに、人との不器用な関わり方と彼が抱えるトラウマに引き込まれて、いつの間にか一緒になって、なのに一人一人でラジオを聴いている気がした。

    それから、富山のバイト先に現れたサイコなハガキ職人の女の子佐古田との、夜の散歩のシーンはすごく良くて、『黄色い目の魚』ってこんな匂いがしたよなー、とふと思った。(随分長い間読み返していないので、的を射てなかったら、ごめん)

    自分も、中学生の頃、夜のラジオにハマってた。日付が変わるほどの時間帯ではなかったし、職人さんになることもなかったけれど、普段は演者をしている人たちの「声」を聴くことが出来るのが嬉しかった気がする。

    あの頃は、まだインターネットも気軽ではなくて、テレビでは出来ない関わり方が広げられるラジオって、より特殊な空間だったのかもしれないな。

    解説は朝井リョウさんで、これもまたすごい作家さんなんだけども、わがままを言うならアルコ&ピースにも書いて欲しかった。
    もう、それがあれば、言うことなし(笑)

    男の子三人と女の子一人が青春を繰り返してくれた。あー。満足したー。

  • 青春小説でもあり、ビルドゥングロマンスの傑作でもある。

    自分の住んでる街が舞台。本作の中で登場するイオンの本屋で本書を購入。ということで、ものすごく身近で楽しめましたが、いかんせん私が深夜放送を聞いていたのは、それこそ40年以上前。ただ今でも基本的な感じって変わってないんだなと感じました。

    リアルにこういう若者って多いのかな。本書に登場する四人、それぞれに不器用ではあるが応援したい気持ちになりました。

  • 鹿沢さんが好きだなと思った。
    責めるのでもなく追い込むのでもなく、何か傷を抱えているのだろうなということを察して、さりげなくフォローするというか。こんな風に、ゆるやかにつながっていく術を見つけていくことが大切な時代になっているのかもしれない。

    このタイトルにこめられただろう願いににじんわりきた。

  • 映画「モテキ」のエロさをなくして、甘酸っぱく仕上げたような世界観。森山未來主演で映像化してほしい。いやー好きな世界観ですね。

    深夜ラジオ、深夜コンビニバイト、こじらせ大学生、こじらせ高校生、どれかにビビッと来た人はきっと楽しめる作品だと思います。
    私は深夜ラジオ聴いてて、深夜コンビニバイト経験者なので、その「あるある」な内容で引き込まれていきました。テンポがよくて、お気楽なストーリーかなと、途中までは思ってました。
    けど、中盤以降で割とディープな展開になり、ココロをぐっとつかまれました。不意に涙がでました。
    佐藤多佳子さん作品は、若者の心理描写が絶妙です。よくある恋愛ドラマみたいに分かりやすい感じではなく、「リアルな大学生、高校生の日常」に近い感じ。そんな平凡さに胸を打たれるのは、なんだろう。。と頭の片隅で意識しながら読んでると、、多分登場人物がみんな、不器用ながら一生懸命であるということかなと、思いました。

  • 黄色い目の魚ほどの衝撃はなかった でも佐藤さん独特のリズム感があって軽く読めた

    「明るさを求める気持ちは、すでに、きっと暗い。でも、その暗さを心に抱える人を俺は少し信じる。」のフレーズが1番印象的だった

  • 私が社会人になった頃、普通にやっていれば分相応のところに就職でき、少し頑張れば背伸びをしたところにも手が届き、そうして入った会社では、ひとつのところがダメでも別の部署でまた機会が与えられ、何よりどこにあっても上司や先輩が一人前の会社人になるために目をかけていてくれた。
    今思うと恵まれた時代だったな。

    この本を読むと、高望みもせず普通に生きることすらが難しくなった時代が見えてくる。
    主人公の富山は、あるトラブルがきっかけで、大学を1年休学し、実家を離れて、コンビニのアルバイトをしながらの自立を始めた。
    そのトラブル、現実から解放されて寛いでいた筈のSNS上の世界から攻撃されてリアルな生活が破壊されたものというのが、まず今様。
    読み進めると、富山はラジオのリスナーとして投稿したネタをたくさん取り上げられる「ハガキ職人」として名を馳せていたことが分かってくる。
    そうした何らか才能に恵まれていたとしても、一度叩かれた自信は戻らず、人に言えない葛藤を抱えたコンビニのアルバイトでは、人に対して臆病で人間関係は苦手なまま。
    だが、コンビニのバイトリーダー・鹿沢や、同じラジオ番組のヘビーリスナーらしい女子高生・佐古田と交わることで、徐々に本当に少しずつ世界に色が戻ってくる。
    こう書くといささか平凡な話に見えるのだけど、ラジオの深夜番組や色んなSNSを介して行われるコミュニケーションの使い方がうまく、加えてコンビニのオーナーや他のバイトととのリアルなやり取りが綯い交ぜになって進むお話は現実感に溢れて、主人公の心の在り様が痛いほどに伝わってきた。
    例えば、ラジオの世界でしか承認されていなかった富山がコンビニの副店長に認められた場面など、この本を象徴するような場面だが、こういう場面がなくなっているのが、今の世の中なんだろうなと思えた。
    物凄く感動する場面とか、そういうことはないのだが、真摯に今の世の中を映し、そこで若い人たちがもがいている姿がじんわりと伝わる作品。

  • 人を大切にする、応援するって、こういう関わりのことだなって思った。温かさというか。33歳になっても21歳の主人公の気持ち、同じだなと思う。あと、作中の若者言葉、適切に使われてる気がしたけれど、私が歳を取ったからリアルな若者言葉わかんないから違和感無いだけか?昔は、こういうその時期の若者言葉を多用した若者1人称の小説を読むと、一部使い方やノリが自分の若者としてのリアルと違って、違和感あったもんね。

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著者プロフィール

1962年東京都生まれ。1989年に「サマータイム」で月刊MOE童話大賞を受賞してデビュー。『イグアナくんのおじゃまな毎日』で産経児童出版文化賞、日本児童文学者協会賞、路傍の石文学賞を受賞。『一瞬の風になれ』で吉川英治文学新人賞、『聖夜』で小学館児童出版文化賞、『明るい夜に出かけて』で山本周五郎賞を受賞。そのほかの作品に『しゃべれども しゃべれども』『神様のくれた指』『黄色い目の魚』『第二音楽室』などがある。

「2018年 『シロガラス5 青い目のふたご 5』 で使われていた紹介文から引用しています。」

佐藤多佳子の作品

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