丕緒の鳥 (ひしょのとり) 十二国記 5 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.99
  • (903)
  • (1093)
  • (684)
  • (95)
  • (15)
本棚登録 : 9671
感想 : 945
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (358ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101240589

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 全てに心を打たれたけれど、特別に青条の蘭は嗚咽して読んだ。そうだ、今の延王による治世はこんなにも貧しい国から始まったんだと、改めて思い知らされたというか

    落照の獄には、ただひたすら考えさせられたな
    理解できないものを排除するのではなく理解しようと努力をした彼らの結末がこれか。敗北じゃない、と言いたいが「刑罰は罰することではなく罷民を教化することが目的」とするならば、どうしようもなく敗北。冒頭のりりの言葉が辛いな。

    市井の民の視点で語られる短編集を読むたびに、私の中で王と麒麟が統べる十二国という話がどんどん重厚になり血が通っていく。
    民にとっての王とは、字面の通り命に直結していてまさに希望の象徴なのだと。

    厚みのない言葉かもしれないけれど、本当に本当に幸せになって欲しい、心からそう思って本をとじました。

  • 新潮文庫版『十二国記』シリーズは、「どれから読んでも主人公も設定もバラバラでそれぞれが独立した物語でありながら繋がりもあるところが凄い」(大意)と、去年亡くなった目黒考二さんの解説にあったとおり、本作はこれまでとはまた違う視点で物語に没入してしまった。
    周回遅れで読み始めた者には、一気読みできるご褒美があるが、現実社会で私たちが目の当たりにしている政治の腐敗や自然災害について何ができるのか「直視せよ」と突きつけられた気がした。

  • 4つの短編小説
    全ては、市民の視点で語られ、今までの王や麒麟の視点とはまた異なる世界が広がっていた。

    ○丕諸の鳥
    陽子が良い王になるような描写。
    市民の視点に立った等身大の王になってくれるのではないかと予感できた。

    ○落照の獄
    柳国がこれから廃れていくであろう予感を感じさせる物語。
    残忍な殺人鬼に対して、死刑は全うな刑罰なのかを問う。人を生かすための法には、人を殺す法もあるから、矛盾が生じる。反省する気の無い囚人を、囚人自信が望む死刑に処するか、生かしたまま終身刑に処するか、どちらも一理あり、害もある。悩ましい。

    ○青条の蘭
    国を救うことができるが、非常に脆いひとつの花株を、王宮に届ける物語。
    どこの国のことなのか明記されておらず、最後の最後で、雁のことであるとわかる。
    尚隆の登極直後でまだ荒廃の激しい雁の地で、1人の男の意思に動かされ、人々か株を繋いでいく。
    最後の場面は、枯れ果てそうであった山毛欅の木に果実が成っている場面で締められている。
    これにより、花株は無事、それを王に確かに届けてくれる人物の手に渡ったのだ、という事がわかる。それを見ているのが、花株の保護に力を貸した浮民の男であるのがまたいい…( ー̀֊ー́ )੭

    ○風信
    農家に向けた暦を作るために、常に天地の状態を把握する職業の男性たちに、家族を亡くした少女が出会う話。
    私たちにしか出来ないから、暦を作る。という強い意志。この暦が誰かを助ける事になる、と切に感じているからこその熱意。
    日々、生き物たちを観測しているからこそ、新たな王が立ち、その後は国が安定していくという事が分かる。グッとくる話だった。

    市民の視点から語られることで、一つ一つの国の成り立ちなどをリアルに感じられる。

  • これまでのシリーズでは王や麒麟を中心としたストーリーが描かれてきたが、この短編集ではこれまで描かれてない役人(それもこのシリーズならではの変わった役職)が描かれる。傾いた国を彼らなりにどう支えるのか、引き込まれて一気に読み進めること必至!

  • 不緒の鳥
    儀式用具を作る職人

    落照の獄
    死刑を使うべきか

    青条の蘭
    山を国を守る唯一の希望を運ぶ

    風信
    暦を作る職人

  • 短編集だが今のところ十二国記シリーズで一番面白いかもしれない。
    十二国記世界の一般人が主人公になっていて、通底して主上が不在ないし乱心している。そんな中彼らの微力ながらもひたむきな生き様がとても美しい。
    ファンタジーならではの現実には存在しない風習が出てきたり、これまで謎だった野生動物がどのように種を残すかなどの設定も開陳されて面白かった。

  • 4つの短編からなるエピソード5。最初の話は違うけど、王が斃れてからの荒廃の描写が多く結構心が痛くなったな…最初の話はまとめると「陽子最高!」としか言えない(笑) エピソード6は恭国の話だっけ?楽しみ〜!

  • ずっと積読本になっていた、十二国記シリーズ。
    エピソード5
    -------------------------
    己の役割を全うする覚悟を決めた
    名もなき男たちの、清廉なる生き様——
    -------------------------
    各国の民の話です。短編です。

    小野さんの本は、すごく好きで、
    弾きこまれる分、読むときのコンディションが大事で。
    結構パワーが要ります。
    読み始めたら止められないから。

    ・不緒の鳥
     即位の礼で行われる大射。
     そこで使用される陶製の的。
     優雅で美しく、祝いを告げ、華々しい未来を描くような。
     でもそんな物で良いのか。ほんとに良いのか。
     民たちの苦しみ、悪政に対して、何もできないのか。

    ・落照の獄
     悪事の限りを尽くした男。
     民たちは殺刑にせよという。
     法とは何か。秩序とは何か。国とは何か。 

    ・青条の蘭
     疫病にとりつかれた山毛欅を救うため。
     筐を王宮に届けなくてはいけない。

    ・風信
     女性たちは国からでなければいけない、という。
     隠れていた女性たちは殺され、家族を失う。
     それまでの幸せを目の前で壊され、自身も逃げ落ちる。
     新しい避難先で、自身の生活を始めるが。

    途中で胸が痛くなって苦しくなって、泣きそうになって、
    だけど読む手を止められない。
    いつだって、割を食うのは末端の民たち。力なき民たち。

    新しい王が現れこれから良くなっていく、と思っても、
    すぐには変わらないし、末端の人間たちまで届くのはいつなのか。

    特に死刑問題を扱っている「落照の獄」は
    最後まで目が離せず、
    読後はとてもザワザワするような、
    自身の中で気持ちが整理できない状況でした。

    「青条の蘭」は、涙でした。
    みんながつないでいくバトンに、
    気持ちがあふれて、思わず泣いてました。
    最近本当に涙もろいのです。苦笑

    これで、十二国記物語は全部読んだのかな。
    続巻を楽しみに待ちます。

  • 十二国の世界で暮らす人々の生き様を描いた短編集。

    長編の主人公だった王や麒麟はほとんど出て来ないけれど、官や民の視点から描くことによって、十二国の世界により深みを与えている作品となっている。

    ブログ:「十二国記 丕緒の鳥」小野不由美|王の存在に左右されて苦しむ民と国のために奮闘する男たち
    https://choco-mintonz.com/hobby-life/twelve-kingdoms-5

  • 待ちに待った十二国記の新作。12年ぶりに続編にファンは歓喜だ。王も麒麟もおなじみのキャラクターも出てこない市井の人々の苦しみや希望が描かれる。もちろん正直な気持ちを言うと王と麒麟の活躍が見たかった…が、これはこれでいい!各国で王と麒麟が奮闘している中、もちろん暮らしている人々がいるわけでさらに世界観の厚みをもたせてくる。どんだけの想像力があるのやら…改めて十二国記すごい。

  • 短編だが、すべてつながっているので、興味深く読んだ

  • 十二国記のスピンオフ短編集。通常は王や麒麟が中心だが、こちらは民衆や下級係官の物語で、国や家族を思い、自分の仕事に一心に、健気に邁進する姿を描いている。それでも力なき民は簡単に命を奪われたりするのだけれど、そういう一人一人がいなければ、どの国だって成り立たない。権力者にはこういう実情をよく知ってほしい。

  • 決して主役級の人々でない人達の苦悩や生き様を丁寧に描いていて、それがシリーズの世界観に厚みをだしている!
    「丕緒の鳥」のラストシーン、たまらないです。

  • 本編では描かれない、官吏たちの姿を描いた4つの物語が収められています。

    景王即位の儀式で使用する的を作る陶工。
    職務と感情の狭間で葛藤する裁判官。
    希望を託した荷を背負い雪道を急ぐ地方役人。
    地域にあった暦を作るため季節の移ろいを観測する男たち。
    短編なのですが、どれも1冊の本を読み終えたかのような密度と広がりがあって、満足の溜め息がこぼれました。
    国と民のあいだで苦悩しながらも、自身に課せられた役割を果たすためにもがく姿に涙が滲みました。

    著者がどれだけ緻密に十二国の世界を創り上げているのか、本書でより鮮やかに感じることができました。
    改めて、十二国記の凄さを実感し、静かに興奮しながら読了。

  • 漢字が変換で出ないのでひらがなで。

    「ひしょの鳥」
    王の祝事で使う、陶器の鳥を作る職人たちの話。陶器の鳥を矢で討つことで吉凶を占う。陶器の鳥はそれ自体美しく、かつ討たれた時の割れ方飛び散り方、音も美しくなくてはならない。その設定だけでもおもしろいのに、これは民を表しているようだと思って、思うように作れなくなるのもいい。

    「落照の獄」
    死刑を禁ずると王が言っている国で、あまりにもひどい犯罪者に対して民が死刑を求めている時、裁判官役職の人はどうするかという話。日本の死刑制度反対の意見にも通じるものがあった。

    「青条の蘭」
    これすごく好きだった。木が石のようになって枯れる奇病、それを直す薬となる植物を増やしてもらうため王に届けようとする話。役人は嫌いだけど、善人と悪人はどこにでもいる、と言って協力してくれる山人のキャラクターが魅力的。国をおもうということが、現代日本に生きるわたしにもよくわからない。実感できたことがない。この物語を読んで、特にラストシーンの方で、感動しつつ、わたしはほんとうに分かっているんだろうか、とも思った。

    「風信」
    前王の女性はみんな国を出て行けというお触れによって、家族をみんな失った少女が、暦を作るための村で生活する話。喪失と再生。再生は難しい。絶望の中で、のんびりと幸せを生きている人がねたましいのも分かった。自然の描写がうつくしかった。

  • 王も麒麟も出てこないし、地味な話だなぁと思いながら読み始めたが、面白かった!
    楽しくはないが、どれも面白かった。
    「青条の蘭」の後半は胸が熱くなった。ハッピーエンドかと思いきや、そこまでは描かれず…
    でも、目指すは関弓、玄英宮とあるのでもうそれだけでリレーは繋がったのだとわかる!

  • 短編なのに本編に違わぬ重厚さ

    裁判員の人は選ばれたことは言っても良いけどどの裁判かは他言無用なの、こういうことかと思った
    政治の仕組みと人間性って根本的に合わないよな

    ブナの木の話、何も知らない人達がリレーで王の元まで達成してるのウオオってなる ヤバヤバ役人と民の比較がすごい どこの国の話なんだろうと読み終わってから調べたら雁だということでなるほどだった 玄英宮と書いてあるだけでどこかわかるのすごすぎる そこから500年以上続くのもこの民あってのものってこともあるよね

  • 直接、陽子が登場するシーンは少ない分、一般の民衆の生活に沿った話が面白かった。

  • 記録

  • ここの短編、全部好き。庶民バンザイ。今を生きる。

著者プロフィール

大分県出身。講談社X文庫ティーンズハートでデビュー。代表作に『悪霊シリーズ』 『十二国記シリーズ』『東亰異問』『屍鬼』など。重厚な世界観、繊細な人物描写、 怒濤の展開のホラー・ミステリー作品で、幅広いファンを持つ。

「2013年 『悪夢の棲む家 ゴーストハント(1)特装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

小野不由美の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
恩田 陸
ピエール ルメー...
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×