オーデュボンの祈り (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 3918
  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101250212

作品紹介・あらすじ

コンビニ強盗に失敗し逃走していた伊藤は、気付くと見知らぬ島にいた。江戸以来外界から遮断されている"荻島"には、妙な人間ばかりが住んでいた。嘘しか言わない画家、「島の法律として」殺人を許された男、人語を操り「未来が見える」カカシ。次の日カカシが殺される。無残にもバラバラにされ、頭を持ち去られて。未来を見通せるはずのカカシは、なぜ自分の死を阻止出来なかったのか?卓越したイメージ喚起力、洒脱な会話、気の利いた警句、抑えようのない才気がほとばしる!第五回新潮ミステリー倶楽部賞を受賞した伝説のデビュー作、待望の文庫化。

感想・レビュー・書評

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  • 伊坂さんのデビュー作。現実味がない設定の物語だが、意外と馴染むことができて、読みやすく、飽きない。怖くて暗い物語だが、読み終わった時には不思議と爽やかな気持ちになる。デビュー作でこんな面白い作品を書けるのは凄い。そして、ファンタジーとミステリーの絶妙な混ざりで、伊坂さんらしい世界観が出来ていると思う。個人的にはこの前読んだ砂漠の方が少し良かった気がするが、この作品もかなり楽しめた。最初にこれを読んだ方が良かったかもしれない。

    コンビニ強盗をしてしまい、外との関わりが一切ない島に逃れた主人公の伊藤。この島で未来を見ることができる優午と出会う。この島には何かが欠けている。島の独特な感じも良く、登場人物のそれぞれバラバラなとても個性的な性格も良かったと思う。異世界に行ったようなとても不思議で面白い作品だった。

  • まぁ、何というか独特の世界やな。
    案山子が喋ってもええけど、作ってるとことかが何か知らんけど、気持ち悪かった。脳みその代わり、それでええの?って。
    私が法律や!反対しか言わん!とか、おもろい人ばっかりの世界。
    それには、馴染めんかったけど、しっかりしたミステリーではあるな。
    はじめの方、多少、ペースが遅い感があるけど、色々な伏線が最後に回収されていくのは、なかなかでした。
    でも、全部理解したか?と言われれば微妙な…
    城山とか何しに来たか分からん…

  • 28歳で会社を辞め、コンビニ強盗に失敗した伊藤は、外界から隔絶している島、荻島に逃げてくる。
    パトカーから逃げ出した伊藤を運んでくれたのは、熊みたいな轟という男だった。
    案内してくれた日比野や、噓しか言わない園山という画家、郵便局員の草薙…、そして喋るカカシ優午。

    小さな島の話だと高を括っていたら、思いのほかたくさんの人たちが出てきて、それら島中のありったけの人たちが見事に繋がっていた。

    1855年、開国と荻島が閉鎖された時代に瞬間移動して、優午の誕生秘話が明かされていたが、侍のいた時代から、日本には田圃やカカシはすでに存在していたし、空には鳥も飛んでいたし、もちろん悪人もいたのだろう。
    そのあたりの物語の作り方に違和感もなく、二十億の群れで飛ぶリョコウバトを想像するのは、壮大で気持ちがよかった。

    会話のセンスや伏線回収その他見どころ満載で、記念すべき伊坂作品第一作目を堪能することができて、気分爽快です。

  • 殺し屋3部作を読んで以降、伊坂作品を積極的に読みたい気分になっている。(まことさん、オススメを教えていただき、ありがとうございます!)

    コンビニ強盗に失敗した伊藤が逃げ込んだ荻島は江戸時代以来鎖国をしている。島には、喋ることができて、未来を知っている案山子・優午がいたが、伊藤が来た翌日、バラバラにされ、頭を持ち去られて死んでいた…。誰が、何のために案山子を殺したのか?

    そして、島民は「この島には何かが欠けている」 という。そして、それを外の人が置いていくのだと。荻島に欠けているものとは何か?

    優午の死の真相と島に欠けているものの謎。
    大きな二つのテーマを解き明かしていく物語。

    この小説は伊坂さんのデビュー作。
    まだまだ荒削りというか、洗練されていない印象。
    読みはじめの方で感じたのは、文体がゴツゴツしていて、しかも随分地味な話だな、と。
    途中からどんどん物語に引き込まれていきましたが。

    まだ洗練されていないだけに、ありのままというか、むき出しの伊坂さんを見た気がした。

    たとえば、主人公の伊藤は、この小説の中で最も悪いヤツである城山を思い出しながらこんなことを言う。

    ー 僕は、勧善懲悪の物語が好きだ。天網恢恢疎にして洩らさず、という諺だって、好きだ。なぜなら、現実はそうじゃないからだ。

    作品からそこはかとなく感じていた伊坂さんの思いを、デビュー作でこんな赤裸々に主人公に語らせていたことに、深い感慨を覚えた。

    • まことさん
      たけさん♪こんにちは。

      早速、読んでくださったのですね。
      こんな、素敵なレビューにしていただき嬉しいです。ありがとうございます!
      ...
      たけさん♪こんにちは。

      早速、読んでくださったのですね。
      こんな、素敵なレビューにしていただき嬉しいです。ありがとうございます!

      この間、お薦めするのを後から、思い出したのですが、もし未読であれば『魔王』、あとほのぼの系で『アイネクライネナハトムジーク』なども面白いと思います。
      2020/07/07
    • たけさん
      まことさん、こんにちは!
      コメントありがとうございます!
      お褒めいただきとても嬉しいです!

      オススメいただいたものを中心に伊坂作品...
      まことさん、こんにちは!
      コメントありがとうございます!
      お褒めいただきとても嬉しいです!

      オススメいただいたものを中心に伊坂作品読んでいきたいと思っています。新たなオススメもありがとうございます!
      2020/07/07
  • 伊坂幸太郎のデビュー作。2000年発売。

    文庫版の裏表紙には非常に好奇心をそそる文が書かれていた為、とてもわくわくして読み始めた。

    ファンタジーとミステリーが融合した不思議な世界観が魅力だ。島の住民の生活感は、どうもピンとこないところがあるが、全体的に見ればそこまで気にはならない。

    物語は後半に、辻褄合わせが一気にやってくる。
    それまでは、一見必要の無い件に見えたものが、全て仕組まれている部分は、思わず唸る。

    出来事の全容は、あくまで主人公等の推察に留まるため、本当のところは不明ではあるが、概ね納得。

    以下、ネタバレ有り。

    壮大な自殺であり、プレゼントを送る物語でもある。
    個人的には、伊藤の祖母についての、伊藤の内情を後半にもっと掘り下げるのも有りだったのではないだろうか、と思う。

    園山の件についても、もっと深く知りたい部分だ。

    桜の存在は、非常に独特であり、この島以外の価値観と最も遠いところにある。殺人を許される者として、秩序を維持する為にあるのか、どうか。いつも詩を読んでいるため、知識や哲学はどのように形成されているのか気になる。

    命の吹き込まれた案山子。優午は様々な生命体を宿し、心優しくも、残酷な一面を内包し、人間を殺し人間を救った。鳥達からオーデュボンの祈りを受け継ぎ、リョコウバトを守り続けた。
    彼は鳥達と友達だった。人間は…

    案山子の優午の思惑はいつからあったのだろう。
    百年もの歳月に、何が優午の手から溢れたのだろう。

    どうせ人は変わらない。優午自身は最後、生きていたのだろうか。重荷から解放されたのだろうか。
    何か少し悲しさが残る物語であった。

    読了。

  • 不思議な世界で浮遊させてくれるような作品でした。

    仕事を辞めてしまった主人公の伊藤(28歳)。
    「人生をリセットしよう」と、こともあろうにコンビニ強盗を試みます。
    この試みで、彼は二人の人物に出会います。
    ひとりは、因縁の元同級生で刑事になっていた 城山。
    もうひとりは、轟という謎の男。 
                                                                                                                                                                                                                                                                                                    
    轟に連れて行かれたのは “誰も知らない小さな島”。
    ここからファンタジーが炸裂します。
    この島の中心的存在がぶっ飛んでいるのです。
    それは、150年立ち続けている優午という名のカカシでした。
    優午は未来を見ることができ、喋ることもできます。
    島の特別なルールに、伊藤青年は徐々に慣れていきます。
    島の人たちの不可解な言葉や行動が散在し
    一方で、城山が執念を燃やして伊藤を追いかけ続けます。
    収拾がつかなくなり、読んでいて迷路に入ったような気分に。 
                                                                                                                                                                                                                                                                 
    ところが、最後の十数ページで 一気に景色が変わります。
    部屋中にばらまかれたジグソーパズルのピースが
    一瞬でシューッと一枚の絵になるように。
    まるで、優午の魔法にかかった かのようでした。
                                                                                                                                        
    伊坂幸太郎さんを読んだことがなかったので
    お勧めをいただいて、まずデビュー作から読み始めました。
    小説でしか味わえない不思議な世界。
    アリスのウサギの穴に落ちたような。
    少し前に読んだ「彼岸花に咲く花」もふと頭をよぎりました。
    これから少しずつ、伊坂さんの作品にも触れていきたいと思います。

  • 小説を読む醍醐味のひとつには、自分では想像もつかない世界を体験できること・・・ってのがあると思います。
    例えばこの荻島のような荒唐無稽な世界。江戸以来外界から遮断している島。未来が見える人語を操るカカシ、優午。島の法律として殺人が許された男、桜。嘘しか言わない画家、園山。そこに連れてこられたコンビニ強盗に失敗して逃走していた、いつも逃げてばかりの伊藤。などなど、こんな人物たちが現実世界に現れることはないでしょう。まぁ、コンビニ強盗とか殺人者とかいることにはいるけれど、普通は自分がなりたいとは思わないし、出来たら関わりたくないです。

    そんな島で殺人事件がおきます。被害者はバラバラにされたカカシ。
    それから起きるリアリティのない日常は、わたしの頭では全然思いもつかない出来事で溢れてます。非日常的空間を伊藤とともに文字で浮かび上がった小説という形で味わったとき、読者のわたしの中では、そこはリアリティのある世界にかわってしまいます。まるで自分が体験しているような。
    物語の中では、目を背けたくなる描写もあるし人も死んじゃうし、楽しいことだけではないけれど、それを文字を通して経験することで、わたしの中で想像力、理性や感情が育っていく気がします。こんな世界は本の中でしか体験出来ないことだから。フィクションにしろノンフィクションにしろ、本を読まないことはモッタナイナなぁと思ってしまうところはそんなとこです。

    逃げてばかりの伊藤だったけど、この島で彼はいろんなことを体験して考えて、そして最後にどこに向かうか決断します。
    逃げることは何だか弱いことや悪いことに思ってしまうところがあります。引け目を感じたり、自分を責めたり、逆に周囲の人たちを恨んだりしてしまうこともあると思います。
    でも、逃げることも時には必要だし、あってもいいじゃないかと読み終えたとき思えました。
    その先にいろいろ経験して考えて、そしてまた一歩踏み出す勇気が蓄えられたら。
    ちょっぴりでもそんな気持ちにさせてくれるのに、小説の力を借りることもアリですよね。

  • 今をときめく伊坂幸太郎のデビュー作。
    読もう読もうと思いつつ、他の本を先に読んでからなどと後回しにしてしまったことを後悔しつつ、それでも今年中に読めて良かったと感動しつつ、ここに紹介します(前置き長い!)。

    ジャンルで言えばファンタジックなミステリーというところでしょう。
    仙台から少し離れたところにある、100年以上も鎖国状態の荻島に、コンビニ強盗に失敗して逃亡中の主人公が連れ去られて来るところから物語は始まります。
    島で出会う奇想天外な人々には、全く度肝を抜かれます。
    いつも反対のことしか言わない園山画家、
    体重300キロのうさぎさん、島の規律として殺人を犯す桜という青年。
    そして事件は「優午」という名の喋る案山子が殺されることから始まるのですが、この非常に知的な案山子が、長年島の羅針盤の役目を果たしてきているのです。
    未来を見通す力のあるはずの優午が何故自分の死を知らなかったのか、そこから追求は始まります。
    更に、この島には足りないものがある、それは何だろう?と質問が繰り返されるたびに読者も荻島で立ちすくんでいるような気分にさせられます。

    卓越した伏線張りと小粋な会話にあふれ、時折主人公の記憶に現れる亡くなった祖母の言葉、というのも意味深に響くのです。
    シュールな世界観ながらも、優午との浮世離れしたやりとりと、主人公を追いかける警察官・城山の残忍性とのコントラストが読ませどころでもあります。
    作者である伊坂氏の、弱者への言われのない暴力を否定する強烈な願いを込めた作品とも言えるでしょう。

    この後の一連の作品にも、登場人物がリンクしているといいます。
    最初に読んだのがこの本だったのは幸運だったかもしれません。
    皆さんもぜひ、伊坂孝太郎の世界にオルグされてみませんか?

  • 不思議で夢中になれる1冊。
    ファンタジー?の世界ってこんな感じ?
    なのに妙にリアリティがあったり(仙台っていう地名とか)
    そこにさらにミステリー!?すごい。
    設定が不思議で、ファンタジーとかSFとか?そういう系はあまり手が出なかったけど、これは面白い。素晴らしい。

    ミステリー要素もすごくよかったけど、出てくる人の人間味とか、そういうのもよかった。

  • 2020(R2)11.7-11.17

    コンビニ強盗に失敗し、警察の手を逃れた伊藤は、気付くと見知らぬ島に。そこは江戸以来外界から遮断されている「鎖国の島」。
    そこで起こる不思議な出来事と殺◯◯◯事件。
    その謎を追ううちに伊藤には、この島に足りないものを見つける。

    ファンタジーとミステリーが合体したような、不思議なお話。
    途中までは時間がかかった。テンポがのんびりしている。でもそれは、後半に向けて必要な環境設定で、テンポが一気に加速したらページをめくる手が止まらなくなった。

    と書けば、★5つのはずなんだけど…。

    タイトルの「オーデュポン」の意味も理解できた。
    「この島に足りないもの」も分かった。それをもたらしたものもよかった。
    だけど、「で、それで?」感が先立ってしまう。
    「なるほど!そういうことだったのか!」感が弱い。特に「この島に足りないもの」。なぜそれ?
    その理由はきっと物語のあちこちに散りばめられていたのだろうが、読解力の乏しい僕にはそれが分からなかった。だから、あまりスッキリしなかった。

    もしかしたら、その「スッキリしないと感じる展開も含めての不思議さ」を味わうのが本書の醍醐味だとしたら、僕は完全に伊坂幸太郎の掌で説教を垂れる孫悟空だ。

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著者プロフィール

1971年、千葉県生まれ。東北大学法学部卒業。2000年『オーデュボンの祈り』で新潮ミステリー倶楽部賞を受賞し、デビュー。04年『アヒルと鴨のコインロッカー』で吉川英治文学新人賞、08年『ゴールデンスランバー』で本屋大賞と山本周五郎賞、『逆ソクラテス』で柴田錬三郎賞を受賞。ほか『砂漠』『グラスホッパー』『火星に住むつもりかい?』『フーガはユーガ』『シーソーモンスター』『クジラアタマの王様』『ペッパーズ・ゴースト』など多数の著書がある。

「2021年 『小説の惑星 オーシャンラズベリー篇』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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