竹光始末 (新潮文庫)

著者 :
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101247021

作品紹介・あらすじ

世の中変っても、変らないのは男の心-。一家の糊口を凌ぐために刀を売り、竹光を腰に仕官の条件である上意討へと向う浪人の心意気『竹光始末』。口喧しい女房を尻目に、藩の危機を未然に防ぐ一刀流剣士の手柄『恐妻の剣』。他に『石を抱く』『冬の終りに』等、小説巧者藤沢周平が、世の片隅で生きる男たちの意地と度胸を、ユーモラスに、陰翳豊かに描く傑作時代小説全6編。

感想・レビュー・書評

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  • 男性性というものを描き出す短編集。時代と共に変わるところと、変わらないところとがあり。
    ジェンダー的に形作られたものと、そうではない変わらないものとがありそうで面白い。
    遠方より来るなど、ユーモアと厚かましさと残った一片のプライドと。
    冬の終わりにでは、普通なら袈裟次を主人公にした任俠道の物語になりそうだが、そうではないところが新鮮。人間の愚かさと儚さと、小ささと大きさを感じさせられる。
    なんの取り柄もなく、何の社会的影響もなく、英雄的行為のかけらもないが、感動し、人の美しさを感じさせる短編。小さな小さな人間が、愚かで愚かで愚かでどうしようもない人間としても、生きることと一つの命を大切に思い行動する姿が美しい。
    #ジェンダー

  • 1:竹光始末、2:恐妻の剣、3:石を抱く、4:冬の終わりに、5:乱心、6:遠方より来る、の6編。
    この内、1,2,5,6が武家物、3,4が市井物

    5を除く武家物には、不遇をかこち愚痴っぽく、一見頼り無さそうなのだけど実は剣の達者であるとか、その逆で、押し出しが立派で頼りがいがありそうだが見掛け倒しと言った、これ以降の藤沢作品でも良く出て来るキャラが登場します。この作品が出版された1976年以降の10年、すっかり流行作家となり年平均4.2冊という多作の時代が続きます。
    内容的には活劇的・娯楽的要素が増えて軽く楽しめる作品の走り的な短編集です。とは言えそこは藤沢さん、すっきりと的確な文章と無理・無駄のないストーリーで品質の高さは保っています。

    あとがきに「なぜ時代小説なのか?」という問いに対する藤沢さんの答えが記されています。曰く、
    「気が付いたら時代小説を書いていた」としか言いようがない。時代小説は書いていて面白いし、これからも面白い時代小説を書きたい。時代小説は劇画と言う表現手段に適した部分が有り劇画に食われたところもある。でも小説家としては文章による表現にすべてを託さざるを得ない。
    と言ったことが書かれています。
    私が思うのは・・
    結局、藤沢さんが描くのは時代を経ても変わらないもの、例えば人の内面です。それを現代もので書くと余りに生々し過ぎる。そこで時代という背景を借りて少し架空化することで生臭さを消し、あるいは純化させたりしている。

    ========
    余りに繰り返し読んだ挙句、ストーリーが完全に頭に定着してしまい、2009年を最後に再読を封印してきた藤沢さん。
    先日から封印を解き、全作品を出版順に読み返しています。これが10作品目です。

  • 6篇の短篇集。
    士分や町方、いろんな立場からのお話。
    どれも人間臭く、息遣いの感じられる作品。

  • 経営者は司馬遼太郎、サラリーマンは藤沢周平を読む。司馬遼太郎作品は結構読んだので、50歳を過ぎ藤沢作品に挑戦。まずはコレから。

    短編集、映画「たそがれ清兵衛」の元ネタの一つの「竹光始末」など。スーパーヒーローでない市井の人々の人情の機敏が良く描かれているように思う。

    職場の同期でこの歳まで、司馬遼太郎を読んだことのない奴がいて、羨ましく思ったが自分には藤沢周平がある。
    まだまだ人生これから。

  • しばらく前に観た映画「たそがれ清兵衛」がタイトルの原作だけでなく本作「竹光始末」と「祝い人助八」の三作を合わせたストーリーになっている事を知り久し振りに読み返してみた。

    本作品は武士物4作と市井物2作を含む。
    いずれも時代劇ならではのストーリーだけれど底に流れる人間の性というものの普遍性をいつもながらに感じる。

  • 1981(昭和56)年発行、2002(平成14)年改版、新潮社の新潮文庫。6編。『冬の終りに』主人公にとってうまくいきすぎ。でもそういう出会いというか運命もあるかも。『乱心』精神を病んで思い詰めた状態を時代小説でやるとこんな感じか。『遠方より来る』今作のコメディ作品。図々しい男が実はそんなオチになるとは。でもある意味気楽なんでしょうね。でも最後は飢え死に覚悟かも。『竹光始末』自然の流れのように書いているが実は策略かも。いや、策略じゃないでしょうけど、竹光と知ったとたんに襲うところなんかは人間らしいかな。

    収録作:『竹光始末』p7-54.『恐妻の剣』p55-98.『石を抱く』p99-142.『冬の終りに』p143-192.『乱心』p193-236.『遠方より来る』p237-294.その他:「あとがき」(1976(昭和51)年6月)、「解説」駒田信二(作家)(1981(昭和56)年10月)。1976(昭和51)年立風書房の文庫化。

  •  藤沢周平「竹光始末」、1981.11発行、6話。3話は読み応えあり、3話は後味の悪い話。「竹光始末」「恐妻の剣」「冬の終りに」は良かったです。

  • 時代モノというとどうしても国を動かしていた花形武将や政権争いをイメージしがちだけれど、この短編集はどれも江戸の町方のお話。
    名もなき足軽や浪人、町人にも暮らしがあって人生がある。
    お城の中ばかりでなく外にも無数の物語が存在することを実感。

  • 2004.6.10〜14読了

  • 「竹光始末」は数ある藤沢作品の中でも大好きな作品の一つ。主人公の丹十郎ほか、その家族、登場人物皆が人間味ゆたかで、基本良い人。貧しくても颯爽とし、家族を愛する丹十郎に憧れる。

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著者プロフィール

1927-1997。山形県生まれ。山形師範学校卒業後、教員となる。結核を発病、闘病生活の後、業界紙記者を経て、71年『溟い海』で「オール讀物新人賞」を受賞し、73年『暗殺の年輪』で「直木賞」を受賞する。時代小説作家として幅広く活躍し、今なお多くの読者を集める。主な著書に、『用心棒日月抄』シリーズ、『密謀』『白き瓶』『市塵』等がある。

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