海人と天皇 上巻: 日本とは何か (新潮文庫 う 5-7)

著者 :
  • 新潮社
3.09
  • (0)
  • (2)
  • (8)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 59
感想 : 3
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (562ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101244075

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 古代史について刺激的な仮説を多く提出してきた著者が、推古天皇から称徳天皇までの女帝の謎に挑んだ著書です。

    「日本とは何か」という問題に取り組むことをめざして『朝日ジャーナル』での連載がスタートしました。そこで著者は、みずからの血を引く者に皇統を継がせたいと願う持統天皇と、その願いを巧みに利用しつつみずからの権力の伸張を図る藤原不比等の実像に迫っていきます。

    しかしやがて著者は、藤原不比等の娘で文武天皇に嫁ぎ聖武天皇を生んだ藤原宮子に関する、一つの伝承に突き当たります。それは、宮子が海人の子で、不比等の養子となったという、道成寺に伝わる伝承でした。著者は、不比等や文武天皇と紀伊の国とのつながりを示していることから、この伝承が隠された史実を伝えているのではないかと考え、そのことが、彼女の息子である聖武天皇の、どこか遠慮がちな即位の宣命や、その後の光明子に対する態度に現われているのではないかと推測します。

    アカデミズムの実証主義史学ではまともに扱われることのない伝承に注目し、そこから極めて大胆な仮説を作り上げるというのは、著者の得意のスタイルですが、そのスリリングな議論にはやはり魅力を感じずにはいられません。

  • 藤原不比等の娘で聖武天皇の聖母、宮子が実は海人の娘であったという伝承を検証する話。
    持統、元明、元正と続く3人の女帝の時代につくられた律令(大宝律令、養老律令)が、天皇ではなく太政官に権限が集中するような仕組みを採用した理由が、息子や孫に皇位を譲りたくてそのために中継ぎとして即位した女帝と、それを支えつつ権力を掌握したい不比等の思惑から生まれた、という説明は大変興味深い。

  • 梅原日本学

全3件中 1 - 3件を表示

著者プロフィール

哲学者。『隠された十字架』『水底の歌』で、それぞれ毎日出版文化賞、大佛次郎賞を受賞。縄文時代から近代までを視野に収め、文学・歴史・宗教等を包括して日本文化の深層を解明する〈梅原日本学〉を確立の後、能を研究。

「2016年 『世阿弥を学び、世阿弥に学ぶ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

梅原猛の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
宮部みゆき
司馬 遼太郎
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×