丕緒の鳥 (ひしょのとり) 十二国記 5 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (358ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101240589

感想・レビュー・書評

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  • 待ちに待った十二国記の新作。12年ぶりに続編にファンは歓喜だ。王も麒麟もおなじみのキャラクターも出てこない市井の人々の苦しみや希望が描かれる。もちろん正直な気持ちを言うと王と麒麟の活躍が見たかった…が、これはこれでいい!各国で王と麒麟が奮闘している中、もちろん暮らしている人々がいるわけでさらに世界観の厚みをもたせてくる。どんだけの想像力があるのやら…改めて十二国記すごい。

  • ・9月21日に読み始め、25日に読み終えました。

    ・よかった~。直接王とは関係ない人たちの中で国とは王とはどんな存在なのかが様々でおもしろかった。


    「丕緒の鳥」

    ・倦んだ男は色っぽいですね…… 祖賢のこととか簫蘭のこととか、予王に届いたのに受け入れてもらえなかったこと、すべてが無意味に思われて陶鵲をつくる気力ももう無い。新しいものをつくれないから過去の陶鵲にするしかない、でも予王の陶鵲も悧王の陶鵲も気が進まない…… という、もうどうでもよいと思っているはずなのに、ほんとうに投げやりにはなれない矛盾が良い。人間らしい。
    ・そのあと、自分が今まで何も聞いてこなかった簫蘭の陶鵲をなぞって青江と構想を練るとこ…… 切な良い。
    ・そ れ で 陽 子 様。 丕緒が陽子様に自分と青江と簫蘭の気持ちが通じたと感じたときでなく、次の機会も楽しみにしている、できたら私とあなただけで見たい、と言われたときにああ次のはこういうのがいい、と思えたのがよかったな~。
    ・こうして王はいろんな人にとっての希望になっていくんだなと思った。ほんとに様々の思いを抱かれて背負っているんだな。
    ・あと青江がかわいかったです。いじらしい……


    「落照の獄」

    ・ひどいね。絶対にどちらかに決めないといけないのに、最適解がそのどちらかどころかどこにも存在しないという堂々巡りをずーーーーーっとやっててホントにみんな疲れてる。家庭のこと、狩獺自身のこと、被害者のこと、国のこと王のこと民のこと……、と瑛庚が板挟みどころかこう、四方八方を囲まれてて……
    ・「死刑は廃止すべきか否か」という小論文的なものを高校のときにやったことを思い出した。実際に議論をしたわけではないので、私以外の人がどんなことを書いていたかはわからなかったけど、ディベート的なことをしていたらどうなってたんだろうなー。
    ・瑛庚たちは弑刑を決めていろんな人から感謝され、いろんな人からどうしてやめなかったと言われるんだろうか。これから傾いていく国の中で今日の決断のことをなんども思い出すんだろうな。
    ・最後に「やむなし」と付けたところに最後の抵抗を感じた。だーいぶモヤ~とする話だったけど、こういうのも好きですね…… 王には何が起こってたんだろうか。


    「青条の蘭」

    ・これはとにかく読了後に「よかったね~~~……」と思った。東の海神~くらい?ちょっと前?かな。とにかくすごい荒廃具合で、全然雁だと気づかなかった。
    ・標仲にとっては、包荒と興慶から託されたものを最後まで自分の力で届けられなかったことに悔いが残ると思うけど、自分たちが守りたいと思った、同じ土地に生きる人たちの手を渡って渡って王のもとへたどりついたことはずいぶん大きな意味が生じるね。
    ・標仲が背負ってきた、包荒と興慶の気持ちや山や国や民や、この先の未来が詰まった重い重い笈筺が、標仲の手を離れたあとに「なんとなく国のため」「真実はわからないけどきっと希望になるもの」みたいな曖昧さで標仲が背負ってきたときよりは確実に軽くなるとこ、標仲が言っていたように確かにどれだけ重大なことかは伝わらないんだなと思うけど、それでもしっかり届けられたからな……
    ・病気に対する薬が、狩る方法がなければ天が与えてくれる、北から始まったから北の野木に実る、というのはやっぱなんというか…… 十二国記の「天」ってめちゃめちゃシステマティックだよなあ。ふしぎ。そういうもんなんだろうけど、ふしぎだな~。


    「風信」

    ・じんわり良かった。これまでの3篇にもだいぶ辛いシーンはあったけど、しっかり血なまぐさくてびっくり。女を追い出すってこれまでにいろんなところでいろんな描写で見てきたけどこんな目についた者から殺すみたいなこともやってたの!?シンプルにひどいね。
    ・序盤の強烈な描写と外界と隔絶されたような嘉慶の苑囿のギャップがまた残酷なようにも救いのようにも感じる。実際、嘉慶たちは兵士に一矢報いることも戦を止めることもできないし、究極それは蓮花も大半の人もそうなんだよな。
    ・蓮花の家族や幼なじみ、盧の人々が殺されたことは続いているけど、熊蜂が花粉をあつめるところだったり、燕が子を育てるのを見て涙できるのは確実に救いではあるはずだと思う。
    ・支僑がじきによくなる、辛い時代が終わると断言したところ、かっこよかったな…… 人それぞれ、世界との戦い方があるんだなと改めて思った。
    ・あと今までの3篇は「王にわかってもらえない」「王のことがわからない」「王にたどりつけない」と煩悶していたけど、「風信」は「そういや王は斃れたんだっけ」という真反対な向き合い方でまたおもしろかった。いろんな人々がいる。


    ・良い短編集でした! これから続きを読んでくなかで小休止というか、視点を一旦別のところにうつして世界を見れたのがよかったね。

  • 青条の蘭がものすごく好きだった

  • 王も麒麟も出てこない、これは民の物語なんだと読み終わってからため息をついた。

    一番好きな話は青条の蘭だな。最初に出てきた男が標仲だと思っていたらそうではなかった、というのが最後になってやっとわかる。(気づく人は途中で気づくんだろうけど)
    どこの国の話なんだろうと思いながら読み進め、冬の厳しさがこれでもかと描写されてるから北のどこか…?柳か?と思ったけど柳の話はその前の落照の獄で登場してたよな…と思いながら読むのは、思い返してみるととても楽しかった。
    こういう専門職だからこそわかる危機を一般人や上司が理解しないという構図は現代でもあるよね…と心が痛んだ。
    体が限界を迎えて涙も出てもう動けない標仲の必死さと悲痛さが周りを動かして先へ進んでいくという、貧しい国のはずなのに人の心も必ずしも貧しくなるというわけではない温かさがある。
    玄英宮という言葉が出てきて雁か!とやっと合点がいった。尚隆が王になったばかりの時の国の荒れ方は確かに…それと同時に尚隆ならば青条を受け取るだろうという確信が芽生えるから、本当に延王すごいな…
    この話で好きなのは締めくくりだな。
    人も里木も雪の中で枯れようとしている中で、希望とも言える果実が実る瞬間は興慶のように目の当たりにしてしまったら泣いてしまうだろうな…

    荒れた国の再興への希望がある一方で、栄えた国なのに瓦解して行く予感が恐らく現実になる恐怖が見える。民の視点で国を見ると当たり前だけど、違うものがよく見えてくるのがおもしろかった。

  • 物語の中で、街の人に焦点が当たっている作品だった。
    王や政治でゴタゴタしている中で民にどんな事があったのか、どんな気持ちだったのか。
    考えさせられる作品だった。

  • 十二国の、希望と絶望を綴った短編4つ。これまでのシリーズは王ないしは麒麟が主として描かれてきたが、今回の短編はすべて国官の営みに軸足を置く。時代は前後しているが、王が不在であったり、傾国の予兆があったりと、安定とは程遠い世情であるところが共通している。
    表題にもなる『丕緒の鳥』、羅氏の仕事というのは何とも興味深い。射儀とは実際に見物できたら、華やかなのだろうなあ。政治に直接関わる立場にはないけれど、その役分において力の限り思いを届けようとする。「鵲が民のよう」との丕緒の感覚にハッとさせられた。最後に陽子に正しく通じたのは、慶国の大いなる希望である。『落照の獄』は、傾きはじめている柳国が舞台。死刑の是非を考える立場と、主上への不信、市井から突き上げてくる感情の波。瑛庚の立場はひたすらにしんどい。解説でも触れられていたが、少女が発する最初の一行が、後になるほど胸をえぐってくる。丁寧に描写され少しずつ歩みが進む、死刑の是非についての論断。最終的に決断を下したものの、絶望に包まれて終わるのが切ない。はじめのうちはどの国の話か見当もつかなかった『青条の蘭』、最後の最後で雁国のことだと理解できた。尚隆が登極する前から物語がはじまり、「新王が立った」という幽かな可能性にかけて、力尽きるまで希望をつなごうとする。山のプロと言える国官の仕事と災厄に対する着眼点も滋味深い。道中はただただ苦しいが、その先に光が見えたときの感情たるや。興慶が雁に留まって実がなるのを見届けたラストがとても明るい。実は何気に一番好きなのが、『風信』。4作の中で唯一、主の視点は国官ではない普通の少女だが、彼女が身を寄せたのが暦を作る国官たちが働く苑囿だった。信念を持って黙々と己ができることを続ける、彼らの仕事ぶりが気持ち良い。熊蜂や燕など、自然の命のきらめきが鮮やかに胸に染み込む。少女・蓮花のこごった感情と、それがほどけていく様が美しい。支僑の胸で泣いたシーンで終わるのが特に好きだ。
    十二国の世界、細部に至るまで作り込まれていて心から感服する。綺麗事ではないシビアな世界の広がりに、ファンタジーよりもリアルな手応えを得ることが多い。この先はどう道が続いていくのだろうか。物語の行く末を見届けなければ、その思いが強くなった。

  • 短編だが、すべてつながっているので、興味深く読んだ

  • 国を陰で支えている人々に焦点を当てた短編集。慶・雁・柳の国が描かれる。「丕緒の鳥」がヒューマニズム的で好みだった。「風信」は牧歌的で、民の日常の小さな幸せを掬い上げている一方、「落照の獄」では残虐な殺人事件に傾国のさまを重ねて見事に描いた。

  • 十二国記のスピンオフ短編集。通常は王や麒麟が中心だが、こちらは民衆や下級係官の物語で、国や家族を思い、自分の仕事に一心に、健気に邁進する姿を描いている。それでも力なき民は簡単に命を奪われたりするのだけれど、そういう一人一人がいなければ、どの国だって成り立たない。権力者にはこういう実情をよく知ってほしい。

  • 十二国記のエピソード5ですが、短編集です。そして物語にはおそらく影響しない話でした。(この先のことはわからないですが)
    どの話も重たい話で十二国記の世界が厳しい世界であることを印象づけできますが、抑揚のない話ばかりでした。

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著者プロフィール

大分県出身。講談社X文庫ティーンズハートでデビュー。代表作に『悪霊シリーズ』 『十二国記シリーズ』『東亰異問』『屍鬼』など。重厚な世界観、繊細な人物描写、 怒濤の展開のホラー・ミステリー作品で、幅広いファンを持つ。

「2013年 『悪夢の棲む家 ゴーストハント(1)特装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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