オーデュボンの祈り (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.81
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本棚登録 : 36626
レビュー : 3728
  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101250212

作品紹介・あらすじ

コンビニ強盗に失敗し逃走していた伊藤は、気付くと見知らぬ島にいた。江戸以来外界から遮断されている"荻島"には、妙な人間ばかりが住んでいた。嘘しか言わない画家、「島の法律として」殺人を許された男、人語を操り「未来が見える」カカシ。次の日カカシが殺される。無残にもバラバラにされ、頭を持ち去られて。未来を見通せるはずのカカシは、なぜ自分の死を阻止出来なかったのか?卓越したイメージ喚起力、洒脱な会話、気の利いた警句、抑えようのない才気がほとばしる!第五回新潮ミステリー倶楽部賞を受賞した伝説のデビュー作、待望の文庫化。

感想・レビュー・書評

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  • 殺し屋3部作を読んで以降、伊坂作品を積極的に読みたい気分になっている。(まことさん、オススメを教えていただき、ありがとうございます!)

    コンビニ強盗に失敗した伊藤が逃げ込んだ荻島は江戸時代以来鎖国をしている。島には、喋ることができて、未来を知っている案山子・優午がいたが、伊藤が来た翌日、バラバラにされ、頭を持ち去られて死んでいた…。誰が、何のために案山子を殺したのか?

    そして、島民は「この島には何かが欠けている」 という。そして、それを外の人が置いていくのだと。荻島に欠けているものとは何か?

    優午の死の真相と島に欠けているものの謎。
    大きな二つのテーマを解き明かしていく物語。

    この小説は伊坂さんのデビュー作。
    まだまだ荒削りというか、洗練されていない印象。
    読みはじめの方で感じたのは、文体がゴツゴツしていて、しかも随分地味な話だな、と。
    途中からどんどん物語に引き込まれていきましたが。

    まだ洗練されていないだけに、ありのままというか、むき出しの伊坂さんを見た気がした。

    たとえば、主人公の伊藤は、この小説の中で最も悪いヤツである城山を思い出しながらこんなことを言う。

    ー 僕は、勧善懲悪の物語が好きだ。天網恢恢疎にして洩らさず、という諺だって、好きだ。なぜなら、現実はそうじゃないからだ。

    作品からそこはかとなく感じていた伊坂さんの思いを、デビュー作でこんな赤裸々に主人公に語らせていたことに、深い感慨を覚えた。

    • まことさん
      たけさん♪こんにちは。

      早速、読んでくださったのですね。
      こんな、素敵なレビューにしていただき嬉しいです。ありがとうございます!
      ...
      たけさん♪こんにちは。

      早速、読んでくださったのですね。
      こんな、素敵なレビューにしていただき嬉しいです。ありがとうございます!

      この間、お薦めするのを後から、思い出したのですが、もし未読であれば『魔王』、あとほのぼの系で『アイネクライネナハトムジーク』なども面白いと思います。
      2020/07/07
    • たけさん
      まことさん、こんにちは!
      コメントありがとうございます!
      お褒めいただきとても嬉しいです!

      オススメいただいたものを中心に伊坂作品...
      まことさん、こんにちは!
      コメントありがとうございます!
      お褒めいただきとても嬉しいです!

      オススメいただいたものを中心に伊坂作品読んでいきたいと思っています。新たなオススメもありがとうございます!
      2020/07/07
  • 伊坂幸太郎のデビュー作。2000年発売。

    文庫版の裏表紙には非常に好奇心をそそる文が書かれていた為、とてもわくわくして読み始めた。

    ファンタジーとミステリーが融合した不思議な世界観が魅力だ。島の住民の生活感は、どうもピンとこないところがあるが、全体的に見ればそこまで気にはならない。

    物語は後半に、辻褄合わせが一気にやってくる。
    それまでは、一見必要の無い件に見えたものが、全て仕組まれている部分は、思わず唸る。

    出来事の全容は、あくまで主人公等の推察に留まるため、本当のところは不明ではあるが、概ね納得。

    以下、ネタバレ有り。

    壮大な自殺であり、プレゼントを送る物語でもある。
    個人的には、伊藤の祖母についての、伊藤の内情を後半にもっと掘り下げるのも有りだったのではないだろうか、と思う。

    園山の件についても、もっと深く知りたい部分だ。

    桜の存在は、非常に独特であり、この島以外の価値観と最も遠いところにある。殺人を許される者として、秩序を維持する為にあるのか、どうか。いつも詩を読んでいるため、知識や哲学はどのように形成されているのか気になる。

    命の吹き込まれた案山子。優午は様々な生命体を宿し、心優しくも、残酷な一面を内包し、人間を殺し人間を救った。鳥達からオーデュボンの祈りを受け継ぎ、リョコウバトを守り続けた。
    彼は鳥達と友達だった。人間は…

    案山子の優午の思惑はいつからあったのだろう。
    百年もの歳月に、何が優午の手から溢れたのだろう。

    どうせ人は変わらない。優午自身は最後、生きていたのだろうか。重荷から解放されたのだろうか。
    何か少し悲しさが残る物語であった。

    読了。

  • 今をときめく伊坂幸太郎のデビュー作。
    読もう読もうと思いつつ、他の本を先に読んでからなどと後回しにしてしまったことを後悔しつつ、それでも今年中に読めて良かったと感動しつつ、ここに紹介します(前置き長い!)。

    ジャンルで言えばファンタジックなミステリーというところでしょう。
    仙台から少し離れたところにある、100年以上も鎖国状態の荻島に、コンビニ強盗に失敗して逃亡中の主人公が連れ去られて来るところから物語は始まります。
    島で出会う奇想天外な人々には、全く度肝を抜かれます。
    いつも反対のことしか言わない園山画家、
    体重300キロのうさぎさん、島の規律として殺人を犯す桜という青年。
    そして事件は「優午」という名の喋る案山子が殺されることから始まるのですが、この非常に知的な案山子が、長年島の羅針盤の役目を果たしてきているのです。
    未来を見通す力のあるはずの優午が何故自分の死を知らなかったのか、そこから追求は始まります。
    更に、この島には足りないものがある、それは何だろう?と質問が繰り返されるたびに読者も荻島で立ちすくんでいるような気分にさせられます。

    卓越した伏線張りと小粋な会話にあふれ、時折主人公の記憶に現れる亡くなった祖母の言葉、というのも意味深に響くのです。
    シュールな世界観ながらも、優午との浮世離れしたやりとりと、主人公を追いかける警察官・城山の残忍性とのコントラストが読ませどころでもあります。
    作者である伊坂氏の、弱者への言われのない暴力を否定する強烈な願いを込めた作品とも言えるでしょう。

    この後の一連の作品にも、登場人物がリンクしているといいます。
    最初に読んだのがこの本だったのは幸運だったかもしれません。
    皆さんもぜひ、伊坂孝太郎の世界にオルグされてみませんか?

  • 2020(R2)11.7-11.17

    コンビニ強盗に失敗し、警察の手を逃れた伊藤は、気付くと見知らぬ島に。そこは江戸以来外界から遮断されている「鎖国の島」。
    そこで起こる不思議な出来事と殺◯◯◯事件。
    その謎を追ううちに伊藤には、この島に足りないものを見つける。

    ファンタジーとミステリーが合体したような、不思議なお話。
    途中までは時間がかかった。テンポがのんびりしている。でもそれは、後半に向けて必要な環境設定で、テンポが一気に加速したらページをめくる手が止まらなくなった。

    と書けば、★5つのはずなんだけど…。

    タイトルの「オーデュポン」の意味も理解できた。
    「この島に足りないもの」も分かった。それをもたらしたものもよかった。
    だけど、「で、それで?」感が先立ってしまう。
    「なるほど!そういうことだったのか!」感が弱い。特に「この島に足りないもの」。なぜそれ?
    その理由はきっと物語のあちこちに散りばめられていたのだろうが、読解力の乏しい僕にはそれが分からなかった。だから、あまりスッキリしなかった。

    もしかしたら、その「スッキリしないと感じる展開も含めての不思議さ」を味わうのが本書の醍醐味だとしたら、僕は完全に伊坂幸太郎の掌で説教を垂れる孫悟空だ。

  • 伊藤は、気付くと見知らぬ島にいた。

    外界から遮断された"荻島"には、妙な人間ばかりが住んでいる。
    嘘しか言わない画家、「島の法律として」殺人を許された男、人語を操り「未来が見える」カカシ。

    次の日、カカシが殺される。無残にもバラバラにされ、頭を持ち去られて。
    未来を見通せるはずのカカシは、なぜ自分の死を阻止出来なかったのか?

    --

    第五回新潮ミステリー倶楽部賞を受賞した伊坂幸太郎のデビュー作。

    謎が解けていく過程はミステリ風だけど、カテゴリ的にはファンタジーのほうがしっくりくる。
    すっきり爽快な結末でもないしね。

    人生の苦しみ、悲しみ、わかりあえない辛さとどう向き合っていくべきなのか。小説には何ができるのか。そんな問いが見え隠れする。文学として読めばおもしろい。

    --

    p.432
    「優午も、同じことを考えたのかもしれない。『自分がいるから世の中は改善しないのだろうか』たぶん、そんなことを考えたのかもしれない」
    「どういうことだ」
    「優午は、未来のことを誰かに喋っても、結果が変わらないことを知っていたんだ。どの可能性を考えても、世の中は良くならない。そのうちに、未来がわかる自分自体が原因じゃないか、と疑いたくもなったかもしれない」

  • 何とまぁ、シュールな世界(笑)
    新潮ミステリー倶楽部賞をとったというので、きっとジャンルはミステリーなんだけど、ミステリーのおどろおどろしさはなく、およそ現実的でないシュールな世界で、あくまで軽快なテンポで話は進む。これが、伊坂の処女作だというから驚き。
    ラッシュライフ、重力ピエロを読んだときは「んー微妙」と思ったけど、これから読むと、伊坂ワールドは入りやすいと思われる。
    物語の雰囲気は、村上春樹の、「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」に近い感じ。

    ただ、普通に面白いのは面白いんだけど、なんだか女を一段下に見てるんだな。何で毎作、猟奇的な変態がでてきて、女は虐げられるんだろう。。とか思っちゃうの興ざめな奴は私だけか。

    コンビニ強盗に失敗し、逃走していた伊藤は、気付くと外界と隔絶された孤島、「荻島」にいた。そして、そこはゆるりとした空気の流れ、妙な人たちが生活していた。

    犬に似た、案内役?の日比野。
    愛妻家の郵便屋、草薙と、その妻、百合。
    自由に人を裁ける島の法律、桜。
    妻を殺されてから、うそしか言わない画家の園山。
    唯一、ボートで外界と行き来ができる轟。
    巨漢すぎて動けない、うさぎ。
    もう一人の外部から来た男、曽根川。
    そして、未来を見ることができる、案山子の優午。
    (どうでもいいけど、桜は、小栗旬のイメージ。冷酷な面に、拳銃を持たせたらきっと似合うだろう。)

    優午が死に、その真相を追う数日間。
    謎の伏線をたくさんちりばめ、そして一気につなげて回収にかかる手腕はお見事。
    ちょっと最後はあっさりしすぎ?とは思ったけれど、ちょっと予想していた。小栗が冷静に拳銃向けるイメージがあったので。

    ところで、人が死んだりしてミステリー仕立てになってるけど、題名の「オーデュボンの祈り」は、絶滅してしまったリョコウバトの挿話からきてるのね。そして、リョコウバトは、本作でのキーでもある。
    「優午は人間に復讐したのかもしれない」
    裏に隠されたメッセージなんて高等なものは、私にはわからないけど、作品の全体からは、人間のバーカって、聞こえてくるような気がした。

  • 伊坂幸太郎さんデビュー作。期待していた面白さではなく、なんとも言えない不思議な物語だった。
    優午がどうしてもハウルの動く城のカブのイメージに重なる。

    • factoryさん
      私も感想で書いたのですが、ジブリの雰囲気を感じてました。不思議な世界観ですよね。
      私も感想で書いたのですが、ジブリの雰囲気を感じてました。不思議な世界観ですよね。
      2020/09/24
    • りきさん
      factoryさん、コメントありがとうございます。そうですね。この本は私の伊坂幸太郎さんのイメージと少し違っていたので驚きました。
      factoryさん、コメントありがとうございます。そうですね。この本は私の伊坂幸太郎さんのイメージと少し違っていたので驚きました。
      2020/09/25
    • factoryさん
      伊坂幸太郎はまだオーデュポンの祈りとゴールデンスランバーしか読んでないので、他が楽しみになりました!
      伊坂幸太郎はまだオーデュポンの祈りとゴールデンスランバーしか読んでないので、他が楽しみになりました!
      2020/09/25
  • 井坂幸太郎さんデビューしました☆
    優午というカカシは未来を見つめることができるカカシ。100年以上前からいる。萩島という閉ざされた島で展開される物語。
    この作品は描写がグロいので必要以上に世の中を恐れたりトラウマを持ってしまうかもしれないので大学生以上にオススメしたいです。
    島民の人達が最初は誰も共感できず挫けそうだったけど、物語が終わる頃には、みんないろんな苦しみを持ちながらも生きる善良な人々だったことがわかってゆきます。容易に理解されにくい痛みに光を当てようとする作者の姿勢も暖かくて好きです。法学部卒というプロフィールにうんうんといった感じです。
    オーデュボンはフランスの動物学者さんで20億羽で飛ぶリョコウバトを見ました。彼は人間の身勝手で絶滅してゆくハトをただ見ているしかなく、秀逸な絵でその姿を遺します。彼の死後数年でハトは絶滅。談
    名探偵は、犯人を当てられるけど事件を防げない。が、優午は信頼できる人と、カカシとしての命も渡して島の人達を守りました。島民みんなのよりどころだった優午は、見ているだけじゃなく行動しました。その賢さと愛に胸がいっぱいです。人間は絶滅してしまうのか、という問いを含んだ物語。
    優午は、絶滅をもどうこうしたかったのだろうか。島の人が、友人達が、あるべき人らしく、呼吸するように自然に、のびやかに日々を楽しんで、愛して、歌って、語って、そこに音楽があればなおいい、そんな風に願っているんじゃないかなぁって思いました。それは桜もそうであってほしいです。詩と花だけをその手にできる日がきますように。
    ただ、慈しみあい、愛が繋がってゆけば、絶滅も予言も無力になる。優午はそれを知っていたのではないかと思います。祈り、というタイトルにいろんな想いを感じます。その未来がたやすくなくても、信じたい未来です。
    「どうして優午は自分の運命をわからなかったんだろう、もっと言うと、なぜ逃げなかったんだろう」っていう主人公達の最初の疑問は、子どもの頃イエスさまに持っていたものとおなじなことを読みながら懐かしく思い出していました。

  • 伏線の魔法にかかってしまい、そんなバカなという設定にどんどん引き込まれた。
    伊坂幸太郎さんも、谷川俊太郎さんを読んでるんだなぁ。好きなこととか、いろんなこと、ぼくと似てる。ほんとに。
    いつか伊坂幸太郎さんがビックリして、笑い転げるような小説を書く!!
    伊坂さんのデビュー作。

  • 私にとっての伊坂さんとの出会いの1冊です。
    主人公目線での、不思議な街での不思議な人々との日々。
    元々こういうストーリーが好きなので、どんどん読み進めました。
    また、この小説の1番大好きなところはラストです。
    ずーっと、この街に足りない何か、読者に何が足りないの??と引っ張っているもの、それがラストで『音楽だった』と解き明かされます。完全に痺れました!
    伊坂さんファンなら彼が大の音楽好きということはご存知なので、そこまでの衝撃はなかったのかもしれませんが。。。
    世間の評価はもっと高くて良いと思うー!

    • kakaneさん
      よーえりさん、こんばんは。

      あまりに各本への感想、評価が私とおなじなのでコメしてしまいました。100万回猫のチープさや、オーデュポンへの爽...
      よーえりさん、こんばんは。

      あまりに各本への感想、評価が私とおなじなのでコメしてしまいました。100万回猫のチープさや、オーデュポンへの爽やかさ、まだまだ重なる評価がありすぎますが、今後もコメ楽しみにしてます。
      2018/01/21
    • よーえりさん
      kakaneさん、こんばんは☆
      完全に自分の記録用の、自己満足な感想文なのですが…コメントいただき&共感いただきとても嬉しいです!!
      kakaneさん、こんばんは☆
      完全に自分の記録用の、自己満足な感想文なのですが…コメントいただき&共感いただきとても嬉しいです!!
      2018/01/21
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著者プロフィール

伊坂 幸太郎(いさか こうたろう)
1971年千葉県生まれの作家。東北大学法学部卒業後、SEとして働きながら文学賞応募し、2000年『オーデュボンの祈り』で新潮ミステリー倶楽部賞受賞、デビュー作となる。その後作家専業となり、宮城県仙台市に在住しながら執筆を続けている。2004年『アヒルと鴨のコインロッカー』で第25回吉川英治文学新人賞、同年『死神の精度』で第57回日本推理作家協会賞短編部門、2006年平成17年度宮城県芸術選奨文芸部門、2008年『ゴールデンスランバー』で第5回本屋大賞、第21回山本周五郎賞をそれぞれ受賞。同作で直木賞の選考対象となることを辞退したことも話題になった。上記受賞作のほか、『重力ピエロ』、『バイバイ、ブラックバード』、『アイネクライネナハトムジーク』など話題となる作品は多い。代表作も殆どが映画化されている。最新作に『フーガはユーガ』。

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