オーデュボンの祈り (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 33602
レビュー : 3601
  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101250212

感想・レビュー・書評

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  • 今をときめく伊坂幸太郎のデビュー作。
    読もう読もうと思いつつ、他の本を先に読んでからなどと後回しに
    してしまったことを後悔しつつ、それでも今年中に読めて良かった
    と感動しつつ、ここに紹介します(前置き長いって!)。

    ジャンルで言えばファンタジックなミステリーというところでしょう。
    仙台から少し離れたところにある、100年以上も鎖国状態の荻島
    に、コンビニ強盗に失敗して逃亡中の主人公が連れ去られて来る
    ところから物語は始まります。
    島で出会う奇想天外な人々には、全く度肝を抜かれます。
    いつも反対のことしか言わない園山画家、
    体重300キロのうさぎさん、島の規律として殺人を犯す桜という青年、
    そして事件は「優午」という名の喋る案山子が殺されることから始ま
    るのですが、この非常に知的な案山子が、長年島の羅針盤の役目
    を果たしてきているのです。
    未来を見通す力のあるはずの優午が何故自分の死を知らなかったのか、そこから追求は始まります。
    更に、この島には足りないものがある、それは何だろう?と質問が繰り返されるたびに読者も荻島で立ちすくんでいるような気分にさせられます。

    卓越した伏線張りと小粋な会話にあふれ、時折主人公の記憶に現れる亡くなった祖母の言葉、というのも意味深に響くのです。
    シュールな世界観ながらも、優午との浮世離れしたやりとりと、主人公を追いかける警察官・城山の残忍性とのコントラストが読ませどころでもあります。
    作者である伊坂氏の、弱者への言われのない暴力を否定する強烈な願いを込めた作品とも言えるでしょう。

    この後の一連の作品にも、登場人物がリンクしているといいます。
    最初に読んだのがこの本だったのは幸運だったかもしれません。
    皆さんもぜひ、伊坂孝太郎の世界にオルグされてみませんか?

  • 伊坂幸太郎さんの一生に一作しか書けないのではと思えるあらゆる意味で恐るべき処女作ですね。本作はあの「ブラウン神父」で有名なチェスタトンさんが読んだら狂喜乱舞しそうな、まったくもってイカレタふざけたファンタジーだと思いましたね。伊坂さんの「風が吹けば桶屋が儲かる」理論が全編に流れる壮大な幻想歴史小説(ほら話)と言って良くミステリの整合性や完成度なんて全く気にせず誰もが大満足でしょう。キャラでは日比野は後の陣内だし桜は死後に千葉になりそうな気がしますね。こんなにも奇想天外でクレイジーな物語を読めて幸せ一杯です!

    これは嘘のようなホントの話ですが、今日電車に乗ってお天気猫の話を読んで駅で降りたら雨が降り出しまして傘を忘れたので(ネコではなく)濡れネズミになりましたね。まあとにかく本書はフーダニットの興味だけでなく次々に奇妙な笑える出来事の連続ですので飽きる暇がないですね。それから章を繋ぐ4種類の影絵文字、カカシと祖母と悪徳警官とお侍も粋ですよね。唯一不安なのは死神・千葉の仕事を自らが積極的に実践していると思える桜さんがとても恐ろしく今夜の夢に出て来て「理由になっていない」と一喝する声にうなされそうな予感がしますね。

    処で単なる偶然なのですが本書にも「さだまさし」の歌との一致点が2つあるのですね。喋るカカシの優午はズバリ「案山子」という名曲がありまして、もう一つはオーデュボンが愛していたリョコウバトの運命に重ね合わせるような「前夜(桃花鳥ニッポニア・ニッポン)」というこれも心に沁みる歌がありますのでご存じでない方はぜひ聴いてみて下さいね。最後に昨年に読んだ「仙台暮らし」で伊坂さんが、本作が認められた事に感謝の言葉を述べられていましたが、私も本当にこの異彩を放つ前代未聞のミステリが世に出て良かったなと心から思いましたね。

  • デビュー作とは思えないほど完成された物語だと思いました。これは読んで欲しいです。日常から離れ、あたかも自分があの島にいるような不思議な気持ちになります。本を閉じた時、そうかここはいつもの日常か…と間の抜けた気分を味わいました

  • 外部からしゃ断され時代からも取り残された島で暮らす人々とそこで起こる数々の不思議な出来事。読み進めると、ドキドキは止まらずいつのまにかその独特な世界観に引き込まれてしまっていた。
    読み終えた今は、普段何も気にしないような常識という概念も今一度考えないといけないような、そんな気がしています。

  • この人の作品は麻薬だ。もちろん本物は知らないが、依存性のある快感を感じることのできる、文のテンポのよさと、物語の世界観。私にとって非常に心地よく、物語というものの本質に触れている気がする。違う世界の話を感じることができる素晴らしい一冊だと思う。

  • 友達に勧められて読んだんだけど震えた。

    最初の方は独特の世界観に読みづらさ感じたけど、だんだん引き込まれて、最後まで早く読みたい欲が溢れて一気に読む。
    オチも最高だし、これが伊坂幸太郎デビュー作なのもビビる。
    伊坂幸太郎作品は映画でよく観てて好きだったんだけど小説だとより好きになる。

    また読みたくなるド名作

  • 小説ってこうじゃないと!と喝采をあげたくなるような、ファンファーレが聞こえるような見事な小説。読んだ後はじんわりと幸せな気持ちになります。

  • 10年ぶりの再読。突拍子もない設定なのに、妙な説得力を持つ作風がこのデビュー作から確率されていることに改めて感嘆を禁じ得ない。ミステリーともファンタジーとも区分け出来ないジャンルの不明確さで『これが私の作品です』という伊坂氏の名刺代わりな作品だと思う。当時、殆ど活字を読まなかった自分が「死神の精度」に続き、本作を読んで『小説って面白いんだな』と感じたのを思い出す(実際本流からやや外れているとはその当時思いもしなかったのだけれど…)陽気さと陰湿さが混在しながらもどこか淡々としたこの世界観がやはり好きだなあ。

  • 図書館で。伊坂さんデビュー作品。デビュー作にして伊坂さん色が全体に深く濃く散りばめられていた。絶対にあり得ない設定の中で確実に『現実』を見せられた。楽しかったなぁ。読み終わるのが本当にもったいなかった。100年以上も前からの想い。カカシの優午が好き。夢が有る物語だった♪

  • 伊坂幸太郎のデビュー作。下界から遮断された島が舞台。人語を操り未来が見えるカカシ。無残にも殺されてしまったそのカカシはなぜ自分の死を阻止できなかったのか。読み終わってみると『オーデュボンの祈り』というタイトルが秀逸。カカシはどんな思いで100年以上も、この島で、人間を見守ってきたのだろうか。カカシの気持ちを考えると胸が熱くなった。面白かった。

著者プロフィール

伊坂 幸太郎(いさか こうたろう)
1971年千葉県生まれの作家。東北大学法学部卒業後、SEとして働きながら文学賞応募し、2000年『オーデュボンの祈り』で新潮ミステリー倶楽部賞受賞、デビュー作となる。その後作家専業となり、宮城県仙台市に在住しながら執筆を続けている。2004年『アヒルと鴨のコインロッカー』で第25回吉川英治文学新人賞、同年『死神の精度』で第57回日本推理作家協会賞短編部門、2006年平成17年度宮城県芸術選奨文芸部門、2008年『ゴールデンスランバー』で第5回本屋大賞、第21回山本周五郎賞をそれぞれ受賞。同作で直木賞の選考対象となることを辞退したことも話題になった。上記受賞作のほか、『重力ピエロ』、『バイバイ、ブラックバード』、『アイネクライネナハトムジーク』など話題となる作品は多い。代表作も殆どが映画化されている。最新作に『フーガはユーガ』。

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