- Amazon.co.jp ・本 (704ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101250267
感想・レビュー・書評
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2008年本屋大賞、山本周五郎賞受賞作品。約15年前の作品。
680ページの超大作、物語はケネディ暗殺事件をなぞらえながら、主人公青柳がオズワルドとして犯人に仕立て上げられ、その闇が闇すぎてそれでも無実だからこそ逃走するストーリー。
この作品の中には色んな物が含まれており、途轍もなく奥深い作品だった。
「1984」ビッグブラザー然り、ケネディ暗殺事件のオズワルド然り、ビートルズ末期のポールマッカートニー然り。
そして主軸は逃走と共に関わってくる人々と想起追想してくる青春時代の遠い記憶が織り交ざる所。
森田、樋口、カズ、轟、岩崎、そして両親。青柳本人を知る人々が今現在の彼が当時と変わらない本質の彼であるとして見ている目が全くぶれない。それは青柳本人の目も同様にぶれておらずお互いにぶれてない。彼らが今までの人生で普遍的に積んできた徳というか人間力がそうさせている。そしてそれが「習慣と信頼」という言葉に集約されている、素晴らしい。
最後の親に宛てた「痴漢は死ね」
晴子の娘がくれたスタンプ「たいへんよくできました」
秀逸すぎる。
読後、再び第三部「事件から20年後」を読んでみたが色んな真相が明らかになっておりトリックの種明かしのように感じる。読んでいる最中はあまり気付かなかったが、改めて振り返って省察すると作品の構成力が半端ない。
そして新潟の森田の墓の描写等から、この第三部は青柳本人が書いているのでは?と推測、希求してしまう。
ジャーナリストとして20年後もこの事件を追っているのだと。事件当初から思っていた青空が場所も時間も超えて繋がっているのだと。
そうであってほしいし、自分はそうと読み取りたい。
伊坂さんらしく突飛な物語、独特のユーモア満載のテンポの良さ。そして「重いのに軽い」、「軽いのに重い」の不思議な絶妙なバランス感。
最高の作品、さすがは受賞作品。
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伊坂さんが書いた過去の本屋大賞受賞作品。とても物語の世界に入り込めてハラハラしながら読んだ。登場人物がとても魅力的で、連続殺人犯までも魅力的で感動させられた。読み終えた後に第三部の事件から三ヶ月後のところを読み直した。再読させるように考えられて作品が作られているのだ。この物語は、首相がラジコンで殺されて、主人公の青柳が犯人にされる。警察は事件を穏便に解決させるために、彼を射殺しようとしてくる、相手は巨大な組織。もし現実世界で首相が爆殺させられて、自分が彼と同じ状態になったらと考えるとぞっとする。
読み始めの時から、いつもよりもページが進むのが早かった気がする。事件について色々な角度から見ていて、現実感があって、ドキドキした。森田は爆発で死んでしまったが、青柳を守った正義感は感動した。「人間の最大の武器は習慣と信頼だ」という考えからも森田の性格が出ていると思う。三浦は「人間の最大の武器は思い切りだ」と考えていて、保土ヶ谷もそう言う。私はどちらとも正しいと思う。というか人間の最大の武器はこれだけでは無いと思う。その中から何を選ぶのかはその人の価値観だ。だが、青柳は人間の最大の武器は何か自分の意思で答えていない。青柳はどれを選ぶのか知りたかった。それを書かないのもこの作品の良い所なのかもしれないが。
偉い方々は利権でしか動かないことや、マスコミが情報を正確に伝える役割を果たさず視聴者が求めてる情報を選んで報道していること、警察は事件を穏便に解決するために発砲することなどは残念だ。ニュースを見ると情報をマスコミが操作してるのではないかとか、本当は自殺ではなく警察や組織による射殺ではないかと考えてしまった。組織は本来の役割を忘れてしまっている。
結局、事件の真犯人は見つからず、死者も出してしまった。それなのに、何故か爽やかな気持ちになり、スッキリした。第五部の事件から三ヶ月後の部分で、それぞれの人物がどうなったかが書かれていることも良かった。最後の「痴漢は死ね」と「たいへんよくできました」は本当に感動した。とても面白く、登場人物も魅力的で、この作品は伊坂さんの作品の中でも傑作だと思う。 -
巨大権力が立ちふさがり単独でもがき、幾度と絶望する姿がなんとも応援したくなる
首相殺害と近年日本ではタブーな題材だが、
伝えたいことはそこではない
主人公を陰ながら護る、魅力的な登場人物達
どれも憎めず 作者の凄さかなと
ワンフレーズでサブイボが出る感想
ミステリーのどんでん返しと同じ快感
花丸です -
この作品を読んだのは2度目です。
この作品の正統派のレビューを書くとしたらなら、まず権力に対する怒りとか、マスコミや外野の人たちの恐ろしさ、本当の友情とは何かなどを書かなければならないのかもしれません。
でも、2度目に読んだので別のことを書きます。
最初は単行本が出たときすぐに買って読みました。
そして、この作品は、第5回本屋大賞受賞、山本周五郎賞受賞、映画化もされました。
私は、日本で今活躍されている作家さんの中で伊坂幸太郎さんが最も好きな作家さんなんですが、その理由として、デビュー間もない頃、作家とファンという立場ですが、2度お目にかかってそのお人柄にも触れたことがあるということもあります。一度目は『ラッシュライフ』のあと二度目は『死神の精度』のすぐあとです。
12年前になりますが、そのことをよく知っている友人に「何か伊坂さんの本を貸して欲しい」と言われ、友人が「ゴールデンスランバーがいい」というので(本屋大賞のせいだと思います)貸したら、返ってきた感想が、「私はこの人は好きじゃない。だって話を全部作っているから」というようなことを言われてしまい、慌てて「他の本も読んでみたら」と言ってみたのですが、「ううん、もうわかったからいい」と言われてしまいました。
友人の言っていることは、私はあくまでファンですが、なんとなくわかるんです。伊坂さんの作品は伏線の鮮やかな回収が特に初期の作品では技巧的に上手いと言われています。
私もこの作品に関して言えば、主人公の青柳雅春と大学時代の恋人の樋口晴子が数年の付き合いを経て別れているのが、すごく気になっていました。「この二人って別に別れる必要ないのに、ストーリーの都合上、特に理由もないのに別れた恋人同士として都合よく使うための関係じゃないのか」と私も1度目に読んだときはそういう、意地悪な自問自答をしました。
でも、今回読んだら違ったのです。
友人の次に弟にも「この本を貸してくれ」と言われ、貸したら案の定、返ってこなくなったので、今回文庫本を買って読みました。
伊坂さんはやっぱり上手いです。私は作られた話だとはもう思えなくなっていて、別れるべき運命の二人だったのだと思いました。
1度目と2度目、何が違ったのかと思うと、私の方が成長していた(と自分でいうのもなんですが)のでしょう。読みなれたというか。
この話が技巧的であるとか思うのはとんでもない間違いであると確信しました。別れた二人の、その後の物語そのものだったのですね。
そして680ページありますが、最後の500ページ以降は2度目にもかかわらず、ページを繰る手が止まらないという表現がまさにぴったりの圧巻のエンターテインメントでもありました。
『ゴールデンスランバー』というのは、ビートルズの歌の曲名にちなんだものだそうで、直訳すると『黄金のまどろみ』。「今はもうあの頃には戻れないし。昔は帰る道があったのに。いつの間にかみんな年取って…」というような歌詞があるそうです。
別れてしまった、恋人たち、逢えなくなった昔の友人達の存在の寂しさを象徴しているような気がします。
そして、後日談ですが、本を貸した友人の、当時生まれたばかりだった娘さんが、今、中学生で、伊坂さんの大ファンになられたそうなんです。「陽気なギャングとか好きなんだけど、あれってそんなに面白いの?」とこの間友人に聞かれました。
長々とすいませんでした。
そして、勝手に書いてしまって友人のAさん、読んでいらしたらごめんなさい(__)-
kurumicookiesさん♪初めまして。
フォローありがとうございます!
伊坂幸太郎さんはお薦めです。
ひとことで言えば勧善懲...kurumicookiesさん♪初めまして。
フォローありがとうございます!
伊坂幸太郎さんはお薦めです。
ひとことで言えば勧善懲悪なところとか、伏線回収の見事さが魅力です。
他にも魅力はたくさんありますが。
楽しんでください。
ひとしさん♪こんにちは。
ひとしさんはkurumicookiesさんに返信されたのですよね。
私のメールボックスにも入っていたので、コメント読ませていただきました。
ブクログさんも、色々、機能が便利になってきて、複数人で、コメント欄で語りあったりできますね(*^^*)2020/06/07 -
そうなんです。
やっぱり私のメールボックスにも返信がきましたってようなものが来ていたので(^◇^;)
ホント便利になってきましたよね!
...そうなんです。
やっぱり私のメールボックスにも返信がきましたってようなものが来ていたので(^◇^;)
ホント便利になってきましたよね!
これからもよろしくお願いします!2020/06/07 -
2020/06/08
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首相が謎の爆死。国家権力に犯人に仕立て上げられた男、青柳の逃走劇。刻々と入れ替わる状況の中で伏線がかちりと嵌まっていく。ふと小学生の頃読んだ、レ・ミゼラブルを思い出しました。(特に下水道を逃げているところ)
どんどん状況が詰みに向かっていくなかで、様々な人に助けられ、様々な手を使って捜査網をかわしていくのに目が離せません。非常に良くできた話だと思いました。
ただ「グラスホッパー/伊坂幸太郎」の殺し屋シリーズや「ジョーカーゲーム/柳広司」の方がスリリングで、あっと思わせる仕掛けがたくさんあった気がします。もっと人間も奥深く描かれていると思います。ひたすら逃走劇を見ているだけで、淡々としている感は拭えませんでした。強烈な登場人物がもっと出てきてほしかったです。
でも非日常感、自分が逃走者になったような感覚は新しかったです。
ラストは最後までやり遂げたという達成感を青柳と共に味わっている感じになりました。
それにしても、長かった~(^-^; -
仙台市街地で行われた首相パレードの最中に起きた暗殺事件。
その犯人に仕立て上げられた青柳雅春の逃亡が始まる。
私たちは普段、テレビで中継を見ているだけで、事件の裏側にある事実など知る由もなく、マスコミの流す情報によって、先入観や思い込みを勝手に植え付けられているということに恐ろしさを感じます。
大学時代に青柳と同じサークルだった森田森吾や樋口晴子、後輩の小野一夫(カズ)、バイト先の轟社長、前にいた運送会社の仲間、逃亡中に味方になってくれた意外な人物たちなどが絡み合って、過去の思い出と現在とを織り交ぜたスリル満点の逃走劇が、読む人をほんとうに飽きさせることなく進んでいきます。
物語の壮大さと、逃亡の最中にも、もう会えなくなってしまった友人たちの揺るぎない信頼性を確信して、最後は思わず泣けてきます。
この本は一度読んだだけで手放すのはもったいないような、面白さの中にも深みのある凄い作品だと思います。-
m.cafeさん、はじめまして。フォローして頂き、ありがとうございます。
伊坂幸太郎さんは『グラスホッパー』を読んで、ドキドキする展開であ...m.cafeさん、はじめまして。フォローして頂き、ありがとうございます。
伊坂幸太郎さんは『グラスホッパー』を読んで、ドキドキする展開であっという間に読み切りました。仙台の知人にこちらの作品を薦められて読みたいなと思っています。
本棚参考にさせて頂きます。よろしくお願いします。2023/11/09 -
アンシロさん、こちらこそフォローありがとうございます。
この本は、ページ数が多いので、ずいぶん前から読むのを躊躇してたんですけど、読んでよか...アンシロさん、こちらこそフォローありがとうございます。
この本は、ページ数が多いので、ずいぶん前から読むのを躊躇してたんですけど、読んでよかったです。
伊坂幸太郎さん、面白いので、少しずつ読破していきたいです。
これからもよろしくお願いしますね。2023/11/09 -
お返事嬉しいです(*^^*)
ページ数が多い本なんですね。伊坂幸太郎さん、私も少しずつ読んでいきたいです。魅力的なタイトルや表紙で気になる...お返事嬉しいです(*^^*)
ページ数が多い本なんですね。伊坂幸太郎さん、私も少しずつ読んでいきたいです。魅力的なタイトルや表紙で気になる作品ばかりです(^^)2023/11/09
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2023/12/05
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コメントありがとうございます!
お父さん、めっちゃいいキャラですよね!
このまくしたてるような、たたみかけるような、この勢い、最高(´;ω;...コメントありがとうございます!
お父さん、めっちゃいいキャラですよね!
このまくしたてるような、たたみかけるような、この勢い、最高(´;ω;`)2024/08/20
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2008年本屋大賞受賞作品。
伊坂作品は、トリッキーな印象だった「ホワイトラビット」以来2作目となります。ケネディ暗殺事件に重ね合わせ、たくさんの嘘を混ぜ合わせているとのことで、そんな潔い「作り話」だからこそたくさんの読者に支持されたのかなと感じました。
近頃は、このお話しが現実離れしていると思えなくなってきてますね。
「たいへんよくできました」 -
凱旋パレードの中、首相が暗殺される。その犯人に仕立て上げられる青柳という好青年寄りの一般市民。彼は弁明の余地もないまま警察に追われ始める。伊坂氏作風の時間と空間と視点を移動させながらの逃走劇が繰り広げられる。
「ホワイトラビット」が籠城エンタメなら、本作は、逃亡エンターテイメント。
無謀な逃亡を元カノや学生時代の友人、ちょっとした関わりの人々がその手助けをする。たぶん、読みどころは、プロフェッショナルではなく手作り感の援助、周囲の人との繋がりで 何か大きな組織に逃げ勝とうとするところかなぁ。
映画もあるようで、映像化されると面白そうな作品。小説として読むには、各場面に重複する場面があり、もう少しぎゅっと緊張感が欲しい感じ。
伏線回収となっていくが、事件に関する伏線というより、登場人物の役割への回収かな。
“逃亡”のエンタメ化は、成功していると思います。 -
伊坂幸太郎さんの作品は本作が初読みだった。
いきなり長編だったので少し尻込みしたものの、読み始めたら首相殺しの濡れ衣という設定と、青柳雅春という主人公の人間性にはまり、どんどんのめり込んでしまった。
マスコミ報道がいかに視聴率目的で操られているか、人の記憶がいかに曖昧で操作されやすいものか、まざまざと見せつけられた様な気持ちだった。
そんな中でも、やはり自分を信じてくれる人の存在は何よりも救いであり偉大だと感じた。
作中で、青柳雅春を信じて疑わなかった大きな存在…
元恋人 樋口晴子からのメモに残されたメッセージ
そしてリポーターへ負けた父 青柳平一の台詞
見えない巨大な力を前にした青柳雅春にとって、これらがどんなに心強く響いただろうと胸が苦しくなり、目頭が熱くなった。
ラストは様々な解釈が残り、読み手が読後のこの余韻をどう判断するかで、また味わい方が変わってくる作品。
そんな風に仕掛けた伊坂幸太郎さんは凄い!!
そして今から10年以上も前の作品にも関わらず、セキュリティポッドなどという犯罪の抑止、捜査情報の質や量の向上を目的とした端末が街を占拠しているという構想…
つい先日ニュースで見かけた渋谷のAIカメラ100台プロジェクトが頭をよぎった。
いやぁ…事実は小説より奇なり
まさにそんな時代になって来ているのだ。
本作は、この渋谷AIカメラ100台プロジェクトに疑問を抱く方にこそ特にオススメしたい作品。
これを機に、伊坂幸太郎さんの他の作品も読んでみようと思った。
著者プロフィール
伊坂幸太郎の作品





