水底の歌―柿本人麿論 (上) (新潮文庫)

著者 : 梅原猛
  • 新潮社 (1983年3月1日発売)
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  • レビュー :6
  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101244020

水底の歌―柿本人麿論 (上) (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 万葉の歌人、柿本人麿が当時の権力者によって石見国で刑死(水死)させられたのではないか…という持論を丁寧に考察した本。

    上巻では「柿本人麿の死」と題して、斎藤茂吉が人麿終焉の地とした湯抱を否定し、後半に「柿本人麿の生」と題して、賀茂真淵が唱えた下級官吏説否定している。

    どうしてそのように考えたのかを丁寧に記している分、話がなかなか進まないように思うが、作者の思考をなぞって結論へ至る思考方法が楽しめると思えば、それなりに楽しく読めると思う。

    持統天皇が則天武后と同じ時代の人であるとか、万葉集巻二で死を「自ら傷みて」作られたとされる歌は人麿と有間皇子のみであるとか、同じ人物が違う名前で記されることもあるとか、天孫降臨の神話を記した古事記の成立は人麿の時代よりも後であるとか、そう言えばそうだっけ!って目からウロコがぽろりの話が多々あって、客観的俯瞰的思考の大切さを感じました。

    ま。
    梅原さんが従来の通説を客観的に再考するように、この本を読む側も梅原説を客観的に自分の経験値を糧に俯瞰して読む必要があることは、言わずもがな…だけどね(笑)

  • (2014.02.16読了)(2002.04.04購入)
    副題「柿本人麿論」
    【日本の古典の周辺】
    『万葉集』を読んだついでに積読中の「水底の歌」を読み始めました。柿本人麿について書いた本です。400頁ほどの本が上下2巻なので、なかなか手が出せませんでした。
    柿本人麿は、万葉集に多くの歌を残す宮廷歌人というイメージだったので、都で生まれ都で育ち、都で亡くなったものと思っていました。
    生没年不明、どこで何のために亡くなったのか、どんな身分の人だったのか、何の仕事をしていたのか、定説はなさそうです。謎だらけです。
    第一部は、多くの人たちに支持されている斎藤茂吉のどこで何のために亡くなったのかという説の紹介と、その説が独善的で異様であることを教えてくれます。
    とは言いながら、梅原さんの解釈による人麿の死の真相も驚くべき説です。
    第二部は、賀茂真淵説を紹介しながら、人麿がどのような身分でいつごろの生まれかを推定します。
    古今和歌集の序文には、柿本人麿は、三位であった、と記されています。三位以上の身分であれば、公式文書のどこかに、人麿についての記述があるはずだけれど、ないのは、序文の記述が間違えている、ということ。また、人麿が、死に臨んで歌った歌が、記録されているけれど、「死」という語がつかわれるのは、六位以下であること。二つの理由から、人麿の身分は、低いものとされてきています。
    梅原さんは、大胆にも、人麿は、公式文書の、柿本サルが、その人ではないかと、唱えています。われわれより時代が近い、紀貫之が、人麿の身分を間違えるはずがないというのです。
    古今和歌集の記述が、間違っているという説を唱える場合は、序文は、紀貫之のものではなく、後世の人が、付け加えたものだ、という説まで唱えるようです。

    【目次】
    第一部 柿本人麿の死 ―斎藤茂吉説をめぐって―
    第一章 斎藤茂吉の鴨山考
    第二章 鴨山考批判
    第三章 柿本人麿の死の真相
    第二部 柿本人麿の生 ―賀茂真淵説をめぐって―
    第一章 賀茂真淵の人麿考
    第二章 年齢考

    ●ひじり(15頁)
    なぜに人麿は聖であるのか。われわれは、聖徳太子がどうして聖であるかという真の理由について、すでに十分に探究した(『隠された十字架』)。その後の文学者、芸術家では、菅原道真や世阿弥や利休や西行や芭蕉が聖とされてきた。菅原道真は明らかに政治的流人であり、世阿弥もまた佐渡流罪の経験をもち、利休は秀吉に死を命ぜられた。他の二人の文学の聖者である西行と芭蕉も、流竄と死刑の経験こそないにせよ、その流浪孤独の生活が、彼等を聖とする必要欠くべからざる条件でもあった。
    ●人麿の履歴(81頁)
    『人丸秘密抄』などでは、人麿は高津町の西、石見国美濃郡戸田、綾部氏の家に生まれ、後に大和に行き、その後、官吏として再び石見国へ帰り、鴨山にて死んだという伝承が書かれていて、それについてはさまざまな不思議な由来が記されている。
    ●人麿の時代(145頁)
    万葉集に採られた人麿の歌を年代別に配置してみると、はっきり年代の分かっている人麿の歌は、持統三年(六八九)、草壁皇子の死去のときの挽歌に始まり、文武四年(七〇〇)の明日香皇女死去のときの、挽歌に終わることが分かる。
    ●中世と近代(352頁)
    世界や人生は不可解なもので、それらは人知でもっては解きがたい。その不可解なものを大切にしよう。それが、中世人の態度である。しかし、近代人はちがう。その不可解なものをあくまで理性で解きほぐそうとする。そのとき、多くの人は、理性の限界についての認識を忘れる。不可解なものでも、理性を働かせれば分からないはずはない。

    ☆関連図書(既読)
    「ハシモト式古典入門」橋本治著、ゴマブックス、1997.11.25
    「万葉集入門」久松潜一著、講談社現代新書、1965.02.16
    「万葉集」坂口由美子著・角川書店編、角川ソフィア文庫、2001.11.25
    (2014年3月3日・記)
    内容紹介(amazon)
    天下第一の詩人、歌聖柿本人麿は、時の政権に地位を追われ、はるか石見の国に流罪刑死! 斎藤茂吉、さらには遡って賀茂真淵の解釈によって定説とされて来た従来の常識を徹底的に粉砕し、1200年の時空を超えて、日本古代史と万葉集の不可分の関係をえぐる。人麿の絶唱は何を意味するか。正史から抹殺され、闇の中に埋もれた巨大な真実を浮彫りにする雄渾無比の大作。

  •  タイトルが怖すぎる。
     むしろホラーかっていう怖さ。
     藻の中から現れた人麻呂像とか完璧なるホラー。

     井沢元彦の「逆説の日本史」を読んでからだったので、とりあえず内容の概略を把握してのスタートだったためか、思ったよりスムーズに読めた。
     (いきなりだと、若干難しいかも)

     予備知識があまりないので、違和感なく(茂吉説が間違っているように)読んだが、「人から猴」よりは「猴から人」のほうが説得力を感じるのは井沢ファンだからか。

  • 万葉集・柿本人麿についての通説への見方が変わるような一冊です。梅原先生の説はすごく面白いですが、ある程度の知識があって読む方がさらに楽しめそうな気がします。

  • 飛鳥・奈良時代お好きでしたらおすすめですが、梅原先生なので学術的です(つまり文章がカタイ)

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