若き数学者のアメリカ (新潮文庫)

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レビュー : 159
  • Amazon.co.jp ・本 (342ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101248011

感想・レビュー・書評

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  • 「数学者」という肩書から、自分には到底理解できないような難解な数式のオンパレードかと思ったら、彼の地で筆者が遭遇した出来事について綴っている『自伝エッセイ』でございました。当時の『空気』がわかります。

    本書はエッセイストであり、著名な数学者でもある作者が アメリカへ留学した際の出来事を綴った自伝エッセイとも 呼べる本でございました。ここには1970年代のアメリカが 筆者の目で活写されて、当時の『時代』を知るという意味でも、面白いエッセイであると思います。

    若き日の筆者が日米の習慣的、文化的な摩擦を乗り越えて、大学で数学を教え、研究者たちと切磋琢磨をしていく姿は、本当に面白かったです。たった一人で異郷にいる孤独感を紛らわせるために、片っ端から女性に声をかけては玉砕したり、それとは一転、フロリダでは一転してバフィーという女性との交流があったり、はたまた、ミシガンからコロラドに移った際に住んでいたアパートメントでは、子供たちの子供たちの人気者になったというエピソードは、なんともほほえましいものでございました。

    後半部のアメリカの学生に対する授業風景では、日本とアメリカ人の学生の『気質』の違いや、『大学に入ってから彼らは勉強する』という今でも変わらない風習がある中で、彼らの選んだ人生の多様性にも、読みながらこれまた驚くべきものが多かったような気がいたしました。

    あらすじで『自分のすべてをアメリカにぶつけた青年数学者の躍動する体験記』と結びの言葉でかかれてりましたが、まさにそのとおりであると思います。

  • 著者のアメリカ留学の際のエッセイ。
    ところどころに出てくる日本人としての誇りは素晴らしくもあり、また滑稽にも描写されている。

    分量としては適度なものだが、実際に読んでみるとあっという間に感じてしまう著者独特の軽妙な語り口が素晴らしいエッセイでした。

    最終章のアメリカから去る際の部分は特に綺麗で、心に残る文章でした。

  •  最近メディアに登場することも多い数学者の藤原正彦。三年前「国家の品格」が売れに売れたのは記憶に新しい。彼がいまの私ぐらいの年齢のとき,アメリカに招かれて研究,教育に取り組んだ体験を綴ったのがこの作品。古い本だが,父の蔵書を借りてあったのを,ふと開いてみたらなかなか面白い。巻末に父の筆で読了日が書いてある。私が四歳,弟は二歳のときだ。いま同様に幼い娘をもつ身にはなにかしんみりする。
     渡米に際してまずハワイに寄る。急に思い立ち真珠湾ツアーに行ってみたら,彼が参加者中で唯一の東洋人であった。アナウンスが日本軍襲撃の模様を説明するのに初めは縮こまっていた彼の心に,なにくそという反撥心が芽生える。その様子がおもしろおかしく活き活きと描かれる。他にも随所に読ませる文章がちりばめられている。彼の読書量がしのばれる。
     数学を志したとはいえ,作家の両親をもつだけあって,読書の習慣が身に付いていたのだろう。彼の父新田次郎の「八甲田山死の彷徨」を昔読んだが,とてもよかった。日露戦争前夜,北の大地での闘いを想定して,青森の聯隊に所属する一個大隊二百十人が八甲田山で冬の行軍訓練をおこなう。土地のひとの忠告も聞かず,十分な準備もなく強行された訓練。悪天候で道を失った結果,ほぼ二百の将兵が凍死体となった史実に沿った作品だ。両親の書斎にある厖大な数の書籍,少年正彦はむさぼるように読んだのだろう。
     彼の保守的・愛国的な考え方は三十を前にしてすでに固まっていたようだ。この本でも,アメリカを歴史のない国,人種も価値観も多様でまとまりに欠ける国というように観察し,なんでこんな国に戦争で負けたんだ?と自問する。日本の文化を誇りに思い,日本人であることを自分のアイデンティティの根本に位置づける。異国の地で異人とわたりあってやっていくのには,このような考え方は実際に有用なのだろう。日本にいるとあまり意識しないが,何となく分かる気がする。今は海外でも多くの日本人が活躍しており,日本の認知度も高くなっているだろうが,当時がはるかに厳しい状況だったことは想像に難くない。
     この本には研究内容のことはほとんど出てこない(一般向けなのであたりまえだが)のだが,同僚の人物像,数学者の生態などについては結構書いてあっておもしろい。論文製作競争の弊害についても大きくふれていた。特にアメリカでは研究者間の競争が激しく,限られたポストを巡って,推薦を得るために論文を生産し続けなければならない。論文を評価するのに質で十分な評価ができればよいが,事実上それは困難で,どうしても論文本数による評価に傾いてしまう。結果,意義の少ない論文が濫発され,大量の情報が玉石混淆のまま蓄積され,研究の進歩が阻まれる。どこかで聞いたような話だ。
     古い本を読むと時代を感じる。十章からなるこの本には「太陽のない季節」と題された章がある。彼が最初に在籍したミシガン大学の冬,北部の日の短さ,憂鬱な天候と,ホームシックにかかってふさぎこむ彼の気持ちが描かれている。この章の題はもちろん,現都知事による小説「太陽の季節」のパロディなのだが,私にわかったのはそれだけ。住む時代も異なり,石原の小説を読んだこともない私には,文章表現や内容にそれ以上の含蓄があったとしても知ることはできない。三十年前に読んだ人には伝わったが,今となっては読み取れない何かがきっとあるだろう。テクスト(書かれたもの)の意味は決して固定しているのではなく,時代や環境,読む人のそれまでの経験や思考様式によって様々に変わりうる。よく言われることだが,その一端を感じた。
     藤原にしろ養老にしろ,理系の学者が社会・人生など専門外のテーマで一般向けにものを書くことがしばしばある。内容には些細なところで疑問なこともあるが,専門一辺倒でなく,確乎とした視点をもっていろいろとものを考えているのはさすがだとおもう。彼ら世代が学生だった頃は,大学で何を専門にするかにかかわらず一般的な教養を身につけていることは当然だったというが,わが身を振り返るとはなはだ心もとない。もうすこし教養をしっかりやっとくんだった。それで今さらながら啓蒙書の類を濫読している。

  • 著者のユーモアあふれる作風が好き

  • 人生で大好きな本。
    文化人類学的な考察と内省を楽しめる。

  • 第12回(テーマフリー)

  • 2019年2月

    著者が70年代アメリカに大学教授として赴任した2年間の物語。
    今のバイト先が外国人研究者の宿泊施設なので、単身の若い教授を担当するたびにこの物語を思い出す。

  • タイトル通り、お若かったんですね(笑)という感じ。全体に勢いがあって、学問と新しい環境への情熱が感じられる。

  • 持ってるのはハードカバー

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