- 新潮社 (2010年11月29日発売)
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感想 : 2793件
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Amazon.co.jp ・本 (704ページ) / ISBN・EAN: 9784101250267
感想・レビュー・書評
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2008年本屋大賞、山本周五郎賞受賞作品。約15年前の作品。
680ページの超大作、物語はケネディ暗殺事件をなぞらえながら、主人公青柳がオズワルドとして犯人に仕立て上げられ、その闇が闇すぎてそれでも無実だからこそ逃走するストーリー。
この作品の中には色んな物が含まれており、途轍もなく奥深い作品だった。
「1984」ビッグブラザー然り、ケネディ暗殺事件のオズワルド然り、ビートルズ末期のポールマッカートニー然り。
そして主軸は逃走と共に関わってくる人々と想起追想してくる青春時代の遠い記憶が織り交ざる所。
森田、樋口、カズ、轟、岩崎、そして両親。青柳本人を知る人々が今現在の彼が当時と変わらない本質の彼であるとして見ている目が全くぶれない。それは青柳本人の目も同様にぶれておらずお互いにぶれてない。彼らが今までの人生で普遍的に積んできた徳というか人間力がそうさせている。そしてそれが「習慣と信頼」という言葉に集約されている、素晴らしい。
最後の親に宛てた「痴漢は死ね」
晴子の娘がくれたスタンプ「たいへんよくできました」
秀逸すぎる。
読後、再び第三部「事件から20年後」を読んでみたが色んな真相が明らかになっておりトリックの種明かしのように感じる。読んでいる最中はあまり気付かなかったが、改めて振り返って省察すると作品の構成力が半端ない。
そして新潟の森田の墓の描写等から、この第三部は青柳本人が書いているのでは?と推測、希求してしまう。
ジャーナリストとして20年後もこの事件を追っているのだと。事件当初から思っていた青空が場所も時間も超えて繋がっているのだと。
そうであってほしいし、自分はそうと読み取りたい。
伊坂さんらしく突飛な物語、独特のユーモア満載のテンポの良さ。そして「重いのに軽い」、「軽いのに重い」の不思議な絶妙なバランス感。
最高の作品、さすがは受賞作品。
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理由もわからず首相の暗殺犯になる気持ち…一生わからんわ笑。国家レベルの冤罪VS一般人。そんな中でも洒落たセリフ回しで物語を重くしないのは著者らしさが色濃い。終わり方が独特で余韻が残る。
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伊坂さんが書いた過去の本屋大賞受賞作品。とても物語の世界に入り込めてハラハラしながら読んだ。登場人物がとても魅力的で、連続殺人犯までも魅力的で感動させられた。読み終えた後に第三部の事件から三ヶ月後のところを読み直した。再読させるように考えられて作品が作られているのだ。この物語は、首相がラジコンで殺されて、主人公の青柳が犯人にされる。警察は事件を穏便に解決させるために、彼を射殺しようとしてくる、相手は巨大な組織。もし現実世界で首相が爆殺させられて、自分が彼と同じ状態になったらと考えるとぞっとする。
読み始めの時から、いつもよりもページが進むのが早かった気がする。事件について色々な角度から見ていて、現実感があって、ドキドキした。森田は爆発で死んでしまったが、青柳を守った正義感は感動した。「人間の最大の武器は習慣と信頼だ」という考えからも森田の性格が出ていると思う。三浦は「人間の最大の武器は思い切りだ」と考えていて、保土ヶ谷もそう言う。私はどちらとも正しいと思う。というか人間の最大の武器はこれだけでは無いと思う。その中から何を選ぶのかはその人の価値観だ。だが、青柳は人間の最大の武器は何か自分の意思で答えていない。青柳はどれを選ぶのか知りたかった。それを書かないのもこの作品の良い所なのかもしれないが。
偉い方々は利権でしか動かないことや、マスコミが情報を正確に伝える役割を果たさず視聴者が求めてる情報を選んで報道していること、警察は事件を穏便に解決するために発砲することなどは残念だ。ニュースを見ると情報をマスコミが操作してるのではないかとか、本当は自殺ではなく警察や組織による射殺ではないかと考えてしまった。組織は本来の役割を忘れてしまっている。
結局、事件の真犯人は見つからず、死者も出してしまった。それなのに、何故か爽やかな気持ちになり、スッキリした。第五部の事件から三ヶ月後の部分で、それぞれの人物がどうなったかが書かれていることも良かった。最後の「痴漢は死ね」と「たいへんよくできました」は本当に感動した。とても面白く、登場人物も魅力的で、この作品は伊坂さんの作品の中でも傑作だと思う。 -
さすが本屋大賞!途中からどんどん読む手がとまらなくなって気づいたらあっという間に読み終えてしまいました。ラストも予想なんてしていませんでしたね。すごく長い本で最初の方は「あんまりかな?」と思っていたのですが途中からどんどん面白くなっていきました。すごくドキドキしながら読みました。またもう一度読み返してみようと思います。ぜひ、読んでみてください♡
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巨大権力が立ちふさがり単独でもがき、幾度と絶望する姿がなんとも応援したくなる
首相殺害と近年日本ではタブーな題材だが、
伝えたいことはそこではない
主人公を陰ながら護る、魅力的な登場人物達
どれも憎めず 作者の凄さかなと
ワンフレーズでサブイボが出る感想
ミステリーのどんでん返しと同じ快感
花丸です -
この作品を読んだのは2度目です。
この作品の正統派のレビューを書くとしたらなら、まず権力に対する怒りとか、マスコミや外野の人たちの恐ろしさ、本当の友情とは何かなどを書かなければならないのかもしれません。
でも、2度目に読んだので別のことを書きます。
最初は単行本が出たときすぐに買って読みました。
そして、この作品は、第5回本屋大賞受賞、山本周五郎賞受賞、映画化もされました。
私は、日本で今活躍されている作家さんの中で伊坂幸太郎さんが最も好きな作家さんなんですが、その理由として、デビュー間もない頃、作家とファンという立場ですが、2度お目にかかってそのお人柄にも触れたことがあるということもあります。一度目は『ラッシュライフ』のあと二度目は『死神の精度』のすぐあとです。
12年前になりますが、そのことをよく知っている友人に「何か伊坂さんの本を貸して欲しい」と言われ、友人が「ゴールデンスランバーがいい」というので(本屋大賞のせいだと思います)貸したら、返ってきた感想が、「私はこの人は好きじゃない。だって話を全部作っているから」というようなことを言われてしまい、慌てて「他の本も読んでみたら」と言ってみたのですが、「ううん、もうわかったからいい」と言われてしまいました。
友人の言っていることは、私はあくまでファンですが、なんとなくわかるんです。伊坂さんの作品は伏線の鮮やかな回収が特に初期の作品では技巧的に上手いと言われています。
私もこの作品に関して言えば、主人公の青柳雅春と大学時代の恋人の樋口晴子が数年の付き合いを経て別れているのが、すごく気になっていました。「この二人って別に別れる必要ないのに、ストーリーの都合上、特に理由もないのに別れた恋人同士として都合よく使うための関係じゃないのか」と私も1度目に読んだときはそういう、意地悪な自問自答をしました。
でも、今回読んだら違ったのです。
友人の次に弟にも「この本を貸してくれ」と言われ、貸したら案の定、返ってこなくなったので、今回文庫本を買って読みました。
伊坂さんはやっぱり上手いです。私は作られた話だとはもう思えなくなっていて、別れるべき運命の二人だったのだと思いました。
1度目と2度目、何が違ったのかと思うと、私の方が成長していた(と自分でいうのもなんですが)のでしょう。読みなれたというか。
この話が技巧的であるとか思うのはとんでもない間違いであると確信しました。別れた二人の、その後の物語そのものだったのですね。
そして680ページありますが、最後の500ページ以降は2度目にもかかわらず、ページを繰る手が止まらないという表現がまさにぴったりの圧巻のエンターテインメントでもありました。
『ゴールデンスランバー』というのは、ビートルズの歌の曲名にちなんだものだそうで、直訳すると『黄金のまどろみ』。「今はもうあの頃には戻れないし。昔は帰る道があったのに。いつの間にかみんな年取って…」というような歌詞があるそうです。
別れてしまった、恋人たち、逢えなくなった昔の友人達の存在の寂しさを象徴しているような気がします。
そして、後日談ですが、本を貸した友人の、当時生まれたばかりだった娘さんが、今、中学生で、伊坂さんの大ファンになられたそうなんです。「陽気なギャングとか好きなんだけど、あれってそんなに面白いの?」とこの間友人に聞かれました。
長々とすいませんでした。
そして、勝手に書いてしまって友人のAさん、読んでいらしたらごめんなさい(__)-
kurumicookiesさん♪初めまして。
フォローありがとうございます!
伊坂幸太郎さんはお薦めです。
ひとことで言えば勧善懲...kurumicookiesさん♪初めまして。
フォローありがとうございます!
伊坂幸太郎さんはお薦めです。
ひとことで言えば勧善懲悪なところとか、伏線回収の見事さが魅力です。
他にも魅力はたくさんありますが。
楽しんでください。
ひとしさん♪こんにちは。
ひとしさんはkurumicookiesさんに返信されたのですよね。
私のメールボックスにも入っていたので、コメント読ませていただきました。
ブクログさんも、色々、機能が便利になってきて、複数人で、コメント欄で語りあったりできますね(*^^*)2020/06/07 -
そうなんです。
やっぱり私のメールボックスにも返信がきましたってようなものが来ていたので(^◇^;)
ホント便利になってきましたよね!
...そうなんです。
やっぱり私のメールボックスにも返信がきましたってようなものが来ていたので(^◇^;)
ホント便利になってきましたよね!
これからもよろしくお願いします!2020/06/07 -
2020/06/08
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2023/12/05
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コメントありがとうございます!
お父さん、めっちゃいいキャラですよね!
このまくしたてるような、たたみかけるような、この勢い、最高(´;ω;...コメントありがとうございます!
お父さん、めっちゃいいキャラですよね!
このまくしたてるような、たたみかけるような、この勢い、最高(´;ω;`)2024/08/20
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首相が謎の爆死。国家権力に犯人に仕立て上げられた男、青柳の逃走劇。刻々と入れ替わる状況の中で伏線がかちりと嵌まっていく。ふと小学生の頃読んだ、レ・ミゼラブルを思い出しました。(特に下水道を逃げているところ)
どんどん状況が詰みに向かっていくなかで、様々な人に助けられ、様々な手を使って捜査網をかわしていくのに目が離せません。非常に良くできた話だと思いました。
ただ「グラスホッパー/伊坂幸太郎」の殺し屋シリーズや「ジョーカーゲーム/柳広司」の方がスリリングで、あっと思わせる仕掛けがたくさんあった気がします。もっと人間も奥深く描かれていると思います。ひたすら逃走劇を見ているだけで、淡々としている感は拭えませんでした。強烈な登場人物がもっと出てきてほしかったです。
でも非日常感、自分が逃走者になったような感覚は新しかったです。
ラストは最後までやり遂げたという達成感を青柳と共に味わっている感じになりました。
それにしても、長かった~(^-^; -
仙台市街地で行われた首相パレードの最中に起きた暗殺事件。
その犯人に仕立て上げられた青柳雅春の逃亡が始まる。
私たちは普段、テレビで中継を見ているだけで、事件の裏側にある事実など知る由もなく、マスコミの流す情報によって、先入観や思い込みを勝手に植え付けられているということに恐ろしさを感じます。
大学時代に青柳と同じサークルだった森田森吾や樋口晴子、後輩の小野一夫(カズ)、バイト先の轟社長、前にいた運送会社の仲間、逃亡中に味方になってくれた意外な人物たちなどが絡み合って、過去の思い出と現在とを織り交ぜたスリル満点の逃走劇が、読む人をほんとうに飽きさせることなく進んでいきます。
物語の壮大さと、逃亡の最中にも、もう会えなくなってしまった友人たちの揺るぎない信頼性を確信して、最後は思わず泣けてきます。
この本は一度読んだだけで手放すのはもったいないような、面白さの中にも深みのある凄い作品だと思います。-
m.cafeさん、はじめまして。フォローして頂き、ありがとうございます。
伊坂幸太郎さんは『グラスホッパー』を読んで、ドキドキする展開であ...m.cafeさん、はじめまして。フォローして頂き、ありがとうございます。
伊坂幸太郎さんは『グラスホッパー』を読んで、ドキドキする展開であっという間に読み切りました。仙台の知人にこちらの作品を薦められて読みたいなと思っています。
本棚参考にさせて頂きます。よろしくお願いします。2023/11/09 -
アンシロさん、こちらこそフォローありがとうございます。
この本は、ページ数が多いので、ずいぶん前から読むのを躊躇してたんですけど、読んでよか...アンシロさん、こちらこそフォローありがとうございます。
この本は、ページ数が多いので、ずいぶん前から読むのを躊躇してたんですけど、読んでよかったです。
伊坂幸太郎さん、面白いので、少しずつ読破していきたいです。
これからもよろしくお願いしますね。2023/11/09 -
お返事嬉しいです(*^^*)
ページ数が多い本なんですね。伊坂幸太郎さん、私も少しずつ読んでいきたいです。魅力的なタイトルや表紙で気になる...お返事嬉しいです(*^^*)
ページ数が多い本なんですね。伊坂幸太郎さん、私も少しずつ読んでいきたいです。魅力的なタイトルや表紙で気になる作品ばかりです(^^)2023/11/09
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はじめての伊坂さんの作品にゴールデンスランバーを選びました!
これぞエンターテイメント小説って感じで読みやすく、最後まで楽しめたのですが…個人的にはあまりにも現実感から離れすぎている部分も多く、今ひとつ入り込めなかった印象。(それが良い部分とも言えるかもしれませんが)
ただ、登場人物は魅力的な人が多く、面白かったのは間違いないので、次はどの伊坂作品を読ませてもらおうかと楽しみです☆ -
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凱旋パレードの中、首相が暗殺される。その犯人に仕立て上げられる青柳という好青年寄りの一般市民。彼は弁明の余地もないまま警察に追われ始める。伊坂氏作風の時間と空間と視点を移動させながらの逃走劇が繰り広げられる。
「ホワイトラビット」が籠城エンタメなら、本作は、逃亡エンターテイメント。
無謀な逃亡を元カノや学生時代の友人、ちょっとした関わりの人々がその手助けをする。たぶん、読みどころは、プロフェッショナルではなく手作り感の援助、周囲の人との繋がりで 何か大きな組織に逃げ勝とうとするところかなぁ。
映画もあるようで、映像化されると面白そうな作品。小説として読むには、各場面に重複する場面があり、もう少しぎゅっと緊張感が欲しい感じ。
伏線回収となっていくが、事件に関する伏線というより、登場人物の役割への回収かな。
“逃亡”のエンタメ化は、成功していると思います。 -
今年の、、ではないけど2008年の本屋大賞受賞作。いやぁ、もう納得の本屋大賞でしょう。
独特のワードセンスと軽妙なテンポの伊坂節は健在で、著者の作品を読んでいるとこれが癖になってくる。最高でした。
首相暗殺の濡れ衣を着せられた主人公のハラハラドキドキの逃亡劇。
手に汗握る展開と絶望的な状況の連続で、読んでてしんどさが伝わってくる。しかも本作は得体の知れない巨大な陰謀に巻き込まれている感じだし、周到に追い込んでくるから、主人公も精神的にもかなり辛そうだった。
こんな非常時に手を差し伸べてくれる人や、犯人じゃないと信じてくれる人たちには心を鷲掴みにされる。いっぱいいたけど、特に印象に残っているのは岩崎先輩。とってもロックでした。主人公のお父さんも一本筋の通っている熱い人で好印象。
それにしても、情報やイメージ操作による世論のコントロールって怖いなって感じた。真実って何なのよ、って不信感で憤りを覚える。安易に鵜呑みにしちゃうのは良くないんだろうけど、でもその判断って正直難しい。
所々に出てくる伏線エピソードを、終盤のホントに最後の最後まで掬っていくところは痛快だった。上手いなぁ。最高の読書時間だった。
読後にビートルズの『ゴールデンスランバー』を聴く。本編でも度々登場してくるこのナンバー。直訳すると「黄金のまどろみ」。緊迫感のあるシーンの連続だった緊張がイイ感じで和らいだ。まるで映画のエンドロールが流れているみたいで、まったりとした曲調がすごく心に響いた。-
コメント失礼します。
この作品の同名映画もおすすめです。映像と曲がうまく調和しているので。
コメント失礼します。
この作品の同名映画もおすすめです。映像と曲がうまく調和しているので。
2025/05/09 -
てるてる坊主さん
コメントありがとうございます!
僕もこの映画気になっていたんですよ。
今度チェックしてみます!てるてる坊主さん
コメントありがとうございます!
僕もこの映画気になっていたんですよ。
今度チェックしてみます!2025/05/09
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2008年本屋大賞受賞作品。
伊坂作品は、トリッキーな印象だった「ホワイトラビット」以来2作目となります。ケネディ暗殺事件に重ね合わせ、たくさんの嘘を混ぜ合わせているとのことで、そんな潔い「作り話」だからこそたくさんの読者に支持されたのかなと感じました。
近頃は、このお話しが現実離れしていると思えなくなってきてますね。
「たいへんよくできました」 -
2008年本屋大賞受賞作。
ごく普通な宅配業者が首相暗殺の濡れ衣を着せられ、とにかく逃げる。
事件の経緯をつらつらと描いた本編よりも先に、後日談があって、どんなことが起きてこうなった??と謎を解き明かしていくような構成でした。
これまで読んだ伊坂幸太郎作品の中で、最も好きな作品になりました! -
伊坂幸太郎さんの作品は本作が初読みだった。
いきなり長編だったので少し尻込みしたものの、読み始めたら首相殺しの濡れ衣という設定と、青柳雅春という主人公の人間性にはまり、どんどんのめり込んでしまった。
マスコミ報道がいかに視聴率目的で操られているか、人の記憶がいかに曖昧で操作されやすいものか、まざまざと見せつけられた様な気持ちだった。
そんな中でも、やはり自分を信じてくれる人の存在は何よりも救いであり偉大だと感じた。
作中で、青柳雅春を信じて疑わなかった大きな存在…
元恋人 樋口晴子からのメモに残されたメッセージ
そしてリポーターへ負けた父 青柳平一の台詞
見えない巨大な力を前にした青柳雅春にとって、これらがどんなに心強く響いただろうと胸が苦しくなり、目頭が熱くなった。
ラストは様々な解釈が残り、読み手が読後のこの余韻をどう判断するかで、また味わい方が変わってくる作品。
そんな風に仕掛けた伊坂幸太郎さんは凄い!!
そして今から10年以上も前の作品にも関わらず、セキュリティポッドなどという犯罪の抑止、捜査情報の質や量の向上を目的とした端末が街を占拠しているという構想…
つい先日ニュースで見かけた渋谷のAIカメラ100台プロジェクトが頭をよぎった。
いやぁ…事実は小説より奇なり
まさにそんな時代になって来ているのだ。
本作は、この渋谷AIカメラ100台プロジェクトに疑問を抱く方にこそ特にオススメしたい作品。
これを機に、伊坂幸太郎さんの他の作品も読んでみようと思った。 -
ブクログで読んでいる方も多く、評価も高かったので、初めて伊坂幸太郎さんの著書を読んでみました。
P680もあるのーー!?読み切れるかなー。と思っていたのは、初めのうちだけ。第四部に入ってから、とにかくあっという間。ハラハラドキドキでした。
構成も第2、3章に事の顛末を持ってきているのにも驚いた。(読み終わったあと、また2、3章が気になり読んだ)
学生時代を一緒に過ごした仲間が、色々な形で主人公と関わる点に、温かなものを感じた。
白黒ハッキリした結末ではないけれど、最後の章の描写はとても良かった。
映画も観てみたいと思った。
これを機に、伊坂幸太郎さんの他の作品も読んでみようと思っています。 -
伊坂幸太郎は仙台在住の作家であるが、今回の震災に関しては特別なアクションはおこしていないようだ。
伊坂幸太郎は直木賞に嫌われている。これほどまでに人気作家で、かつ新しい世界を作っているのにも拘らず、直木賞を受賞する気配がない。
この作品に関しては、特にわざと避けられたのではないか、と勘繰りさえする。なぜならば、とても危険な小説だからである。
監視社会、マスコミ操作、アメリカの影という一種巨大な組織の力が背景に描かれる。普通の小説と違うのは、全く普通の人間がその生贄として選ばれ、彼にはその巨大な「力」と闘う方法も、度胸も、その気さえないということだ。普通の小説ならば、その他大勢として小説の前段階で消されるべき人物である。
ところが彼は逃げおおせる。これは今現在「巨大な力」がもしあれとすれば、最も危険な筋書きのはずだ。どうも陰の力が働いて、特にこの作品に限ってでも、伊坂にまともな賞を取らせるな、という陰謀が企てられても可笑しくはない。ところが、世の中は上手く行かないもので、本当に面白い作品には、辺境から評価されるものである。山本周五郎賞と本屋大賞のダブル受賞はそのようにして起こり、出版から二年と少しで映画化されてヒットするということも、「巨大な力」の想定外のことであったに違いない。
……というような妄想は置いといて、映画を見て十分に筋立ては知っているのにも拘らず、大変楽しむことができた。
「人間の最大の武器は、習慣と信頼だ」
「オズワルドにされるぞ」
「いいか、青柳、逃げろよ。無様な姿を晒してもいいから、とにかく逃げて、生きろ。人間、生きててなんぼだ」
「ロックだねえ」
「俺は犯人じゃない。青柳雅春」だと思った。
「いいか、俺は信じたいんじゃない。知ってんだよ」
「まあ、雅春、ちゃっちゃと逃げろ」
「なかなか洒落が利いてるお便りが」
「たいへんよくできました」
映画でとても印象的だった台詞が原作の中でそのまま使われている(じゃなくて映画でそのまま使われている)のは、大変嬉しかった。 -
かなり前から積読してあったため、約700ページの大長編へ足を踏み入れる決意をし、読書を開始。エンタメ小説の巨匠・伊坂幸太郎氏による、魅力的な登場人物たちが繰り広げる物語を堪能できた。
本作は首相暗殺の濡れ衣を着せられた青年・青柳雅春の逃亡を描く物語。いかにもエンターテイメントな設定に心躍る。
まず、主人公である青柳雅春が登場するのは第四部からである点に注目したい。
第四部までの間、複数の人物の視点から見た首相暗殺の事件が描かれることで、のちに逃亡犯となる青柳がどれだけ巨大な陰謀に巻き込まれてしまったのかを読者に見せつけてくる。
これにより、読者は逃亡犯である青柳と逃亡生活を共有することになる。まるで作者によって、読者自身が共犯者に仕立て上げてしまったかのような鮮やかな共感への導入には、舌を巻くしかない。
本作のメインとなる第四部は青柳と彼の元恋人である樋口晴子、2人の視点で描かれるのだが、時系列がバラバラで一見2人の行動が交差するようには見えない。だが、終盤にはそれを逆手に取った展開も描かれ、流石と言わざるを得なかった。
個人的に好きな場面は、物語終盤に青柳が大きな賭けに出る時に笑いを堪えた場面。
「人間の最大の武器は笑えることではないか?」と心の中で親友に問いかける部分は、いつか人生に絶望して打ちひしがれたときに思いだしたいと思った(そんなときは永久に来ないでほしいものだが…)。
また、読んでいて改めて感じたのだが、伊坂氏は登場人物を読者に刷り込ませることが凄まじく上手い。何百ページ読んでいようが、ぽっと出の人物も脳内にくっきりと姿を現して、それまで躍動していた人物たちと交流し始めるのだ。なかなか味わえない感覚なので、今後も伊坂氏の作品を読むのが楽しみだ。
しかし、物語のラストはギリギリ納得できる「なんとかなった」終わり方なのだが、肝心の作中の謎の数々は拭えないまま…。不完全燃焼感は否めなかった。
文庫解説で木村俊介氏が伊坂氏へ取材した内容の一部が引用されていて、それによると伊坂氏にとって本作は「物語の風呂敷は広げるけど、いかに畳まないまま楽しんでもらえるか」を考え執筆したものだという。
それを加味して読み返してみると、確かに拾え切れていない伏線が多いのは事実だが、スリルに溢れた逃走劇によるこの興奮は本物だ。描かれなかった登場人物の背景やその後についてとやかく言うのは無粋なのかもしれない。
青柳と視点を共有する読者にとって、作中のマスコミの印象操作や民衆の曖昧な情報提供にはとことんうんざりしたことだろう。その場面を思い返すと、本作はエンタメ小説としての側面だけでなく、情報社会における正しい情報の扱い方なども再認識させられる。
SNSが普及し、個々人が強い言葉で情報が発信できるようになった現代。SNS上でも冤罪事件を目にすることもしばしばある。
仕組まれた事件とはいえ、本作のように国全体が冤罪を助長するようなことはそうそう起きないだろうが、私たちの持つデバイスが毒にも薬にもなり得る事実を改めて噛み締めた。 -
映画を観ているように次から次へと場面が流れていきます。登場人物たちみんなが生きてるって感じるほど汗や涙の感触が伝わってきました。そして、習慣と信頼、思いっきり!そんな感情の波がどどんと押し寄せてきます。こんなこと、あるはずないなんてひと昔前なら思ってたけど、いやいや分かんないぞ、あり得るわ今の世の中。
青柳くんの首相暗殺の濡れ衣をきせられ逃亡する現在と学生時代の楽しい思い出。そして青柳くんを信じて行動を起こす人たち。それらがスムーズにリンクしていて躓くこともなく読みやすかったです。この敵はこの国で生きていくには決して勝つことができない、いや勝ってはいけないものなのでしょう。恐ろしい巨大な陰謀。青柳くんがとった行動は、それも一つの戦い方。青柳くんがどこかで生きていてくれることが大切だと思うんです。 -
【短評】
実は未読だった一冊。上梓は2007年である。18年も経ったのだ。
書店で平積みされたハードカバーを買おうか買うまいか随分と悩んだ在りし日を今でも良く覚えている。貧困大学生が泣く泣く諦めた一冊が、今、手元にある。
「2008年本屋大賞」「このミステリーがすごい!(2009年度版)第1位」「第21回山本周五郎賞受賞」と各賞を総嘗めにした伊坂幸太郎の「集大成」と名高い一冊は、期待に違わぬ圧倒的な面白さだった。
凱旋パレードの最中、首相が爆殺されるという衝撃な事件に日本中が震撼した。
報道が過熱するなか、犯人と目された男・青柳雅春(あおやぎまさはる)。
俺はやってないーー必死の訴えも虚しく、巨大な権力、深遠な陰謀が彼を絡め取らんとする。ビートルズが名盤の調べに乗せて、青柳の決死行が始まる。
物語に惹き込む力が凄かった。主人公と一緒に肩で息をする類の小説である。
まず、構成の巧みさが際立っている。「事件発生」→「報道の視聴者」→「20年後の回顧」を経て「事件当日」に至る章立てが上手すぎて悔しさすら覚える。一連の事件を外側から俯瞰・検証した上で、当事者の視点を緻密に描くことで「嗚呼、そういう事情だったのか」が連続するため、飽きが来ることが無い。
青柳を陥れんとする警察組織の不気味さもさることながら、彼を助けてくれる「意外な人物たち」が実に魅力的である。様々な事情はあれど「信じてくれる」度に、じわりと嬉しくなるものである。また、「そこがこう繋がるのか!!」という伏線が張り巡らされており、閉塞感というよりは高揚感が先行していた。
読後感も非常に良く、特にラストシーンは大変に良かった。あれ以上の「救い」は無いのではないかと思う。
【気に入った点】
●平素の淡くパステルな伊坂世界とは打って変わった緊張感漂う展開が良かった。骨太という言葉を伊坂作品から連想するとは思わなかった。硬質な展開な中にも、伊坂節とでも言うべき洒脱な表現が効いていて、きちんと「伊坂」を楽しめた感もある。
●キャラクタが非常に魅力的。やっぱり樋口春子(ひぐちはるこ)が良いかな。口を付いて出る台詞が颯爽としていて好感が持てる。ともすれば不快感が先行する「元恋人」に対する距離感が絶妙で、本当に奇跡的なバランスだと思う。伊坂はこういう女性を描くのが上手い。
●ある種の「得体の知れなさ」を残しつつも、美しく物語を締めたことを讃えたい。「よく頑張ったよ」と言ってやりたくなる様な素晴らしい幕引きだった。
【気になった点】
●事件について意図的に描かれない箇所がある。個人的には幕の向こうの物語と納得できるが、全てを解明したい!という人には辛い部分もあるか。いや、イチャモンだな、これは。特にございません。
「読んだぜ。面白かったよ」とあの日の自分に声を掛けてやりたい。
著者プロフィール
伊坂幸太郎の作品
