丕緒の鳥 (ひしょのとり) 十二国記 5 (新潮文庫)

著者 :
制作 : 山田 章博 
  • 新潮社
4.05
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本棚登録 : 5827
レビュー : 730
  • Amazon.co.jp ・本 (358ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101240589

感想・レビュー・書評

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  • 「十二国記」の新作ですが今回は、王ではなく、国を支える役人の仕事と民の生活に焦点を当てた外伝的短編集。傾きかけた国で、国のため、民のため、自らの職務や役割を全うする男たちの話。現代社会に通じる社会的で重たいテーマを見事に十二国記の世界に投影させ、もともと重厚な設定の十二国記の世界にさらに奥行きを与えています。
    本シリーズを読んでいない人にもぜひ読んでみてほしい短編集ですね。
    『丕緒の鳥』
    祭礼用の鳥型の的を作る役職の男の話。射儀と作品を通して何かを伝えられるのか、何のためにどんな作品を作るのか、悩みながらも新王即位のために作品を作る男。何かを表現できる技術があるからこその悩みだなぁ。
    『落照の獄』
    死刑制度の是非に真っ向から挑んだ作品。非常に重い。情と理のせめぎ合い。法律の仕事をする旦那とその妻の考え方の違いがリアル。一番心に残った作品。傑作。
    『青条の蘭』
    一途に山を救おうとする男たち。その想いは何かを変えられるのか。今回、最も展開のある話だったので、短編であるのがもったいない気分に。

    『風信』
    暦をつくる役職の男たち。世間知らずと言われようが、現実を見ていないと言われようが、できることをやるしかない。それが自分たちにしかできないことで、自分たちがやりたいことであるならば尚更。

  • 待望の十二国記最新刊。どこの本屋にも積んであったので、いつでも読めると思うと手に取る機会を逃していた。長期出張のお供として購入。
    「丕緒の鳥」「落照の獄」「青条の蘭」「風信」の4つの短編が収録されている。どの話も流石のクオリティだが、一番好きなのは「青条の蘭」。権力もない下級役人等、国を救うために命を賭け、名もない人々も協力し大きな物事をなすというこの感じがすごく好き。「風信」も良い。卵が野木になるという十二国記ならでは設定や世界の過酷さを静かに伝えながら、それでも希望を忘れない。これだけでは物足りないので、早く長編新作が読みたい。

  • 待ちわびた、けど短編集かい。でもこういう話大好き。
    十二国記シリーズ新作。短編4編からなり、これまでの王と麒麟の物語ではなく、一役人の揺れる世の中で己の役割を全うしようとする姿が描かれている。
    人間の情動を書くにつけて甘えを感じないと言うべきか、これでもかと書くべき言葉が書かれている。いかにも陽の目を見なさそうな人たちが題材だが、生き様を描くに隙がなく読みごたえは濃厚。シリーズの根源であるあからさまな「創られた世界」の営みがより鮮明になる満足できる内容。

  • 12年ぶりのオリジナル短編集!という惹句で、久しぶりに読んだ十二国記シリーズ。

    最初は「魔性の子」だった。
    目黒孝二の書評がきっかけだった。
    ホラーだと思って読み進めていったら、十二国記に繋がっていた。
    そして、十二国記を読み始めた。

    次々と書き下ろされる作品。
    人工的な中華的世界に、積み重ねられていく緻密な設定。
    ライトノベルと高をくくっていたのに頭からのめり込んでいった。

    ところが、ある時期からパッタリと作品を読むことができなくなった。
    読みたいのに読めない。
    その辛さは言わずもがな。
    できるだけ忘れるよう努めた。

    そろそろ本気で忘れようかという時に新たな作品が発表された。
    まさに焼けぼっくいに火が付いた心境で即座に購入。

    読んだ。
    すさまじかった。

    「丕緒の鳥」にそわそわさせられた。
    思わず考え込まされた「落照の獄」。
    「青条の蘭」に見る一途な思いに胸を打たれた。
    主人公に降りかかる不幸に作者を恨んだ「風信」。

    全体的に重苦しい雰囲気。
    作者が非情になればなるほど、グイグイと心を引き寄せられていく。

    ダメだ。
    たぶん、はまった。

    想像以上の素晴らしい作品である。

  • 十二国記、久々の新作は短篇集。王や麒麟の話ではなく、役人や民が主役でした。死刑の是非とか里山の荒廃とか、現代社会にも通じるテーマを、細部まで構築された架空世界で描く手腕はさすが。
    しばらくぶりなので、独特の漢字の使い方に慣れるのに時間がかかりましたが、楽しめました。本編の続きを期待してます。

  • 待ちすぎた!待ちすぎたので、買ったときには涙が出るほどうれしくて、とりあえず4か月だいじにだいじに積んでみた。10年ぶん堪能しなきゃ気がすまない。それに、また10年、出ないかもしれない!!(…)
    そろそろ、と思って 表題作から読む。引き込まれてバスのなかで陽子の台詞のところで感極まって泣く。10年ぶん待った甲斐がある。うー。嬉しい。さて、珠晶ちゃんあたりを読み返してみよう。 だいぶ忍耐強くなった。

  • 王のことではなく、それを支える役人や市井の人の話。
    十二国記は中華風のファンタジーという印象ですが、今回の陶器の鳥を射る儀式など読むと、ハイファンタジーなんだなぁと感じます。
    敵を倒して平和になりました、というお話ではない十二国記の世界観を「落照の獄」はよく表していたようにも思います。妖魔は荒廃は恐ろしいけれど、もっと恐ろしいのは人の心なのかな……。いろいろ考えさせられました。

  • 待ちに待った十二国記シリーズ最新作。

    「やっぱり小野不由美はすごいなぁ」と読みながら、何度も溜め息を吐いてしまった。異世界をここまで綿密に篆刻できる書き手がどれだけいるだろうか。

    本作にはメインストーリーには絡まない(ちらっとメインの登場人物も出るが)短編4作が収録されている。

    どの作品も素晴しいデキだが、死刑問題に真正面から向き合った「落照の獄」は個人的ベスト。まぁ、「オレはファンタジーを読みたいんだ!」という声もあるのではないかとも思うのだが、現実の問題を別世界に投影するという手法も、ひとつの小説の手法だと思う。

  • 久方ぶりの新作で、
    特に以前の作品を読み返しもせずに
    読み始めましたが…
    待っていた甲斐がありました。
    心に響きます。表題作『丕緒の鳥』がお気に入り。

  • 荒廃した国、不安定な国で生きる人々。
    死刑について考えさせられた。裁く側の苦悩。娘の「父さまは人殺しになるの?」という言葉が重い。

    他の3つの話にも心揺さぶられる。きっとあの王がなんとかしてくれる、そう思いながら読み進めた。

  • こうやって色んなひとの目線から描かれていく度に十二国の世界が広がって息衝いていきますね。嬉しいです。
    小野不由美主上、新作嬉しいです、、

    なんなら本編進めないで色んな国の色んな話をウロウロしていてくれてもいいのになあ

  • 言葉のつなぎ方が上手いからなのか、読み進むごとに世界観・情景が頭の中で広がって気づいたらどっぷりと十二国記の世界に浸かっていました。
    4篇ともに社会の中で戦う人に視点があった日々を懸命に生きる民の「プロフェッショナルとして仕事」が描かれ、深く考えさせられる場面が多くありました。

    読みきるのに時間は掛かりましたが、だれることなく、どちらかというと熱くなりながら読めました。

  •  十二国記の世界観を舞台に四編の作品が収録された短編集。

     今まで読んできた十二国記は国を背負う王や麒麟が主人公でしたが、今回は日々の責務をこなそうとする十二国記内の一般の人たちが主人公です。

     一番印象的だったのが『落照の獄』残酷無慈悲な犯罪を犯してきた連続強盗殺人犯を死刑にするか否か煩悶する司法の役人が主人公。

     世界観こそ十二国記内ですが、問われている問題は日本の死刑問題そのものだと思います。主人公は悩む中で殺人犯を死刑にしたいと思うのは一種の反射だと考えるのですが、非常に真理をついているように感じました。

     そして彼がたどり着いた結論。それは非常に重く苦しく、そして苦いものでした。自分自身死刑問題についてはすっきりしないものを抱えていて、作中の登場人物がそうした思いを言葉にして議論してくれるので、読んでいる途中死刑問題に関して何かしらのすっきりした回答が望めるのではないかとも期待した自分がいたのですが、甘かったですね……。たとえフィクションの世界でもすっきりとした答えの望めないものなのだと感じました。

     裁判員制度が始まって数年、世界各国が死刑制度を廃止するよう日本に求める中死刑制度をどうするべきなのか、小説内の彼らの敗北感をかみしめつつ考えてみないといけないのかもしれません。

     ほかの作品も重厚なものが多いのですが『落照の獄』と比べるとわりかしすっきりしたものが多かったと思います。『青条の蘭』は希望が次へ次へとつながっていく様子が読んでいて非常に清々しかったです。惜しむらくはこの話がどの国を舞台にしたものかすぐに分からなかったこと……。いろいろ調べて何とか分かったのですが、読んでいる途中で分かったら感動もひとしおだったろうになあと思うと少し残念……。十二国記内の用語をまとめたファンブック的なものがほしいなあ、とつくづく思いました(苦笑)

     『丕緒の鳥』は悩み悩んだ主人公がたどり着き作り上げた陶製の的の鳥が、儀式で使われるシーンが印象的。映像化するととても美しいのだろうと想像できました。それとともに主人公の想いも併せ考えると感動もひとしおです。

     『風信』はラストが静かに心にまっすぐに突き刺さりました。無駄に見える仕事や行為も誰かのためになっているのだ、ということってなんとなくは分かるのですが、実際に感じる機会はなかなかないと思います。でもこの話を読んだときはそう信じられるような気がしました。

     

  • ほんとうに久しぶりの十二国記。王や麒麟ではなく庶民に視点を向けた短編。物語として長編のようなわかりやすい爽快感はないが、民の健気な生き様もまた良いなと。にしても久しぶりに小野不由美を読んだが相変わらず人の嫌な部分を書くのがうまいなーと思った。

  • 待ちかねた一冊。
    どのくらい待ちかねたかというと、新潮文庫で新装刊されるにあたり、シリーズ既刊を再刊していた折りに、間違えて既に所持している巻を1冊買ってしまったくらい待ちかねた(やった、新刊キター!って喜んで買い、帰宅後に読み始めてかつてないほどの既視感に襲われた)。

    本当に待っているのは長編の続きだけれど、まずは短編集から。
    今回は、どこかしら現実世界の出来事とリンクするようなものが散見された。
    表題作の「丕緒の鳥」は政治家と官僚の関係にどこか似ているし、「落照の獄」などはまさに死刑の是非論。そう思ってみれば、「青条の蘭」「風信」は王の不在による天災を乗り越えようとする人々の絶望と希望、どことなく震災や原発事故の後の日本を見るようでもある……というのは、今この国に住んでいる人間の単純な条件反射かもしれない。

    ただ、十二国記のファンにとっては、あの世界のそういう日常が、民たちの視線で描かれているのが嬉しい。自分たちの住む現実世界とどこか似た問題が書かれているのも嬉しい。登場人物たちの心情に寄り添えるからだ。

    この短編集を読んで、そして既刊を再読して、次の長編を待つ。

  • これまでのシリーズと少し趣が違います。

    けれど、今、この国でこの本に出会えてよかった

  • 十二国記シリーズの最新刊にして、4話からなる短編集です。慶国の民に焦点をあてて描かれており、久し振りに十二国記シリーズ読みましたが、緻密な設定に違和感なくどんどん引き込まれていきました。民ありきで国があり、人は儚いようで強くしなやかで生きている事感じさせてくれます。また、架空なのに現実世界とリンクしていて読んでいてハッとさせられる内容でした。

  • 待ってました!!!
    また「十二国記」最初から読みたくなっちゃった。
    ”落照の獄”は前にyomuyomuで読んだときは暗くてやりどころのない気持ちが残ってしまって、いい印象がなった。
    でも今回”丕緒の鳥”の後に読んだからかそこまでいやな感じがしなかった。逆に国の衰退と国民の生活というのがなにか今の日本を感じさせられてしまった。
    4編とも今の日本を思わせるような下り坂の国、政治を思わせるものだった。
    でも最後の”風信”はよかった。最後に光を見た気がする。人間って根底には善がある!

  • 待ちわびた新作がまたも短編集なのは残念。
    久しぶりすぎて各国の事情を忘れているけれど、それぞれよくできた話で十分楽しめた。
    十二国記をはじめから再読し、この本にまた戻ってこよう。

  • 待っていました十二国記!
    噂しか知らないけれど、本編も続きを……
    以降、ネタバレ的要素あり。



    陽子や泰麒たちは出てこないに等しいけれど、ここが十二国記の懐の深さかと実感。
    ほぼ、おじさんしか出てこない!
    しかも、颯爽と事件を解決するようなタイプではなく、悩んで苦しんで、引きこもっていたり、自分の生命をかけてもと思っていたのに動くことすらで出来なくなったり。

    『丕緒の鳥』
    この無力感。
    ああ、全編通じているのは、努力する人々と無力感と、その先の希望なのかな。
    丕緒は蕭蘭のことを理解出来ず、自分の言葉もまた理解してもらえていたとも思えず。
    理解されないことに苛立ちもして、しょせんはああいう奴だからと片をつけて。
    後から気づけば、伝えることを自分は怠っていて、実は似たようなことを考えていた。
    同じ言葉を使っても生じる、すれ違いや、誤解や、理解の不足が、丕緒の思考を曇らせて気力を失わせていた。
    だから、今さらではあっても、曇りが晴れたときに、やっと互いの理想を重ねあわせて、鵲が飛び立った。

    この鵲の仕組みが、とても美しい。
    縁起ごととして、鵲の陶器を投げあげて弓矢で射るのだけれど、砕けたときの音が音楽になるやら、香がたちのぼるやら。
    丕緒の作ったこの鵲の、小さな鵲たちの姿の、まるで梨の花びらのように白く舞う姿の晴れがましく切ないこと。


    『落照の獄』
    そんなに簡単な仮託ではないのだろうけれど、これは、現代日本の問題に思えて仕方がなかった。
    小野さんがどう決着をつけるのか、先が気になって気になって。
    こういうとき、今読んでいる箇所がものすごくおもしろいのに、気が急いてものすごく読み急いでしまう。

    殺人者なら死刑にしてもいいか?
    死刑は許されるのか?

    この、悩みですよ。
    理の面から説き。
    情の面から説き。

    たった十二銭の酒代を奪うために、自らの懐に十両の金がありながら、桃を買おうと十二銭を握りしめていた子供を殺した男。
    まったく悔いる様子も罪の意識もない男。
    こんな男に殺された二十三人の犠牲者の家族や、市井の人々からの恨みや恐怖。復讐心。
    それを理解しながら、法は法であり、規則にのっとった運用をしなければならない裁判官の苦しみ。
    法治国家のあるべき姿!
    悪法もまた法なりと、処刑でドクニンジンを飲んだソクラテス。
    →これ、そんな精神ではない。法だからといって従うべきではない、と、西洋では教えている。と、検索すると出てきた。
     運用も作成も、不完全な人間のすることだから、まずもってそこから注意せよって意味とも思っていたんだけど、その教え方が日本だけだとすると、それは問題だ……
    他人に害されないという安心を成り立たせる契約である法を、まったくその見せしめとしての機構から逸脱した考え方の犯罪者が踏みにじる。社会が壊される、自分が安全でないという恐怖。
    「理解できないものを、切り捨てる」という恐怖への反応。

    p168 瑛庚が言う
    「そうやって殺刑を恐れるのは、結局のところ殺人を忌む怯懦に由来するのだと思う殺罪には殺刑――これが理屈ではない反射であるのと同様、殺人に怯むのも理屈ではない反射だ」
    「どちらも理ではなく本能に近い。私情と言えば私情に過ぎないが、この根源的な反射は互いに表裏を成しており、これこそが法の根幹にある。殺してはならぬ、民を虐げてはならぬと天綱において定められている一方で、刑辟に殺刑が存在するのは、多分それだからなのだろう」
    「…略…両者の間で揺れながら、個々の刑案において適切な場所を探るしかないように」



    『青条の蘭』
    道半ばにして、自分ではもうどうしようもなくなって、一歩も動けない無力感。
    自分の手に、冗談ごとではなく、飢え苦しむ人々を救うための手段があるのに、それを届けたいのに、どうしようも出来ない悔しさ。
    この書かれ方が、たまらない。

    手から手へと、それがどれだけ重要なのか知らされず、ただ標仲が必死だったから、その手から渡された人から懇願されたからと、託されていく笈箱の中の、植物。
    人の手でつながれていく様は、指輪物語ののろしを彷彿とさせて、涙ぐみますねえ。


    『風信』
    これだけ女の子。
    目の前の理不尽さに憤るしかない自分の無力を嘆き、そこから離れて安全に囲まれたあとに、また災厄を目にして、自分の愚かさを悔やむ。
    素直な反応。
    ただ、ここまでおじさん達の苦悩で散々気持ちを鷲掴みにされてきたので、後味さわやかではありつつも、物足りない(笑)

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著者プロフィール

小野 不由美(おの ふゆみ)
1960年生まれ、大分県中津市出身の小説家。大谷大学在学中に京都大学推理小説研究会に所属。夫は推理作家の綾辻行人。
1988年、『バースデイ・イブは眠れない』でデビュー。2013年5月、『残穢』で第26回山本周五郎賞を受賞。代表作にテレビアニメ化された『悪霊シリーズ』、『十二国記シリーズ』、『屍鬼』など。

小野不由美の作品

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