白銀の墟 玄の月 第四巻 十二国記 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101240657

作品紹介・あらすじ

「助けてやれず、済まない……」男は、幼い麒麟に思いを馳せながら黒い虞を捕らえた。地の底で手にした沙包の鈴が助けになるとは。天の加護がその命を繫いだ歳月、泰麒は数奇な運命を生き、李斎もまた、汚名を着せられ追われた。それでも驍宗の無事を信じたのは、民に安寧が訪れるよう、あの豺虎を玉座から追い落とすため。――戴国の命運は、終焉か開幕か!

感想・レビュー・書評

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  • 最終ページの戴史乍書より、戴は、長きに渡った阿選らとの戦いの終焉を迎え、九州は平定されることとなったことがわかる。戴のこれから、十二国のそれからは、読者に渡されるのでしょう。
    天意を受けた麒麟が、王を見出す。「誓約」を交わして王座に座る。王が国を治め、麒麟は台舗となり、補佐を続ける。その天命・天意は謎のままですね。戴王の選定は、泰麒と驍宗の出会いから不安定でした。泰麒も、その不安を払拭できずにいた時間もあった。天意への、不安感だったのでしょうか。天のエネルギーは目に見えず、運は、上から下への一方向で、運が人に影響を与える、そんな教えが易経か何かにあったような。自然の摂理、原始からの原理として受け入れる。そして、選ばれし者は、自然の理に任せず自らの宿命の元、使命を果たす。
    「魔性の子」は、1991年発刊ですが、これは、この一作でも充分楽しめる作品ですが、この巻の最後の一文に向けられた小説だったことを思うと、30年に渡る小野さんの凄みや充実感に感動します。再読が楽しみな一冊です。
    十二国記は、各国の物語であるけれど、この玄の月を考えれば、景王、景麒、延王、延麒さえも、戴国創世の強力な脇役だったのかもしれないなと思いました。

    • まことさん
      kuma0504さん。おびのりさん。
      こんばんは♪

      私は『十二国記』は、絶対読めない本だとは思いますが、お二人の、濃くて熱いコメントのやり...
      kuma0504さん。おびのりさん。
      こんばんは♪

      私は『十二国記』は、絶対読めない本だとは思いますが、お二人の、濃くて熱いコメントのやりとり、拝見させていただきました。
      レビューだけでなく、コメントも、こんな風にされている方々もいらっしゃるのですね。
      勉強になりました。
      ありがとうございます!
      2023/02/02
    • おびのりさん
      まことさん、こんばんは。
      コメントありがとうございます♪
      短歌と俳句の本のご紹介もありがとうございました。川上さん等近いうちに読みたいなと思...
      まことさん、こんばんは。
      コメントありがとうございます♪
      短歌と俳句の本のご紹介もありがとうございました。川上さん等近いうちに読みたいなと思っています。本棚参考にさせていただきます。
      2023/02/02
    • kuma0504さん
      まことさん、おはようございます。
      コメントありがとうございました。
      ブックリスト見てきてくれたんですよね。
      あの記事でコメント欄まで再度読み...
      まことさん、おはようございます。
      コメントありがとうございました。
      ブックリスト見てきてくれたんですよね。
      あの記事でコメント欄まで再度読み込みに来た方はおられるのかもしれませんが、コメントを残してくれるのはまことさんだけです。
      嬉しいです。
      2023/02/03
  • やはり、十二国始原のことについては、一切言及なかった。以下、ネタバレはない。泰麒や驍宗や阿選についても、その運命や人生については書かない。この最大長編の終わりにあたり、シリーズの総括をする。よって、シリーズ最大の秘密については言及するかもしれない。が、ご安心ください。それは私の解釈であって、見たところ、私のように主張している方はあまりいないと思う。最終巻を読み置いた時からが、みなさんの十二国論が花開く秋(とき)である。

    さて、本作品は日本を代表するファンタジーとして、燦然と輝く位置を得たと評価していいと思う。私を魅了したのは以下の3点。
    (1)始まりから既に世界は出来上がっていた。それが私がファンタジーを評価する場合の最大の基準です。これはどういう世界なのかを、15巻かけて描いてきた。「魔性の子」の伏線が、30年近くかけて最終シリーズで回収されるという荒技もやってのけた。
    (2)遠い過去譚でも未来譚でもない。パラレルワールドでもない。現代世界とハッキリ結びついていながら、異世界を描き切った。
    (3)登場人物は多岐に渡り、人間として生きていた。

    (3)の登場人物(キャラ)を追いかける総括は、他でやって頂くとして、私は〈物語構造を解く〉という視点で(1)(2)について述べる。

    (1)については、「創世記」を「銀色の墟 玄の月(3)」のレビューにおいて展開し、具体的に展開したつもりだ。私としては珍しく頑張ったが、特に全シリーズ既読読者からの反応が薄いのは残念だった。今のところは1-3人除いてほとんどない。一言で言えば「夢を壊すな!」と感じたのかもしれない。或いは「ファンタジーだから、そんなことまで突き詰める必要はない」と言ったところか。後の意見には異論があるが、まぁ仕方ない。

    「創世記」を書くにあたり、気をつけたのは以下3点。

    (a)十二国世界では、唯物史観で歴史は進まない。むしろ、唯心史観と言っていい。その仕組みを支えるのは〈里木(りぼく)システム〉である。モノは、人間含む動物も、産業を起すはずの物産も、全て里木に祈ることから産まれる。労働から資本が産まれず、祈りによって産まれるのである。民は重税に喘ぎ、災害に慄き、戦乱に疲れ、妖魔に脅かされる点で、現代世界と鏡合わせではあるが、麒麟病み王が斃れた時点で、多くはまた「振り出し」に戻るのである。十二国世界が未だに紀元前後の中国世界と変わらないのは、そういう訳だ。

    (b)唯心史観なので、唯物史観では神話伝説時代と位置づけられてる古代中国の三皇五帝時代は、しっかりと実在の歴史の中に組み込まれている。考古学的に実在が証明されつつある周、殷、夏時代でも「天による治世」を信じる世界はあったかもしれないが、十二国世界は、その時代からさえも神話伝説時代と目されていた、おそらくは5000年ほど前の中国の政治を「理想化」し、体系化した世界である。ホントにあったかどうかが問題なのではない。そういう「理想」を信じ、春秋戦国時代に於いて諸子百家があれこれと情熱を持って論じ、実際に一部分ではあるが〈天綱として〉国を運営していたのはおそらく歴史的事実である。それを著した書物の世界が、もし現実化して、その後2200年間運営されたら、果たしてどのような世界になっているだろうと、想像したのが、小野不由美作「十二国シリーズ」だと思う。それを私は、わずかに片鱗が残っている山海経を基に十二国記という1万巻にも及ぶ書物をでっち上げ、昔は1文字1文字魂込めて竹簡に書いていたのだから、一冊一冊に魂魄が宿っているとでっち上げ、それを燃やすことで魂の行き場を無理矢理つくり、「形而下の世界を反転させて形而上の世界を作った」のだとでっち上げて、このシリーズ世界を予想したのである。

    (c)そういうわけで、十二国世界では「果たして天帝はいるのか」「天命は、あまりにもシステマチックではあるが、果たして天を騙すことはできるのか」ということが、「白銀の墟ー」の、私的には最大のテーマになっていたと思っている。そのことの私の回答を書く。私の想定から言えば、だから「天帝は実在しない。ただ、何処かにある1万巻の十二国記の中にのみ〈思想〉として存在する」となる。十二国世界の中でさえ、心の中でしか存在しないのである。実在していないのだから、歴史的展開の「現実」に対処することができない。「天命を解釈し直して、騙すことは可能なのである」。琅燦はおそらく、ほとんど好奇心のみで、それを「実験したかった」のだと思う。そのたせめに、どれだけの者が不幸になったと思っているのか!と皆さんが批判するのはあまりにも当然です。私もそう思う。ただ、琅燦は黄海出身である。黄海は何故出来たのか。天帝が目指す世界は、理路整然とした〈理〉の世界である。人類は、未だにコロナ禍でも体験しているように、世界の中で未知のことはまだまだ多い。「山海経」を紐解いて欲しい。あの無数にいる妖魔たちは何処から産まれてくるのか。それは次から次へと産まれる、自然の不思議(恐ろしさ)、人間の不思議(恐ろしさ)を、5千年前でもやはり無視はできなかったからなのだと思う。混沌とか、矛盾とか、そういうわけのわからない〈感情〉や〈非情〉を1番浴びて育ったのが琅燦だろう。当然、天帝の意思(理)から最も遠くにある人間が黄朱たちである。だから、こういったこともあり得たのかな、と私は思っている。ただ、泰麒の復活のスピードは、琅燦の想定外だったに違いない。私としては、シリーズを読み通して消化不良の部分は、一つも(多分)無かった。

    ‥‥まぁ長々と説明すればそういうことである。

    (2)について。
    どうしても不思議なのは、そんなにも緻密に作った世界に、その世界を壊しかねないのに、現代世界のしかも日本から、何故胎果とか、海客とかの仕組みを作って、形而下の世界とのパイプを残しておく必要があったのか、ということだった。
    そうしないと、読者の興味を惹きつけられないという説は無視するとして、私の考えたのは、やはり創世に関与した荘子の意思が影響したのかな、ということである。

    荘子の思想を表す代表的な説話として胡蝶の夢がある。「荘周が夢を見て蝶になり、蝶として大いに楽しんだ所、夢が覚める。果たして荘周が夢を見て蝶になったのか、あるいは蝶が夢を見て荘周になっているのか」。宮部みゆきではないが、人類は「物語をつくる」ことを特徴とした動物である。別世界にある心と物を繋ぐ物語は、万篇も億篇も兆篇も作られてきた。それを初めて文字言葉にしたのが、2300年前のこの思想家だった。十二国世界を語る以上、唯心史観世界を語る以上、やはり現代と結びつかざるを得ないのである。もちろん、始皇帝が送り出したという徐福伝説にまつわる「蓬莱伝説」に関連して、日本からの海客や日本への胎果が多いのは、サービスだろうし、おそらく虚海として東の日本にパイプがある戴や雁や慶が、このシリーズの舞台になることが多かったのは、作者の都合に依るだろう。

    それと、
    最終シリーズにおいて、これは「指輪物語」の構造を持っているのでは、と度々書いた。結果的に、小野不由美さんは「指輪物語」を意識していたと、私は思っている。しかし「英雄物語」構造としての英雄は、驍宗ではなく泰麒にこそ冠するべきである。


    以上、私が「解釈した」十二国記である。「白銀の墟 玄の月(3)」に載せた「創世記」含めて、多くの齟齬があるだろうと思っています。異論反論受け付けます。

    最後にマイ年表は、全て西暦で表現する。私としては、「創世記」が全ての基点なので、そこから表現したいからである。基は現代世界の歴史軸で起きた。x元年を0巻ではなく1巻刊行の年にしたが、それが絶対的な年代とは思っていない。有力な意見が有れば変える可能性はある。

    十二国年表
    BC212年  十二国創世

    1400年ごろ 奏国宗王先新が登極 
          才国遵帝「覿面の罪」により斃れる
    1479年(大化元年) 雁国延王尚隆が登極
    1500年(大化21年)元州の乱 斡由誅殺
    1700年ごろ 範国氾王登極

    1881年 柳国劉王露峰が登極
    1902年  恭国供王珠晶が登極
    1952年 舜国の王登極
    1959年ごろ 芳国峯王仲韃登極
          才国采王砥尚登極
    1977年   泰麒 胎果として蓬莱国に流される
    1979年 才国采王砥尚崩御
        才国采王黄姑が登極
    1986年末  慶国予王が登極
    1987年  泰麒 2月蓬山に戻る
    戴国泰王驍宗が登極
    1988年 戴国阿選の乱始まる
         泰麒 鳴蝕により戴から消える
    1989年 芳国峯王仲韃崩御
         芳国の麒麟卵果が触により流される
    1991年  5月慶国予王崩御
    1992年 陽子蓬莱国より来たる
         10月慶国景王陽子が登極
    1993年 功国塙王崩御
         慶国で和州の乱 
    1994年  泰麒 10月蓬莱国より帰還
    1995年  戴国 阿選の乱収束

    • 地球っこさん
      kuma0504さん、おはようございます。
      「泰麒を英雄と見る見方」とてもわかりやすかったです!
      そして、わくわくしました。
      kuma...
      kuma0504さん、おはようございます。
      「泰麒を英雄と見る見方」とてもわかりやすかったです!
      そして、わくわくしました。
      kuma0504さんのレビューやコメントを通して、改めて十二国記の世界の奥深さに気づくことができました。
      kuma0504さんのレビューを読むことがなかったら、キャラ中心でしか読むことが出来ませんでした。
      はあ、それにしてもすごい世界に触れたんだなあ。

      ゴウラン。使役は麒麟の死骸を食べて、麒麟の力を己のものにするんでしたよね。
      妖魔は人間の生まれ変わり……
      うわぁ、これは。ありえますね!

      次は短篇集が出る予定ですね。
      もう長篇は出ないのかな。
      まだまだ知りたいこともあるし、読み続けたいですけどね。

      ありがとうございました。
      2020/05/27
    • おじょーさん
      kuma0504さん、コメントありがとうございます。
      私は登場人物は追うのですが世界の成り立ちについてはそういうものだと受け入れてしまうの...
      kuma0504さん、コメントありがとうございます。
      私は登場人物は追うのですが世界の成り立ちについてはそういうものだと受け入れてしまうので様々な解釈がとても興味深かったです。
      琅燦が「実験したかった」というのは納得です。前作まででも陽子が天帝の存在を疑問視する下りがありましたし。

      レビュー、これからも楽しみにしています。
      2021/05/20
    • kuma0504さん
      おじょーさん、コメントありがとうございます♪
      私流の読み方は、寧ろ少ない方だということが、最近わかり始めました。
      どうしても「自分ならばどう...
      おじょーさん、コメントありがとうございます♪
      私流の読み方は、寧ろ少ない方だということが、最近わかり始めました。
      どうしても「自分ならばどう書くか」という視点で読んでしまうので。
      2021/05/21
  • とうとう読み終わってしまった。辛い涙、悔しい涙そして愛おしい涙、安堵の涙。私はたくさんの涙を流した。これからも戴国の戦いは続いていくのだから、王と麒麟が戻りよかったねで終わるのは違うのだろう。でも、それでも、言わせてほしい。ここまでわたしを連れてきてくれて本当にありがとう、と。

    深い深い地の底で、驍宗は幼い頃の泰麒に思いを馳せた。ずいぶんと大きくなったことだろう、どんな大人になっているだろうと。王と麒麟という枠組みでなく、まるで父が息子を想うようなそんな深い愛情を感じた。
    はい、大きくなりましたよ。立派になってますよ。そして泰麒は、あなたを救うため、そして戴国の再生のために苦しく孤独な戦いをしてますよ。そう、あなたが初めて「蒿里」と呼んだときのこと覚えてますか。「死気はやがて生気に転じる。お前が戴にとってもそのように、再生を約束するものであるように」と。
    ついに、泰麒が決死の覚悟で驍宗の目前にたどり着いたとき「……大きくなったな」との驍宗のひと言に、ふたりが出会ってから今までのことが走馬灯のように甦った。あの蓬山で驍宗を庇いながら、饕餮(傲濫)を折伏し使令に下した時のこと。漣から戻った泰麒と驍宗のつかの間の幸せな時間……どうか、これからふたり決して離れず戴国を再生してください。

    はじめは孤独だった。季斎が慶国に助けを求めてから、同じ志を持つ仲間がひとり、ふたりと増えていった。どれほど民が虐殺や寒さ貧しさで死んでいこうと、天は何もしてくれない。でも、ひとりひとりが行動を起こし、出会った人々の厚意に感謝し、諦めず進んでいけばそこに何かしらの導きが待っていた。天の理は必ずあって、きっと人がそこに向かおうとすれば、天は導いてくれるものなのかもしれない。以前、陽子が言った「人は自らを救うしかない」その言葉が頭によぎる。
    時には悲しみに打ちひしがれ、立ち上がれなくなるような出来事もあった。やっとの思いで勢いに乗ったかと思えば、簡単に絶望で引き裂かれることもあった。それでも、季斎をはじめ人々は立ち上がった。義を重んじる、国を守りたい、王を救いたい、数えきれないほどの人の命を奪った偽王を倒したい。きっかけはバラバラだったけれども、目指す方向が一緒だった人々は前に進んだ。

    そうか。これは泰麒と王の物語ではなく、戴国の民が真実を取り戻すための戦いの物語だったのかもしれないと思った。
    真実を求めようとすれば、人を傷つけ自分も傷つくことがある。真実を知ることは、今まで信じてきたものがことごとく覆えることもあるし、裏切られることもある。真実が必ず全ての者に良い結果を与えるものでもないこともわかった。真実を見極めるために、そして真実が明らかになったとき、自分がどのような行動に出るべきか考えなければならないことも心に刻まれた。そして、真実が取り戻せたとしても失くなったものは決して戻らないことが影を落とす。
    だからこそ、ひとりひとりの思いや行動が、この結果をもたらしてくれたことを忘れてはいけない。過去が現在を、現在が未来を作るのなら、私たちはどう生きていかなければならないのか。決して傀儡などになってはいけない。

    もう、どれだけ私が感動したのか、熱いものが込み上げてきたか書きたくても書けない、語彙力も技術もない自分がもどかしい。
    だけど、これだけは言える。
    「十二国記」と出会えてよかった、と。

    • 地球っこさん
      とし長さん、おはようございます。
      コメントありがとうございます!
      とし長さんのレビューもコメントも、いつも楽しみにしてます。
      返事の長...
      とし長さん、おはようございます。
      コメントありがとうございます!
      とし長さんのレビューもコメントも、いつも楽しみにしてます。
      返事の長さに引かれた……なんてことは決してありませんから、大丈夫ですよ(*^^*)
      だって、とし長さんのコメントももちろんレビューも、その本についてとても深い洞察力と愛情を感じ、そしてそれを描くことの出来る筆力に、もっと浸っていたいなと思うくらいですから♪
      私の方こそ、コメント長い方なのでお忙しいところをお邪魔してますね。

      それにしても、この作品はたくさんのことを考えました。
      とし長さんのおっしゃる通り、
      「強大なものに挑む、個人たちの物語」
      でしたね。
      国が相手となれば、個人が太刀打ちすることは難しく、逃げること(死ぬこと)が選択肢のひとつであったとしても、国外にいる私には何も責めることは出来なかったのではないかと思います。
      でも、彼らは生き延びそして立ち上がりました。失われたたくさんの人間の命の上に。
      とし長さんの
      「その失われたものに思いを馳せ、時に囚われつつも、それでも残ったものを、そして得たものを数えて、抱えて、なんとか前に進もうとするのが、国であり、人なのかもしれない」
      ぐっときましたよ。そうだと思います。

      また長々と書いてしまいました。
      「十二国記」いくら語っても語り尽くせませんね(*^-^*)
      2019/11/18
    • 沙都さん
      地球っこさん、お返事ありがとうございます。

      仰る通り十二国記には本当に色々なことを、考えさせられました。
      生き方であったり、心の弱さや狡さ...
      地球っこさん、お返事ありがとうございます。

      仰る通り十二国記には本当に色々なことを、考えさせられました。
      生き方であったり、心の弱さや狡さであったり、役割や責任であったり……

      人間の様々な側面に問いかけてくる物語だからこそ、語り尽くせないのかもしれませんね。

      来年刊行されるという短編集でも、きっと様々な問いかけが、物語から発せられるのだろうな、と思うと、
      楽しみな反面、今から身が引き締まる感覚も、少し覚えたりします。

      特にまとまりのないコメントになりました…

      それでは、失礼致します。
      2019/11/19
    • 地球っこさん
      とし長さん、おはようございます。
      お返事ありがとうございます。
      少し時が経って、この物語はこの終わりかたで良かったのだと改めて思いました...
      とし長さん、おはようございます。
      お返事ありがとうございます。
      少し時が経って、この物語はこの終わりかたで良かったのだと改めて思いました。
      小野先生は戴国の戦いの結果に重きを置くのじゃなくて、そこへ至るまでの道のりの方を大切にしたかったのだろうなと思ったからです。
      そして、そうですね!
      短編集楽しみですね!
      身の引き締まる思い……わかりますとも。
      また、ガツンとやられるかもしれません。それでも、やっぱり早くみんなに会いたいです(*^-^*)
      2019/11/20
  • 十二国記【白銀の墟 玄の月】4巻

    最終巻、読み終わってしまった…。
    面白かった。いつどのシリーズを読んでも
    ワクワクハラハラ、手を伸ばして本を開けば
    そこに十二国の世界が広がる。
    毎日の生活に素敵な彩りをくれた小説。
    うーん、これが十二国記ロスか。悲しい…。

    書きたい感想は沢山あるけれど、
    やっぱり、真の王•驍宗と偽王•阿選、
    この2人の生き様が心に残った。

    驍宗と阿選はもともとは好敵手だった。
    優秀で麾下から尊敬され先王から重用され功を競いあっていた2人。

    そんな2人の『何の為の功なのか?何の為の戦いなのか?』という考え方の違いが、人生を大きくわけていく。

    目的と手段を間違えた阿選と、功を捨て道義を取った驍宗。
    2人の王の、特に阿選の心の動きが丁寧に語られる。

    そして印象的だったのは、真王奪還の為、懸命に戦う驍宗の麾下。
    王不在の中、「王だったらどうされるか?」王の心を大切にし考え行動し、王奪還に向けて多くの犠牲を出しながらも戦い続ける姿は心震えて涙が止まらない。
    壮大な物語の中の壮大な人間ドラマ。
    すごいです。

    15冊にわたる十二国記の世界
    こんなに長い小説読めるかな?と思ってましたが
    あっという間でした。

    こんな素晴らしい世界に出会わせてくれた
    小野先生ありがとうございます!
    あぁ、楽しかったぁ
    十二国記山、登頂しましたー╰(*´︶`*)╯♡ヤッター

    • 土瓶さん
      まっちゃん、こんばんはー^^
      もう6センチの分厚いお肉はたいらげたのかな? それとも豪華ランチかな?

      それはそうと少し業務連絡させてね。
      ...
      まっちゃん、こんばんはー^^
      もう6センチの分厚いお肉はたいらげたのかな? それとも豪華ランチかな?

      それはそうと少し業務連絡させてね。
      ここでひろみさんと「すずめの戸締まり」の話が出たから。

      もし映画館でご覧になるのなら少し注意と心構えが必要になるかもしれません。

      というのは、前に映画のレビューを見ていたら、泣き出す人が多かった、という記述があってね、どうやらこの映画ではあの大地震のアラート音が出てくるのだそうで、それが真に迫っていて凄く怖いそうです。
      あのときの恐怖が甦ってくるらしくて。
      トラウマがある人は止めたほうがいいとも……。
      私も正直観るかどうか微妙に……う~ん、でも観る、かな~?
      ほら、あれって宣伝過多のせいでもうお腹いっぱいっていうか、ほとんどストーリーがわかってしまったような……。
      でも監督の最高傑作とも言われてるし……。
      あ~迷うわ(笑)

      ごめんね、まっちゃん。まっちゃんのレビューのとこでお邪魔して。

      そういうことなので、ひろみさんもまっちゃんも「すずめの戸締まり」を見るときは体調の良いときに!

      それが言いたくてお邪魔しました〜。
      2022/11/19
    • 松子さん
      おぉっ!
      どんちゃん、業務連絡ありがとう!

      映画館のチケット売り場に看板が立っていて
      『すずめの戸締りでは大地震のアラート音がでます』って...
      おぉっ!
      どんちゃん、業務連絡ありがとう!

      映画館のチケット売り場に看板が立っていて
      『すずめの戸締りでは大地震のアラート音がでます』って書いてあって、じっくり読んでなかったから『何だろう?』って思ってたんだけど、
      そういう事だったのかぁ…。すっごく納得した。

      どんちゃんの説明、いつも本当にわかりやすいね。
      教えてくれてありがとう(^^)
      体調の良い時ねっ了解くん!
      あぁ、でもみるかどうするか悩むわぁ。
      2022/11/19
    • hiromida2さん
      どんちゃん(*´∇︎`)ノ こんばんは〜
      業務連絡ありがとうございます๑⃙⃘'ᵕ'๑⃙⃘)⸝⋆︎*
      なるほど…(ᵕ≀︎ ̠ᵕ )トラウマある...
      どんちゃん(*´∇︎`)ノ こんばんは〜
      業務連絡ありがとうございます๑⃙⃘'ᵕ'๑⃙⃘)⸝⋆︎*
      なるほど…(ᵕ≀︎ ̠ᵕ )トラウマあるあるデス。
      大事なお知らせ(୨୧•͈ᴗ•͈)◞︎ᵗʱᵃᵑᵏઽ*
      話題の映画、映画館に観にゆけるかどうかは??
      でも、絶対観るとは思う。恐れつつも(*´・_・`)

      新海誠×RADWIMPSの3度目のタッグだね♪
      RADWIMPS大好きだし、やっぱり観ちゃうと思う。
      確かに、宣伝過多って気もするけど…
      ストーリーは知らない、知らないようにしています。
      監督の最高傑作の呼声高く…警報の心構えで
      余計に緊張するかも( -̩̩̩͡˛ -̩̩̩͡ )
      号泣必至( ᵒ̴̶̷̥́ _ᵒ̴̶̷̣̥̀ )やっぱり観たい
      体調良い時に気をつけて観よう(⁎⁍̴̛ᴗ⁍̴̛⁎)
      本当いつも分かりやすい説明助かりますv(。・ω・。)
      2022/11/19
  • 1・2巻で危惧されたことは割と早期に種明かしがあって安心し、蒔かれた種がどんどん刈り取られ文州で墨幟が友尚軍に勝利して驍宗とついに対面する辺りまで、大団円か、このまま全てがまとまっていくのかな、という期待がどうしても膨らんだ。李斎たちが「驍宗様ならどうする」って基準で行動するのもよかった、信義とはこういうものだなあとしみじみ思ったし、今までの名もない人含めいろんな人の祈りが折り重なって繋がっていくんだと思って十二国記らしくて感無量だった。阿選と驍宗の対比も鮮やかで。阿選が野に下った驍宗を見て感じた自己嫌悪と恥辱に堕ちていくの、納得できる心情だった。
    3巻で梳道が「天が私を生かしている」と語るところも好き。完全に趣味なんだけども。なぜ自分がここに生きているのか、それは言ってみれば天の采配でしかない。自分の存在も何もかも、信仰すら自分のちっぽけな手を離れたところにある流れの一つと天啓のように悟って深く安堵する瞬間。でもそれを探り求めるのこそ、その人のこころでもあると思うけど。自らの問いから自分の手を離すことを答えとできる、その瞬間のお話なんだよね。

    そんな感じで読んでいて4巻で墨幟が敗走してほとんどが死んでしまったとき本当に辛くて、心が折れてしまった。あんなに意気高く、これからの戴を見るために集まった皆みんな無駄に死んじゃったと思って。驍宗が刑場に引き出されるときは本当に殺されるんじゃという絶望でもうこの先を読みたくないとまで考えて、行かせてくださいっていう静之の声に心から同意して震えていた。
    その後あっという間に全てが動いて、驍宗が泰麒に「よくやった、もう良い」と言ってくれた時の気持ち。胸がいっぱいで、安心して、嬉しいのにいろんなことを言いたくて言えなくてせつない。それなのに、いろんな助けが現れ始めて、徐々に湧いてきたのは怒りと悔しさがないまぜになったみたいな感情だった。こんな残りページ少ない段になって急に(月の影もそうだったけど)、こんな簡単に(そうじゃないことは分かってる)、じゃあここまで散々死んできた皆はなんだったの?朽桟は、鄷都は、葆葉は、飛燕は、たくさんの民たち、蓬莱でもそうだった、彼らは一体なんだったの?死ななくて良かったじゃないか!なんでこんなストーリーなの?文州で、皆が集まったところで勝利して事態が好転しては、なぜいけなかったの!
    そうまで憤って、ああ小野先生はこれを書きたかったんだ、まさにこういう感情を、だから丕緒の鳥から民のことをあんなに書いていたんだと感じて、恐ろしい人だなあと頭が冷えた。こんなにナイーブに読むつもりはなかったのにまんまと深く引きずり込まれた、十二国記の魔力。

    驍宗と泰麒が帰るべきところへ帰ることができたことはすごい喜びで、この上なく嬉しい。天のシステムを云々せずに(ファンタジーで舞台装置の破壊はあまり好みじゃない)長い年月の果てにこのように決着してくれたのには感謝しかない。でも傷つけられたもの、失ったものが余りに多いからただ呆然としてしまう。でも、全てがそうでなくては、ここに辿り着かなかった。長すぎたよね。辛すぎた。なんてことだろう。それでもこの人たちは国と民を背負って、まだ死闘を続けなくてはならないなんて。
    私はまだ阿選が憎いし琅燦も敵じゃないなんて思えないよ。だって、あの妖魔のせいでどれだけのまっとうだった人たちが死んだり廃人になったのか…彼女はいまいち理解しきれない。戴を救いたいって言ったのは耶利に対する演技だったってことでいいのだろうか。黄朱は王と麒麟にそこまで忠誠心ないのはいい、自分のやりたいことだけで人と国の生き死にに興味がなくてもいい、でもその行いと結果は紛れもなく罪であって後に裁かれるだろうからそれもいいけど、はっきり言って黒幕なのに、行動が矛盾したように見えてその心情があまり書かれないのはちょっとすっきりしないな。

    はあ~、生き残った者の数を数えるんだ、か。辛い。
    何度も読み返すには、あんまりにも辛いな。戴の主従と、戴の全てのこれからに平安がありますように。きっとそうだよね、最後の挿絵。

  • 「助けてやれず、済まない……」男は、幼い麒麟に思いを馳せながら黒い獣を捕らえた。
    地の底で手にした沙包(おてだま)の鈴が助けになるとは。
    天の加護がその命を繋いだ歳月、泰麒(たいき)は数奇な運命を生き、李斎(りさい)もまた、汚名を着せられ追われた。
    それでも驍宗(ぎょうそう)の無事を信じたのは、民に安寧が訪れるよう、あの豺虎(けだもの)を玉座から追い落とすため。
    ──戴国の命運は、終焉か開幕か!


    き・・・・来たーーーーーーー(*´▽`*)
    ついに!!!

    これまでの伏線も綺麗に回収!

    あー、あのお供え物は、驍宗に届いていたのか!!


    泰麒は絶対最後には麒麟になるのだろうと思っていたが!!

    あぁ・・・・
    感動ですわ・・・。

    鳥肌。

    凄い物語。
    これは、三国志を軽く超えてくるような、壮大な物語。
    本当に凄い。全身鳥肌ですわ(*´▽`*)

    最初の最初から全て読み返したくなるような、そんな壮大な物語。
    本当に素晴らしい(*´▽`*)

  • 最終巻、の一冊。

    いよいよ…と思いきやなかなか安心してはいられない展開。

    李斎達の苦しみ、次第に狭められていく選択肢。阿選サイドの卑劣な一計。

    泰麒ができることはもはや一つ。

    終盤は憤りと不安と共に息つけぬぐらいの時間に襲われた。

    そしてやっと訪れた安堵の吐息。これぞ十二国1の麒麟。黒麒だ。いとけない幼き姿、蓬萊でのあの姿が次々と走馬灯のように流れ、涙が滲み、雁国二人の出迎えに心緩む。

    ゆっくり正頼と休ませてあげたい。

    最後の「戴史乍書」の余韻がまた良い。静かに乍書の紐を閉じるように本を閉じる。

    おつかれさま。

  • ついに最終巻。
    読み終わったのは睡眠を挟んで10日の昼で、濃厚な物語の満足感と、
    余韻が消えず、それからたくさんの人たちの感想を読みまくっていたが、
    否定的な意見や、「十二国記はこういう話じゃない。〇〇と〇〇が出てくる話を読みたい」っていう意見が多かったようだ。
    こういう話が読みたい人は、ファン同士でサイドストーリーでも考えて読んでいればいいんじゃないかな。
    私はキャラクタがどうしたという読み方ではなく、物語として読むので、入り込んで手に汗握り、一喜一憂したり泣いたり絶望したり、読み終わったあとにどっと疲れた(戦闘に参加したかのように)この長い長い物語には、満足しかない。
    時に泰麒になって怒り、悲しみ、李斎になって絶望し、嘆いた。
    次々に喪われていく仲間と、それでも捨てない一縷の希望。

    十二国記の世界は、そもそも最初から優しくはなく、過酷だった。
    絶望に次ぐ絶望のなか、人間のもつ汚さと強さをこれでもかこれでもかと確認させられる。
    主要メンバーの誰が欠けてもおかしくないなか、
    基本的には欠けてないのはむしろファンサービスだったのではないかしら。
    小野不由美ならバッドエンドもあり得なくないと覚悟していたのだけれど。
    そんでいつも多くを語らず、歴史書で終わるのはいつもの語り口だよね。
    あれっ、ここ書かないの!?ってのは今に始まったことじゃない。

    過去が今をつくって、今が未来をつくる、というような
    ことが書かれていたが、
    それはつまり、これからもこの世界の話を読めるのだと
    期待していいのではないかな。
    まだ残る謎は、次の物語に続く伏線だと思ってよいのではないかな。

    いやー、情と安易に流されない、よくできた物語でした!!

  • 第3巻・第4巻と尻上がりにいろいろわかって面白くなってきましたが、読み終えても不完全燃焼感が拭えず…。

    この結末がどのようにして導かれたのかを知る十二国記の旅に出かけることを決定!

    次は「魔性の子」へGO!

  • 読みながら、何回嗚咽を漏らしただろう。
    誰かが死に連れ去られるたびに、ここまでの道のりがこんなにも困難だったのに、死に様までがこんなに悲しいものなのかと。それぞれの人物が背負った日々が絶望のなかに吸い込まれていく。
    泰麒のそばに築かれていた人の集まりも、阿選の手によって瓦解させられていく。
    驍宗が李斎たちと出会った冒頭こそ希望が見えるところに降りてきたと思ったけれど、この四巻でこの決着がつくのに、読み進めるほど絶望が押し寄せる。
    目を逸らしたくなるような場面が続く。
    本当にこれ終わるの?と思っていると、やっと、その時がやってくる。もう本当に李斎たちと長い旅を経たような気持ちだった。そして二人が出会った瞬間、押し寄せた気持ちが圧倒的だった。
    阿選の言い分やろう燦の本心、泰麒のシレイがどうなったのか、気になることがまだたくさんあるのだけれど、とりあえず、小野先生にはお疲れ様でしたと、ありがうございます、を。ちょっと戴の物語を読むのを諦めていました。本当に、また李斎や泰麒に出会えてうれしかったです。そして驍宗と泰麒の物語が続いていくことも。
    過去の総てが、今に、今のなにもかもが未来へ確かに続いている。希望をつなぐことの途方もなさと、その一つの結実が描き出された物語でした。
    誰かと語り合いたい!!!!

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著者プロフィール

大分県出身。講談社X文庫ティーンズハートでデビュー。代表作に『悪霊シリーズ』 『十二国記シリーズ』『東亰異問』『屍鬼』など。重厚な世界観、繊細な人物描写、 怒濤の展開のホラー・ミステリー作品で、幅広いファンを持つ。

「2013年 『悪夢の棲む家 ゴーストハント(1)特装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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