ボタニカル・ライフ-植物生活 (新潮文庫)

  • 新潮社
3.93
  • (80)
  • (64)
  • (78)
  • (4)
  • (3)
本棚登録 : 648
レビュー : 85
  • Amazon.co.jp ・本 (399ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101250144

作品紹介・あらすじ

庭のない都会暮らしを選び、ベランダで花を育てる「ベランダー」。そのとりあえずの掟は…隣のベランダに土を掃き出すなかれ、隙間家具より隙間鉢、水さえやっときゃなんとかなる、狭さは知恵の泉なり…。ある日ふと植物の暮らしにハマッた著者の、いい加減なような熱心なような、「ガーデナー」とはひと味違う、愛と屈折に満ちた「植物生活」の全記録。第15回講談社エッセイ賞。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 鉄っちゃんでもフライフィッシングでもAKBでもなんでもそうだけど、趣味の世界は興味ない人はぜんぜん興味ない。「何が楽しいか」を説明するのは至難の業で、しかもそういう話を面白がって聞いてくれる暇人はめったにいない。誰かをつかまえて無理やり延々と講釈をたれたら大変迷惑だ。
    その点、どこかに書けば、読みたい人だけ読むので誰も困らない。同好の士なら読むのは楽しい(あーやるやる)。しかも書くのも楽しい。これぞwin-winの関係だ。
    ...という本。

    前から思っていたのだけど、「○○が好きな人(ただしプロではない)」に適当な呼び名があればいいのに。〇〇マニア、○○ファンというのも当人からするとちょっと違う。

    その点、鉄道が好きな人の「鉄ちゃん」ってのは、語感はともかく呼び名がある、という点ではちょっとうらやましい。あとは熱帯魚を飼っているアクアリスト、くらいしか思い浮かばない。植物を育てるのが好きな人はなんと呼べばいいのだろう? 園芸ファン、植物マニアってなんか違う。ガーデナー=庭師も違うし。
    いとうせいこうは自分のことを「ベランダー」と呼んでいるが、温室に住んでいる状態のぼくはどう名乗れば?

  • カレル・チャペックの「園芸家12カ月」の情報をAmazonサイトで見ていたら、この本も一緒に推している人が多かったので、読んでみました。
    著者自身も序文で、チャペックの本に触発されて何か書きたくなったと書かれておられましたが、読んで納得。実際に「園芸家12カ月」と対になっていると言っていい本だと思います。

    でも、単なる二番煎じで終わってないところが素晴らしいです。
    「園芸家12カ月」のハートの部分、魂の部分をしっかり受け継いでいて、言っていることは基本的には同じことなんだけど、これはこれでしっかりオリジナル。
    チャペックがもし読んでいたら、きっとすごく気に入っておもしろがったんじゃないかなぁと思う。
    2つでセットにしていいんじゃないかな?

    最初の方、「4月の終わりくらいから、植物どもの間になんとも形容しがたい気配が充満する」という部分を読んで、深いため息が出ました。分かる。もっと言えば、2月末くらいからなんとなく感じ始める、あの不思議な気配。
    とにかく私は、この気配に、この神秘にやられちゃったんだよなぁ、と思う。
    土いじりそのものが大好きなわけじゃないのよ、と言いたいんだけど、ずっとうまく説明できなかったこの気持ち。それが見事に説明されている。

    言い得て妙、な箇所は数えあげればキリがありませんが、ビックリしたのが湿気を好むショウジョウバエみたいな虫についての話。妙に硬くて、手に当たると意外な痛みを感じる、いやそれほどの衝撃はないだろうから印象なんだけど・・・ってあたり。すごく分かる。あの虫の微妙に嫌な感じをなんとまあ正確に表現していることか。

    この本って園芸を全然しない人もおもしろいのかな?
    私にとっては、すべてのページが、笑えて、おもしろくて、ホロリときて、深く深くうなずけるという驚嘆すべき本だったけれど、なんだかもう共感の深さが半端ないところまで行き過ぎて、その自分の感覚は普通なのか、それとも園芸好きだけが理解できるものなのかがよく分からなくなっています。

  • 何気ないベランダの植物の機微に、よくもまあと驚くほどの言葉数を紡ぐ、観察眼、感受性、着眼力。
    心が広々とするような感覚を味わった。
    我が家にも広がるベランダの日々を、もっと味わっていきたいと思った。

  • いとうせいこうさんのエッセイ集。自宅のベランダにて育てたいろんな植物の観察日記。いや、ふれあい日記? 植物と共に生きる男の手記? いとうさんは自身のことを「ベランダー」と称している。

    さまざまな植物とのふれあいを、ユーモアあふれる文章で綴っている。基本笑える部分が多いけれど、どこかほろっとするようなところもある。いとうせいこうさんには『文芸漫談』という奥泉光さんと組んで作った本があるけれど、語り口というか面白さの質は、奥泉さんにやはり少し似ているかもしれない。自分にはこういう類の面白さがぴったり合うことを再認識した。

    どことなく感傷的な文章もあって、中上健次にまつわる熊野での催しで毎度目にする芙蓉について書かれた文章には、いとうさんの素直さが出ていてとてもよかった。どれも面白さと同時に並々ならぬ植物愛が感じられる文章で、読んでいて非常に心地よい。カレル・チャペックの『園芸家12カ月』が念頭にある、というような記述もありそちらも気になる。

    植物は自分の生活の周辺にはあまり縁がないなあと思いながら読んでいたのだけれど、「月下美人」のことについて触れている文章を読んで、実家で月下美人を買ってきて育てていたことがあったのをふっと思い出した。小学校ぐらいの時には、わが家にもベランダーがいたのだ。どうして忘れていたのだろう。夜に家族に「咲いている」と言われ、たいして興味もないのに無理やり見せられたことが思い出されてきた。買ってきたのは父親だったのだと思うが、どんな風に思って買ったのだろう? 「ゲッカビジン」という、夜にしか開花を見ることができないという不思議な扱いにくさに、どこか日常にはない気高さを感じて、平凡な生活の中に組み入れてみようとしたのだろうか。まあ、そんなたいそうなもんでもない気がするが。

    何気に手にとった本だったけど、本当によかった。講談社エッセイ賞を受賞しているというのも納得!

  • 植物を育てるのはいいですよね!その喜びとか、あるいは自省的な独り言とか、各ページが「あるある!」って思わずうなづいちゃうことばかり。つい、ニヤついてしまう。通勤電車内で読む時は要注意です!

  • 2019.5月。
    .
    #ボタニカルライフ
    #いとうせいこう
    #新潮文庫
    .
    植物知らなくてもすごいおもしろかった。
    植物との付き合いが濃い。
    愛がすごい。
    そして時々ものすごい深い。
    .
    人の趣味を覗きみる愉しさがある。
    シクラメンには笑った笑った。
    .
    #2019年50冊目
    #本 #book #読書 #reading #本の記録 #読書日記 #読書感想文

  • 38036

  • 俺も都会のベランダー

  • 人って突然植物や花に開眼するときありますよね。突発的にこじんまり始まるところから、結構な嵌り方をしていく姿が微笑ましい。

  • 先日、ここにチャペックの『園芸家12か月』のレビューを書いた。
    すると、他の人はこれを読んでいます、と、この本がしばらく表示されていた。
    しかも地上波でドラマ版も放送されていたし…ということで、俄然気になってしまった。
    主体性なんてもん、そもそも当てになんかなるもんかい、といいながらの、この体たらく(笑)。

    ベランダで園芸を楽しむ「ベランダー」の日々。
    植物の命に対し生殺与奪の絶対的権利を持つはずの養育者が、いつの間にか植物たちに操られ、嬉々としてその僕となってしまう面白さ。
    四の五の言わんと、普通にお世話すればいいじゃん!と突っ込みを入れつつ、いとうさんのいちいちメンドクサイ言い訳が楽しくなってくる。

    それにしても、よくこのエッセイ集をドラマにしようなどと思い立ったものだ。

全85件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

いとう せいこう
1961年、東京都生まれ。編集者を経て、作家、クリエーターとして、活字・映像・音楽・舞台など、多方面で活躍。『ノーライフキング』でデビュー。『ボタニカル・ライフ ―植物生活―』で第15回講談社エッセイ賞受賞。『想像ラジオ』が三島賞、芥川賞候補となり、第35回野間文芸新人賞を受賞。他の著書に『ノーライフキング』『鼻に挟み撃ち』『我々の恋愛』『どんぶらこ』『「国境なき医師団」を見に行く』『小説禁止令に賛同する』など。

ボタニカル・ライフ-植物生活 (新潮文庫)のその他の作品

ボタニカル・ライフ―植物生活 単行本 ボタニカル・ライフ―植物生活 いとうせいこう

いとうせいこうの作品

ボタニカル・ライフ-植物生活 (新潮文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする