こころの声を聴く―河合隼雄対話集 (新潮文庫)

  • 新潮社
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レビュー : 34
  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101252230

作品紹介・あらすじ

ユング心理学の第一人者が、日本を代表する作家や詩人、学者、医者たちと著書をめぐり語り合う。テーマは子供、老い、自己、性、魂、宗教、物語など。対話は次第に深まって、無意識の領域にまで分け入ってゆく。こころの謎が解ける対話集。

感想・レビュー・書評

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  • 心理療法家・河合隼雄の対談集。
    遠藤周作、多田富雄との対談がじつに興味深かった。
    多田の『免疫の意味論』はぜひ読んでみたい。


    とくに目を引いたのが、多田富雄(免疫学者)との対談の中で、多田が、”電力会社のコントロールシステムは実によくプログラムされている。が、しかし、夏に電力消費が突然上がると、どうしようもなくなる。完全にプログラムされたシステムは、危機状態、つまり、”想定外”の前では脆弱だ”という指摘をしていた箇所。今の日本の話ではないか! 
    多田の発言に続く、河合の発言がさらにいまの状況そのままを捉えている。
    『ああいう時の弁解はいつも決まっていまして、あらゆる状況を想定してつくっておったけれども、思いがけないことが起きましたって(中略)人間が頭で考えるあらゆる状況でないものが起こることによって、バランスがとられていることが実際に人間の身体のなかでずっと起こっているんですよね』

    想定外なんて、宇宙の中の地球に生きている以上、必ず起こる。完全・完璧なシステムなんて、この世にはありえない。人間の知っていることなんて、いくらもない。最も身近な、わたしたちの身体の中でさえも、いまだに不可思議で満ち溢れているのだから。
    その不可思議で、不安定で、予測できない中で、これまでもわたしたちは生きのびてきて、これからも生きていくのだ。


    ここでの免疫の話では、人間のコントロールできない(それも自分の身体のなかの!)仕組みの話をしていて、わたしたちの身体は「完璧にコントロール」されているわけではなく、むしろその時の条件に対して、反応しており、一見、何の備えもない「危うい」状態のようだけれども、そのあやふやな感じが、危機的状況には好都合である、ということ。

    備えあれば憂いなし、というが、逆に、ガチガチに備えてしまうことで、自らの逃げ場を無くしてしまうこともありうる、身動きしづらくなることもある。3年後、5年後、10年後……自分の将来設計をばっちり決めて、その通りに生きるのだと決めてしまった人がある日突然、病気になる。今回のような自然災害に見舞われる。現実に、そういう事態が起こっているなかで、「あいまい」になる、良い意味でいい加減になる、というのは、大切な力になってくる。

    ****

    河合隼雄の話によくでてくるのが、人は「自分が生きていくための物語(ストーリー)」を持っている、必要としている、ということ。心理療法家の仕事は、患者のストーリーをつくっていくことだといっている。最初は朧気に、次第に着実に、物語をつくる、ということの意味がわかりかけてきた。


    覚えておきたいキーワード:自己・非自己の境界、”十歳”、物語、細胞の自殺

  • 2009年1月14日~15日。
     往復書簡や公開対談も含めた十名との対談集。
     村上春樹、安部公房、沢村貞子などと対談している。
     十人十色とは良く言ったもので、河合先生も対談する相手によって対談の雰囲気が微妙に変化している。
     ただ発言の内容、つまり根底にあるものは不変なのだな、と感じた。

     面白い……いや「オモロイ」だな。

  • 一度読んだと思っていたけど全然覚えていたなかった。

  • 対談相手の方々の著作も読んでみたいと思った。
    特に沢村貞子さんと白洲正子さんが素敵。

  • 『影の現象学』を読み終え、本書を思い出して久しぶりに再読。安部公房との対談が収められているということで初めて手にした著者の一冊だったんだけれども、他の著名人との対話も奥深く、心理学者だけに切り口が鋭いというか、どれも面白かった。特に目を引いたのはプリンストン大学で行われた村上春樹との公開対談。これまでの文学を振り返りながら現代の「物語」のもつ力について考察した、心理学者と小説家双方の視点が興味深い。

  • 河合隼雄さんと様々な作家による、各氏の作品の内容や物語そのものについて対談集。対談の相手により話題の進展具合が多様で、世界が広がる一冊でした。
    文学や物語の意味については、特に村上春樹さんとの対談での内容が印象的でした。

  • 彼が旅に持参した文庫本。

  • 安部公房、村上春樹・・といった人々との対談。それぞれの方の本にスポットが当てられ、作品について掘り下げた会話がされているのがたまらなく面白い。ここで取り上げられている作品、読んでいないものは、読んでみたくなるよう魅力的に扱われている。

  • ただ今2回目突入中のため、しばしお待ちください。

  • 河合隼雄と作家の対話の中で溢れ出る言葉全てが目からウロコ。漠然とした不安とか納得できないことを明らかしてもらい気持ちがすっきりしました。

    生きている実感が湧かない、というのは個人の問題だけではなく、現実とファンタジーが逆転している社会であることも大きな理由だそうです。色々と納得です。

    人の意識は井戸のようにどこまでも深く、掘れば掘るほどまたその人生に深みが増すとのこと。間違っても下に降りたままではなく浮上することを前提に。

    本を読みながら井戸を少し掘った気分です。

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プロフィール

河合 隼雄(かわい はやお)
1928年6月23日 - 2007年7月19日
兵庫県多紀郡篠山町(現・篠山市)出身。京都大学名誉教授、国際日本文化研究センター名誉教授。文化功労者。元文化庁長官。1952年京都大学理学部数学科卒業後、京都大学大学院で心理学を学びつつ、数学の高校教諭を兼業した。
天理大学で助教授時代にユング研究所に滞在し、ユング派分析家の資格を取得。日本における分析心理学の普及と実践に邁進。箱庭療法導入者としても知られる。欧米の心理療法を日本文化に根ざす仕方で導入を試みており、日本論・日本文化論の著作も多い。
主な受賞歴に、1982年『昔話と日本人の心』で大佛次郎賞、1988年『明恵 夢を生きる』で新潮学芸賞、1992年日本心理臨床学会賞受賞、1996年NHK放送文化賞をそれぞれ受賞。1995年紫綬褒章、1998年朝日賞、2000年文化功労者顕彰。
なお2012年に一般財団法人河合隼雄財団が設立されており、そこで本人の名を冠した「河合隼雄物語賞・学芸賞」が設けられている。

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