残穢 (新潮文庫)

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  • 本 ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101240299

作品紹介・あらすじ

この家は、どこか可怪(おか)しい。転居したばかりの部屋で、何かが畳を擦る音が聞こえ、背後には気配が……。だから、人が居着かないのか。何の変哲もないマンションで起きる怪異現象を調べるうち、ある因縁が浮かび上がる。かつて、ここでむかえた最期とは。怨みを伴う死は「穢(けが)れ」となり、感染は拡大するというのだが──山本周五郎賞受賞、戦慄の傑作ドキュメンタリー・ホラー長編!

感想・レビュー・書評

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  • とあるマンションでおこる怪奇現象。初めは事故物件的な話だと思ったら、伝染するかのように隣接する団地でも発生していく。その原因を調査をしていく過程を描いた作品。

    無性にホラーが読みたくなって積読棚から引っ張り出した。

    直接的な幽霊が現れる恐さではなく、過去へ遡ることで実は自分が住んでいる場所に負の連鎖の歴史があったことを知る恐さたるや否や。


    家族が寝静まった夜の、静かなリビングで1人ソファーで本書を読んでいた。

    とその時、カサカサッと音がして飛び起きた。
    なんだ。だれかいるのか。どこだ。

    カリカリカリカリカリ。音は続く。







    恐る恐る音のする方を見ると、ウチの子ハムスターがこちらを見ながら、ひまわりの種を食べていた。

  • 物語の語部となる“私”は、ホラー作家。読者から募集していた恐怖体験を手がかりに賃貸マンションで起こる不可解な現象について調べ始める。
    “私”は、作者を連想させ、ご同業の実名を登場させてドキュメンタリーの様相で、怪奇現象の根本を辿る。モキュメンタリーというらしい。
    冒頭のよくあるマンションやその周囲の団地で、不特定に生じる違和感は、ありそうなお話で怖いわ。その現象のたどり方が、上手い。その土地の歴史、土地に住んでいた人達、最終的にはそこに嫁いできた嫁の出自まで遡る。日本的な、“穢れ”を表現していく。日本中にこんなことあるよね、いつ穢れに感染するかわからないわよっ。

    歴史って続いている様で、途切れるというか、その経緯が伝わらないって事があるよね。
    10年程前だったか、その頃住んでた地方都市で、住宅開発が山の方に進んでいき、どうしても渋滞になる所があった。そこに、小さな神社が盛り土の山にあり、それが道にかかっていて詰まる。地元民の推進派や反対派あったけど、遂に取り壊し移転。そしたら、神社の下からもっと凄いやつ出てきちゃったって話。きっと、ある時代にそれを守る神社を作ったんだろうなあと思った。しっかり、研究されて保存されたと思います。

    • おびのりさん
      Kuma0504さん こんにちは。

      そうですよね、たぶん、とってもお好きな分野だと思います。
      私もそこの地域から転居してしまったので、後追...
      Kuma0504さん こんにちは。

      そうですよね、たぶん、とってもお好きな分野だと思います。
      私もそこの地域から転居してしまったので、後追いはしてなかったのですが、最近、筑波大の先生の研究成果は出ているようです。
      3世紀頃のスルガ王の墓でした。
      発掘当時、東の卑弥呼に呼応するのでは?
      とか。
      結局、計画道路を変更したようで、ほっとしてます。
      2022/08/23
    • おびのりさん
      追記
      ご興味あるようでしたら、沼津市のホームページに 「スルガの王と眠りについたモノたち ~高尾山古墳出土」で、多少は資料が読めると思います...
      追記
      ご興味あるようでしたら、沼津市のホームページに 「スルガの王と眠りについたモノたち ~高尾山古墳出土」で、多少は資料が読めると思います。
      2022/08/23
    • kuma0504さん
      おびのりさん、
      うわっ高尾山古墳だったんですね!
      東海地域3世紀の首長級の古墳となれば、
      確かに遥かに「もっとすごいやつ」です。
      よくぞ残し...
      おびのりさん、
      うわっ高尾山古墳だったんですね!
      東海地域3世紀の首長級の古墳となれば、
      確かに遥かに「もっとすごいやつ」です。
      よくぞ残してくれました!
      しかも未盗掘!!
      そうか、東海地域全然行ってないなぁ。朝日遺跡もあるし、行きたいなあ。
      情報ありがとうございます♪
      2022/08/23
  • 嫌やなぁ…こんなん聞く(読む)と…何か、作者の実話っぽい感じもするし…

    ある部屋で起こったおかしな現象。この部屋、前に何かあったんちゃう?で、調べていくと…何もない…
    でも起こってるし…で、マンション建つ前、更にその前と…やはり…
    出た〜!と恐怖に慄くって感じはないけど、ゾッとするっていうか、ジワジワくる。
    とりあえず、読み終わったのが、昼間で良かった^^;
    今の家も、そんな過去とか調べた訳でもなく…まぁ、何も起こってないけど^^;
    人を恨んでどうこうではなく、無差別に穢れが付いていくて…怖い…

  • 宣言通りGWに読みました。「畳が擦れる音がする!」から始まり、マンションの過去の住人を調べ、戦前、大正とその土地のあらましを調べていく。放火、自死、逮捕、殺人、行方不明、などなど、過去の「穢れ」を発見する。この穢れが伝染していた!って、どこがホラーなのかが分からなかった。。。これって怖いお話しなの?一番怖かったのは、「私」と「久保さん」が数年間もかけて過去追っかけていく執着心。このエネルギーの方が怖かった。断言しますが、絶対に夢野久作・ドグラマグラの方が怖いです。ということで、うーん?という読書でした。①

  • 作者と同様のプロフィールを持つ作家<私>が、東京郊外のマンションで起こる怪異に迫っていくホラー作品。

    モキュメンタリーホラーにしたのは、作者の小野さんが『ほんとにあった! 呪いのビデオ』の大ファンで その影響があるらしいです。あったあった!『呪いのビデオ』!笑 「ほんとにあった!とか絶対ウソじゃん」とか言いつつ パッケージ怖すぎて1度も観たことありませんが。

    〈私〉のホラー小説の読者である久保さんのマンションの一室で起こる怪異を調べるうちに、同じマンションの住人や 近所の団地の奥さんたちまで「うちでもこんな事が…」「あの家はあんな事があって…」と広がり、やがてその土地の歴史をどんどん遡って調べていくうちに 『残穢』まで行き着く─。 いや、作家パワーすご!ホラー小説家の調査能力すご!遡りすぎ!笑

    部屋を横切る人の影。床下から聞こえる呻き声。壁のあちこちから聞こえる赤ちゃんの泣き声。
    みなさんの恐怖体験を読んでいると、目で文字を追いながら 神経は耳や背中にもいってしまう。隣の和室から何かを擦る音が聞こえてきたらどうしよう……。

    〈私〉がそれらの心霊現象を否定すればする程 真実味が出てきて怖い。『近畿地方のある場所について』もそうだけど、「噂の域を超えないけどね」っていうのがリアリティ増して怖い。

    一連の怪奇現象の元凶ではないかと思われる廃墟となった屋敷を見つけた〈私〉とその一行。実際に見に行きましょうはいいけど、なんで夜 侵入するの!怖いでしょ!こっちは常夜灯の中 ひっそりと読んでるのに!とむかっ腹もたちました。
    井戸から細い悲鳴のようなものが聞こえてきたときにはもう…_:(´ཀ`」 ∠):_ チビりそうになっても トイレにも行けず。チビりませんけどね 大人ですから。

    あなたの住んでいる地域に ずっと買い手のつかない家はありませんか? 同じマンションに何度も何度も住人の変わる部屋はありませんか─


    一番怖かったのは、子どもがぬいぐるみにアレして「○○○○」って言ったやつ。そんなんされたら即引越し!!

    yukimisakeさんのレビュー
    「このホラーがすごい!2024」の
    「必読ホラー20選」から´▽`)ノ

    次は「梅雨物語」か?!

    • ゆーき本さん
      その手があったか!
      その手があったか!
      2024/06/20
    • ultraman719さん
      @@@@==(((/ToT)/∥WC∥!もれちゃう!
      @@@@==(((/ToT)/∥WC∥!もれちゃう!
      2024/06/20
    • ゆーき本さん
      もらしてません。チビったんです
      :( '-' ):ブルブル
      もらしてません。チビったんです
      :( '-' ):ブルブル
      2024/06/20
  •  穢れ(けがれ)が残ると書いて『残穢(ざんえ)』…。まるで数学の樹形図だな、という読後の印象でした。
     主人公である「私」が、最後まで一人称で淡々と語るドキュメンタリー(これって、実話ですよね?)は、じっとりと恐怖が染み込んでくる独特の怪談と感じました。
     不浄の中でも死にまつわる「穢れ」の伝染と連鎖が、優れた文章力と構成・仕掛けによって、じわじわと恐怖心を増幅させます。
     個人的には、どこまでも過去を遡っていく調査が、少し恐怖の緩衝材になってくれました。しかし、その追跡があったからこそ、穢れの感染拡大の恐怖感がよりリアルで、すぐそこにあるような不安を掻き立てます。
     本書の内容を、怖くて早く忘れたいような、逆に決して忘れられないようなインパクトのある怪異でした。

  • 先に映画を見て、これ小説でも読んでみたいな
    と思ったホラーです
    小説で読むと想像力が働いてより怖かった

    知ってる作家さんのお名前が登場するのですが
    これ、どこまで本当の話なんでしょうか?
    全部フィクション?ではないですよね?

    小学生の時に平将門首塚の呪い話を聞いて
    えっ!1000年も祟るの?しつこい
    と罰当たりにも驚いたことを思い出しました
    怖い話でよく聞く、落武者の呪いとか平原落人の祟りとか
    祟りや呪いの有効期限ってあるのでしょうか?

    この本の呪いは関わっただけで飛び火していく
    非常に厄介で迷惑なモノ
    この小説読んだ人にも飛び火するのかな
    私は風邪をひきました
    これも呪いのせいだったりして、と日頃の不摂生を呪いのせいにしようと思います

    それにしても、結構な怖い目にあってるのに
    久保さんお強いです

  • 読了後の夜からジワジワ怖さを実感する…((((;゜Д゜)))

    怖さレベル
    文句なしの三ツ星★★★です!!




    「怖いホラー小説は?」と質問すると必ず入ってくる作品。

    一瞬読めないタイトルは、見た目も響きも何だか怖い…。

    結論から言いますと、この作品、めちゃめちゃ怖いです……。


    正確には、読書中と読了後は、素晴らしく奥深い内容に感激して余韻にひたり

    その日の夜に、恐怖が訪れます…((;゚Д゚)

    夜中に何度も目が覚めて

    思い出し残穢。笑

    ようやく朝になりほっとします。

    外が明るくても

    家の中は薄暗く

    小説の中のエピソードを思い出し、

    昼間にも関わらず

    キッチンや玄関や他の部屋でもソワソワ。

    実は「逃げ場がない」という事に気づきます…|゚Д゚)))


    主人公の『私』宛に届いた恐怖体験の手紙。

    手紙の主、久保さんのマンション204号室で、畳を箒で掃くような音が聞こえるという。

    このマンションには、人の入れ替わりの多い部屋も存在する。

    調べていくうち、どんどん時代が遡る……。


    この話のすごいところは、根が深いところ。
    どこかで必ず繋がってることの恐怖が、ジワジワ侵食してきます。

    もうひとつは真実味のあるエピソードでリアリティ感がハンパない所。

    ドキュメンタリータッチで描かれており、実在の作家さんも登場します。

    主人公『私』はおそらく著者である小野不由美先生だし、そうなると当然『主人』は綾辻行人先生…♡
    平山夢明先生も出てくるし♡(しかも結構主要キャラ笑)

    残穢、実話なのでは……?:( ;´꒳`;):


    そうであったら、誰もが、この小説と無関係ではありません…。

    それくらい怖い作品。

    ネタバレなしでこの恐怖が伝わりましたでしょうか?


    映画『残穢』昔観たのですが、内容ほとんど忘れた為、小説を楽しめました。
    ただ、結末を知っていたので、小説は余裕だろうと思っていたのですが……甘かった(^▽^;)

    読後、再度映画を観ました。
    内容知ってから観ると、非常に分かりやすく組み立てていて、当時のホラーの演出を懐かしむとともにビビりつつ楽しめました。
    原作ファンも納得の作品なのではないでしょうか。
    すごく怖かったです…。


    小野先生の作品は『ゴーストハント』も『屍鬼』も有名ですよね。
    作品数が多いので手を出し渋っておりますが、期待大です!


    みなさん、この夏、ホラー小説『残穢』

    いかがでしょうか?( ≖ᴗ≖​)


  • 山本周五郎賞を受賞した、小野不由美氏の描くドキュメンタリー・ホラー小説。

    編集プロダクションに勤務している久保は、引っ越した賃貸マンションの一室で怪奇現象が起きていることを、以前から交流のあるホラー作家「私」に共有する。
    その内容はサッ…サッ…と何かで畳を擦る音が和室から聞こえるというものだった。背後に気配を感じるものの、振り返っても何もない。視線を向けているときだけ音は止むものの、視線を和室から外すと再び聞こえ始めるという。
    読者から怪談や都市伝説の類を手紙として収集していた「私」は、この話に既視感を覚える。その後、夫との同居を考え荷物の整理をしていた「私」は、過去に屋嶋という人物から受け取っていた手紙に目を留める。その手紙に記されていた賃貸マンションの住所は、現在久保が住んでいる場所と同じものだった。

    語り部であるホラー作家の「私」は、久保とのやり取りや取材の中で浮かび上がった怪奇現象に対し、整合性や現象の理屈を重視した考えで淡々とそれを紐解いてゆく。
    いたずらに読者を困惑させず心強い反面、作中全体を通して不気味な雰囲気が漂っているにもかかわらず、いまひとつ盛り上がりに欠ける。良く言えばじっくりと練られた設定、悪く言えばだらだらと土地の話をしている印象だった。
    また、浮き上がっていく過去の住居者の数が多すぎる上に、そのほとんどが取材対象者の口から語られるだけの存在のため非常にややこしい。作中に登場するマンションや団地の見取り図がないのも個人的にはマイナスポイントで、過去の住居者の話も含めると、どの賃貸や借家にどの年代に誰がいたかがパッと分からず、「この人が住んでいた家では何が起きたんだっけ…?」と困惑した読者も多いのではないだろうか。
    雰囲気は最高だが、各所で絶賛されているほどではないというのが正直な感想だった。2016年に映画化されているようなので、あらすじを頭に入れた今こそ、映画版もぜひ見てみたい。

  • 著者初読。ブクログのホラー特集で知った本。
    「これは実話なのでは、、、?」と思わせられるほど、設定が現実的(著者自身と思われる人物や、他の実在する作家さんが出てきたり)。思わず「この物語はフィクションです」的な一文を最後の方に探してしまったが、無かった笑。夜に照明を落として読んでいると怖い。一人暮らしじゃなくて良かったー!!
    ある不思議な現象をきっかけに、それが起こる場所やそこに住む人をどんどん過去に遡って調べていき、しまいには明治大正期まで辿り着く。最初は今話題の「事故物件・・・?」と思ったけど、そんな単純な話でもなかった。過去に遡りすぎて、出てくる人物名を覚えるのには苦心した。

    本から刺激が欲しいときはミステリーを読んでいたけど、ホラーもいいなと思った。怖いもの見たさ。作中に他にもホラーの名作と言われるものがたくさん出てくるのでそちらも読みたくなった。「ゴーストハント」も積読で買ってあるのでこれから読むのが楽しみ。

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著者プロフィール

大分県出身。講談社X文庫ティーンズハートでデビュー。代表作に『悪霊シリーズ』 『十二国記シリーズ』『東亰異問』『屍鬼』など。重厚な世界観、繊細な人物描写、 怒濤の展開のホラー・ミステリー作品で、幅広いファンを持つ。

「2013年 『悪夢の棲む家 ゴーストハント(1)特装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

小野不由美の作品

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