フィッシュストーリー (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (338ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101250243

感想・レビュー・書評

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  • 「動物園のエンジン」
    「サクリファイス」
    「フィッシュストーリー」
    「ポテチ」
    中編が四作品収められていて、題名を見ただけであの話だとすぐに思い出せるくらい、それぞれが個性的な作品集だった。
    ストーリー展開が上手くて引き込まれるし、他の作品とリンクしているところを発見するたびに、思わず顔がほころんでしまう。

    表題作の「フィッシュストーリー」がよかった。
    歌詞をある小説の一説から引用した、売れないロックバンドの最後のレコーディング曲が世界を救うという壮大な話。
    最終話の「ポテチ」も、とてもいい話で泣けてくる。
    前作で活躍した黒澤も登場するし、伊坂ワールドの魅力が満載の、貴重な一冊だった。

  • 著者の物語は、なんだかセンスがいいんですよね。「フィシュストーリー」「ポテチ」は映像化されたものを、昔観ています。原作が、どんな感じなのかと思い読みました。それぞれの短編中編小説に味があります。個人的に好きなのは「ポテチ」かなあ。私の表現が陳腐だと思いますが、人情物。ウルっと来ました。ところで、著者の作品の映像化には濱田岳さんの出演が多いなあ。いい役者さんですねえ。

  • 伊坂幸太郎さんの本を読んでいて本当にすごいなと思うのは、登場人物を忘れずに覚えていられること。私の物覚えが悪いだけかもしれないけれど、登場人物に魅力がなかったり曖昧なキャラ設定だったりすると、ストーリーもすぐぼやけちゃう。

    今回もキャラが確立されているからストーリーに入り込みやすかった。あと、会話が魅力的。変化球が多くてイギリス人のジョークみたいで好き。

  • 4編からなる中・短編集。
    登場人物が作品を超えてリンクするので、本当に面白い。
    伊坂氏は文章、構成とも素晴らしい。
    伊坂作品はすべて読んで揃えたいと思いました。
    「アヒルと鴨~」という面白い作品があるらしい。
    探してこなきゃ。。

  • 中編小説4つが詰まったお買い得?な1冊。
    物語の展開もさることながら、登場人物の言葉一つ一つが実に印象深い。

    「サクリファイス」の中で黒澤が答えた「人を信じてみるというのは、人生の有意義なイベントの一つだ」は特に印象深かった。
    自己防衛の言葉なのか、戯けてみせたのか、相手に対する本心での信頼か、、、どちらにしても自分が置かれた環境の場面場面でこういう気の利いた切り返しができるようになりたいな、と思う。

    あと、笑いたくなったら「ポテチ」を読み直そうと思う。
    「これ一枚一枚はポテトチップというのが正解なんでしょうね」とか、一見しょうもないことにも真剣さを映し出す言葉って、見ていて楽しい。

  • 閉園後の夜の動物園での男の不審な行動を探るものや売れないバンドが制作した曲がその後何十年後もひっそりと誰かに受け継がれているものを描いた物語から成る伊坂幸太郎の短編集。

  • 「英語で『fish story』 ってのは、ほら話のことだ」(205p)

    伊坂は「ほら話」の力を信じているから、ほらの中に真実があると信じているから、 小説を書いていられるのだろう。

    「だいたいさ、正義なんて主観だからさ。そんなのふりかざすのは、恐ろしいよ」
    「おまえはいつも難しいことを言う」と父が苦笑した。
    「だから、結婚できないのかね」母がまた言う。(148p)

    そして、多分「正義」を信じている。(私と同じように)ずいぶん捻くれた信じかた 、だけど。

    「フィッシュストーリー」他三遍の中編含むこの本、伊坂ファンとしては珍しくこのの作品を見落としていた。同じような題名が多いので、読んだものと思っていたみた いだ。今回映画「ポテチ」上映を記念して読んでみた(これを書いている時点ではまだ未鑑賞)。帯に出演者の名前に、濱田岳、木村文乃、大森南朋、石田えりの名前がある。主人公今村に濱田岳は決定しているだろう。となると、ちょっと捻くれた恋人大西は木村文乃という新人なのか。多分黒澤は大森南朋だろうな。脳内映写をしながら読み進めていったのだけど、途中で話の大筋は分かってしまって、何処に落ちるのかだけが関心事だった。木村文乃の出来が総てを決めるような気がする。結局「ゴールデンスランバー」のような多くの伏線を回収する爽快感は無い。一体これをどうやって二時間の映画に仕上げるというのか、私の関心はそちらに移って行った。

    「これ、いい曲なのに、誰にも届かないのかよ、嘘だろ。岡崎さん、 誰に届くんだよ。俺たち全部やったよ。やりたいことやって楽しかったけど、ここまでだった。届けよ、誰かに」五郎は言って、そして清々しい笑い声を上げた。「頼むから」(200p)

    そして伊坂は「希望」を信じている。(私と同じように)ずいぶん捻くれた信じ方だけど。

    そして、映画を見た。配役予想は全員合っていた(←流石、私)ところが、想定外だったのは、映画作品には珍しい中篇映画だったのです。見終わった直後に書いた感想をそのまま載せる。
    評価は五点満点で四点。

    原作を4日前に読んだばかりだった。こんな中編を何処まで膨らませるのかと思いきや、どんどん進んで行ってあっという間にラストへ。後で確かめると、たった68分の中編だった。 いつも通り、原作通りだ。若葉さん役の木村文乃があんまりすれっからしじゃないのは意外だったけど、これはこれで良い。本で読むより展開が速くて、ついついラストでは、若葉さんと同じで「たったこれだけのことなのに」泣いている私がいた。結果を総てわかっている筈なのに…。いや、一つだけ。中村監督が重要な役で出ていて、初めてお姿拝見したけど、名前と作風からしてもっとスリムな人だと思っていました(^_^;)。

  • 10年以上前に読んだかな。
    なんかちょっとした行いが他人にちょこっと影響を与えて、さらにその他人の行いが、また別の他人に影響を与える。
    そんな繰り返しによって世界の大きなことにポジティブにもネガティブにも影響を与えていく。

    現実でも身近のちょっとした行いが、世界を変えていると思わせた一冊。

  • 4つの中編集。
    伊坂さんらしいユーモアが随所にちりばめられていて、スイスイ読めた。
    他の作品の登場人物が出てきたりするので、そちらもまた読みたくなる。
    個人的には、「サクリファイス」が一番面白かった。

  • ニヤニヤと幸せな気持ちになれる1冊。絶妙な言葉遣いが好き。

  • 伊坂幸太郎さんの描く登場人物が好き

  • 黒澤さんがかっこよかった

  • 伊坂さんの小説は読んでいて怖くなるところが結構あるけど、その中にもコミカルなところもあって、読みやすい。
    黒澤さんが出るとなんだか安心する。ちょっと、死神シリーズの千葉に似てるなあって思ったし、もしかして死神?って思った瞬間もあった。
    バンド好きな人間なので、フィッシュストーリーはどう考えても好きだった。
    ポテチは登場人物みんなのキャラクターがいい感じにリアルで、普通でもなくて、良い!
    最後、匂わせる感じじゃなくて、ちゃんとスカッとさせてくれてよかった。。笑

  • この作品好きだ。何処となくオーデュボンの祈り、重力ピエロに似てる。

  • ハイジャックを制圧した彼がかっこよすぎる

  • 3.8
    表題作のフィッシュストーリーが好き
    どこかでつながっているのを時代を超えて、語り手を変えて、読み進めていき、最後はほっとしたような爽快感あり

  • 再読。またこれ読むと他の作品ももう一度読みたくなる。出てくる人物が他の作品で繋がってるので頭の中で相関図の線を引っ張りワクワク。さらにああ、この短編があの作品の軸なんだと再認識。

  • 映画を観て、久々に読み返してみました。

    「フィッシュストーリー」は、こんなに短いお話だっけ?と思いました(笑)いいバンドだなぁ。曲中のつぶやきは映画でも小説でもぐっと胸にきますね。
    正義の味方の瀬川はやっぱり魅力的で、世界を(結果的に)救ったバンドのマネージャ ーの岡崎さんのお人好しさが素敵だ。

    けっこう内容忘れていましたが、黒澤の出てくる「サクリファイス」と「ポテチ」がおもしろかったです。

    「サクリファイス」の陽一郎と周造が村のために払った犠牲が切なかったです。黒澤の「正しいかどうかは別にして、あんたは偉いよ」という軽さがうまく言えないけれど、いいなぁと思いました。
    このお話で国の政治家と村の村長とを比べているところが伊坂さんっぽかったです。

    「ポテチ」は今村のすっとぼけっぷりがおもしろくてところどころ噴き出してました。
    最後はちょっとうるっときた・・・
    黒澤のそっけない優しさみたいなのがよいですね、自分では否定してますが(笑)
    案外人のために動いちゃう(笑)

    黒澤は活躍(?)するし、他の伊坂作品の片りんがチラチラしてるしで、面白くて濃い一冊でした!

  • 松岡茉優案件。
    大好きな俳優の松岡茉優が本好き、読書好きと知り、彼女が読んだであろう本を、僕も読んでみようと思ったことが僕の読書動機。この文庫本に収められている『ポテチ』の映画版に“若かりし”彼女が出演していた。当時の彼女へのインタビュー記事には、伊坂幸太郎の物語は以前から読んでいたという趣旨の話が載っていた。具体的なタイトルの記述がなかったので、僕はこれから入手可能な伊坂幸太郎の物語を読み続けることにした。僕にとって伊坂幸太郎は、まだ2冊目。1冊目は『仙台ぐらし』エッセイ集だった。
     
    『動物園のエンジン』
    冒頭の一編は、いわばアイドリング状態。手ごたえを掴み損ねてしまったのは残念だけど、それは読者としての僕の至らなさ。申し訳ありません。

    『サクリファイス』
    黒澤が「こもり様」として取り込まれてしまう物語なのかと思った。安部公房かよ、と、早合点。
    エンディングの「だから?」それを言っちゃお終いかも。黒澤の執念というか、彼は確信を得たいと思っていただけ。職業柄かな。

    徐々にシフトアップ。

    『フィッシュストーリー』
    “ほら話”語源は釣果を話すときに“盛って”しまう釣り人の習性から、ってことでしょうね。面白い。
    「争いは全部、正義のために起こるんですよ」
    正義とは個々の解釈だし、それなら個々の胸の内だけで、やりくりしなければならない。“正義”とは、わがままを正当化する常套句。押しが強いね。
    「届けよ。誰かに」切実。僕も届けたい。「誰かに」とは言わない。僕には具体的に、届いてほしいと願う「誰か」がいるから。
    おすすめしたい快作。

    トップギアまでシフトアップ。
    心地良いクルージング。

    『ポテチ』
    予備知識をまったく持たずに読み始めるのは常のこと。ふたたび黒澤が登場で、お、となった。読み終えて知ったのは黒澤のこと。彼は他の物語にも登場するらしいですね。今後のためにも予備知識はこれくらいにしておく。
    映画版は観ていないけれど、主要キャストだけは、どうしても見聞きする機会があり、彼らをイメージしながら読んだ。一際、情景が脳裡に浮かんだ。
    終盤の野球観戦の場面で、今村の運命の秘密が明らかになってゆく展開には、不覚にも泣かされてしまうという想定外の事態。渾身の一打を目の当たりにした。

    トップギアから気持ちよくシフトダウンが決まった心境。穏やかに減速して日常への回帰。

  • いつか読んだような、読んでないような
    尾崎、よくやったよ

著者プロフィール

1971年千葉県生まれ。東北大学法学部卒業。2000年『オーデュボンの祈り』で、「新潮ミステリー倶楽部賞」を受賞し、デビューする。04年『アヒルと鴨のコインロッカー』で、「吉川英治文学新人賞」、短編『死神の精度』で、「日本推理作家協会賞」短編部門を受賞。08年『ゴールデンスランバー』で、「本屋大賞」「山本周五郎賞」のW受賞を果たす。その他著書に、『グラスホッパー』『マリアビートル』『AX アックス』『重力ピエロ』『フーガはユーガ』『クジラアタマの王様』『逆ソクラテス』『ペッパーズ・ゴースト』『777 トリプルセブン』等がある。

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