ジャイロスコープ (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.27
  • (70)
  • (430)
  • (759)
  • (145)
  • (20)
本棚登録 : 4451
レビュー : 537
  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101250304

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • よかった編
    「一人では無理がある」
    「嘘のようなホントの話」っぽい結果オーライ。子どもを守る母親の踏ん張りは、足が本当震えて動かせないのに頭がのぼせるような殺気で、自分の時の感じを思い出した。プラスドライバーの男の子が鎖を外せた後、親身になってくれる大人の元へ辿りつけることを切に願う。

    「if」
    文字だからこそ騙される。これも「嘘のようなホントの話」っぽい。男は誇り高き生き物。これが女性の話だったらまた全然違うコメディになりそうかも。

    それなりの編
    「彗星さん」
    まっとうに仕事をすることの大事さと、仲間内のおしゃべりと、きっぱりした鶴田さんはいいと思う。
    ただし人生車両の妄想は、他人が型に嵌めるもんじゃないし、悪気は全然ないけど、悪気なくかわいそうがる感じがちょっと…鶴田さんのことは鶴田さんにしか分からんじゃん!と思うのは読む方の性格が悪いせいかしらん。

    いまいちの編
    「浜田青年ホントスカ」
    浜田青年の告白に、こっちも「1編目からこんなスカ?」と言いたくなる。仕事だからで押し通す相手も相手だけど「そこを何とか」となったのか、ならなかったのか。もうちょい相談屋さんの生身っぽい心情がないと消化不良でもやっとする。

    「後ろの声がうるさい」
    互いに正体を明かさず、でも会えてよかったという短い合い席。それだけに集中してくれればよかったのかなとも思うが横からチラチラ他の編の人が顔を出して、佳境のドラマの画面上でずーっと関係ないテロップが流れてる感じで気が散って勿体ない。

    良くなかった編
    「ギア」
    小さい王蟲の群れを想像すればいいのか。シュルレアリスティックな悪夢だけど、これって何??小説??

    「二月下旬から三月上旬」
    難解、というか種明かしをされても本当の所が分からない。「キャプテンサンダーボルト」の腐れ縁コンビから背骨を抜いて2,3日放置した残骸みたいな味わい。

    総評
    前々から思ってたけど、時間軸と人物相関が行ったり来たりする話って苦手だ。じゃあ伊坂作品読めないじゃんてなるんだけど、全く読まないのも物足りなくてやっぱり読んでしまう。巻末インタビューで作者の悩みみたいなのがあって作家は作家で悩ましいと思ったけど、読者は読者で悩ましいんだ。好みじゃないのが入ってるの前提で好きになれそうなタイトルメインに消化していくしかないのかなと思う。

  • 短編集。特に気に入ったのは次の4つ。
    『浜田青年ホントスカ』スーパーの駐車場で相談屋という商売かぁ。そこも不思議なのに、そのアシスタントとして誘われるのもまた不思議。そういう理由だったのね。
    『一人では無理がある』思わぬところで他人の役に立っていることがあるんだ。そうなってると嬉しいな。
    『彗星さんたち』なかなか興味深い職業だな、新幹線の清掃。乗客とわずかな摂食があると、そこから色々なことを想像してしまう。
    『後ろの声がうるさい』『彗星さんたち』と関係してるよなぁ。他人の話ってなぜかおもしろいから聞き耳を立ててしまいそう。

  • 浜田青年ホントスカ、ギア、二月上旬から三月下旬、if、
    一人では無理がある、彗星さんたち、後ろの声がうるさい、の短編7本と15周年インタビュー収録。

    伊坂氏のテイストをきちんと残した、お話たち。
    一番好きなのは「彗星さんたち」でした。
    新幹線清掃の方がメインのお話ですが、全体を流れる柔らかな雰囲気とたまのピリッとした展開がとてもいい感じでした。

  • 色々なタイプの短編をまとめ、最後に全てをまとめた1冊。
    連作ではないため、好きな作品と難しい作品が混在する。
    個人的には「一人では無理がある」が好き。

    「パウエル国務長官の言葉」を読んでみたくなった。

  • 星は4.5かな。

    全部面白かったんだけど、特に「if」「一人では無理がある」「彗星さんたち」がよかった。

    「2月下旬から3月上旬」は未だに自分の中でうまく整頓できてなくて、何度か読み直さないとわかんないかも。「ギア」は続編があるということで、是非それも読みたい。セミンゴについては、もう少しよく知りたいと思いました(^^)笑

    「if」の最後のページに「いふ」ってふりがなが振ってある言葉が3つも出てきて、言葉遊びしてるのかなって思って面白かった。

  •  伊坂幸太郎さんの新刊は、初の文庫オリジナル短編集である。テイストは様々だが、不思議と散漫ではなく、これまでのキャリアを振り返るような内容になっている。

     競作アンソロジー『蝦蟇倉市事件1』に収録された、「浜田青年ホントスカ」。蝦蟇倉に流れ着いた浜田青年と、相談屋の稲垣との掛け合いはいかにも伊坂作品だが、何だこの笑えないオチは…。潔いというか何というか。稲垣のQ&Aで本が書けそう。

     『グラスホッパー』や『マリアビートル』のようなクライムノベルの要素を持つ「ギア」。しかし、全体としてはファンタジーか? スパムメールの話とか(引っかかるなよっ!)、小ネタが満載だが、深く意味を考えてもしょうがない。

     「二月下旬から三月下旬」。これはその…いわゆるあのネタですか。最後にこういう真相が明かされると、大抵腹が立つが、本編の場合は早々にネタと構図は割れる。それなのに何だかしんみりするのは伊坂節の効果か。

     「if」。たまたま乗ったバスがバスジャックに見舞われたら、さてどうする? いやはや、やられた。短いページ数でうまく騙してくれたな。

     長編ネタに使えそうな「一人では無理がある」。知られざるサンタクロース運営会社。いつも致命的ミスを犯す彼を、会社が手放さない理由とは…。物騒なオープニングが、見事に結末に繋がる。あの少年にも幸多かれ。

     世界的にも評価されている、新幹線の清掃員をテーマにした「彗星さんたち」。誰にでも務まる仕事ではない。あるベテランの言葉は、すべての社会人に訴えるだろう。軽妙な会話に伊坂作品らしさを残しつつ、社会派な1編か。

     最後に、書き下ろしの「後ろの声がうるさい」。伊坂さん曰く、受け皿だという。バラバラに発表された各編と、繋がっているのがミソで、こういうのは伊坂さんの得意とするところ。ファンサービスの1編かな。

     巻末のインタビューによると、しばらく休みたい気持ちもあるそうだが、読者がいる限りは書き続けるようだ。まだまだ目が離せない作家である。

  • 七つの作品からなる短編集です。
    どの作品にも根底に人のいとなみの暗部が描かれています。読んでいて、なんだか倫理観を問われているような気になります。とはいえ、いつもながらの軽快でテンポの良い展開と、著者ならではの軽妙洒脱な語り口とユーモアもあって、差し迫った緊張感は薄められており、良いことも悪いこともひっくるめて、それが人生なんだと思わせてくれます。
    作品ごとにそれぞれ趣向が異なり、様々な側面と仕掛けを見せてくれる伊坂ワールド満載。さらに、巻末にはデビュー15周年を振り返るインタビューも掲載されていて、創作の秘密や心情なども垣間見ることができて、お得感のある一冊でしたぁ。


    べそかきアルルカンの詩的日常
    http://blog.goo.ne.jp/b-arlequin/
    べそかきアルルカンの“銀幕の向こうがわ”
    http://booklog.jp/users/besokaki-arlequin2

  • 文庫でのオリジナル短編集は、「伊坂さんってこういうのも書くんや」という、嬉しい驚きと面白さに満ちた魅力的なものでした。
    収められている7つの短編を個別に振り返ってみます。

    「浜田青年ホントスカ」
    個人的には、この短編集の中で最も、というより唯一、従来の「伊坂幸太郎」さんらしい物語でした。
    「相談屋」を営む男と「本当っすか?」が口癖の浜田青年の風変わりな交流を描いた物語…と思いきや…
    思わぬ方向へと転換し着地する鮮やかな手際と、読後のドキドキする余韻が何とも言えません。

    「ギア」
    見知らぬ他人同士が乗り合わせたバス風のワゴンが荒野を疾走している冒頭から、全編に渡って乾いた不条理さが漂います。
    読んでいる間、三崎亜記さんや筒井康隆さん、キングの初期の短編などを思い起こしました。
    仮に何も知らないまま、前述の作家の誰かの短編って言われたら信じてしまったと思います。

    「二月下旬から三月上旬」
    こちらも、冒頭からしばらくは、キングのとある中編をイメージしたのですが、その後の展開と結末は全くちがったものとなりました。
    「世にも奇妙な物語」の一エピソードとして、映像化してほしいです。

    「if」
    伊坂さん流の「復讐譚」あるいは「再生譚」といったところでしょうか。
    あっけらかんと明るいわけではないけど、やるせないような暗さでもない、絶妙なさじ加減が心地よかったです。
    章立てが、1、2ではなく、A,Bであるのがミソかな。

    「一人では無理がある」
    ミステリー調の出だしから、すぐに雰囲気は一転、とある冬の風物詩の舞台裏が愉快に真面目に描かれます。
    ラストで冒頭のエピソードと見事に繋がり、爽やかな読後感に浸ることができました。

    「彗星さんたち」
    ここ最近、各種のマスメディアに取り上げられ、海外の方にも知られることとなった新幹線の清掃員にスポットをあてたファンタジーっぽいお話です。
    随所に、アメリカの元国務長官パウエル氏の言葉が引用されていて、その言葉自体の良さと物語の持つ柔らかな温かさが印象に残る一編でした。

    「後ろの声がうるさい」
    7編を締めくくる書き下ろしの一編です。
    これにより、書かれた時期も初出媒体もばらばらな前述の6編を、同じ世界の出来事としてまとまりのあるものにしています。
    手塚治虫の「ブラックジャック」のエピソード「人生という名のSL」を思い浮かべました。

    本レビューの最初に、伊坂さんらしくないという意味あいの表現をしましたが、最近文庫化された「PK」とか、完全版が刊行された「あるキング」などと共通するような語り口やリズムやストーリー運びであるようにも感じます。

    従来の伊坂幸太郎さんのファンにも、そうでない人にもお楽しみいただけるのではないでしょうか。

  • 伊坂節楽しめました。
    最後のインタビューがとてもよかった。
    やっぱり、ファンとしては、伏線→回収の作品を期待してしまうけど、
    伊坂さんの書きたいものをどんどん書いてほしいなあと思いました。

  • 文庫オリジナルで7つのお話を集めた短編集。
    色々な局面で様々な要請に応じて書かれてきたお話の集まりで、随所にこの作者らしいところがあり、読むほうとしては楽しく翻弄された感じ。
    “7分間の奇跡”としていまや有名になった新幹線の車両清掃を描いて、作者らしいアイデアに溢れたストーリー仕立てに、お仕事小説としても身に沁みる『彗星さんたち』には★5つ。
    バスジャックを描いた『if』とクリスマスのプレゼントが主題の『一人では無理がある』にも★4つ。
    『浜田青年ホントスカ』はそれなり。『ギア』と『二月下旬から三月上旬』は面白さが分かんなかったです。
    あまり纏まりはないなと思っていたら、最後の書き下ろし『後ろの声がうるさい』でうまいこと丸め込まれてしまったなぁ。

全537件中 41 - 50件を表示

著者プロフィール

伊坂 幸太郎(いさか こうたろう)
1971年千葉県生まれの作家。東北大学法学部卒業後、SEとして働きながら文学賞応募し、2000年『オーデュボンの祈り』で新潮ミステリー倶楽部賞受賞、デビュー作となる。その後作家専業となり、宮城県仙台市に在住しながら執筆を続けている。2004年『アヒルと鴨のコインロッカー』で第25回吉川英治文学新人賞、同年『死神の精度』で第57回日本推理作家協会賞短編部門、2006年平成17年度宮城県芸術選奨文芸部門、2008年『ゴールデンスランバー』で第5回本屋大賞、第21回山本周五郎賞をそれぞれ受賞。同作で直木賞の選考対象となることを辞退したことも話題になった。上記受賞作のほか、『重力ピエロ』、『バイバイ、ブラックバード』、『アイネクライネナハトムジーク』など話題となる作品は多い。代表作も殆どが映画化されている。最新作に『フーガはユーガ』。

ジャイロスコープ (新潮文庫)のその他の作品

伊坂幸太郎の作品

ツイートする