明日のマーチ (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 437
レビュー : 42
  • Amazon.co.jp ・本 (435ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101250588

作品紹介・あらすじ

解雇。それは張り紙一枚の出来事だった。ある日突然、僕らは年収200万円の生活からも見捨てられた。どうしよう。どこに行って、何をする?――歩く。それが、僕らの決断だ。クビを切られたカメラ会社がある山形から、東京へ。600キロ。4人で始まった行進は、ネットを通じて拡散し、メディアを賑わし、遂には政府が動き出す。僕らの青春を等身大(ありのまま)に描いた、傑作ロードノベル。

感想・レビュー・書評

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  • 人気作家なのに今まで手を出せなかったのはみうらじゅんのせいです。ひょんなことからみうらじゅんの「いやげ物」をもらうはめになり、それが石田衣良の似顔絵皿だったから。以来、読んでみようとするたびに、似顔絵皿のその顔がちらついてしまい(笑)。で、このたびやっと。

    山形県鶴岡市の会社に勤務していた派遣社員が突然契約を解除される。通知の張り紙の前にたまたま居合わせた20代からせいぜい30代前半の4人。これからどうしようと思い悩むなか、そのうちの1人が東京まで歩くという。どうせ急いで東京へ帰ったところで待つ人がいるわけでもなし、新しい仕事があるわけでもなし。とりあえず1日歩いてみるかと、ほかの3人も一緒に歩き始める。

    就活に失敗して派遣社員となったのにその契約も切られた平凡な青年、陽介の目線で。なぜか中国に異常な敵意を見せるネットオタクの伸也。中国残留孤児三世で美容師志望の豊泉。彼らに野宿と徒歩の旅を指南する寡黙な修吾。ただ面白そうだからと始めた真夏の徒歩の旅がやがて注目され、政治的意味合いまで持たされるように。

    素直ではない私は、優等生的展開をちょっと冷ややかな目で見てしまいましたが、そう言いつつも終盤の数カ所で泣きそうに。読み終われば、彼らと一緒に歩いてみたい自分がいるのでした。困ったとき、苦しいときは誠実に。

  • 久しぶりの石田衣良作品。
    単行本で出た時(平成23年)は、「またいつもの展開か」と思って手が出なかったのだが、ふと、「いつもの展開」に会いたくなって購入。

    始まりは、相変わらずふわっとした感じ。
    いきなり旅が始まるんだなと思った。誰が中心なのか、視点がはっきりしなかったが、次第に陽介の視点に固まっていく。陽介のキャラクターは、なんとなく作者の分身のようにも思える。
    本人の心中は不安でいっぱいで、自信のかけらもないのに、なぜか周りからは信頼されて、要になっていくというあたりが、主人公っぽい。

    修吾の訳ありな感じは、あとがきによれば書きながら作っていったらしいが、読む方にしてみれば、「これはたぶん犯罪がらみだな」と予想はつく。
    その事件は、実際にあった事件を思い出させるもので、「償いとはなにか」についても考えさせられる。
    「誠実さ」がその手段になりうるかどうかはわからないが、誠実さが救いになっていってほしい、という希望は強く感じられる。

    中盤からの、一大ムーブメントの描写は、いかにも現代という感じで、ネットでの賛否両論の様子や、渦中にいる者との温度差はさもありなんと思う。いや、現実にはもっと過酷で悲惨で容赦無いものではあるが。

    ロードノベルらしいのは前半。最初は文句たらたらだったり、不慣れだったりする3人が、だんだん旅慣れていく様子は、読んでいてとても楽しい。

    その分、修吾の過去が判明したり、ネットで有名になっていく後半は読むのが辛くなった。どう考えてもいい結果にはなりそうになかったから。

    それをかろうじて回避するあたりのさじ加減が絶妙だなと思った。
    うっすらと甘く、明るく、なんとなく元気出していこうと思えるような結末である。

    それにしても「真意」や「本意」「本心」なんてものは、ほとんど伝わらないものなのだなあ。伝わるとしたらそれは奇跡に近いと思う。

  • 桑田佳祐の歌で「明日へのマーチ」という曲があるけど
    関係はないかな。でも思い出した。

    青春小説かな?と思いきやそれだけじゃなくって
    現代の社会問題がいろいろ盛り込まれて
    読み進むほどに考えさせられる。いろいろと。

    しょっぱなから、仕事を失った若い「派遣労働者」たちの
    嘆きとか不満が描かれている。でもこのシーンは短くて、
    たぶん「いまさら」そういう場面を延々と描かずとも
    、多くの人が体験なり知識としてなり知っているからかな。

    そして「旅(帰路)」に出る。
    4人の青年がそれぞれ思うところはあれども、
    スムーズに出発する。いいね、こういうの。
    「明日」に「未来」に、予定のある人たちにはなかなか
    こういう行動はできないだろうなぁー。

    あてのないたび。と聞けば、フリーダムで無頼な感じで、
    アウトローでかっこいいかもしれんけど、
    年取ったらそう気軽にはスタートできんので
    若いうちにやったらいいと思うよー。
    しがらみがあると「勝手」になっちゃうからね…
    明日でも今でも、行っていいなら私もやりたいわ〜
    あー、でも冒険家の三浦さんとかもいるから
    年関係ないかな。

    旅は必ず行こう。でも今は本を読んで旅しよう。

  • 突然、山形の工場で派遣切りに遭った若者4人。東京まで野宿をしながら歩いて帰るというひとりについて行くような感じでなんとなく始まった4人の徒歩の旅。
    表紙の感じからも青春ロードムービーのような感じかな?と軽く読み始めた。
    寡黙な大男、修吾、ネットおたくの伸也、中国残留孤児3世の豊泉、ふつうな主人公の陽介。旅が進むにつれて、4人のそれぞれのキャラクターの過去や抱えているものが次第に明らかになっていく。
    ネットで拡散した「明日のマーチ」は次第に注目され、メディアや政治まで動き出す大きなうねりになっていく。
    初めのころの素朴な野宿、一歩一歩進んでいくことの清々しさ、4人のぶつかり合いや次第にできてくる絆のようなもの。
    世間に「明日のマーチ」が知られるにつれ、派遣切りの星のように扱われ、次第に事が大きくなっていく。そんな中で、そんなつもりでなかったのにと驚きとまどう陽介のふつうの感覚がよくわかる。
    なんといっても修吾の過去がいちばん重たくつらくキツい。決して許されることではない、けれど色んな背景があって起こしてしまった事件。そのことに真摯に向き合う修吾とそれに寄り添い守る3人。
    マーチと一緒で人生もひとところに留まることがない。足を動かせば一歩一歩、少しずつでも確実に進むことができる。実際に歩くことで体感しながら4人が得たのもは計り知れない。
    気軽に読み始めたけど、重みのある読み応えのある一冊だった。

  • スタンド・バイ・ミー。

  • 読んでてこっ恥ずかしくなってしまった。
    心の汚れているヒネた輩には、眩しくてクサくて
    まともに読んでられましぇん。

  • 前半は面白くなくて途中で脱落しそうだったけど最後まで読んだらすごく感銘を受けた!
    辛いこともあるけど自分らしく生きてみようって思えた。時間は人を変えてくれる。そんな最期の作者の言葉が心に響きました。
    就活困難な時代を直に受けてて今の仕事環境に悩んでる人には是非よんでほしい一冊。

  • リーマンショック後のような状況で、派遣切りにあった4人の若者が、ふとしたことから働いていた山形県から東京まで徒歩の旅をすることになる。そして、その徒歩の旅が(メンバーの一人の策略もあり)マスコミで取り上げられるようになり、あるメンバーの重い過去も発覚して、いろいろ騒動を巻き起こしつつ、ゴールの東京に向けてストーリーが展開していく。
    それぞれに異なる4人の個性がうまく描かれていて、面白く軽快に読み進めることができた。人生=旅なんだな、ということを感じた。読後感も爽快だった。
    ただ、派遣切りの若者の徒歩の旅がここまでマスコミに取り上げられ、ムーブメントになるだろうかということや、アンチはこの程度では済まないだろうということ、役所の対応の不自然さなどいくつか気になる点があり、リアリティの面ではちょっと違和感があった。

  • 石田衣良さんの小説は、食わず嫌いのような感じで読んだことがほとんどなかったけれど、今回読んでみていい本で、人にも勧めたいと思えるものだった。健康的な歩く生活。真っ黒に焼けて、疲れて、寝て、美味しく食べて、というのが羨ましくて、ひたすら歩きたくなる。最後には前に進むことの意味を教えられる。歩きながら、人と関わりあっていくことで、人生を前に進めている。前に進むことは、必ずしも前進ではない。後退も停滞もある。意味のある後退や停滞は、自分を前に進めること。前に進めるというよりは、一段上に行くって感じかな。とにかく、読んで、感じて!

  • 相変わらずの、読後感。好きだなこれ。

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著者プロフィール

石田 衣良(いしだ いら)
1960年東京生まれの小説家。フリーター、広告代理店でのコピーライターを経て、36歳のときに一発祈念して執筆活動を開始。
1997年、『池袋ウエストゲートパーク』で第36回オール讀物推理小説新人賞、2003年『4TEEN フォーティーン』で第129回直木賞、2006年『眠れぬ真珠』で第13回島清恋愛文学賞、2013年『北斗 ある殺人者の回心』で第8回中央公論文芸賞をそれぞれ受賞。
多くの作品がドラマ・映画化されている。代表作に、ドラマ「池袋ウエストゲートパーク」「下北サンデーズ」、映画「アキハバラ@DEEP」、「娼年」。
2015年にウェブ個人誌『小説家と過ごす日曜日』を創刊するなど、メディアをまたにかけて活躍を続けている。

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