闇の穴 (新潮文庫 ふ-11-14 新潮文庫)

  • 新潮社 (1985年9月27日発売)
3.48
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Amazon.co.jp ・本 (304ページ) / ISBN・EAN: 9784101247144

感想・レビュー・書評

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  • 著者、藤沢周平さん(1927~1997)の作品、ブクログ登録は5冊目になります。

    本作の内容は、次のとおり。

    ---引用開始

    わたしを棄てた男が帰ってきた。大江戸の裏店でそっとともした灯を吹き消すような暗い顔。すさんだ瞳が、からんだ糸をひくように、わたしの心を闇の穴へとひきずりこむーー。ゆらめく女の心を円熟の筆に捉えた表題作。ほかに、殺人現場を目撃したため、恐怖心から失語症にかかってしまった子供を抱えて働く寡婦の薄幸な生を描く「閉ざされた口」等、映画化作品「小川の辺」を含む時代小説短編の絶品七編を収める。

    ---引用終了


    収録作品は、

    ・木綿触れ
    ・小川の辺
    ・闇の穴
    ・閉ざされた口
    ・狂気
    ・荒れ野
    ・夜が軋む

  • 著者らしい武家ものと市井もの、それに『今昔物語』や『雨月物語』を思わせるような趣の異なる作品が混在している短編集。
    武家もの2作品のうち『木綿触れ』は、初期作品の特徴でもある暗く悲劇の結末を迎える。
    『小川の辺』は、藩主への上書が問題となり脱藩する妹婿の討手を命じられ苦悩する主人公の物語で、結末にかすかな救いがある。

  • ☆3.3

    ひっそりと寄る辺なき世界の片隅で、自分の今を生きている。
    何も特別なことなどないはずの、そんな普通の人々のお話。
    七編収録。

    「木綿触れ」
    二年前に赤子を亡くしてからずっと鬱いでいた妻が、実家の法要のために特別に新しい絹の着物を仕立てるとなってやっと明るさを取り戻してきたのだが…
    うわぁ辛い!
    平和に幸せに暮らしたいだけの只人なのに。
    でもこれが特別の悲劇でもないのだろうことが、また遣る瀬ない思いをもたらす。

    「小川の辺」
    朔之助は家老に脱藩した男の上意討ちを命じられる。
    その男は妹の夫でもあった。
    妹の田鶴も脱藩に同行しており、剣の腕が立つため立ち向かってくると思われたが…
    田鶴とはどんな女だったのだろう。
    "もしかこれはそういうことでは……"と思わずにいられない。
    ち、違うよね?大丈夫だよね?
    そういう怖い話じゃないよね?

    「闇の穴」
    三歳の娘をもつおなみは、夫の喜七の大工独立を目指して裏店でつましく暮らしている。
    そこに行方不明だった元夫の峰吉が突然に姿を現し、その後も度々訪れるようになり…
    まあ峰吉の怪しげなことったら。
    いつの間にか戻れないことに巻き込まれているのかもしれないって、本当に昨今のニュースを思い出す。

    「閉ざされた口」
    殺人を目撃し口をきかなくなった子がいるおすまは、夫を亡くしたため、体を売りつつ一人で育てている。
    やっと自分を思ってくれる人と出会い、まともな所帯を持てると思ったが…
    あたしほど、不幸な女はいない。
    そう何度も思うおすまの気持ちも分からなくはない。
    幸せとは何か、それを彼女がちゃんと分かって良かった。

    「狂気」
    この狂気はあかん。
    渡ってはいけない橋を渡ってしまった男の話。

    「荒れ野」
    師の僧に命じられ修行に出された若い僧は、修行先の寺に向かうべく旅をしていた。
    途中百姓の女に声をかけられ泊めてもらうことにしたのだが…
    今までの短編とは少し色合いが異なる一編。
    なかなかの生臭坊主な若い僧、少しは懲りたかな?

    「夜が軋む」
    流れ流れて塚原宿に行き着いた飯盛り女郎の身の上話を彼女の語りで。
    深い雪降りしきる村で起こった一夜の凶事。
    その夜、裂けると思えるほどに家を軋ませたのは何だったのか。
    その真実は闇の中。

    好きだったのは「木綿触れ」ですかね。
    やりきれなさの胸の痛みも含めて。

  • 不条理な武家社会に生きる下級武士の悲哀を、薄幸に喘ぐ市井の庶民の行末を、固唾を飲みながら読み耽ける藤沢周平氏の短編時代小説7篇です。『小川の辺』『木綿触れ』『闇の奥』『閉ざされた口』などは、非情な世のことわりにあがらうように、海坂藩の城下や江戸下町の長閑な情景描写が精悍な彩りを添え、哀切の物語をいっそう際立たせた作品揃えです。

  • 個人的には、標題作より、1番初めの
    「木綿触れ」が良かった。
    市井に生きる足軽の友助とはなえ、
    あと数日、倹約令の出されるの日が遅ければ、
    はなえの実家の法事の日が早ければ〜と
    思わざるを得ない。

    3ヶ月で病死した赤子のことを思えば、
    はなえの気落ち、その後の暮らしぶりも
    想像は容易い。
    なすすべもない友助が、はなえが少しでも
    心華やげばと、絹の着物を買い与えたことも、
    妻を思う優しさがあってこそ。
    だからこそ、結末は悲しい。

    藤沢作品と同じ風景を見て育った私には、
    それぞれの登場人物の根底にある、
    心情、心持ち、風土的な匂いや温度感が、
    理解できる。
    全てを描き切らない、登場人物に全てを語らせずとも、その優しさや愛情が伝わる、
    この藤沢作品の良さが好きだ。

    ほかに小川の辺、閉ざされた口などが面白かった。

  • 川は我々日本人にとって、無常観の象徴なのである

  • 1985(昭和60)年発行、2008(平成20)年改版、新潮社の新潮文庫。7編。比較的家族の関係が重要な話が多いかな。武家物とも市井物とも違う感じの作品もある。最後の2編のホラー風な作品を含めてなんか統一されてない感じ。私は後半の方が好きかな。前半の作品は性愛的な要素が絡んできて、もちろんこれは家族や人の関係では重要なのだが、武家物のようにそれを乗り越えるような話でもないので、なんか乗り切れなかった。

    収録作:『木綿触れ』、『小川の辺』、『闇の穴』、『閉ざされた口』、『狂気』、『荒れ野』、『夜が軋む』、他:「あとがき」、「解説」藤田昌司(昭和60年7月、時事通信社文化部長)

    昭和52年(1977年)立風書房刊行された作品集

  • 2021.12.26読了
     武家ものと市井もの、民話調ものが収められた珍しい短編集。妻の仇を撃つ「木綿触れ」、上意討ちで義弟と実妹を相手にする映画化作品「小川の辺」が印象に残る。

  • 藤沢周平作品は大好きですが、この短編集はとても暗い内容です。

    妹夫婦を討ち取りに行く兄、殺しの現場を目撃して話せなくなった子ども、幼女趣味のオヤジ、色欲に溺れた坊主…残念な人や可哀想な人たちがたくさん出てきます。

    家が鳴る女の話は、正直よくわかりませんでした。

  •  藤沢周平「闇の穴」、1985.9発行、7話。「木綿触れ」、切ない。「小川の辺(ほとり)」、エンドに夢が残りグッド。タイトルの「闇の穴」は意味不明! 「閉ざされた口」はハッピーエンドで嬉しかったw。「狂気」は幼女に対する老人のいたずら、気持ち悪いだけの話。「荒れ野」は怖さとエロスのミックス、楽しめました。「夜が軋む」は、飯盛り女の身の上話、冗長過ぎました。私にとって、藤沢周平さんの作品、だいたい、いい悪いが半々です。半々というのは、相性がいいのか悪いのか?! まさに半々なんでしょうね。

  • ハズレの短編七作

  • 時代物?は普段読まないけど、すすめられて。なかなか面白かった。暗いけど。

  • 2018.9.2(日)¥100(-2割引き)+税。
    2018.9.18(火)。

  • 藤沢周平の初期の作品集。
    後半に入るとこっけい物やハッピーエンドの物も多くなるのだが、この作品集はまだまだ暗い。唯一”閉ざされた口”が幸せを予感させる終わり方であるくらい。
    しかしながら、それでもなお救われる感じがするのは、暗い中に著者の暖かな眼差しのような物が感じられるからだろう。
    このところ、ちょっとストレスがたまり、そうなると周平を読みたくなってしまう。この人の作品は、読んでいる間物語の中に入り込めて、色んなことを忘れさせてくれる。一種の精神安定剤になっている

  • 7つの短編集。後半の作品は藤沢さんのものとしてはおもしろくなかった。「荒れ野」「夜が軋む」は、東北の伝奇物の雰囲気で著者の小説として実験だったのであろうか。2016.5.28

  • 藤沢周平の時代小説はいろいろ読んだけど、かなり暗い。
    怖い話もあって、新鮮だけど、暗い。

  • 時代劇小説の短編集。これで終わっちゃうの?って言う結末が多かったけど、一冊読み終えるうちに「後引く様な終わり方が一番いいのかな」なんて思えるようになっていった。

  • 少し毛色の違う作品。ミステリアスな部分にオカルトな面。こういうのもありか。

  • 短編集。
    「木綿触れ」
    結城友助は赤子を亡くして落ち込む妻に絹を買い与えた。妻のはなえは毎日嬉しそうに縫っていたが、藩から倹約令が出たために絹の着物は着れなくなってしまう。それに逆らい密かに着てしまった姿を結城のかつての上役に見られてしまい…。

    「小川の辺」
    戌井朔之助は妹、田鶴の夫を討つよう命じられる。脱藩した義弟は田鶴を伴い逃亡している。それを追跡する旅に奉公人であり、朔之助と田鶴と兄弟同然に育った新蔵が同行する。田鶴と新蔵は相愛の仲だったようで…。最後の朔之助が藩へと帰るシーンが爽やかで良かった。

    「闇の穴」
    おなみの前にかつて別れた亭主、峰吉が現れる。新しい夫と子供に穏やかに暮らしていたが、幾度もやってくる峰吉に不信感を持つ。おなみが用件を問い質すとあるところに品物を届けて欲しいと頼まれる。

    「閉ざされた口」
    金貸しの男が殺されるところを目撃して以来、おようは口がきけなくなってしまった。おようの母はそんな娘をひとりで懸命に育てている。そうして近寄ってきた男の正体は…。幸せになれてよかった。

    「狂気」
    幼児趣味の男の話。まさに狂気というタイトルが相応しい。

    「荒れ野」
    若い僧の明舜は旅の途中で一軒の家に辿り着く。疲れが取れると勧められた肉は猿の肉らしい。毎日その家で独りで暮らす女と交わり続けるが、次第に何かがおかしいと不安に駆られる。そして近くにある廃村へと足を踏み入れると、人間の骨がそこらじゅうにある。最後に見たのは明舜の錯覚だったのか、それとも…。

    「夜が軋む」
    飯盛り女の身の上話。こけし職人の夫と近くに住んでいた男の死。どこか不気味な話だった。

  • 去年映画化された「小川の辺」を含む、6篇の短編が収録されています。
    最初の2篇は海坂藩を舞台にした武士の話で、次の2篇は江戸の町人の話なんですけどミステリーっぽいかんじでちょっと新鮮でした。
    最後の2篇は民話っぽいというかちょっとホラーも入っていてなおかつエロいかんじでこれもわたしがこれまで読んだ藤沢作品にない感じのものでこれまた新鮮でした。
    わりとこれまで読んできた短編っていうのは大抵1冊が似たようなジャンルの話でまとめられているものが多かったのでこの本はいろんなジャンルの話を読むことができてちょっと得した気分になりました。
    まぁ、今は市井ものしか読みたくないんだって時には向かないですけど‥‥。

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著者プロフィール

1927-1997。山形県生まれ。山形師範学校卒業後、教員となる。結核を発病、闘病生活の後、業界紙記者を経て、71年『溟い海』で「オール讀物新人賞」を受賞し、73年『暗殺の年輪』で「直木賞」を受賞する。時代小説作家として幅広く活躍し、今なお多くの読者を集める。主な著書に、『用心棒日月抄』シリーズ、『密謀』『白き瓶』『市塵』等がある。

藤沢周平の作品

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