丕緒の鳥 (ひしょのとり) 十二国記 5 (新潮文庫)

著者 :
制作 : 山田 章博 
  • 新潮社
4.05
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本棚登録 : 5771
レビュー : 728
  • Amazon.co.jp ・本 (358ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101240589

感想・レビュー・書評

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  • さすが小野不由美…
    十二国記を読むの久しぶりだし、わかるかなぁと思ったけれど、あっという間にひき込まれた。
    完全なるファンタジーの異世界なのに、創作とは思えないほど細部まで作りこんである世界観の見事さったら。

    これまでの長編で築かれてきた世界の奥行をさらに広げる4つの物語。
    王も麒麟もない、雲の下の人々が今回の主役だ。
    「丕緒の鳥」
    「落照の獄」
    「青条の蘭」
    「風信」
    傾きかけた国、王がなく荒廃が進む国で、自らの力ではなすすべもない世の流れに翻弄され、苦悩しながら己の務めを果たし、懸命に日常を営む。

    一番好きだったのは、「青条の蘭」。
    山毛欅(ぶな)を石化させる奇病が徐々に山に蔓延しだす。
    当初は事態を軽くみていたものの、次第にそれが大災厄の始まりであると気付き、奇病を食い止めるべく奔走する末席の官吏。
    天は対抗する何かを与えてくれているはずだ…
    何の手がかりもないまま、暗中模索する長い年月の間に、次々と木は倒れ、山も里も荒廃していく。
    苦難の末にたどり着いた最後の希望を王に届けるべく吹雪の中をひたすら進む。
    標仲が倒れた後、希望は人から人へ、王のもとへ…。

    これはどこの国なんだろう?と思って読んだけれど、最後まで国の名前は出ず。
    でももう一度よくみていたら、隣の国がわかり、あぁっ、つまりあの国のことなのね、と合点がいってどきどきした。

  • 十二国記シリーズの最新作。今回は王やその周りの人々でなく市井の民が主役の短編集。
    圧政や王の不在による荒廃に苦しみながらもなんとか希望を見出そうと足掻く主人公たちの姿に胸を打たれました。
    相変わらず世界の作り込みが尋常でなく、羅氏や保章氏と言った聞きなれない役職や仕事もきちんと世界の一部として辻褄が合っていて違和感を感じさせない。
    死刑制度など、現代社会でも課題になっている部分に切り込んだりと意欲的な作品に感じた。表題作の最後でちょっと陽子が出てくるのが嬉しい。

  • 地に足がついたファンタジー。派手さは無いですが、じっくり読ませてもらいました。

  • この人の本は、本当に大好き!
    厚みのある世界観も大好きだけれど、何が好きって、
    視点が常に「その他大勢」に寄り添っていることだろうか。

    「魔性の子」を初めて読んだときには、
    それまでのヒーローにばかりフォーカスされたファンタジーに感じていた
    一抹の寂しさを、小説にしてくれる人がいたんだ!と
    結構興奮した。

    頑張っても誰もが王様になれるわけじゃないし、
    すごい才能を持っていて一目おかれるようなサブキャラになるのだって、
    ほんの一握りの人でしかない。

    ファンタジーを読み終わって現実に戻ってくると、
    ヒーローと一緒に活躍した夢の余韻を楽しみつつ、
    「ま、そうはいっても現実の私がこの中にいたらきっと、
    魔物の強さを表現するシーンでなすすべもなく逃げ惑った挙句、
    さっくり踏みつぶされちゃうような役どころなんだろうな^^;」
    とちょっと苦く思ったりもする。(はい、ちょっとこじらせてますw)

    でも、十二国記の世界には、
    ヒーローじゃない人々にも居場所があって、
    殺されるためだけじゃない人生をしっかり生きている。
    妖魔に襲われたり、官吏に搾取されたり、ちょっとやりきれない現実そのものだけど、
    少なくともそういった市井の人々を守るために
    この世界のルールは作られていて、
    作者は(そして天帝は)彼らのことを決して忘れていない。

    その視点のぬくもりが、私は好きだ。

  • 待ちに待った最新刊。
    なんと、12年ぶりだそう。

    もう内容、忘れちゃったよ…。

    と思いながら、読みましたが、
    私のニワトリ並みの脳みそでも大丈夫な内容でした。

    相変わらず、十二国記の世界は秀逸。
    全くのファンタジーで、現実の世界とは程遠いのに、
    「国」について、今の日本について考えさせられる。

    今回は、短編集。
    収録されている4編ともが、これまで描かれていたような王の話ではなく、
    十二国で生きる民の話。
    本を読んでいる立場だと、視えることが多く、国のことや、その人のとるべき行動など、客観的に冷静に分析出来るけれど。
    ふと自分のことを顧みる。
    自分の立場は、この本に登場するのと変わらない、一国民であり、登場人物たちと同じように、いま自分が立っている“位置”は決して見えておらず、いつも手探りで生きている。
    自分の立場を思い知らされる。

    まったくのファンタジーでありながら、国王や英雄を描くのではなく、一国民の生活を切り取る作者の描写力と想像力には、感銘を受けずにはいられない。

    何年かかっても、結末を知りたい作品。

  • 傾く国、再び興る国、そこで暮らす民の声は天に届くのか

    12年ぶり!しかし最近は新装完全版の再読をしていたので、絶妙なタイミングでの短編集だった。
    4つの短編が収録されているのだが、早く読み進めたいと思いながら、1つ話を読み終わると胸がいっぱいで、目を閉じて余韻に浸った。今回どの話も主軸といえる王や麒麟の話ではなく、民や官吏を描いている。yomyom掲載済みの2編はもちろん、書き下ろしの2つも、十二国に慢性的に蔓延っている格差や理不尽さの中で、懸命に己の務めを果たそうとする人々の姿は涙なしには読めなかった。
    単純に国の行く末を語る物語に収まらず、直接国政に影響がない仕事の設定もきちんと描かれていて、文字通り雲の上の人たちだけで国はなりたつのではない、民があっての国で、そこから離れていくと国は何かしらうまくいかない世界構成に引き込まれていく。
    どの話にも印象に残る言葉があって、読み終わったなりだが、もう一度読み直したい作品。

  • 相変わらず徹底したファンタジーながらもリアリティな世界観に脱帽です

    政とは直接関わりはないけれど王に深く訴えかける仕事に就く人、民のために右往左往する仕事をしている人、そして本来であれば名もなき民にスポットを当てた短編集

    やっぱり長編の続きが気になるので読む前まではほんの少し物足りなさを抱いていたんですが…いやとんでもない。お腹いっぱいな内容でした

    ハラハラさせるという意味で青条の蘭が、現代社会に置いても色々考えさせられるという意味で落照の獄がとても印象的でした。特に落照の獄は他の話と違って主人公にとって唯一救いようのない後味の悪い(でも納得のいく)結末だったので印象的です

    それを間に挟んで最初と最後はちゃんと希望が持てる話になっていることにホッとしました笑。この全体としてのまとめ方も素晴らしいです

    これを読んじゃうとより一層長編が待ち遠しいですなぁ

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「リアリティな世界観に脱帽です」
      そうなんだ、、、
      小野不由美=恐い話だと思って敬遠していたのですが、、、違ってるみたいですね。
      完全版が、...
      「リアリティな世界観に脱帽です」
      そうなんだ、、、
      小野不由美=恐い話だと思って敬遠していたのですが、、、違ってるみたいですね。
      完全版が、完結したらボチボチ買いながら読もうかと思っている。
      2013/08/09
    • otemoterashiさん
      私は去年ダ・ヴィンチでやってた十二国記の特集をたまたま読んだのをキッカケに興味が出てこの最新の短編集以外は中古の講談社文庫版の方を集めて読み...
      私は去年ダ・ヴィンチでやってた十二国記の特集をたまたま読んだのをキッカケに興味が出てこの最新の短編集以外は中古の講談社文庫版の方を集めて読みました笑

      私は十二国記から入ったので(というかまだ十二国記しか読んだことがないので)小野不由美がホラーのイメージが強いっていうのは知らなかったです。妖魔や妖獣や半獣が出てくるのでジャンルとしてはファンタジーなんですけども、個人的にはオリジナルの時代小説と言えるんじゃないかと思います
      2013/08/11
  • 久々の新刊だったので物凄く嬉しかったのですが、短編集ということなので、本編とは関係ない小話の短編なのかと少々残念に思っていたら、とんでもない心得違いでした。やっぱり小野ワールドは凄いとしか言えません。特に『青条の蘭』!最初はどこの国の話しだろうと何気なく文章に目を落としていたのですが、いつの間にか世界に引き込まれてしまっていました。大抵の小説はハラハラしても、きっと最後は大団円で終わるんだろうという気持ちが頭の片隅にありますが、小野さんはそうはいかないですからね・・・。玄英宮という単語を目にするまで、ハラハラし通しでした。本当に魅せる文章を書く人だなぁと感服しています。物語の本筋から外れた日常を、ここまで掘り下げることができるという事自体素晴らしいですし、また、掘り下げたからこそ、殊更本編にも深みが出たのではないかと思います。新刊が待ち遠しくてなりません。

  •  読了。出版社を講談社から新潮社に変えての、12年ぶりの十二国記シリーズ新刊。短編が4つでどれもが国に生きる民の話であり、主上と麒麟による活劇やサスペンス等ではなく、十二国の世界を掘り下げるような話が続いていた。相変わらず描写が圧巻。
     麒麟も王もほとんど出てこない為、十二国記にファンタジーのような幻想さを求めるか、異世界に思索を巡らす楽しさを求めるかでかなり評価が分かれる気がする。自分は後者だったので大満足。特に3話目の「青条の蘭」は民が国を想う生き様が描かれていて、思わず視界がぼやけた(´;ω;`)
     個人的に十二国の世界は、ものすごく生きることに容赦なく皆がシビアな人生観を持ち殺伐としているイメージだったので、こういう王と麒麟以外の部分でも国の為に奮闘する人が報われるような話が読めてすごくホッとした。表題作の「丕緒の鳥」も素晴らしい。陽子の存在感が際立つ。
     12年待ったあげく世界観を深彫するだけかよと言ってしまえばそれだけだけど、それでも高1からこの世界に迷い込んだ住人の一人としては、世相はどうあれ十二国が今も尚進んでおり、更に慶国の王と民両方に希望が芽生えつつあることが、とても嬉しい。願わくは、次は長編が読めますように。
     ちなみに一番好きな話というかシーンは、「帰山」の終盤、奏国の王族家族で食事しながら話し合う描写。家族全員が王であり、それぞれが国を想い報告と相談(命令ではなくあくまで互いの相談)を繰り返し、600年という治世を築き上げてきた執務のワンシーンが、今もなんとなく自分の理想と被る。
     本当はあの宗王一族のように、全員が等しく家を想い国を想い動いていければいいと心から思うけど、リアルだと老いと身分の変化がそれを妨げるのはまぁ、已む無し。その中やりくりするしかないけれど、やっぱりああいう経営者会議は羨ましいなぁ・・・もっと真面目に、というか真摯に生きたい。

  • 12年ぶりの十二国記新刊!!
    とはいえ本編の続きではないので、
    嬉しいながらももどかしい、でも胸が高鳴る。そんな複雑な心境(笑)

    「丕緒の鳥」「落照の獄」「青条の蘭」「風信」の4つの短編を収録。
    どれも決して幸せな物語ではなく、
    理不尽な世界で必死に生きていく人間達の姿を描いています。
    戦争、貧困、疫病…傾きかけた国で、どうやって命を繋いでいくのか?

    yomyomで読んだので表題作「丕緒の鳥」は再読だったけれど、
    やはり十二国記の世界観は素晴らしいと、改めて実感しました。
    そして文章自体がとても美しいのですよね、、、

    泰麒のその後が刊行される前に(いつになるだろう…?汗)
    新潮の完全版で既刊本を再読しておこうと思います!

著者プロフィール

小野 不由美(おの ふゆみ)
1960年生まれ、大分県中津市出身の小説家。大谷大学在学中に京都大学推理小説研究会に所属。夫は推理作家の綾辻行人。
1988年、『バースデイ・イブは眠れない』でデビュー。2013年5月、『残穢』で第26回山本周五郎賞を受賞。代表作にテレビアニメ化された『悪霊シリーズ』、『十二国記シリーズ』、『屍鬼』など。

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