重力ピエロ (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (485ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101250236

感想・レビュー・書評

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  • 『本当に深刻なことは、陽気に伝えるべきなんだよ。重いものを背負いながら、タップを踏むように…』
    こういう考え方は好き!カッコ良いし、何があっても飄々と生きていきたい。
    内容は、家族愛というほがらかな内容ではないけど、強い絆で結びついているのは感じさせる。
    遺伝子レベルの繋がりではなく。
    この結末で、幸せになれるのかは、神のみぞ知る。
    ちなみに、
    この家族、何か品があるというか、うちとは全然違う…(当たり前か^^;)
    会話に「ガンジー」とか「クロマニョン人」とか、今まで一度も出た事ない…
    「さとみロス」とかの芸能ネタか、「焼肉」「焼き鳥」などの低次元なヤツばっかり…関西なんで、オチはあるけど。
    こんな会話が出来るとこは羨ましい!

  • 泉水と春。2人は兄弟だが父親が異なる。
    弟の春は母が強姦魔に襲われてできた子だった。
    彼等が大人になってから、連続放火とその火事現場を予見させるグラフィティアートが出現する。これらの謎解きに取り組んだ末に訪れる真実とは・・・

    目次をみた途端、その余りに細分化された章にクラクラしてしまった。ところが読み進めると、この章の切替のおかげで、幾分間延びした感じの構成が輪郭を保ってくれていた。ても目次一覧でみるとやっぱり凄い・・・笑

    過去に起こった辛い事件が卑劣すぎて、その事実を知った春の生き方に胸が詰まった。きっと自分の存在自体を無くしてしまいたかっただろうし、危うい精神状態になるのも無理はないと思う。
    一方で、そんな春のことを確かな愛で守ろうとした家族の姿にも、苦しくて胸が張り裂けそうになった。

    伊坂幸太郎さんお得意の本線からの脱線と比喩が巧みで、ウィットに富んでいた。伊坂ワールド全開なので、好きな方には堪らない作品だと思う。
    ただ展開が緩やかな上に、多様な引用の影響で、私は途中で何度か脱落しそうになった。そんな時ラッシュライフぶりの泥棒の黒澤さんに再会出来たので、何とか気持ちを繋げて読むことが出来た。

    ミステリー要素は控えめだったが、辛い過去の事件を抱えて生きる家族の姿がよく描かれた作品だと思う。出来れば、本線から逸れてしまっても、父だけでなく母も存命のままで描いて欲しかった。

    読後、改めてタイトルの『重力ピエロ』の意味がジワジワと沁みてくるような作品だった。

  • 兄弟の会話。親子の会話。この家族の間で繰り広げられる言葉の数々がとても印象的でした。お互いを尊重し信じ合い、なにが起きても動じないような揺るぎない根っこを持っている家族です。

    「おまえはお父さんに似て・・・」とか「家を継ぐのは長男の役目」とか「あの子がグレたのは継母だから」とか「男の子を産め」とか。例えば、お家の存続のためにもDNAや血の繋がりといったものを大事にしたがる風習がわたしの周りでは当たり前のように蔓延ってます。
    これがとても息苦しい。雁字搦めにされてしまいます。
    でも、はたっと気づきます。家族にとって血とか遺伝子とかってそんなに大切なこと?家族として愛しあうことにそれが必要条件なわけ?
    んっなことないだろう!もっと大切なことがあるじゃないか!!
    凝り固まった固定観念にガツンと衝撃を与えてくれる物語でした。
    読んでよかったなと素直に思えました。

    心に残った場面のひとつに、兄の泉水が辛い出来事によって誕生した弟の春のことについて、自分の内なる声と問答する場面があります。
    春が生まれたことは正解か。では母親に起きた事件も正解なのか。おまえの将来の妻に同じことが起こったら、子どもを産ませるのか。おまえの父親は誤っているのか・・・
    おまえの言ってることは矛盾じゃないかと問われれば、「知るか!」「矛盾だ。悪いか」とためらうことなく激昂しただろうと泉水は思います。

    人生の岐路に立ったとき、どうすればいいのかなんて自分で考えるしかない。どちらを選んだとしても、その先には正解なんてない道が続いているのでしょう。他人に理不尽だと思われようとも、憐れみや同情などのいらぬお世話にあおうとも、無責任な言動に振り回される必要なんかさらさらこれっぽっちもないんですよね。
    矛盾でなにが悪い、それが自分の選んだ道だ、文句あるか!って堂々としてたらいいんだなって、目の前がさぁーっと開けました。

  •  初の伊坂幸太郎作品。人の中に存在する苦しさと温かさが相互に表現されている物語だと思った。素敵な言葉が沢山出てきて、世の中は辛いことが沢山あるけれど、素敵な場所でもある。そう思った。もっと彼の作品を読んで、彼の作り出す世界観に出会いたい。と思う。

     美しく前向きな母と器の大きな父、二人の兄弟。苦しい闇を抱えた4人家族だが、温もりに満ち溢れていた。

     弟(春)は、その生い立ちから「生きてることはつらい」と兄に漏らすことがあった。
    「子供の頃から大事な時には兄貴がいた」「俺たち兄弟は最強なんだ」そう話していた。兄をこの上なく信頼し、慕っていた。彼も弟のことを大事にしていた。

     これから辛いことが待ち受けていても、「君にはお兄さんがいるよ」と声をかけてあげたい。

     父親の懐の深さに涙した。おしかけてきた母のことを始め、家族がどんな状況になろうとも受け入れていく。覚悟と強さ、優しさを兼ね備えた素敵な人物であると思った。

  • 「春が二階から落ちてきた」
    詩的で魅惑的なフレーズで始まる、兄と弟のお話。

    あと連続放火と遺伝子と、グラフィティアートと癌の父と強姦に遭った母と、ストーカーの女、黒澤や伊藤、ガンジーにクロマニョン人と。

    連続放火の犯人探しはミステリー的であるものの、
    リアルでスタイリッシュな会話劇から綴られる、
    伊坂ワールドにどっぷり浸かれる家族の物語。

    「本当に深刻なことは、陽気に伝えるべきなんだよ」

    いつも笑っているピエロの素顔は、悲しみに泣き、怒りに震えていた。

  • やはり伊坂幸太郎ワールドは面白い。
    重苦しい話題だけれど読み進めずにはいられない文章の面白さ。引用も良いしユーモアたっぷりな言い回しが最高です。
    そして主人公たち家族の絆が本当に良い。

    『俺たちは最強の家族なんだ』

    これを言える父親の力強さといったら。

    久しぶりに伊坂幸太郎作品を読了しましたがやっぱり満足でした。

    ここの感想には関係ないけれど、この9月に殺し屋シリーズの新作も発刊されるので楽しみです。

  • なんというか、哲学的?な感じで難しいところもあるけど、最後はウルっと。

    途中途中に過去のエピソードが挟まっていて、それがかなりある。単調なので、一気読みはできない本だなと思った。
    最初に目次見た時にビックリしたぐらい細かく章が分けられているので、少しずつ読み進めるタイプの本として読ませていただいた。

    伊坂さんの本は読む順番が大事そうだな…あまり意識しないで手に取っちゃってるなぁ。

  • 小難しい歴史や偉人の言葉を引用して、ウィットな表現でハートフルな内容を訴える小説です。
    その感じが伊坂幸太郎っぽくて、安心して楽しめました(笑)

    「おまえが仮に法を犯しても、そこには何か理由があるんだ、と俺は信じるよ。俺は社会よりも、俺の家族が大事なんだ。」

    これは主人公たちのお父さんのセリフですが、社会的には間違っていても、子供の味方でいてあげたいという気持ちって、親だからって当たり前ではないと思います。
    私も、子供から好かれ、子供に対しても社会よりも家族が大事なんだって言えるお父さんになりたいと思いました。

  • 伊坂ワールド全開で良かった。
    真実が明かされていくと、重い内容だが、互いに家族を思いやる気持ちが溢れていて好きな1冊。

  • 2019( R1)11.30〜12.11
    異父兄弟の二人が、連続放火事件の謎を追うことを通して、弟の出生の秘密と家族の大切さが明らかになっていく物語。

    初“伊坂幸太郎”作品だった。
    「この人、頭いいんだなあ。」というのが第一印象。兄弟の会話からそんなことを感じた。

    物語の展開はミステリー風で読みやすい。
    更に、場面ごとに小見出しがついており、「ちょくちょく読み」する私には、区切りがはっきりしていてありがたかった。

    物語自体には、もしかしたら賛否両論あるかもしれない。
    私は“賛”であるが、“否”の部分も持ち合わせている。

    だから、もう少し伊坂作品に触れてみようと思う。

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著者プロフィール

1971年千葉県生まれ。東北大学法学部卒業。2000年『オーデュボンの祈り』で、「新潮ミステリー倶楽部賞」を受賞し、デビューする。04年『アヒルと鴨のコインロッカー』で、「吉川英治文学新人賞」、短編『死神の精度』で、「日本推理作家協会賞」短編部門を受賞。08年『ゴールデンスランバー』で、「本屋大賞」「山本周五郎賞」のW受賞を果たす。その他著書に、『グラスホッパー』『マリアビートル』『AX アックス』『重力ピエロ』『フーガはユーガ』『クジラアタマの王様』『逆ソクラテス』『ペッパーズ・ゴースト』『777 トリプルセブン』等がある。

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