風の万里 黎明の空 (下) 十二国記 4 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2013年3月28日発売)
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レビュー : 235
  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101240572

作品紹介・あらすじ

王は人々の希望。だから会いにゆく。景王陽子は街に下り、重税や苦役に喘ぐ民の暮らしを初めて知り、己の不甲斐なさに苦悶した。一方、祥瓊は、父が弑逆(しいぎゃく)された真相を知らず過ごした自分を恥じ、同じ年頃の娘が王に就いた国を訪ねる。鈴もまた、華軒(くるま)に轢き殺された友の仇討ちを誓い、慶へ。だが邂逅(であい)を果たす少女たちの前には民を苦しめる豺虎(けだもの)の影が。──立ち向かう者に希望は訪れるのか。

感想・レビュー・書評

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  • この巻は物語の王道を通って、見事に終着しました(少女たちの成長物語、ラスボスの正体)。この巻には、慶国のみならず、芳国、才国、柳国、恭国の状態まで出てきます。これまで巧国、戴国、雁国が出てきているので、これで八国の状態がわかりました。国境を越えると明らかに国力に格差があるとか、十二国で生きることが立体的にわかってきました。

    解説の金原端人が、『ナルニア物語』『指輪物語』を例示してこのシリーズの最後を示唆しています。つまり、世の名のある英雄物語は『英雄の帰還』だけでは終わらない。英雄の『死』によって終わるのです(例えばヤマトタケルは白鳥になって去っていった)。もちろん、この時点で金原も私も、最後を知らない。「物語の運命」という見方で最後を予想するのは、ファンタジーの一つの愉しみです。シリーズが折り返し地点を過ぎた今、だんだん見えてきたような気がします。

    ここまでわかった年表を訂正加筆して載せます。
    1467年   六太1歳応仁の乱で罹災する。
    1470年 六太4歳延麒となる。
    1479年   瀬戸内海賊村上氏により海辺領主小松氏滅亡
    (大化元年) 雁国延王尚隆が登極
    1500年(大化21年)元州の乱 斡由誅殺


    X元年   泰麒 胎果として日本に流される
    X4年 才国采王黄姑が登極
    X9年末  慶国予王が登極
    X10年  泰麒 2月蓬山に戻る
    戴国泰王驍宗が登極
    X11年 泰麒 4月日本に戻る
    X 12年 芳国峯王仲韃崩御、娘の祥瓊の仙籍剥奪 
    X 13年  芳国の麒麟の卵果触により流される
    X14年  5月慶国予王崩御。
    X15年(1992年?)1月?陽子日本より来たる
          10月慶国景王陽子が登極
    X 16年  慶国で和州の乱 
         鈴と祥瓊は王宮へ 陽子伏礼を廃す
    X17年  泰麒 9月戴国に戻る

  • 実際に見て聴いて触れて、そして自分の心に問うてみる。それがどれだけ大切なことか。
    例えば目の前に広がる風景が、自分の不甲斐なさのために引き起こされたものだとしたら。
    例えば嫉妬や自分が一番可哀想だと思うことが何とか自分を踏ん張らせていたものだとしたら。
    そこから抜け出すことは容易なことではないはず。本当に一番やらなければいけないことが一番しんどくて逃げてしまいたくなることなのだから。
    人は時にひとりでは抱えきりない荷物を背負うことがある。狭く暗い世界に閉じ籠ってしまうこともある。だけどそっと荷物を支えてくれる手も、温かい灯りを灯してくれる手も、やっぱり人なのだ。人はひとりで生きられない、というかひとりで生きようとしなくていいのだと思える。
    陽子、祥瓊、鈴の3人は各々自分がどう生きるべきか考えるきっかけを与えてくれる人物たちとの出会いを経て、自分たちの思いで動きだす。その思いは3人を引き寄せ、そして戦いへと誘う。彼女たちは堂々と胸を張り戦いに飛び込んでいく。凛とした彼女たちからは、出会う前の独りよがりな感情に苛まれた少女の面影は消え去っていた。
    拓峰での戦いの場面から陽子が初勅を述べるラストまで一気に大波が打ち寄せてきたようなドラマチックな展開にワクワクした。清々しい少女たちの成長物語。

  •  陽子、祥瓊、鈴の三人が運命の出会いを果たし、戦いに向かう下巻。

     新装版になってから十二国記を読み始めましたが、今まで読んできた中ではこの作品が今のところ、十二国記作品の私的ベストだと思います!

     三人の少女たちがこの話の中で多くのことに気づき、成長を果たしていく姿は読んでいる読者側にもしっかり伝わってきます。上巻で未熟な彼女たちの姿がしっかりと描きこまれていたことが、下巻での描写の力強さにつながっているのだと思います。

     今まで読んできた十二国記の作品はあまり戦闘シーンのイメージがなかったのですが、今回は乱の様子が描かれていて、そちらの読み応えもありました。

     上下巻通してのメッセージ性も高かった気がします。知らないことに対する責任や自分は不幸だと思うことで、何も変える気持ちを持たなくなる心、そしてそれからの脱却、ラストの陽子の初勅。今まで読んできたファンタジーのシリーズは、児童文学のものが多かったということもあると思うのですが、どちらかというと友情を強調したものが多い気がするので、それだけにとどまらずに、さらに深い『人』としての本質を突くこのシリーズはやはりただのファンタジーではないなあ、と思ってしまいます。

  • この清々しい読了感はなんだろう。
    最後の陽子の言葉は、この世界の話だけではない。
    私達が生きるこの世界にも通じる言葉だ。

    この言葉を紡ぎ出すまでにどれほどの苦労があっただろうか。
    月の海〜から始まって、どれほどの壁を超えてきただろうか。
    自分を疑い、自分に失望し、
    それでも諦めなかった陽子だから、
    私達は信頼できる。
    きっと良い王になるのだろう。

    改めて思う。
    私は十二国記が好きだ。

  • とてもおもしろかった。容赦なく善人が死ぬことをおもしろいと表現するのは憚られるが、それを含めてのそれぞれの旅なのだろう。決して薄くはない上下巻としてじっくりと描かれた3人の女の行く末が、本を閉じることをためらわせない物語に落ち着いてよかった。登場人物が多いのも楽しかったし、「月の影~」ではまったく活躍しなかった(失礼)景麒もたくさん見られてうれしかった。ハッピーエンドに終わるだろうと疑いなく読んでいたが、それはこのシリーズが結局は前を向いているからだろうか。誰にも試練があるが、それを乗り越えて未来がある。

  • ひとりひとりが立つこと、本当にそこなんだと思う。
    前を向いていないと穴に落ちてしまう、自分への哀れみの穴の中に。深い…

  • 陽子が王だと確信する話。
    初勅が陽子らしい。この場面が一番好き。

  • 謀反を企てる慶の街・拓峰で、陽子・祥瓊・鈴の三人が出会う。

    彼女達が自分の至らない点をきちんと把握して、変わろうとしているところに好感が持てて、物語に一層引き込まれます。
    特に祥瓊と鈴は、上巻に比べて前向きに行動的。
    陽子の苦悩は、正直、麒麟が口下手なせいでもあると思います。
    だから仕方ない部分もあると思う。笑

    同じ年頃の女王から全てを奪ってやろうと思っていたけれど、楽俊と出会って景王がどれだけ苦労して登極したかを知り、彼女を逆恨みする気持ちを改めた、祥瓊。
    同じ蓬莱出身であることから親近感を抱いていたものの、弟のように思っていた少年を慶の悪吏に殺されたことから、景王を恨むようになる、鈴。
    祥瓊と鈴の景王に対して抱く感情が、上巻と真逆なのが印象的。
    そして二人が陽子と知り合い、ただ「王様」というものに勝手に期待したり失望したりしていたことに気付く。
    これは、現実の世界にも言えることなんだろうな。

    WH版のレビューで、祥瓊と鈴が民衆の前で身分を明かすシーンが好きだと書いた記憶があるのですが。
    勿論良いシーンだし、好きなのですが、以前ほど手放しに「清々しくて大好き!」とは思えなくなった自分に気付きました。
    貴女達はやっぱり十分恵まれているじゃないか!と思ってしまう。
    以前読んだ時よりも多少は進歩したということでしょうか。

    今回、陽子が街に下りて自分自身で見聞きして物事を見極めようとしたことは、『月の影 影の海』での経験があったからこそだと思います。
    もっと楽に登極していたら、民衆と生活しながら学ぶなんてことは出来なかっただろうな、と。
    そう考えると、あの辛い経験も決して無駄ではなかったし、今回のことも彼女の国作りの糧になるんだろうと思います。
    彼女の初勅と、そこに込められた想いを見ていると、慶はきっと良い国になるだろうなと思えます。

  • 陽子が苦労しながらも立派に王として成長していってて、月の影から見ている読者側としてはもう、一緒にやったー!って言いたくなるくらい嬉しい!特にラスト周辺の話の運びは爽快だったなあ。
    最初は卑屈な鈴のことも、傲慢な祥瓊の事も、なんて独り善がりなんだと腹を立てながら読んでいた。けど、思い返せば月の影を読んでいる時、私は最初の煮え切らない陽子に苛々していたんだよね。私が一番、勝手だなあ。
    鈴も祥瓊も陽子もそれぞれが自分の迷いや歪みを正して、辛い経験を乗り越えていって、自分のなりたい自分になっていけたらいいなと思う。
    これからの慶国が、それぞれのキャラクターの行く先が本当に楽しみ!私も蓬莱で色んな経験をして、もっと強くなっていきたいな。

  • 三人の少女たちの成長物語、と単純にくくってしまえないほど、いろんなものを内包している。
    貴種流離譚や冒険・戦い・友情メインのファンタジーが多い中、三者三様の立場から、王とは何かを考え、自己憐憫から脱却し、強く生きる決意をする姿が凛々しい。
    政治や経済のしくみなどを交えることで、世界観を確固たるものにし、王というものがおとぎ話に出てくる名誉職でなく厳しく泥臭い実務であることを思い知らせてくれる。
    折に触れて読みなおしたい名作。

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著者プロフィール

小野 不由美(おの ふゆみ)
1960年生まれ、大分県中津市出身の小説家。大谷大学在学中に京都大学推理小説研究会に所属。夫は推理作家の綾辻行人。
1988年、『バースデイ・イブは眠れない』でデビュー。2013年5月、『残穢』で第26回山本周五郎賞を受賞。代表作にテレビアニメ化された『悪霊シリーズ』、『十二国記シリーズ』、『屍鬼』など。

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