丕緒の鳥 (ひしょのとり) 十二国記 5 (新潮文庫)

著者 :
制作 : 山田 章博 
  • 新潮社
4.05
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本棚登録 : 5771
レビュー : 728
  • Amazon.co.jp ・本 (358ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101240589

感想・レビュー・書評

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  • 中学生くらいのときに『月の影 影の海』を手に取って以来、新作が出るたびにずっと楽しみにこのシリーズを読んできました。

    ただ、前作の『黄昏の岸 暁の天』を読んだ後に、あれ?と思った違和感が、この短編集でもっと強くなった気がします。率直に言えば「これ、十二国記かなあ」っていう…。

    もともとFacebookページなどでも告知されていた通り、この短編集は「苦難の時代を生きる民の物語」なので、王や麒麟を中心として描いていた他のシリーズに比べると地味な印象は仕方ないと思います。が、表題作の「丕緒の鳥」をのぞいて他の作品をそれぞれ読んでみると、「十二国記」といわれなかったらまったく別の単独の物語と言われても気づかないかもしれないなあと。

    例えば、同じ短編で「華胥の幽夢」では、「責難は成事に非ず」という名言で、現実世界の政治をちくりと批判していますが、台輔の失道や周囲の官吏たちの苦悩を見事に描いていて、きちんと物語になっていました。

    翻って「落照の獄」は官職名こそ十二国記の(というよりも古代中国の)ものになっていますが、事件そのものや、その役職に現代のそれを当ててしまえばそのまま物語として成立する気がします。落ちも救いのないものだし…。

    「青条の蘭」も、その災厄が「これは王が玉座にいないために起こった災厄ではない」と、それまでの十二国記の物語をきっぱり否定しています。黄朱や猟木師という登場人物がでてくるので、かろうじて十二国記の世界を維持しているように見えますが、単独での物語が進んで行きました。

    なんとなく、それこそ柳の王ではないけれど、作者は「十二国記」という物語を書くことに倦んでしまっているような印象を受けました。なので、前作でも敢えて「天の摂理が完璧でない」というように世界そのものを否定をしてしまったようにも。

    まあファンの勝手な希望ではあるのですが、次回作は長編が予定されているそうなので、次作は苦難が続きながらも最後は希望に満ちた、このシリーズらしい作品となることを期待しています。

  • やっとでた続編…じゃなくてサイドストーリーだ。

    私は『十二国記』の世界観は安心できる。ものすごいリアルな感じがあるのだけれど、どこかで「これは作られた世界」という安心感がある。私が臆病なのかなんなのか、ノンフィクションとか現代小説だと、生々しく感じてちょっと食傷気味になることがあるのだけれど、この「これは作られた世界」という前提があることにより、なぜかもっと客観的に、素直にのめりこんで読める。

    『十二国記』って終わりがない物語だと思う。それは作者が考えるストーリーと終わりってあると思うが、これだけ精緻な世界観があれば、そこに生きる人々のストーリーは無限だよね。まあ、今この瞬間の私たちだってそうなわけだけど。

    自分が今生きている「ここ」の世界観がよくわからないから現代小説が上手く読めないのかもと思った。みんなの前提と私の前提が一緒なのか。と横道にそれたことを考える。

    『無能な上司と仕事にうんざり!中間管理職』、『死刑問題どうよ!?』、『世界を救いたい、平サラリーマンの熱い想いよ社長に届け!』、『営業だけが花じゃない。スタッフだって頑張ってる!』…の4本でお送りします。という感じかしら。

    長編を待つ。

  •  『平成二十五年 七月 一日 発行』版、読了。おそらく初版。


     現時点での新潮文庫版「十二国記」シリーズの最新刊にして、短編集。

     全部で四編収録されており、うち最初の二編は、以前に雑誌で掲載済み。残り二編は描きおろし。


     いずれの短編にも、これまでに登場してきた人物が一切登場することはなく…ある地域で起こった出来事に関して、泥臭く活路を見出すべく、ふんばる(各短編における)主人公たちを描いた内容でした。


     そして久々に十二国記シリーズを読んだせいか、その専門用語の多さにちょっと疲労困憊(;´Д`)

     それを通り越して、ようやく最初の短編「丕緒の鳥」を読了してからは、すんなりと読み通すことができました☆


     以下、各短編の感想です☆


    ・「丕緒の鳥」

     「陶鵲」という祭祀に関してのお話でしたが、自身の仕事に対する情熱について無気力気味だった丕緒がいかに、また取り組み、そしてその役目を全うしていくかは、「仕事のモチベーション」について考えさせられる話でもありました。…とはいえ、冒頭の専門用語の羅列には難儀しました(;´Д`)


    ・「落照の獄」

     凶悪犯罪者に対する判決の是非を殺刑にするか否かで問う内容。いわゆる死刑制度について、ひたすら現場の人たちが、どう判断するか懊悩するお話。オチを言ってしまうと、読む気が完全に失せてしまうので、ここでは敢えてカキコしませんが…個人的には、モヤッとする終わり方でした。


    ・「青条の蘭」

     植物の山毛欅に急速に広がっていく大病が見つかり、その治療のために、何が効果があるのか、そしてそれをいかに迅速に処置していく方法があるのか…という、一見「山毛欅があろうがなかろうがどうってことないんじゃないの?」という状況を、納得のいく経緯を設定した作者には脱帽しました。

     そして後半からは「走れメロス」をなんとなく思い出しました。読んでいけばわかるかと。


    ・「風信」

     短編の中では、一番読みやすかった内容でした。先の三編を読了していたことで世界観に慣れたせいもあるかもしれませんが。

     暦に関して夢中に作り上げる人たちを、孤児となった連花を通して描いた話。「丕緒の鳥」といろんな意味で「対」をなしている気持ちになったのは、設定的に同じ時期に起こった出来事っぽいせいかもしれません。

     あと、仕事に対して情熱のカタマリになっている人たちが描きまくられていたせいかも。

     とはいえ、家族を失った連花が、また同じ目にあって、悔しさなどが強く感じられた複雑な思いを味わいながらも、新たに訪れるであろう新時代の予感に向かって締めくくられる内容は、まだ救いがあるように感じました。


     …とまあ、今回も民衆路線で描かれていて、テッペンの王様と愉快な麒麟たちが登場することはありませんでした。

     しかしながら、十二国記のシリーズらしい、人の生き様が描かれていた内容だったと思います。


     巻末の解説は作家の辻 真先さんでした。この解説を読んで、グッとこの本の内容がひきしまった感がありましたが、準新作的な内容だっただけに、できれば作者のあとがきが欲しかったなあ…なんて、思いました。

  • すごいなあ、としか、言葉が出てこない。さも現実世界を精密に描写しているように書いているけど、架空のものなんだもんな。自然科学や法学や民俗学にも精通してないと書けないのではと思ってしまうほどの豊かな描写。表題作がいちばん好きでした。想像力が豊かでない私でも、自然と情景が浮かんでしまう。

  • 難しい。
    それぞれが国の有り様を示している。
    各国各様の事情に即した色々な問題がある。
    でも、もっと王の即位の物語が読みたかった。

  • 2年前に新刊で買ったのに半分しか読めてなくて、やっと全部読み終わった。
    他の十二国記に比べて地味だし満足感は少ないけれど、大好きなシリーズ。

  • とても世俗的な内容に感じた。十二国記の世界は好きなので、世界に住まう民のお話はそれはそれで面白いし、このシリーズの根幹をなす部分だとは思う。
    でも同時に、やっぱり王と麒麟が主役として織り成す物語が読みたい、という気持ちにもなった。新作長編はよ!

  • メインメンバーはほとんど出てこない。
    でもやっぱり十二国記は好きだなあと思った。

  • 待望の十二国記最新刊。どこの本屋にも積んであったので、いつでも読めると思うと手に取る機会を逃していた。長期出張のお供として購入。
    「丕緒の鳥」「落照の獄」「青条の蘭」「風信」の4つの短編が収録されている。どの話も流石のクオリティだが、一番好きなのは「青条の蘭」。権力もない下級役人等、国を救うために命を賭け、名もない人々も協力し大きな物事をなすというこの感じがすごく好き。「風信」も良い。卵が野木になるという十二国記ならでは設定や世界の過酷さを静かに伝えながら、それでも希望を忘れない。これだけでは物足りないので、早く長編新作が読みたい。

  • 待ちわびた新作がまたも短編集なのは残念。
    久しぶりすぎて各国の事情を忘れているけれど、それぞれよくできた話で十分楽しめた。
    十二国記をはじめから再読し、この本にまた戻ってこよう。

著者プロフィール

小野 不由美(おの ふゆみ)
1960年生まれ、大分県中津市出身の小説家。大谷大学在学中に京都大学推理小説研究会に所属。夫は推理作家の綾辻行人。
1988年、『バースデイ・イブは眠れない』でデビュー。2013年5月、『残穢』で第26回山本周五郎賞を受賞。代表作にテレビアニメ化された『悪霊シリーズ』、『十二国記シリーズ』、『屍鬼』など。

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