魔性の子 十二国記 0 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
4.09
  • (720)
  • (806)
  • (399)
  • (54)
  • (9)
本棚登録 : 6902
感想 : 663
  • Amazon.co.jp ・本 (491ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101240510

作品紹介・あらすじ

「十二国記」が動き出す!
「十二国記」のエピソード0『魔性の子』が、21年ぶりに新装版で登場。
ファン待望の新作書きおろし長編の刊行も予定されています!

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 恐ろしいと思う。
    物語の内容が、ではない。あの菊池秀行氏でさえ解説はホラー小説として評価していることが、である。91年の8月に書いていて、十二国記シリーズが始まる前の記述なのだから仕方ないのではある。私とて、第一部を読まずに、このエピソード0から読み始めたら、同じような感想を持っただろう。ただただ、理不尽な異世界からの厄災はホラーでしかない(映画の『来る』もこんな感じだった)。学園の中で、「異端の少年」は初めは小さないじめに遭い、その度に祟りのような厄災が起きる。周りの扱いは無視・忌避そして恐れ、攻撃、追従へと移ってゆく。やがてマスコミという巨大な暴力装置が発動し、それらに対する大厄災が起きる。ホラーというよりも、日本人特有の「荒ぶる神」に対する感情を扱った「神話」のような気がする、というような感想を第一部を読んでいなかったならば持っただろう。少し切り口は違ったがホラーエンタメを描いてきた菊池氏にとってはあの解説は当然であった。

    ところが、本質は違ったのだ。今や十二国の地図さえ知ってるいる私は、この厄災の意味が半分以上は推察がつくようになっている。シリーズ全部を読んでいるファンたちには尚更だろう。これほどまでの死者が出たことの原因を私は知っている。そんな風に、あたかも「神の視点」を持つようになった自分が恐ろしいと思う。(物凄く不謹慎なので書くのを憚られるのだけど、仮の発想として今回の台風19号の大厄災の本当の意味をもし知っていたとしたら、貴方は『とても恐ろしい』と思いませんか?)

    冒頭と終わりに八世紀唐の人、王維の阿倍仲麻呂との惜別の詩が捧げられている。「滄海の東の果てのことはよくわからない」「音信はもう届かないだろう」という詩なので、2つの可能性を考えた。一つは十二国の始まりが唐の時代だったという可能性だが、これは熟考した結果「無い」と思う。ひとつは、「東」を無視すれば、正にラストのある主要人物の気持ちそのものを代弁しているだろう。それはそれで、とても哀しい感情である。

    • やまさん
      kuma0504さん
      こんばんは。
      いいね!有難う御座います。
      やま
      kuma0504さん
      こんばんは。
      いいね!有難う御座います。
      やま
      2019/11/10
  • 『黄昏の岸 暁の天』と、どちらを先に読もうかと悩みましたが『魔性の子』を先に読むことにしました。高里が「自分のいるべき世界ではない」生まれ育った場所から、今は消失した記憶の中の「帰りたい」と願う場所へどうやって戻って行くのか気になって仕方なかったからです。
    こちら側にいる高里の周囲では、高里を虐める者が不慮の事故に遭うため、「高里は祟る」と恐れられています。恐れという感情は様々な感情を隠し持っています。人間は恐怖を覚えると、憎しみや糾弾、死を持っての排除、逆に阿たり崇拝したりします。その様子は滑稽であるはずなのに、笑えない自分もいます。
    高里と同じように「自分の本来いるべき世界に帰りたい」と望む広瀬が、どんどん高里に自分のその思いを重ねていく姿に、背筋が薄ら寒くなりましたが、その理由が自分でも分かりませんでした。けれど、後藤先生が広瀬に「その、俺たちという言い方はやめたほうが良くねえか」と忠告した言葉にハッとさせられました。「俺にはな、お前と高里はずいぶんと違って見える。そういうことだ」広瀬は、後藤の言葉の意味が分からず言い返しますが、結局後藤も理解してくれない、この世の人間にすぎないと俯きます。
    高里と広瀬は、根本的に「帰りたい」場所の意味が違います。広瀬は、その場所をユートピアのように思っているのでしょう。現実世界で、親と反りが合わないのも、教師と気が合わないのも全部自分がこっちの人間じゃないからだと思っています。広瀬の言う「帰りたい」は「こっちの世界から逃げて」居心地の良い世界で生きたいとの思いの表れなのでしょう。
    でも、わたしたちは知っています。高里の「帰りたい」場所は決してユートピアなんかじゃないことを。それでもその世界では、高里を愛し必要としてくれる人たちがいます。
    高里が記憶を取り戻し、延王とともに「いるべき世界へ戻る」となったとき、広瀬は高里に縋りつき、自分だけを置いて帰るのかと叫びます。広瀬の高里に対する醜い嫉妬、エゴ。人が人であることは、こんなにも汚いことだと、わたしたちは思い知らされます。人間とはこういうものなのだと自嘲めいた笑みを浮かべるしかありません。
    「帰る世界」を持たない人間は、この世に縫い止められ、広瀬が帰る世界など、どこにもありはしない。
    人間であるわたしたちも、この世界で生きていかなければならないのですね。

  • 図書館閉館のため、読む本がない。何がないかと立ち寄った本屋さんに平積みされていた『十二国記』
    確かブクログのどなたかの本棚に登録されていたっけ、
    どうして1でなく0なんだろう?
    予備知識がないので、何も分からない。
    とりあえず読み始めるのなら0からがスタートかなと思い読み始めた
    そのうちなぜ0なのかも分かるにちがいない

    高里に関わった人間に起こる 不慮の事故、そして、それはどんどんエスカレートし、残虐を極めていく

    無視し、罵倒し、傷つけ、反対に手の平を返したように追従するクラスメートの変化は、危険が自分にも迫っているという恐怖の表れだろう

    僕は何者?
    いったい何が起こっているのだろう?
    神隠しとされる1年間の空白の時間と関係があるのか?

    高里が持った疑問は、読者である私の疑問でもあった

    高里が空白の1年間の記憶を取り戻していくに従って少しずつ明らかになっていく正体

    この世にいる場所はない。泰麒は本来いるべき場所へ戻らなければならない
    泰麒と一緒に私もそこへ戻り、真相を確かめたいと思った

    ファンタジー?ホラー? その区別ははっきりしないが、映像なら次々と起こる惨事が簡単に、しかもCGを駆使して迫力満点で眼前に広がるのだが、小説はそうはいかない

    文章から想像力を駆使して、頭にその状況を思い描かなければならない
    きっと読者各人が一つの文章をとっても、思い描いた景色は違うのだろうなと思ったら、とても興味深い気がした

    映画でも小説でもファンタジーといわれるものは、苦手だが、じっくりとこのシリーズを読み進め、味わってみようと思う





  • 怖かった。
    この本から十二国記スタートしてたら挫折してたかもしれない。
    汕子のことや向こうの世界のことを知ってる状態だったから最後まで読めたのだけれど。

    「粛清」はどれも恐ろしかったが、それに匹敵するくらい、姿の見えない敵を恐れる人間の取る行動、集団心理がまた怖かった。 

    十二国記はファンタジー小説でありながら、醜さ美しさひっくるめての人間らしさをリアルに描いているところが本当に好き。

    広瀬のアパートに張り紙をする住人は、コロナ禍の自粛警察そのもの。
    ウイルスより人間が怖いとインタビューで答える被害者の言葉を思い出した。

    広瀬は最後自分のエゴで高里をこちらの世界に引き止めようとした。
    確かに動機はエゴで読んでて悲しくなったけれど、あれだけの事件で実名が報道されてたら、私もこちらの世界に一人で残されるのはいやだなー。

    話はとんでしまうけど、子どもの頃ハリーポッターを読んで自分にもホグワーツから手紙が届かないかと期待したことがあったことを思い出した。
    関係ないけど笑

    あちらの世界に何が起こっているのか、早くも知りたくてたまらない。
    次巻も楽しみ!

  • とうとう手を出してしまいました十二国記シリーズ。けっこうボリュームあるから躊躇していたのですが、新刊も出たようですし、何より人気シリーズみたいだし。
    日本の女性ファンタジー作家三羽鴉のいよいよ3人目です。さすがですね、この本もぐいぐいと引き込まれるように読み進みました。

    で、で、で、あれ?十二国記ってファンタジーじゃないの?現代のまま、白い腕だけとか一つ目の犬とか・・・ホラーやん。高里に関わった人間が次々と不審な事故に遭い、時には死亡事故まで。いや、なかなか怖かったですね。
    後藤と広瀬のやりとり。「人は汚い卑しい生き物だよ」「エゴのない人間はいない」。いやーダークだなあ。あまりにもズバリと指摘して・・・そして最後の広瀬のエゴ。「人が人であることは、こんなにも汚い」・・・

    ムルゲン、グリフィンに泰麒、廉麟、白汕子、傲濫、なんて言葉が出てくるとファンタジーと思いますけどね。

    解説の「著者に訊ねたいと思う。私たちは、どこへ行けばいいのか、と」が最後に響くな。

    けっこう謎なところが多かった感じですが、書評をチラ見したところ、伏線というか次巻以降を読むといろいろわかりそう。では、いざ本編へ。

    あ、そうそう、この本って実はけっこう古いんですよね。電話のくだりがね、やはり時代を感じるなーと思って。ケータイなんてものが普及する前のお話なんだな。って、何年前?

    • desicoさん
      ようこそ、十二国記シリーズへ!
      ほんと本巻は昔々ですよ。
      シリーズ新刊リリース何年待ったことでしょうw
      ようこそ、十二国記シリーズへ!
      ほんと本巻は昔々ですよ。
      シリーズ新刊リリース何年待ったことでしょうw
      2013/06/22
    • urarinchoさん
      コメントありがとうございます。
      その昔の本が復刊というか新装丁でまた出てくるというのが、人気がある証拠ということでしょうなあ
      ご長寿シリーズ...
      コメントありがとうございます。
      その昔の本が復刊というか新装丁でまた出てくるというのが、人気がある証拠ということでしょうなあ
      ご長寿シリーズは気長に待つしかないですもんねえ。ファンにはツライ!
      2013/06/23
  • 十二国記シリーズでよく話題に上がるのが、この魔性の子をどのタイミングで読むか?
    まずこれを読むに当たって、少なくとも「黄昏の岸暁の天」までは読むべき。
    最初に読んだなら★2程度の作品だが、本編読んだ後では、全てが伏線に思えて面白すぎる!ゆえに★5の作品!
    銅の剣がロトの剣に昇華した!というような感覚を憶える小説。これを最初に執筆して、後に十二国記シリーズを手掛けていく……最初から壮大な構想ができていたからこそのエピソード0なのだと実感しました。
    さすがは小野主上です!

  • 母校に教生としてやってきた広瀬。受け持ったクラスで一人だけ違う雰囲気を纏う生徒、高里が目に留まる。聞くと彼は昔神隠しにあい、忽然と消え、1年後にまたふっと戻ってきたというのだ。

    ある日、生徒が高里をからかった後に事故にあった。それを機に高里にちょっかいをかけたものは後日何かしらの事故にあうということが続く。

    因果関係が掴めないまま広瀬は高里と話すうち、高里は神隠しの間の記憶がなく、その時にいた場所を思い出そうとしていることを知る。「ここは自分が本当にいるべき場所ではない」と常々思っていた広瀬は高里にシンパシーを持ちどんどんのめり込んでいく。

    そして高里の周りで起こる事故も死人が出るほどになり、クラスは集団パニックを起こす。「お前が祟ったんだろう?」と高里を咎めれば後日何かしらの事故が起こる...、事故の内容も規模もエスカレートしていき収拾のつかない事態になっていく。

    広瀬は高里を庇うが高里はどんどん孤立していく。そんな中で高里は記憶を少しずつ取り戻し、やがて真相に辿り着くことになる。

    十二国記のエピソード0にあたる話。ホラー調で不気味なんだけど、展開が気になり次々とページをめくってしまう。この話がどのように繋がっていくのかとても楽しみな内容でした。

  • 十二国記シリーズを読んだ後に読んだので、おかげで怖さはなかった。十二国記の世界を知らずに読んでたらめっちゃホラーだったんだろうなぁとも思うけど、やっぱり最初に読んでみたかったかも?

    異質な高校生、高里の周りで次々と起こる事件。残酷な死。でもその残虐さと同じくらい、周りの人間の偏見や思い込み、異質なものを排除しようとする力も残酷だ。

    自分の居場所がないと感じる人は多いと思うけど、現実は誰かが迎えに来てくれるわけではないし、選ばれし人なんていない、残念ながら。その中でどうやって折り合いをつけて生きていくか。自分で自分の居場所をつくれるか。

  • 「自分の居場所は別の場所ではないか」と感じている泰麒に対して、強い共感を覚えてこの世界に居場所を作ってやりたいと思っていた一方、最後には自分がその場所に帰れないのであれば、泰麒が帰るのも許せなかった広瀬。
    月の影に出てきた陽子の友人 杉本さんを思い出した。自分が選ばれたかった。自分の居場所が他にあるはずと思いたかった。
    十二国記ではそういった驕りとも取れる人の思いがかなり生々しく残酷に描かれる。
    これに共感、もしくは辛く感じる人は現代に多いのではないだろうかと思う。
    自分は胎果で、いつか麒麟が迎えに来るんじゃないか。そんな願いが実は心の底にあるものではないだろうか。だからこそこの結末は残酷だ。
    広瀬や杉本さんは私の一部ではないかと思う。
    そう思って辛くなる度、陽子が言う「自分の王である」ということを度々思い出さなければいけないのだと思う。

  • 非常に面白かった。
    月の影から読み始めて順番に進み、白銀の前くらいに読んだため、それほど怖くは無かった。
    現実がうまくいかず本を読んでいるとあちら側に強い憧れを持ったりするがそれでも、ここで生きるしかない読者を応援してくれているように感じた。選ばれし者から置いていかれる絶望もあるかもしれないが、中途半端な希望を与えるよりあえてそう表現してくれる優しさだと思った。十二国記のシリーズはどれも読んだあと元気が出る。

全663件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

大分県生まれ。1988年作家デビュー。「悪霊」シリーズで人気を得る。91年『魔性の子』に続き、92年『月の影 影の海』を発表、「十二国記」シリーズとなる。『東亰異聞』『屍鬼』『黒祠の島』は、それぞれ伝奇、ホラー、ミステリとして高い評価を受けている。「悪霊」シリーズを大幅リライトし「ゴーストハント」として2010年~11年刊行。『残穢』は第26回山本周五郎賞を受賞。『鬼談百景』『営繕かるかや怪異譚』『営繕かるかや怪異譚その弐』など。2019年、十二国記最新刊『白銀の墟 玄の月』を刊行し話題に。

「2021年 『ゴーストハント7 扉を開けて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

小野不由美の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
小野 不由美
三浦 しをん
有川 浩
有効な右矢印 無効な右矢印
ツイートする
×