東亰異聞 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 437
  • Amazon.co.jp ・本 (443ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101240220

作品紹介・あらすじ

帝都・東亰、その誕生から二十九年。夜が人のものであった時代は終わった。人を突き落とし全身火だるまで姿を消す火炎魔人。夜道で辻斬りの所業をはたらく闇御前。さらには人魂売りやら首遣いだの魑魅魍魎が跋扈する街・東亰。新聞記者の平河は、その奇怪な事件を追ううちに、鷹司公爵家のお家騒動に行き当たる…。人の心に巣くう闇を妖しく濃密に描いて、官能美漂わせる伝奇ミステリ。

感想・レビュー・書評

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  • 架空の東京・トウケイ。
    文明開花が進み明るく開けた世界になった一方で、闇に蠢く魑魅魍魎。人間の業。
    そんなものが時折姿を見せ、人間を襲う。
    ホラー?ミステリー?色んな表情が楽しめる作品。

    ◉レトロで怪しい雰囲気満載の闇の者たち
    発火しながら高所より人を突き落とす『火炎魔神』
    白塗りに赤い着物に隠した爪で切り裂く『闇御前』
    生きている様な精緻な娘の人形と会話する『人形遣い』
    特に人形遣いと娘の人形とがイチャイチャしながら闇の者たちについて語らい合う場面はエロく怪しく濃密な雰囲気。
    これで人形遣いがただの人だったら単なる危ないおじさんだな…と読者を戦慄させる。

    ◉嘘か本当か分からない…曖昧だから面白い
    これは主要人物のひとりのセリフ。
    その小説はこの言葉を正に体現している。

    ガス灯のあかりが届かないところで殺人を行なっているのは、妖怪か、人の仕業か…
    鷹司家のお家騒動絡み?犯人候補も簡単には絞れない…そんな時、説明がつかない様な不可解な事件が起こってやっぱり心霊現象?
    と、読者も翻弄される。

    ◉とにかく小野先生は凄かった
    途中推理もののような理路整然と犯人を絞っていく場面は面白かった。
    小道具の用意や、演出が凝りすぎていること
    その割に動機がなんか弱く感じること
    個人的にはそこに引っかかったけど良かったわぁ…と思っていたら。
    あらあらどうして…

    言えないけど、キッチリキッチリ積み上げてきたものを完成間近で自らブチ壊して
    その跡に凄く個性的な作品をズダダダっと即興で作り上げ
    そしてワハハハと残響を残して去っていった…
    そんな感じ。やっぱり小野先生すげえや。
    これは…何かトリックがどうとか、細かいことを気にする作品ではないね。
    どうでもいいか、と何か幻でも見ていた気分。

    曖昧なものに翻弄される。
    作品の雰囲気を楽しむ。
    自由民権運動など、史実が登場するところもありもう一度勉強したくなった。
    ドップリと怪しい世界に浸れました!

  • 小野不由美『東亰異聞』読了。

    架空の都市「東亰」。瓦斯灯が夜を照らしても、夜には魑魅魍魎が跋扈する。文明開化の時代に起きる連続殺人と、その犯人と目される怪人、その謎を追う記者と香具師。
    公爵家のお家騒動が見え隠れし次第に現実性を帯びていく「ミステリ」としての謎解きの面白さと、時代を感じさせる帝都東亰の妖怪変化の雰囲気が、絶妙なバランスで描かれ結末に向けて収束していくのが見事。
    終盤の物語としての構成の美しさと、カタルシスはこの一冊にどこまで没入したかによってその色を変える。
    「本格」を書ける作者の、ジャンルを横断した傑作伝記ミステリだった。

  •  帝都・東亰では火炎魔人や闇御前といった、人とは思えない者たちの起こす事件で不安に包まれていた。一連の事件に興味を持った新聞記者の平川は、大道芸師の万蔵とともに調査を開始するが…

     面白い要素はいろいろあったものの、不満点も多かったのが正直な印象。

     ミステリとして面白かったのは、犯行の動機。お家騒動が裏にあるのは、平川の調査の過程で分かってくるのですが、なるほど、そっちか! と虚を突かれました。

     ただ、動機については伏線はあったものの、ややとってつけた感があったのも事実。本の中ではさらりと触れられたくらいにしか書かれていなかったので、「え? そんなに追い込まれていたの」と、ちょっとぽかんとなってしまったのがもったいなかったです。もうちょっとその部分の書き込みがほしかったかなあ。

     平川と万蔵のキャラも今一つ伝わってこない。読んでいて、どっちがどっちか分からなくなることもあって、少し感情移入しにくかったです。

     そして、この本の評価を分けるのはラストだと思います。これをどうとらえるかによって作品の印象は、大きく変わると思います。

     個人的には、風呂敷広げるだけ広げて、終わらせたという印象。読んでいて「残りページ少ないのに、こんな展開にして大丈夫?」と思ったのですが、その不安が当たってしまった、という感じでしょうか。

     読み終えた後のもやもや感が、どこか同じ小野不由美さんの作品『魔性の子』に通じるものがあります。

     十二国記シリーズの序章的作品ということで読んだ『魔性の子』だったのですが、描写力はすごいものの、作中よくわからないワードや回収されない伏線、唐突な展開などが多く、読み終えて非常にモヤモヤしたのを覚えています。(こうしたもやもやはのちに本編を読んで解消されたのですが)

     そのもやもやと、この『東亰異聞』を重ね合わせると、もしかして東亰の物語はもっと続きがあって、これはプロローグだったのではないか、とも思えてしまいます。

     東亰の話がこれ一冊で終わっているのが、もったいなく思えてしまいました。

  • あらすじ読んで面白そうと購入。
    思っていた感じとは違ったけれど
    帝都東京の雰囲気は味わえてなかなか良かった。
    パラレルワールドだったのね…。

  • クライマックスの突然の追い上げ、という印象の強い終わり方だなぁと。
    そういう雰囲気は確かにあったけど、いささか突拍子もないような?
    兄弟がとても好きです。特に長男。

  • 初めは堅苦しい昔話なのかなと思っていた。でも数ページ読むともういつの間にかこの世界にハマっていた。
    何が引っかかったかと言うと、妖怪の仕業だと思われた出来事がどうやら人間が起こしたらしいということ。ありえないような事に、トリックが隠されている。

    「東亰」は一応パラレルワールドの設定だけど、明治まっただ中のクラシカルな雰囲気が好き。瓦斯灯、読売り、十二階、迷途、華族、パノラマ館、御一新等々。今では使わない通じない言葉ばかりで、例えば十二階にはこの時代にエレベーターが使われていたり、チロー館なんていう鏡の迷路があったりと、知らないことも多くて色々調べるのが楽しかった。

    途中からは華族の相続争いに移り、私は常と直のどちらの味方でもあったのに、その二人が一連の騒動を起こしていたなんて。兄弟を想い合う純粋さはあるけれど、何の関係もない周りの者を巻き込む手段を取ってしまった為に闇に堕ちた。何かを手に入れる為に何かを犠牲にしてしまうと、そのしわ寄せが必ずくる。こんな結末になるなら他にも方法があったのではと思う。

    後半、万造の怒涛の推理が特に面白かった。
    桜の描写が綺麗で、特に常さんの周りで散る桜が悲しいほどに印象深い。

    天皇崩御からの百鬼夜行、万造の正体や東亰の水没は私にとってはあまり重要でないと思われる事だった。廃仏毀釈はいただけないが、新しい文化を取り入れ、合理的な考えを持つことも日本にとって必要だったのではと思う。

    現実の日本はこれから大正、昭和、平成と激動の時代がやってくる。東亰の人々が妖怪に襲われることを強盗や病に襲われるようなものと考えたように、もしかしたら人が起こす事件や出来事は、妖怪が蠢く世界と同じぐらい厄介で、恐ろしい闇なのかもしれない。

    所々に十二国記ぽさを感じた。小野先生大好き。

    20170312

  • そうそう!こういう本が読みたかったのよ!
    小野不由美さんの真骨頂。背筋が凍るような怪談話。

    舞台は文明開化の花の開いた帝都東亰。
    人を火だるまにして殺す火炎魔人に、黒い犬を使い爪で人を引き裂いて殺す艶やかな赤姫姿の闇御前。人魂を担いだ蛍売りに、怪しい読み物を取扱う奇譚読売。

    ああ、なんという世界なんでしょうか!

    そして話の筋となるのは鷹司家の家督争い。
    人々の思惑と妖しい事件が絡み合い、思わぬ方向へ運ばれていく…。

    とにかく一気に読んでしまうほうが良いんでしょうが、いつまでもこの世界観に浸っていたくて惜しむように読みました。

    最後の最後まで目が離せませんので途中で読むのを辞めることは決してなきように。

  • 舞台は、明治時代の帝都・東亰。夜は街を魑魅魍魎が徘徊し、高所に火達磨で現れ火で人を殺し、最後には消えてしまう火炎魔人。夜道で長い爪で人を引き裂く赤姫姿の闇御前。
    それらの正体を調べる新聞記者・平河は、闇御前に襲われ幸いにも軽傷で済んだ青年を探し当てる。その青年は鷹司家の当主・常だった。しかし妾腹の常には同日生まれの、やはり妾腹の異母兄がいた。

    現実世界とは少しズレが生じた帝都・東亰というパラレルワールドを舞台に、鬱蒼とした空気が漂う。禍々しい世界観はさすが小野不由美さん。闇の者たちの描写がかっこいい…
    ホラー色が強い冒頭を抜けると、先の読めないミステリ調となり、ラストまで気が抜けません。怪作です。

  • 文明開化の時代の宵闇を魅力的にみせるホラーでありミステリ。
    導入部から忍び寄るように物語を広げていくのが小野さんの素敵なところ。魑魅魍魎の影から、ひろがっていくのは猟奇的な連続殺人事件。

    艶やかな文にひきこまれ、小野さんのキャラクタの魅力にうっとりしてしまう官能的なおはなし。

    『それは呪詛だったのです』
    に鳥肌たち、個人的には輔さんがかっこよくて終始ドキドキとしていました。
    小野さんファンにはもちろんあでやかなホラー好きで未読のかたにはおすすめしたい。

  • ちょうど義兄弟クソ重感情もの読みてーって思っていた時に出会ってしまったのでこれは運命。

    思わせ振りな台詞も美しく、物語に深く入り込んでしまいます。長子相続のいざこざや芸人の暗躍など明治時代ならではの舞台背景を存分に活かしたミステリ。魅力的な登場人物達による怪しい証言に惑わされるも良し。現代にもある封建制の名残に想いを巡らせるも良し。
    第四幕の最後はぞわっとしました。人の憎しみが最もおぞましいという。
    しかも推理して終わりではなく、全てが水に呑み込まれてしまうという盛りだくさんな内容でした。

    黒衣さんの喋り方好き。終幕の唐突な展開等見るに、当時は黒衣が人形を集めていくシリーズ化も視野に入れて執筆していたんじゃないかなあ。

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著者プロフィール

大分県生まれ。1988年作家デビュー。「悪霊」シリーズで人気を得る。91年『魔性の子』に続き、92年『月の影 影の海』を発表、「十二国記」シリーズとなる。『東亰異聞』『屍鬼』『黒祠の島』は、それぞれ伝奇、ホラー、ミステリとして高い評価を受けている。「悪霊」シリーズを大幅リライトし「ゴーストハント」として2010年~11年刊行。『残穢』は第26回山本周五郎賞を受賞。『鬼談百景』『営繕かるかや怪異譚』『営繕かるかや怪異譚その弐』など。2019年、十二国記最新刊『白銀の墟 玄の月』を刊行し話題に。

「2021年 『ゴーストハント7 扉を開けて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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