若き数学者のアメリカ (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.82
  • (155)
  • (182)
  • (216)
  • (17)
  • (3)
本棚登録 : 1780
感想 : 183
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (342ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101248011

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 『国家の品格』の大ファンなので本書を手に取った。
    筆者は当時38歳前後。にもかかわらず現在と同等レベルの高い文章力に驚いた。周辺の様子のリアルな描写のなかに詩的な表現もある。自身を卑下する得意のお笑いセンスもすでにある。
    内容は若者らしい青さ、大胆さが満ち溢れている。ただの東大卒のがり勉ではないことがよく理解できた。彼のアメリカという国への洞察力にも感服。読後感は爽快。
    ただし、最後の解説はかなり読みずらくおもしろくなかった。

  • 若かりし頃の藤原正彦の留学記。何を思い、何を感じたのかがつらつらと書かれている。今では大学の教授で何の悩みもないように思うが、彼の苦しみやホームシックも書かれており、我々と何も変わらない普通の人であると分かる。留学先のアメリカは、奔放で自由で豪快で、何の悩みもないように思う。しかし筆者は彼らと接しているうちに、彼等には帰るべき「故郷」がないと感じた。日本にいる間は分からなかったその土地の人柄を知れてよい本である。ちょっとした留学気分を味わいつつ。

  • 著者が1970年代に過ごしたアメリカの大学講師時代を中心につづった随筆。

    結構面白かったです。
    話は古いし、読んでて気恥ずかしくなることもあるのだけれど、それでいて、今にも通じることがあったりとか。

    中でも、アメリカ社会に馴染むというのは軽妙なジョークを飛ばし、滑らかな英語を話し、ということではなく、日本人としての特質をもったままに堂々と過ごす・・・みたいな話がなるほど・・・と思いました。

  • ずーっと前に読みたいと思いつつなかなか読めないでいた本をやっとw 数学者なのはわかっていたけど、どんな人?と思って調べたら、なんと!新田次郎、藤原てい夫妻の次男とな!知らんかった!!w あー、藤原かぁ~・・・って、有名な『流れる星は生きている』は読んでたけど、さすがにわからないって!ww
    先日も「マナーの正体」を読んで面白かったので、流れで読めてよかったわー♪
    ラストずいぶん哀愁ただよっちゃってますが、なかなかお上手で軽妙で、数学者という特殊な立場でのアメリカ滞在記として、面白く読めましたー。

  • 数学者である著者の、1970年代前半の米国留学体験記。日本エッセイスト・クラブ賞受賞作(1978年)。
    藤原氏は、『八甲田山死の彷徨』の故新田次郎と『流れる星は生きている』の藤原ていの二男。
    本作品は数学者である藤原氏にとって、エッセイストとしての処女作であるが、氏の抜群の行動力、感性とユーモア、更に両親から受け継いだ著述力を余すことなく表現した、何とも楽しい優れた作品となっている。
    2006年には著書『国家の品格』が年間ベストセラー1位となるが、本書で語られているような、異文化の体験とそれへの理解、日本文化への思いが、そのベースになっていることがわかる。
    元気が湧く、青年数学者の体験記である。
    (2007年9月了)

  • 時は1970年代のアメリカ。
    背景にある人種の寄せ集めの国家、宗教、ベトナム戦争。若さ溢れる数学家が異国の地で直感する当時のアメリカの様子が熱い文章からよく伝わってくる。滞在が長くなるにつれて凝り固まっていた日本人的戦後の劣等感が徐々に溶けてく様子も読んでいて面白い。
    数学の先生がこんなに素敵な文章が書けてしまう事にオドロキ。

  • 藤原教授が初めてアメリカの大学に招聘された時の生活を記したエッセイ。「日本人の」「数学者」から見たアメリカが鮮やかに描かれている。淡々として潔い文体は数学者だからこそなのかもしれない。40年以上前の話なので今では変わってしまっている状況もあるのかもしれないが、それでもああしたアメリカの大学事情やアメリカ人像を見ると何となく憧れを抱く。この人の文章は真面目な顔をしながらとても面白いことを言っている感じがして楽しいですね。

  • 初めは偏見が強いだけなのかと感じたが、留学した時の筆者の心境がすごく伝わった。留学したいと思えた

  • 若き数学者としてアメリカに渡り、もがきながらもアメリカという国と自己のアイデンティティとの間で奮闘した素晴らしい旅行記だった。

    ハワイで日本人ひとりの真珠湾遊覧船に乗り込み日本人であることのコンプレックスを過剰なまでに意識していた旅の始まり。ラスヴェガスで全額擦ったカジノ。ミシガンでは太陽のない季節に精神を病み、ガールハントのフロリダで新生し、コロラドで研究者としての深みを得る。最後はサンフランシスコ、「私のアメリカ」は太平洋で生まれ、大西洋で蘇り、サンフランシスコの霧に沈んだ。

    全編通して素晴らしいが、10章のアメリカに対する考察は特に素晴らしい。

  • アメリカも数学も好きなので購入。
    数学の話はあまり深くまで語られない。

    アメリカ人と著者の関係が少しずつ変化していく様子が興味深い。
    知り合った女性の話、学生との話、近所の子供達との話が面白かった。

全183件中 41 - 50件を表示

著者プロフィール

お茶の水女子大学名誉教授

「2020年 『本屋を守れ 読書とは国力』 で使われていた紹介文から引用しています。」

藤原正彦の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
三島由紀夫
三島由紀夫
遠藤 周作
フランツ・カフカ
ドストエフスキー
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×