水曜の朝、午前三時 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (313ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101251417

作品紹介・あらすじ

45歳の若さで逝った翻訳家で詩人の四条直美が、娘のために遺した4巻のテープ。そこに語られていたのは、大阪万博のホステスとして働いていた23歳の直美と、外交官として将来を嘱望される理想の恋人・臼井礼との燃えるような恋物語だった。「もし、あのとき、あの人との人生を選んでいたら…」。失われたものはあまりにも大きい。愛のせつなさと歓びが心にしみるラブストーリー。

感想・レビュー・書評

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  • 池上冬樹氏の解説には
    本書はオールド ファッションド ラブソングである。

    人間たちが味わう感情、その喜びと不安と哀しみを切実に響かせて、ときにエモーショナルに、ときに内省に沈み、人生の宝探しにおいて必要な豊かな感情と、そして指針となるべき思索をさずけてくれるのである。
    とあります。

    とてもいい小説。
    人生のいろいろな苦労、回り道はすべて、人生の宝物を見つけるためのもの。
    主人公は感情の人ですが、共感はもてます。
    前向きに生きていける とてもいい作品でした。。

  • 図書館で偶々見かけた本。
    題名が面白そう。ただそれだけで、選んだ本だった。

    しかし、読んでみると、この本の世界に引きずり込まれた。
    舞台は大阪万博。
    昭和の空気を感じながら進む恋愛小説だ。

    久々に良い本に巡り合えた。
    そんな本だった。

  • 今時ってラブレター書いたことがない人が多いらしく、不思議な気持ち。

    若いときって、後から考えるとどうでもいいことが、どうしようもなく不安だったりする。
    あのとき付き合っていた人と、今もまだ付き合っていたら。とか、私はあんま考えないけど。笑
    なるようになるし、それが必然なのです。

    さらりさらりと。
    そういう時代だったのですねぇ。

    当時の覚え書き。
    一生を左右するような出来事が起こるのは、せいぜい20代まで。
    親との確執。離れてわかる切なさというか慕情。
    マスコミの仕事は繰り返しにすぎない。
    健康な時には病気のことはわからない。

    こうやってみると、あながち的外れではない当時の自分。

  • テープの録音を再現するという手法を使っています。そこに惹かれて購入しました。

    読み終えたときはしっとりしていた。

    単なる恋愛小説を超えて、むしろ恋愛をひとつの軸にして人生の歩み方について書かれたものだと思う。

    だから20代前半でこの本が読めてよかったと思う。


    日本の現代文学の恋愛ものを中心に読んできたのだが、全般的に題材や描き方がパターン化されている傾向があるためか、常に作品と自分が平行線上にあった。しかしながら、この本は描き方からちょっと変わっていて、さらにそのなかに含まれるメッセージも、単なる恋愛小説を超えているように思えます。

    久々の良本だった。

  • ー生と死、静寂と激情

    友人から勧められた本です。
    淡々とした語り口調の中に感情の激しさ、秘められた想い、出会いと繋がりがある小説で、思ったりよりもするする読めました。

    45歳の若さで脳腫瘍で亡くなった直美が、娘のために遺したテープ。その中には23歳の直美が大阪万博のホステスとなり、将来外交官を期待される臼井さんと出会い、想い溢れる燃えるような日々を過ごし、万博が終わっていく……そんな思い出たちが吹き込められていた。

    ほとんど直美の語りで進む話です。大阪万博という特殊な環境が作り出す唯一無二な出会いを、直美が淡々と語ってきているように感じます。でも相手に恋い焦がれる気持ちの激しさや、決めたら曲げない直美の芯の強い性格、色々な人を魅了するきらめきが強く伝わってきて、直美の「生」を感じずにはいられませんでした。

    "差別する感情の奥底にあるのは恐怖心に他ならない"、"人生は宝探し"というフレーズに、この本を読んだ誰もが頷くと思います。
    タイトルが2人を繋ぐものであることが分かったとき、何とも言えない感情になりました。
    縛られているものがある中で、2人はどうすることができたのだろう、きっとこれが最善だ、そう思わずにはいられませんでした。

    こういう本を読めるようになったことに、自分の成熟を感じます(笑)
    読む年齢によって感想が変わっていきそうです〜!

  • 切ないなあ……。やりきれない。

    別れが来るとは分かっていたが、
    思いもよらない形での別れだった。

    でも時代にふさわしい、というか昭和ならではの、
    やるせない出来事だと思う。
    作者のちょっと露骨すぎるように思えるエールも、
    その背景があるからこそストンと心の中に入ってくる。

    うん、うん。これ好きだ。

  • すごくいいものを読んだなあと、読み終えた後しばらくじっとしてしまったくらい、よかった。作者の蓮見圭一さんのことは知らなかったし、この本も図書館でなんとなく目について借りてきただけなんだけど、働き出したら買う本リストに追加しなければと思う。
    物語は、45歳で亡くなった女性が娘に残したテープを書き起こしたもの、として語られる。それは1970年代、23歳の時に大阪万博のホステスとして働いていた頃に始まった恋の話だった。
    昭和の、恋の、感動ものかー、と思わないでほしい。そうなんだけど。なんかぐっときてとてもいいのだ。テープの中で女性が様々なことを語る、そのいくつかは過激で頷けないものもあるのだけど、多分これから何度も思い出すだろうなと感じさせられる言葉も多かった。
    いい読書ができたので満足です。

  • 病床の母が娘に遺したビデオレター。中身は、母の恋物語だった。

    日本中が熱狂した万国博覧会がその時代。時代描写がみごとだった。

    母のビデオレターの最後の「もちろん、旅の途中には多くの困難があるでしょう。中には嫉妬や憎悪、悪意など、あらゆるマイナスの感情を持って、あなたの冒険を邪魔しにかかる人間もいるでしょう。私の前にも、そんな人たちが何人も現れました。そのたびに、私はいちいち彼らを憎んだり恨んだりしたものだけれど、あまでは感謝さえしています。皮肉で言うのではなく、ああした人たちがいなかったり、せっかくの宝探しもひどく味気ないものになっていたと思うから。」


    彼女の人生観がすべてつまっている一言であるとおもった。とっても、共感できる一文だと思った。

  • 「八月十五日の夜会」が、ぐいぐい引っ張り込まれるような面白さだったのでこちらも購入。
    衝撃を受けるような内容ではなかったけれど、「直美」という人物が架空であることが不思議に思えるくらい、行動や感情が生き生きと魅力的だった。

  • 「もし、あのとき、あの人との人生を選んでいたら……」。
    “人間は選択して決意した瞬間に飛躍する”(キルケゴール)

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著者プロフィール

1959年、秋田市生まれ。立教大学卒業後、新聞社、出版社に勤務。2001年に刊行したデビュー作『水曜の朝、午前三時』が各紙誌で絶賛されベストセラーになる。他の著書に『八月十五日の夜会』などがある。

「2023年 『美しき人生』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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