丕緒の鳥 (ひしょのとり) 十二国記 5 (新潮文庫)

著者 :
制作 : 山田 章博 
  • 新潮社
4.05
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本棚登録 : 5772
レビュー : 728
  • Amazon.co.jp ・本 (358ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101240589

感想・レビュー・書評

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  • 傾く国、再び興る国、そこで暮らす民の声は天に届くのか

    12年ぶり!しかし最近は新装完全版の再読をしていたので、絶妙なタイミングでの短編集だった。
    4つの短編が収録されているのだが、早く読み進めたいと思いながら、1つ話を読み終わると胸がいっぱいで、目を閉じて余韻に浸った。今回どの話も主軸といえる王や麒麟の話ではなく、民や官吏を描いている。yomyom掲載済みの2編はもちろん、書き下ろしの2つも、十二国に慢性的に蔓延っている格差や理不尽さの中で、懸命に己の務めを果たそうとする人々の姿は涙なしには読めなかった。
    単純に国の行く末を語る物語に収まらず、直接国政に影響がない仕事の設定もきちんと描かれていて、文字通り雲の上の人たちだけで国はなりたつのではない、民があっての国で、そこから離れていくと国は何かしらうまくいかない世界構成に引き込まれていく。
    どの話にも印象に残る言葉があって、読み終わったなりだが、もう一度読み直したい作品。

  • 読む前からこんなにも楽しみで、夢中になれて、余韻が残る。
    そんな作品はそうそう多くないからこそ、本当に、出版されて嬉しかったです。
    12年ぶりの12国記シリーズ。4つの短編集です。
    世界観が細部にまで精密に作られているから、安心してその世界に入り込めます。入り浸れます。

    「不緒の鳥」
    あまりにも幻想的で、美しい。
    舞台は懐かしの慶国。久々の陽子登場に、胸がきゅっとしました。
    知ってはいたけれど、そういえば陽子は無能な女王が3代続いた後の女王なんですよね。失望する人たちを魅了する程の魅力に、私たちも取り付かれているんでしょうね。
    今回は陽子の物語ではないけれど、再び彼女の物語を読み返したくなりました。

    「落照の獄」
    ここまで現実離れしている異世界ファンタジーなのに、私たちを真剣に考えさせる。このメッセージ性があるからこそ、ファンタジー小説としての魅力だけに留まらず惹かれてしまう。
    裁判員制度もはじまった今、重く重要なテーマですね。心にずしんと重い。

    「青条の欄」
    自然の尊さと大きさ、人の想いのリレーが素晴らしい。
    天の采配、は私たちの世界にもあるような気が実はしています。
    傲慢にならずに謙虚にひたむきに、人間として生きたいものですね。

    「風信」
    戦うだけが道ではなく、日々自分にできることをしっかりやる。
    そんな生き方を私もしたいと常々思っています。
    命の暦をつくる仕事、地味ながらとても大切な仕事ですね。

  • 十二国記を読んでいるという感じがしなかった。十二国記の設定を使った現在の寓話集のように思える。
    『丕緒の鳥』の蕭蘭と丕緒の姿はそれぞれ、我が国の政治に期待しなくなった今現在の私たちに似ていると思う。
    『落照の獄』では、傾き始めている柳国が我が国の今の姿と重なって見えた。

    『青条の蘭』は、読んでいる間ずっと、「復興」という単語が頭をちらついていた。
    さらに、『風信』に込められた寓意はあからさまだ。天災とも人災とも言える、王の暴虐という災禍によって、突然家族を奪われ、住む場所を失って彷徨う人々が描かれる。

    十二国記の主役である王たちは、この短編集では登場しない。陽子がちらっと出てくるけど、王の象徴として出てくるだけだ。

    読み応えはある。後半2編はとてもいい話。

  • 相変わらず徹底したファンタジーながらもリアリティな世界観に脱帽です

    政とは直接関わりはないけれど王に深く訴えかける仕事に就く人、民のために右往左往する仕事をしている人、そして本来であれば名もなき民にスポットを当てた短編集

    やっぱり長編の続きが気になるので読む前まではほんの少し物足りなさを抱いていたんですが…いやとんでもない。お腹いっぱいな内容でした

    ハラハラさせるという意味で青条の蘭が、現代社会に置いても色々考えさせられるという意味で落照の獄がとても印象的でした。特に落照の獄は他の話と違って主人公にとって唯一救いようのない後味の悪い(でも納得のいく)結末だったので印象的です

    それを間に挟んで最初と最後はちゃんと希望が持てる話になっていることにホッとしました笑。この全体としてのまとめ方も素晴らしいです

    これを読んじゃうとより一層長編が待ち遠しいですなぁ

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「リアリティな世界観に脱帽です」
      そうなんだ、、、
      小野不由美=恐い話だと思って敬遠していたのですが、、、違ってるみたいですね。
      完全版が、...
      「リアリティな世界観に脱帽です」
      そうなんだ、、、
      小野不由美=恐い話だと思って敬遠していたのですが、、、違ってるみたいですね。
      完全版が、完結したらボチボチ買いながら読もうかと思っている。
      2013/08/09
    • otemoterashiさん
      私は去年ダ・ヴィンチでやってた十二国記の特集をたまたま読んだのをキッカケに興味が出てこの最新の短編集以外は中古の講談社文庫版の方を集めて読み...
      私は去年ダ・ヴィンチでやってた十二国記の特集をたまたま読んだのをキッカケに興味が出てこの最新の短編集以外は中古の講談社文庫版の方を集めて読みました笑

      私は十二国記から入ったので(というかまだ十二国記しか読んだことがないので)小野不由美がホラーのイメージが強いっていうのは知らなかったです。妖魔や妖獣や半獣が出てくるのでジャンルとしてはファンタジーなんですけども、個人的にはオリジナルの時代小説と言えるんじゃないかと思います
      2013/08/11
  • 久々の新刊だったので物凄く嬉しかったのですが、短編集ということなので、本編とは関係ない小話の短編なのかと少々残念に思っていたら、とんでもない心得違いでした。やっぱり小野ワールドは凄いとしか言えません。特に『青条の蘭』!最初はどこの国の話しだろうと何気なく文章に目を落としていたのですが、いつの間にか世界に引き込まれてしまっていました。大抵の小説はハラハラしても、きっと最後は大団円で終わるんだろうという気持ちが頭の片隅にありますが、小野さんはそうはいかないですからね・・・。玄英宮という単語を目にするまで、ハラハラし通しでした。本当に魅せる文章を書く人だなぁと感服しています。物語の本筋から外れた日常を、ここまで掘り下げることができるという事自体素晴らしいですし、また、掘り下げたからこそ、殊更本編にも深みが出たのではないかと思います。新刊が待ち遠しくてなりません。

  •  この本は十二国記シリーズの中でも、異色な短編集だと思います。私は、シリーズの「魔性の子」以外は全て読みましたが、どれも国造りに直接関わる人々の話で、雲の下の人々の話は初めてでした。それまでの国造りにおける”なぜ上手くいかない”という苦悩と、国の浮き沈みに翻弄される国民や小官吏の苦悩を比べると、全く内容が違いました。
     十二国の世界では、王が斃れれば国が沈みます。それは世界の摂理であり、逆に王が玉座を守れば国は豊かになります。ただ、国民や官吏でも王に近づけすらしない者たちにとって、国運は本当に雲の上の話で、彼らの言葉はどんなに切迫した状況でも王には届きえないのです。民主主義の日本に生まれた私ですら、国民一人一人の声の小ささというのは実感しているので、彼らの歯がゆい思いは肉薄して感じられました。全体的にその苦悩は遣り切れない印象で、救われない思いが切々と綴られ、聞きなれない名称や昔の中国風の住環境が描かれている事も相まって、小説を読んでいるというより歴史書を読んでいるようでした。ただ、4編の内3編には小さな救いがあり、場面場面では思わず感涙してしまい、こんな短編集もありだと思いました。
     十二国記シリーズを読んで、小野さんの世界観の見せ方や、その壮大な構想に感銘を受けました。中国の史実を基にした十二国記の世界は、小野さんにとってリアルな世界なんでしょうか?そう思ってしまうくらい、実際に見てきたような現実感と、完璧な整合性で、小野さんの力量の程を思わずにはいられません。まだスポットの当たっていない国や、人々の話もぜひ読みたいです。 [ペンネーム・ringo]

  • 国か傾くと、一番苦しむのは国民だから、国民の目線で、国民の立場で、国民を守りたいと思う者だけが政治家にならなければいけない
    今の時代に違和感なく当てはまる気がする
    これを読んで、十二国記の世界にまた入り込んでしまった
    どうか、続きを書いてください
    よろしくお願いします

  • いやー、待ちましたねえ!なんと、12年ぶりですよ。十二国記 最期に読んだときまだ未成年でしたよ私。月日がたつのは早い・・・てか小野先生仕事しろ!激おこぷんぷんまるである。 しかもこれ短編集なんだな、長編が良かったよ、どうせ待たされるなら長編がよかったよ…

    以下感想

    『丕緒の鳥』
    相変わらず 世界観についての設定が細かい。そして描写が美しい。透明感あふれる情景。陶器の鳥が砕けて散る瞬間の、はかない音響が伝わってくる。
    無抵抗な人民が不当に虐げられるという哀しい時代。にも拘わらず職人の意地とプライドをかけて仕事に情熱をかたむける、そのひたむきな姿勢に心を打たれた。

    『落照の獄』
    まさに現代日本のようですね。法治国家の抱える倫理的な問題をテーマに…てかこれは、小野先生の思想を反映しているんでしょうね なんかこの短編だけ妙にファンタジーぽくなかったですよね。
    情状酌量の余地のない残忍きわまる殺人者は、法の力で、死刑にしてもよいのか。
    倫理、人道、世論、後世へ与える影響力… すべてを鑑みて判断しなければならない。
    人の生き死にを決定するとはどういうことなのか、考えさせられた。もちろん、これは現代日本の死刑制度についてもあてはまることである。

    『青条の蘭』
    今度は生態系と環境問題について・・小野先生本当に勉強家だな。
    多くの人々の、手から手へと託されていく笈箱の中の植物の話。
    内容はなんか走れメロスぽいなと思いました。そして、ああ、こういうヒューマニズムが十二国記の魅力なんだな~と思った。十二の国々に住む、大勢の民。それぞれに貴い思想と信念と思いやりがある。
    ほのぼのさせる物語だった。
    あとこの国、どこの国の話だろと思ってたら最期に“玄英宮”という言葉がでてきたので、延だったのか…と諒解した。

    『風信』
    国家の内乱で家族と住処を失った少女・蓮花。難民となり流浪していたとき拾われた家で逞しく生きていく物語。蓮花がメンタル強いのか、語り口が淡々としてるのか、悲壮感はあまり感じなかった。
    むしろ蓮花の周囲の人たちがとても良い人で・・・ほっこりしました。単純に面白かったです。

  • 購入してだいぶ時間が経ちますが、ようやく読み終わりました。
    結果的にはとても良かったです。

    十二国記、十数年ぶりの新刊ということで期待してました。一方で長編ではなかったこと、またyomyomの短編はすでに読んでいたため、 果たして満足できるのかという不安もありました。

    しかしながら小野さんもその辺りは配慮されたのでしょうか。既刊の背景がうまく活かされた内容であったため、飽きることなく読み進めることができました。中でも『青条の蘭』は終盤まで背景が明かされず、その焦らし方は流石だなと思いました。

    新装版を読み進めてる方なら楽しめるはずです。
    ただ新作が二篇というのはちょっと物足りないかなと。ファンとしてはそれでも嬉しいのですが。とりあえず次の長編新作、楽しみです。

  • 短編ですが読み応えはありました。

    どのお話しも号泣!まではしなくても
    切なかったり悲しかったり悔しかったり
    ホロリと泣ける要素満載でした。

    救われたり救われなかったりするけど
    その中でも強く生きようとする人々の姿が
    印象的な作品です。

    やっぱりこのシリーズは大好きや!!

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著者プロフィール

小野 不由美(おの ふゆみ)
1960年生まれ、大分県中津市出身の小説家。大谷大学在学中に京都大学推理小説研究会に所属。夫は推理作家の綾辻行人。
1988年、『バースデイ・イブは眠れない』でデビュー。2013年5月、『残穢』で第26回山本周五郎賞を受賞。代表作にテレビアニメ化された『悪霊シリーズ』、『十二国記シリーズ』、『屍鬼』など。

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