風の海迷宮の岸―十二国記 (新潮文庫 お 37-54 十二国記)

著者 :
制作 : 山田 章博 
  • 新潮社
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本棚登録 : 2753
レビュー : 237
  • Amazon.co.jp ・本 (390ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101240541

感想・レビュー・書評

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  • 蝕が起きたことで蓬莱へと流され、人の子として育った泰麒。彼が十年の時を経て蓬山へと戻ってきました。

    泰麒が意外にもすんなりと自分の本来在るべき場所を認められたことは、まだ幼い子どもだったからということもあるのでしょうけど、それ程今まで生きてきた場所が彼にとって不安定な心持ちになる、自分がいるところじゃないと感じるところだったからなのだと思います。
    (ぼくはうちの子じゃなかったんだ)
    そう気づいた泰麒、なんて不憫で痛ましい男の子なのでしょう。
    蓬山で、蓉可をはじめとした沢山の女仙と女怪の汕子の優しさに包まれて、泰麒はやっと愛されることの安心感を知ることが出来たんだと思います。
    泰麒の優しさや純真さは、裏を返せば自信のなさや臆病さとなるのかもしれません。それでも、愛され育てられた子どもは、いつかは自らの足で立って自立していくもの、大切な人を守ることが出来た泰麒を見てそう思いました。
    やがて泰麒は王を選びますが、その決断は彼自身を苦しめてしまいます。けれどその恐ろしい告白(後に解決します)を知ってしまった王となる驍宗の懐の深さ、そして延麒、景麒の兄のような愛情に包まれ、泰麒にも自分がいてもいい場所に気づくことが出来たと思います。
    可愛い泰麒、見守っていきたいですね。

    それにしても、延王は悪玉役を楽しんだろうなぁ。
    そして景麒。彼の微かな笑みは景王もクラリとくるわねぇ。

  • 十二国記・第二弾、陽子と同じ還り人ですが、今度は男の子?が主役になります。

    エピソード0・『魔性の子』の狭間を埋める物語の一つでしょうか、
    高里が"神隠し"にあっていたとされる時期の前半部になるのかな。

    で、この物語を経て、シリーズ通しての麒麟に対する設定が、
    なんとな~く見えてきたようにも思えました、、ふむ。

    日本では漠然としたままに浮いた存在であった高里ですが、
    ある時、隙間の"手"に誘われて、蓬山に還ってくることになります。

    そんな高里の本性は"人間"ではなく"麒麟"、
    そう、王を選び国造りの象徴となる役割を担う、麒麟です。

    であってもどこか浮いた存在であるのは、変わらずに。
    還り人であるが故に普通の麒麟とは違っている点も、それを手伝っているのでしょうか。

    それが故にか、終盤の王を選ぶくだりはここでも、心地よいカタルシスでした。

    "離れたくない"、その思いを具現化するに全ての壁を取り払って、
    王と麒麟のつながりはそこまで純粋になれるのかと。

    個人的には陽子と同年代であるかどうかも、気になるところ。
    時系列的には、陽子が帰ってきた時よりも前のハズですが、、さて。

    なお、再び還ってからの物語は未だ語られずに、新作に期待中だったりします。

  • この話が「魔性の子」に続いていくなんて・・・・と思うと、切ないです・・・。

  •  可愛い子供を只管愛でるお話。
     ではないのだけど、そういう印象(笑)。
     本当にもう泰麒が健気でいじらしくて。そして汕子も。
     女怪のような、何者かを慈しみ護る為だけに生まれた存在というのは理解の範疇外なのだけど、それでも自分にも大切な人や物がないわけではないので、卵果が蝕にのまれた時の汕子の嘆きには胸が苦しくなる。

     とても晴れやかで幸せなラストなのに、このすぐ後にはまた大変な事になるのを知っているから、この本自体はハッピーエンドなのに、読後感がとても哀しい。
     この本と『魔性の子』の間に、一体何が起きてしまったんだろう。
     そして『魔性の子』の後は、どんな展開が待っているんだろう。

     ところで、私の周囲の『十二国記』ファンの間では驍宗が一番人気なのだけど、私は彼が苦手……。とてつもなく格好良いし、凄い人物だと思うし、こういう人物を「王の器」と呼ぶのだろうなとは思うのだけど、どうしても怖くて。とても怖い。
     自分に自信がないから、驍宗のような、非の打ちどころのない(ように見える)、自信に満ち溢れた人物に気後れするのか。
     勿論そんな事は全くないのだろうし、私の被害妄想なのだけど、彼のような人物は、愚かな人間を赦してくれない気がする。
     李斎が、尊敬も出来るし、親しみも持てるし、好きなキャラクターなのだけど、彼女くらいのスケールまでが、私の許容出来る大きさなのかも知れない。
     スケールの大きさで言えば、勿論尚隆もそうなのだけど、彼は「駄目な(駄目に見える)部分」を前面に押し出してくれているので、そこが取っ付きやすい(それも、凡人の勘違いという気もするけれど)。
     驍宗は完璧で、素晴らし過ぎて、得体が知れない。
     それともこういう気持ちを、泰麒が感じたような「畏怖」と呼ぶんだろうか。

  • 後半、ページを繰る手が止まらなかった。
    王を選ぶ麒麟としてこちらの世界へやってきた少年。しかし、能力に目覚めることなく、自身への懐疑を捨てきれず逡巡する。そしていよいよ王を選ぶこととなり…。
    泰麒が王を選ぶところ、誤解が解けるところ、興奮して何度も読み直してしまった。
    強固な世界観、登場人物の魅力、心の動き、盛り上げ方、本当にツボをついている。

  • 4冊目。
    何というか、泰麒の苦悩→成長物語としてはすごく王道だし展開も容易に予想できるのに、なんでこんなにぐいぐい引っ張られるんだろう。決して派手ではないんだけれど、不思議と魅せる文章を書かれる方だなあと思った。

    個人的には泰麒が反則レベルで可愛かったのと、以前はひたすら恐さ/意味不明さしか感じられなかった汕子への印象が180度変わってしまったこともあって、魔性の子をもう一度読みたい…と思ったけど、そうか、この巻は大大団円っぽく終わっているけれど、この後「ああ」なってしまうのか…

  • 生まれる前に蝕によって蓬莱に流され、人として生まれ育ってしまった戴国の麒麟・泰麒が、十二国に連れ戻されて王を選ぶ物語。
    WH版のレビューにも書きましたが、麒麟・泰麒は蓬莱育ちで十二国のことが全くわからない、という設定なので、彼の悩んだり迷ったりする様子に読んでいるほうも一緒にハラハラしてしまう。
    こうやって巧妙に読者を引き込む書き方は本当に流石だな、と思います。
    饕餮に襲われる場面と、驍宗を必死に追い掛けて行く場面は、何度読んでもハラハラドキドキしてしまいます。
    終盤の、悪玉に浸る延王様も好きです。笑

    十二国の中で一番幸せになって欲しいのが、戴国の主従コンビだなぁ。

  •  幼き麒麟は迷い、惑い、戸惑い、悩む。
    人として蓬莱で育ち、人として生きた故に、麒麟がなんなのかわからず。
    自分は間違っているのではないか、自分は至らないのではないか。
    その戸惑いの奥にあるその素質は決して止まらない。

     泰麒の、その苦しみの描写がすごくよく。
    読み進めつつも、その成長を見守ってしまう。
    思っていた以上に、引き込まれる物語だった。
    あとがきにあるように、その苦しみはまるで初恋のよう。

  • 麒麟は悲しい生き物。
    泰麒は子供なので、王を思う様が、親を求める姿にも見えて切なかった。日本に流されなければあんな風に母を求める気持ちも知らないで済んだんじゃないかと思う。切ない。可愛い。
    景麒は陽子のためにも子供を側に置いとくべきだと思う。

    • komoroさん
      十二国記はまってますね。いつか読んでみたいです。
      十二国記はまってますね。いつか読んでみたいです。
      2015/10/17
  • 貸してくれてるお姉さまのお勧めで、『魔性の子』よりこちらを先に読みました。物語の運び方がやっぱりさすがだなー。転変できないとか、そういう漠然とした不安はあるものの、幸せな状態で穏やかに進んでいく序盤があるからこそ、優しく愛されてきた泰麒が罪悪感を抱く終盤とのコントラストが際立っていて良かった。あとはやっぱり敬語の使い方がすてき。

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著者プロフィール

小野 不由美(おの ふゆみ)
1960年生まれ、大分県中津市出身の小説家。大谷大学在学中に京都大学推理小説研究会に所属。夫は推理作家の綾辻行人。
1988年、『バースデイ・イブは眠れない』でデビュー。2013年5月、『残穢』で第26回山本周五郎賞を受賞。代表作にテレビアニメ化された『悪霊シリーズ』、『十二国記シリーズ』、『屍鬼』など。

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