こころの声を聴く―河合隼雄対話集 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101252230

作品紹介・あらすじ

ユング心理学の第一人者が、日本を代表する作家や詩人、学者、医者たちと著書をめぐり語り合う。テーマは子供、老い、自己、性、魂、宗教、物語など。対話は次第に深まって、無意識の領域にまで分け入ってゆく。こころの謎が解ける対話集。

感想・レビュー・書評

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  • 心理療法家・河合隼雄の対談集。
    遠藤周作、多田富雄との対談がじつに興味深かった。
    多田の『免疫の意味論』はぜひ読んでみたい。


    とくに目を引いたのが、多田富雄(免疫学者)との対談の中で、多田が、”電力会社のコントロールシステムは実によくプログラムされている。が、しかし、夏に電力消費が突然上がると、どうしようもなくなる。完全にプログラムされたシステムは、危機状態、つまり、”想定外”の前では脆弱だ”という指摘をしていた箇所。今の日本の話ではないか! 
    多田の発言に続く、河合の発言がさらにいまの状況そのままを捉えている。
    『ああいう時の弁解はいつも決まっていまして、あらゆる状況を想定してつくっておったけれども、思いがけないことが起きましたって(中略)人間が頭で考えるあらゆる状況でないものが起こることによって、バランスがとられていることが実際に人間の身体のなかでずっと起こっているんですよね』

    想定外なんて、宇宙の中の地球に生きている以上、必ず起こる。完全・完璧なシステムなんて、この世にはありえない。人間の知っていることなんて、いくらもない。最も身近な、わたしたちの身体の中でさえも、いまだに不可思議で満ち溢れているのだから。
    その不可思議で、不安定で、予測できない中で、これまでもわたしたちは生きのびてきて、これからも生きていくのだ。


    ここでの免疫の話では、人間のコントロールできない(それも自分の身体のなかの!)仕組みの話をしていて、わたしたちの身体は「完璧にコントロール」されているわけではなく、むしろその時の条件に対して、反応しており、一見、何の備えもない「危うい」状態のようだけれども、そのあやふやな感じが、危機的状況には好都合である、ということ。

    備えあれば憂いなし、というが、逆に、ガチガチに備えてしまうことで、自らの逃げ場を無くしてしまうこともありうる、身動きしづらくなることもある。3年後、5年後、10年後……自分の将来設計をばっちり決めて、その通りに生きるのだと決めてしまった人がある日突然、病気になる。今回のような自然災害に見舞われる。現実に、そういう事態が起こっているなかで、「あいまい」になる、良い意味でいい加減になる、というのは、大切な力になってくる。

    ****

    河合隼雄の話によくでてくるのが、人は「自分が生きていくための物語(ストーリー)」を持っている、必要としている、ということ。心理療法家の仕事は、患者のストーリーをつくっていくことだといっている。最初は朧気に、次第に着実に、物語をつくる、ということの意味がわかりかけてきた。


    覚えておきたいキーワード:自己・非自己の境界、”十歳”、物語、細胞の自殺

  •  久しぶりに河合先生の「声」を聴いて久々に癒された。
    対談はどれも「本」や「作家」に纏わる話が出てきて、しかも対談のお相手がすべてスゴイ。阿部公房に至っては大昔に他界されている印象があり『うっそー!』と思い、白州正子、遠藤周作と信じられない気分で読んだ。まあ、それくらい前の本なのね。でも、今でもとても有効なことがいっぱい。今まで書評の類はどれもこれも読んだことない場合が多く、書評は私にとって良いものではなかったけれど、今回は知っていることも知らないことも全部、なるほど、なるほどー!と今後、読みたい本もまた増えてしまった。
    先生にとって手ごたえとか信頼度とか興味深さなどの深ければ深いほど先生の話の方も饒舌で興奮が伝わってきた。
     

  • 山田太一の「遠くの声を捜して」「異人たちとの夏」
    安倍公房の「カンガルー・ノート」
    村上春樹の短編集
    を読んでみたくなった。

  •  村上春樹が目当てで購入しましたが、内容の豪華さに圧倒されました。河合隼雄の、知識人としての一面が垣間見える、素晴らしい本です。
    はっきり言ってこの本は今すぐに役に立つような内容ではないです。けれども、人の心を豊かにする本であることは間違いない。教養とか知識とかがとかく軽んじられている昨今。この本も、今の若者からすれば退屈かもしれません。でも私は久々に心から読書を楽しむことができたし、良い本に出会ったなぁ〜と思いました。オススメです。

  • 35789

  • 一度読んだと思っていたけど全然覚えていたなかった。

  • 対談相手の方々の著作も読んでみたいと思った。
    特に沢村貞子さんと白洲正子さんが素敵。

  • 河合隼雄さんと様々な作家による、各氏の作品の内容や物語そのものについて対談集。対談の相手により話題の進展具合が多様で、世界が広がる一冊でした。
    文学や物語の意味については、特に村上春樹さんとの対談での内容が印象的でした。

  • 彼が旅に持参した文庫本。

  • 安部公房、村上春樹・・といった人々との対談。それぞれの方の本にスポットが当てられ、作品について掘り下げた会話がされているのがたまらなく面白い。ここで取り上げられている作品、読んでいないものは、読んでみたくなるよう魅力的に扱われている。

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