事実の読み方 (新潮文庫 や 8-7)

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  • Amazon.co.jp ・本 (348ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101249070

感想・レビュー・書評

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  • 本書は、ノンフィクション作家である著者の折々のエッセイを集めた「事実」シリーズの第3集である
    昨今猛威を奮っている「コンピュータ犯罪」と歯科医師国家試験漏洩疑惑を受けての「医の荒廃と新しい芽生え」について、時期的におもしろかった

    この「コンピュータ犯罪」という題目のエッセイは、クレジットカードの請求がコンピュータ処理により1月早まって処理されたことについてのものである
    このような場合、処理をした「コンピュータ」がミスをしたというような考えを持ちがちだが、その実、経理担当者が引き落とし日を間違って書き込んだという、単なる人間のミスによるものであったというものである
    さすがに昨今コンピュータが悪いという考え自体は少なくなっているとは思う
    しかし、そういうことをする人間(つまり犯人)が悪いのは当然であるが、年金機構からの情報流出についても、
    ・個人情報をインターネットに接続可能なコンピュータで扱っていた
    ・標的型メール攻撃を受け、それに引っかかってしまった
    という点で、自覚が足りないというかなんというか
    交通事故に合わないように信号が青になっても右左を見て渡りましょうとかいう幼稚園レベルの話ではないか
    昭和56年のエッセイであるが、まったく旧さを感じさせず、著者の根本を突く普遍的なものを見る目に感心する

    「医の荒廃と新しい芽生え」については、歯科医師国家試験漏洩疑惑について昭和57年に書かれたものであるが、
    ・歯学部の増加→新設校のイメージアップのための合格率アップの必要性→情報漏えいという構図
    ・漏らす側の「医のモラル」の著しい低下
    を憂う内容であるが、まさしく今年発覚した司法試験漏洩疑惑と同じ構図ではないだろうか(時代は繰り返す?)

    他のエッセイについても、推測だけの事実に基づかずかつ被害者を傷めつけるだけのマスコミ報道による被害がある現状を憂い「いかに『事実』を的確に伝えるか」という視線で、著者のメインフィールドである「事件事故」「終末医療」等を中心に多岐にわたり書かれており、どれも興味深い内容でした

  • 1987年(底本1984年)刊行。

     ノンフィクションライターによる「事実」をテーマとしたエッセイ集。
     コロンブスを発見したのは誰か(視点の転換)、聞いてみないとわからない、複眼的(多方面から)の見方、定点観測(時的・史的展開)の意義、データ万能主義の修正など、相対化と原点・現場主義で般化できそう。
     例示は古いが、役立つ視点といいうるかも。

  •  高校の現代社会で氏を知り、何冊か読んだが、本書でさらにファンに。ノンフィクションの真を知った気分。かなり古い(30年くらい前)本ではあるが、一切色落ちなし。

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著者プロフィール

講談社ノンフィクション賞受賞作『ガン回廊の朝』(講談社文庫)

「2017年 『人の心に贈り物を残していく』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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