風の万里 黎明の空 (下) 十二国記 4 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2013年3月28日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101240572

作品紹介・あらすじ

王は人々の希望。だから会いにゆく。景王陽子は街に下り、重税や苦役に喘ぐ民の暮らしを初めて知り、己の不甲斐なさに苦悶した。一方、祥瓊は、父が弑逆(しいぎゃく)された真相を知らず過ごした自分を恥じ、同じ年頃の娘が王に就いた国を訪ねる。鈴もまた、華軒(くるま)に轢き殺された友の仇討ちを誓い、慶へ。だが邂逅(であい)を果たす少女たちの前には民を苦しめる豺虎(けだもの)の影が。──立ち向かう者に希望は訪れるのか。

感想・レビュー・書評

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  • 景王・陽子は、慶の街で見聞する汚職に満ちた現状に、王としての至らなさを痛感していた。
    民を貪る官吏達に、立ち向かう為、隆起する人達と共に、陽子は行動を共にする。鈴、祥瓊共、反乱の中再会を果たす。
    これから慶国の治世に、必要な信頼できる人材を得ることになる。
    この巻は、少女達それぞれの成長を安心して読めた。陽子が、日々、強く賢く、王らしくなっていく。麒麟にも個性があるのか、景麒は、おとなしめなのかな?麒麟が血に弱いというか設定は、今後何か関係してくるのかしら。王の補佐としては、不便な設定ですよね。麒麟が、太平の世に出現する動物だからかしら。
    この時代の十二国は、なかなか荒れ模様の国が多そう。どういう風に、ストーリーをまとめていくのかとても楽しみ。
    次巻いきまーす。

  • 十二国記【風の万里 黎明の空】
    3人の少女の長い旅の物語

    【陽子】
    波乱の国【慶国】の王になった"陽子"
    日本で女子高生だった為、慶国の政治も常識も分からず判断がつかない。諸官に無能扱いされ自分の無力さに臆病になり王として命令する事ができない。

    【鈴】
    明治時代の日本から十二国に流されてきた"鈴"
    家が貧しく身売りされるところを"ショク"により突然十二国に流される。才国での辛い生活から逃げ出したいと思う。そんな時、新しく王になった陽子が同じ日本人だと知り、なんとか自分を助けてくれるのではと興味を持つ。

    【ショウケイ】
    芳国の元王の娘。悪政の為、謀反によって父母を失い二度と王宮には戻れず過酷な環境に身を置く。
    王宮での華やかな生活が忘れられず、なぜ父母の悪政に民が憤っているかも分からず自分の不幸の身を嘆く。

    この3人の少女がそれぞれの目的を胸に秘め、それぞれ長い旅に出る。旅の途中、自国とは違う国の状況を知り、自分とは違う考えや志を持つ人達に出会い、心動かされ自分も変わろうとする。

    相手の考えを受け入れ、汲み取ろうとする努力、不幸に心を囚われず真っ直ぐに正しい方向に進んでいく力。
    彼女たちは自分を苦しめていたものが本当は何だったのかを徐々に理解していく。
    3人の成長していく姿が感動です。

    国が聡明な王のもとでは繁栄し
    悪政によって傾いていく様子。
    貧しく治安の悪い国から人は逃げ出し、国に新しい王が立ち落ち着けばいつかは戻りたいと願う衆生の気持ち。
    今回の旅で陽子は成長したけれど、もっともっと王として成長し、慶国がどのように変わっていくのかワクワクします。

    十二国の中でまだ出てきていない国がどんな国でどんな王がいるのか…。
    くわぁぁ、いよいよ楽しくなってきました!
    十二国記、さいっこーです!(≧∀≦)

    • 松子さん
      くまさん、こんにちは(^^)
      金木犀の香り、『さぶ』の季節ですねぇ

      十二国記の世界、いまわくわくしながら読み進めています♪

      実は【月の影...
      くまさん、こんにちは(^^)
      金木犀の香り、『さぶ』の季節ですねぇ

      十二国記の世界、いまわくわくしながら読み進めています♪

      実は【月の影】を読んだあと、【魔性の子】を読んでいたのですが怖すぎて100ページあたりでストップしました。
      友人に聞いたら『魔性の子は裏ホラーなんだよ』とのこと。
      十二国記にホラー?
      そして友人の裏ホラーの意味?
      分からなくてナンダロ?と気になっていましが…、

      くまさんのコメントのおかげで、スッキリしました!そういう事だったんですね(^^)
      魔性の子をストップしてから【風の海】を読み始め、今は真ん中あたり。

      くぅぅ、くまさんのオススメ聞いてたら、【魔性の子】絶対に頑張って読んでから風の海にいったのにっ_| ̄|○ 残念です!
      2022/10/03
    • kuma0504さん
      松子さん、こんばんは♪

      金木犀はコチラはまだまだです。地域差があるのかなあ。

      「魔性の子」、半分読んで撤退したんですね。ホントはこれから...
      松子さん、こんばんは♪

      金木犀はコチラはまだまだです。地域差があるのかなあ。

      「魔性の子」、半分読んで撤退したんですね。ホントはこれからもっと怖くなるのですが、もう怖くないかも‥‥。でも、半分は私のいう通りの読み方なので、嬉しいです。
      「風の海」を読んだあとには、あんなに怖かったアレとかアレまでもが、なんだか愛おしく見えて来る体験は、やはりこの順番でしか味わえないからです。怖ければ怖いほど、その驚きは凄いのですが、半分残念でした。

      しかし、91年段階で、今の設定のほとんどを作っていたというのは、やはり凄いです。その凄さも、「風の海」だけでは感じないので、シリーズを通して感じることになります。その意味でも「魔性の子」は、名作です。
      2022/10/03
    • 松子さん
      くまさん、こんばんは♪
      いま、風の海…の中の、泰麒が初めての使令を得て麒麟である事を確信する場面にいます!
      大大興奮です(≧∀≦)

      くまさ...
      くまさん、こんばんは♪
      いま、風の海…の中の、泰麒が初めての使令を得て麒麟である事を確信する場面にいます!
      大大興奮です(≧∀≦)

      くまさんの読みは大当たりですっ
      魔性の子の中に出てきた、あの白い腕がぞっとして怖くて怖くてしょうがなかったのに、今は愛おしく感じます。あぁ、あの時の私にもっと頑張るよう言ってあげたい!

      シリーズを通して、どんな感動が待っているのか!ドキドキが止まりません!
      色々教えて頂きありがとうございます!(^^)
      楽しみが増し増しです〜☆
      2022/10/03
  • この巻は物語の王道を通って、見事に終着しました(少女たちの成長物語、ラスボスの正体)。この巻には、慶国のみならず、芳国、才国、柳国、恭国の状態まで出てきます。これまで巧国、戴国、雁国が出てきているので、これで八国の状態がわかりました。国境を越えると明らかに国力に格差があるとか、十二国で生きることが立体的にわかってきました。

    解説の金原端人が、『ナルニア物語』『指輪物語』を例示してこのシリーズの最後を示唆しています。つまり、世の名のある英雄物語は『英雄の帰還』だけでは終わらない。英雄の『死』によって終わるのです(例えばヤマトタケルは白鳥になって去っていった)。もちろん、この時点で金原も私も、最後を知らない。「物語の運命」という見方で最後を予想するのは、ファンタジーの一つの愉しみです。シリーズが折り返し地点を過ぎた今、だんだん見えてきたような気がします。

    ここまでわかった年表を訂正加筆して載せます。
    1467年   六太1歳応仁の乱で罹災する。
    1470年 六太4歳延麒となる。
    1479年   瀬戸内海賊村上氏により海辺領主小松氏滅亡
    (大化元年) 雁国延王尚隆が登極
    1500年(大化21年)元州の乱 斡由誅殺


    X元年   泰麒 胎果として日本に流される
    X4年 才国采王黄姑が登極
    X9年末  慶国予王が登極
    X10年  泰麒 2月蓬山に戻る
    戴国泰王驍宗が登極
    X11年 泰麒 4月日本に戻る
    X 12年 芳国峯王仲韃崩御、娘の祥瓊の仙籍剥奪 
    X 13年  芳国の麒麟の卵果触により流される
    X14年  5月慶国予王崩御。
    X15年(1992年?)1月?陽子日本より来たる
          10月慶国景王陽子が登極
    X 16年  慶国で和州の乱 
         鈴と祥瓊は王宮へ 陽子伏礼を廃す
    X17年  泰麒 9月戴国に戻る

  • 実際に見て聴いて触れて、そして自分の心に問うてみる。それがどれだけ大切なことか。
    例えば目の前に広がる風景が、自分の不甲斐なさのために引き起こされたものだとしたら。
    例えば嫉妬や自分が一番可哀想だと思うことが何とか自分を踏ん張らせていたものだとしたら。
    そこから抜け出すことは容易なことではないはず。本当に一番やらなければいけないことが一番しんどくて逃げてしまいたくなることなのだから。
    人は時にひとりでは抱えきりない荷物を背負うことがある。狭く暗い世界に閉じ籠ってしまうこともある。だけどそっと荷物を支えてくれる手も、温かい灯りを灯してくれる手も、やっぱり人なのだ。人はひとりで生きられない、というかひとりで生きようとしなくていいのだと思える。
    陽子、祥瓊、鈴の3人は各々自分がどう生きるべきか考えるきっかけを与えてくれる人物たちとの出会いを経て、自分たちの思いで動きだす。その思いは3人を引き寄せ、そして戦いへと誘う。彼女たちは堂々と胸を張り戦いに飛び込んでいく。凛とした彼女たちからは、出会う前の独りよがりな感情に苛まれた少女の面影は消え去っていた。
    拓峰での戦いの場面から陽子が初勅を述べるラストまで一気に大波が打ち寄せてきたようなドラマチックな展開にワクワクした。清々しい少女たちの成長物語。

  • 緊急事態宣言で図書館が閉まってしまい、
    GW中に本が借りられないため
    以前に大人買いしてため込んでおいた十二国記を読むことに。
    今回はエピソード4。

    このエピソードはファンタジーの王道。面白かった!
    下巻に行くにつれてグイグイ惹きこまれて最後大円団。
    初めはウジウジしていた陽子・祥瓊・鈴の3人も
    後半にかけて一気に成長を見せる。

    個人的には楽俊がいい味を出していて大好きですね~

  • ラスト、眩しい!

    上下巻、読み応えのある国づくり物語。

    自分だけでは気づけないこと、気づけなかったことを教えてくれるのはやっぱり人との出会い。

    祥瓊、鈴、陽子、それぞれ苦悩を抱えた三人が出会い、それぞれが成長していく様はじっくりと物語の世界へいざなわれる。

    王としてよりも、まず人としてどうあるべきか、陽子はいつだってその思いが胸にある気がする。
    だからこそのこの姿なんだよね。

    ラスト、王としての陽子の姿は眩しい!の一言。

    言い放つ数々の言葉は何回も読み返すほど。

    それにしても楽俊は癒しだ。
    彼の言葉は素直に聞ける。
    また会いたい。

  • 良かった!

    上巻はなかなか重いお話でしたが、下巻で一気に挽回して最後は面白かったと思わせてくれる。さすがです^_^

    今回は王となった陽子を中心に3名の女性たちの苦悩を描いた物語。その3名が出会い、結束してそれぞれが成長していく様が心地よい。

    オススメです♪

  • 同じ歳の3人の少女。
    自分が置かれた境遇を背負い、抗い、強く成長していく。
    思わず耳を塞ぎたくなる言葉の数々…( ・᷄-・᷅ )
    ぜひ小中学生に読んで欲しいシリーズ!



    前作は『東の海神 西の滄海』雁州国のお話でした。
    2年ぶりに読んだ十二国記なのですっかり忘れているのでは?と思いましたが、そんな事はなく、読んでいくうちに記憶がだんだんと復活…!
    人物リストと地図はメモしてあったので、問題なく読めました。
    国の仕組みなど、都度説明されるので分かりやすいです。

    今回は『月の影 影の海』からご無沙汰だった陽子が、慶東国の王座に就くところから物語が始まります。

    蓬莱から流れてきた陽子はこの世界の事を知らなすぎる故、苦悩する。
    慶王の役割をきちんと果たしたいが、信頼が得られず、慶麒との関係もうまくいかない。

    芳極国の国王を父に持つ祥瓊(しょうけい)は、簒奪者に父を殺され国を追われる。
    贅沢で平穏な暮らしは一変、貧しい庶民の暮らしに耐えながら、日々働いていた。

    陽子と同じように蓬莱から流れてきた鈴は、才州国の翠微洞に住む梨耀に拾われる。
    梨耀にいじめられこき使われ辛い日々を過ごしていた。

    各々悩みを抱え慶国への旅をするうちに、自らの過ちに気付き、成長していく—。


    シリーズは異世界の壮大な物語で、本筋は国内政の汚職により荒れた国で起こった反乱がメインなのですが、随所で取り上げられるテーマはとても繊細。

    鈴は采王に助けを求め、梨耀と話を付けてもらうも、鈴だけ下界に出されます。

    「人が幸せであるのは、その人が恵まれているからではなく、ただその人の心のありようが幸せだからなのです」(本文より)

    采王にそう言われるが、理解できない鈴は、自分を哀れに思いながら旅に出る。

    「苦痛を忘れる努力、幸せになろうとする努力、それだけが真に人を幸せにするのですよ、蓬莱の子……」(本文より)

    采王黄姑……いいこと言う…(༎ຶ⌑༎ຶ)


    祥瓊は芳国王の娘として甘やかされるだけ甘やかされて育った。
    父親は国民から憎まれ殺されたが、祥瓊は父親がどのような政治をしていたのか、全く知らなかった。
    恭王の元から逃げた祥瓊は楽俊に出会う。

    「知らなかったんだろう?他国の公主が何をしてるか」
    「……知らなかったわ」
    「知ってなきゃいけなかったんだ。公主の祥瓊より、おいらのほうが芳に詳しい。それって襤褸を着るより恥ずかしいことだって、分かってるか?」(本文より)


    (༎ຶ⌑༎ຶ)楽俊よ…痛いからやめてくれ…泣

    知らないっていうのは簡単で、逃げである。
    不勉強って、恥ずかしい…って…。くっ。

    こんな感じで繊細なトコついてくる小説だから、小中学生から読んで欲しい!って声を大にして言いたい。
    異世界を冒険しながらリアルに気づかせてくれる本だ。

    陽子はこの世界の事を知る為、遠甫の元へ学びに下る。
    学びと同時に、民がどんな国にしたいか、王に求めている事は何かを知る。

    陽子の初勅も『らしい』なって、納得(^-^)

    他にも、貼った付箋の数だけ言いたいことがたくさんあるのだが、キリがないのでこのくらいにしておく。

    十二国記30周年記念ガイドブック欲しい.☆.。.:*・°

    かわいい!かっこいい!おもしろい!
    素敵な作品です(〃´-`〃)♡

  •  陽子、祥瓊、鈴の三人が運命の出会いを果たし、戦いに向かう下巻。

     新装版になってから十二国記を読み始めましたが、今まで読んできた中ではこの作品が今のところ、十二国記作品の私的ベストだと思います!

     三人の少女たちがこの話の中で多くのことに気づき、成長を果たしていく姿は読んでいる読者側にもしっかり伝わってきます。上巻で未熟な彼女たちの姿がしっかりと描きこまれていたことが、下巻での描写の力強さにつながっているのだと思います。

     今まで読んできた十二国記の作品はあまり戦闘シーンのイメージがなかったのですが、今回は乱の様子が描かれていて、そちらの読み応えもありました。

     上下巻通してのメッセージ性も高かった気がします。知らないことに対する責任や自分は不幸だと思うことで、何も変える気持ちを持たなくなる心、そしてそれからの脱却、ラストの陽子の初勅。今まで読んできたファンタジーのシリーズは、児童文学のものが多かったということもあると思うのですが、どちらかというと友情を強調したものが多い気がするので、それだけにとどまらずに、さらに深い『人』としての本質を突くこのシリーズはやはりただのファンタジーではないなあ、と思ってしまいます。

  • 街で暮らす中で、地方の腐敗した政治の現状やそれに苦しむ民の姿を目の当たりにした陽子。
    自分がいかに景のことを知らないかを痛いほどに感じながらも、王としてできることを必死に模索する姿がとてつもなくかっこよかったです。

    鈴と祥瓊も上巻とは別人のように変わりました。
    でもそのいい変化は、人と出会い、彼らとの対話を通して自身と向き合い、彼女たちが自分で気付いたからこそ手繰り寄せることができた変化です。
    もし頑なに相手を拒んでいたら気付くことはなかったかも。
    彼女たちを成長させてくれた1つ1つの出会いの尊さが、読了後に改めて心に沁みたのでした。

    そして陽子が出した初勅が、とても陽子らしいカラリとした初勅で、胸が熱くなりました。
    景の未来は明るい、という晴れやかな予感に包まれた、気持ちのよい読後感を味わったのでした。

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著者プロフィール

大分県出身。講談社X文庫ティーンズハートでデビュー。代表作に『悪霊シリーズ』 『十二国記シリーズ』『東亰異問』『屍鬼』など。重厚な世界観、繊細な人物描写、 怒濤の展開のホラー・ミステリー作品で、幅広いファンを持つ。

「2013年 『悪夢の棲む家 ゴーストハント(1)特装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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