砂漠 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (546ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101250250

感想・レビュー・書評

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  • 別の本を読んでる途中だったんだけど、些細なきっかけから久しぶりに読み始めたら止まらず、最後まで一気に読んでしまいました。

    社会を砂漠に例えて、「砂漠を語るにはまずオアシスを語る必要がある」っていうサンテクジュペリの引用から、人生のオアシスである大学生活が描かれます。

    これは西嶋のために書かれた本で、僕らが西嶋に出会うための本だと思いました。

    こんな人が本当にいて欲しいなって思わされる伊坂幸太郎のキャラクターはやっぱり素晴らしいし、広大な砂漠を前にして「もっとこうだったらいいのに」って僕たちが思ったり、実際に行動したりするのはとても大事なことで、そうさせることが、芸術のいくつかある役割の内の大切なひとつだと思うんだけど、伊坂幸太郎はちゃんと作品に還元してて偉いなと思いました。

    「俺たちがその気になればね、砂漠に雪を降らせることだって、余裕でできるんですよ。」

  •  伊坂幸太郎が、大学生の生活を書くとこうなるのか。よくもまあ、こんなに同じ作風で、違ったテーマで作品を生み出せるもんだなあ。


     北村、東堂、西島、南。麻雀パイの字を持つという理由で鳥居によって集められる四人。
     
     ああ。そうだ。必要なのだ。準備が。

     この世を効率よく生きていくためには、準備が必要なのだ。
     そして、青春には、仲間が必要なのだ。

     仲間がいたから、ホスト礼一とのボーリング対決でも勝てたし、鳥居は再び「ぎゃはは」と笑えたし、超能力のイカサマも見抜けた。南もセドリックを浮かせ・・・いや、飛ばせた。
     仲間が欲しい。

  • 無駄な時間を過ごした。なんてことはまるでない。法学部の学生北村とその友人鳥井、西嶋、東堂、南の物語。砂漠と形容される社会に出て行かなくてはならないからこそ、学生時代というオアシスを仲間とともに無意味に過ごすことは素晴らしい。物語最後の卒業式での学長からの言葉、「学生時代を懐かしんでもいいが、逃げることは絶対するな」、「人間にとって最大の贅沢とは、人間関係における贅沢である」まさにその通りだと思った。できれば学生時代に本書と出会いたかったが、彼らのように無駄な学生時代を過ごした私にとって、①砂漠から逃げず②最大の贅沢を続けていく ことの重要性に改めて気づかさせられた。

  •  同著者の小説を読んだのは『死神の精度』以来13年振り。大学時代に友人に勧められたが、リア充(という言葉が当時流行っていた)がわんさか出てくると聞いて、非リア(という言葉も当時流行っていた)の私は「読んでやるものか!」と激昂したのだった。これを学生時代に読んでいたら、自分はどんな感想を抱いただろうか。

     本小説は、東堂・南・西嶋・北村という東南西北(東西南北ではない)が名に付く4人+鳥井(一索)を中心に据えた、大学生の春夏秋冬を描いた青春小説だ。
     東堂は誰もが振り向くクールビューティー、南は大人しいけど芯の強い可愛い女の子、北村は論理的でシニカルだけどまぁ常識人、鳥井はちょっと浮薄な感じの漂うトリックスター、そして熱い理想主義を掲げた西嶋。どいつもこいつもキャラが立っており、当然大学生活を通じた彼らの成長も描かれている。会話中心の文体は読みやすく、伏線が読み手のストレスを誘発することもなく、長編にも拘わらず1日で読み終えてしまった。

     物語を大きく動かすのは、やはり「西嶋」という人物。彼はサン=テグジュペリ『人間の土地』に多少の影響を受けているらしい。大学一発目の飲み会で空気を読まない平和論を語るほどの理想主義的行動を取る彼を冷笑的に見ることもできるのだろう。所詮は街から出たことのない人間が砂漠を語るように、大学生が社会を語っているだけではないかと。

     でも、地球という狭い狭い一つの惑星の中から宇宙の全体像を掴もうとする科学者を嗤う人がいるだろうか。西嶋は、時に砂漠に対峙し、そこで時に傷付きながらも、砂漠に雪を降らせようと足掻く。そうした彼だからこそ見える景色が、あるのではないか。
     地球は水と緑の惑星というイメージがあっても、本当の顔は岩と砂と塩でできた貧弱な地盤であること、だからこそ、そこで人が生活をし、精神の営みを行うさまに感動を覚えること。そんな描写のある『人間の土地』と、[街⇔砂漠]を[大学⇔社会]に見立てたこの小説には通ずるものがある。
     そして、彼と支え合うのが、彼とはまた違った友人たちであることが、大学という世界の面白さなのかなと思った。

     「人間であるということ、それはとりもなおさず責任を持つということだ。自分のせいではないと思えていた貧困を前に赤面すること、僚友が勝ち取った栄冠を誇りに思うこと、自分に見合った意思を積むことで世界の建設に貢献していると感じることだ」(サン=テグジュペリ『人間の土地』訳:渋谷豊 光文社古典新訳文庫 p.76)
     こうした言葉に向き合って、熱くなったり悩むことはたくさんあった。それを青春という言葉でラッピングしてしまうのは、西嶋と、過去の自分を侮辱することなのかもしれない。

  • 4年間の大学生活を、北村くんの視線で描いている。
    いるよねー、という登場人物たち。
    ちょっと極端かもしれないけど、西嶋くんみたいな人、いるよね。
    こういう人は強いと思う。
    鳥井くんみたいなタイプもいるいる!
    怪我をしてしまうのは極端だけれど。

    あの4年間は本当に特別な時間なんだと思う。
    それは、卒業して社会に出てからじゃないとわからない。
    大学生活を題材にした本を読むと、いつもそう感じる。

  • 若いうちに読んでおいた方がいい、と言われていたので読んでみた本。

    もっと穏やかな日々を綴っている小説かと思いきや、意外とすごい学生生活だった!そして、世界の中での自分なんて無力だけど、その世界でもがいて一生懸命生きるのもいいかもしれない。誰に何と言われても自分の道を、信念を曲げずに進んでいくのも悪くない、と感じた。

    大学時代にこの本を読んでいたら、私も「砂漠に雪を降らす」くらいのことができたかもしれない。そして西嶋の名言集が出ることを強く願っている。

    なんてことは、まるでない。

  • 「砂漠」読みましたよ。
     自分的に簡単に言うと、これはもう「日曜の夜9時の大学生が主人公のドラマ」的ですよ。もしかしたら金曜の深夜ですよ。

    最近、伊坂さんのを読んでないと思い、ブクログで未読の内、評価の高いものを選んだんですよ。そしたらコレですよ。

     物語は爽快で、とても面白いんですよ。でも、どうしてもキャラが立ち過ぎてる彼の存在が気になるんですよ。そして言葉が真っすぐに突き刺さるんですよ。空気の読めないキモオタですよ。でもいいんですよ。実在するならば、大変ですよ。

     私は大学には行かなかったんですよ。学力や資金や思想やバブルですよ。でも、これ読んだら、行っとけば人生変わったんだろなって思うんですよ。

    砂漠は酷いですよ。
    でも逃げられないんですよ。その砂漠を泳ぎ回るってのが、生きる醍醐味ですよ。オアシスは自分で作るもんですよ。

  • 読んだことを忘れていて、まだ未読の本だと思って読み始めてからすぐに思い出した!
    出てくるみんなのキャラクターが愛らしい!!
    悲しいことが起こるし、いつも楽しい訳じゃないけど、でもこんな友達っていいなと思えるし、大学生活が羨ましく思える。


  • 「学生時代を思い出して、懐かしがるのは構わないが、あの時は良かったな、オアシスだったな、と逃げるようなことは絶対に考えるな。そういう人生を送るなよ」

    刺さった、、、

    北村たちの大学青春群像劇を読みながら
    自分の学生生活を思い出し、
    仲間と楽しく過ごしたあの時間は尊かったなぁ
    と浸っていたところ最後にこの言葉。

    「人間にとっての最大の贅沢とは、人間関係における贅沢のことである」

    目が醒めるようなフレーズが沢山でてきて、
    久しぶりの伊坂ワールドは読んでいて楽しかった。
    いや、西嶋ワールドかもしれない。

    本作を読んで、麻雀を始めようと思った。
    なんてことは、まるでなくもない。

  • 西嶋は、ピンチヒッターなのだと思う。

    野球以外に、ピンチヒッターなる役割が存在するのかは知らない。
    盤面を塗り替えるほどの一撃を、失敗が許されない条件下だと分かったうえで、発揮しなければならない(と否応なしに期待される)必然の英雄だと定義してみる。

    序盤、麻雀をしていて新入生たちの顔合わせの飲み会に遅れた西嶋という男は、一席ぶつ。

    「ちょっと、何をしんとしているんですか? だいたいね、世界のあちこちで戦争が起きてるっていうのにね、俺たちは何やってるんですか。」

    その場はシラけ、失笑が起きる。
    いわゆる、イタい奴。
    見た目も、服のセンスもイケてない。
    どこがピンチヒッターだと思うかもしれない。
    けれど、そんな彼を、それまで「耳なし芳一」だった東堂が真っ直ぐ見つめていたという描写で、章が終わるのが面白い。

    ラモーンズの話についても、そうだ。
    それまで、平和でアガることばかり考え、麻雀で一人負け続ける西嶋が、ラモーンズのボーカリストの名言について語りだすと、四人はこう重ねる。

    「何て?」
    「何て?」
    「何て?」
    「何て?」

    そして、話はあのボウリングへと展開していくのだ。

    この小説を紹介してくれた人は、西嶋の名言に触れて、大学生である自分も、何か出来るかもしれない、という熱い想いに駆られたと言っていた。

    砂漠に出掛けてはや10年の私が、今更その想いに共感出来るとは思わなかったけど、その原動力がこの作品のどこにあるのか、気になって手に取った。
    そして、冒頭の結論に辿り着く。

    ピンチヒッターは、スタメンにはない奇跡を持っているのかもしれない。
    だって、そんな人間が言うから「砂漠に雪を降らせることは、容易だ」と信じられるんじゃないか。

    面白かった。

著者プロフィール

伊坂 幸太郎(いさか こうたろう)
1971年千葉県生まれの作家。東北大学法学部卒業後、SEとして働きながら文学賞応募し、2000年『オーデュボンの祈り』で新潮ミステリー倶楽部賞受賞、デビュー作となる。その後作家専業となり、宮城県仙台市に在住しながら執筆を続けている。2004年『アヒルと鴨のコインロッカー』で第25回吉川英治文学新人賞、同年『死神の精度』で第57回日本推理作家協会賞短編部門、2006年平成17年度宮城県芸術選奨文芸部門、2008年『ゴールデンスランバー』で第5回本屋大賞、第21回山本周五郎賞をそれぞれ受賞。同作で直木賞の選考対象となることを辞退したことも話題になった。上記受賞作のほか、『重力ピエロ』、『バイバイ、ブラックバード』、『アイネクライネナハトムジーク』など話題となる作品は多い。代表作も殆どが映画化されている。最新作に『フーガはユーガ』。

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