百年前の山を旅する (新潮文庫)

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感想 : 17
  • Amazon.co.jp ・本 (236ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101253213

作品紹介・あらすじ

「鯖街道」と呼ばれる若狭から京都へと続く山道。担ぎ屋は灯りも持たず一昼夜で駆け抜けたという。著者は現在のルートより短距離で一直線だが、はるかに急峻な古道を探し、テントも燃料も持たず、草鞋を履きその道を辿る。現代の山行はテクノロジーの進化で、自然と闘い、溶け込む、本来の行為から遠くなった。奥多摩、北アルプス、奥秩父――登山の原点を見つめたサバイバル紀行。

感想・レビュー・書評

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  • 百年前の装備品で同じコースを登山する。現代人が便利さの一方で喪った物を考察する文明論的視点が楽しい。

    田部重治、木暮理太郎よる奥多摩笹尾根の縦走と笛吹川東沢釜ノ沢の沢登り、ウェストンの穂高初登頂など記録に残る山行の再現。他に鯖街道と黒部奥山廻りという歴史的な内容、最終章はブラスストーブを携行しての雪山。

    現代人が想像するよりも過去の方々の感覚は鋭い。道具を得たことで喪われたヒトの潜在的な能力もある。自然と文明についての深い考察。

    登山の原点を見つめたサバイバル紀行。

  • 日本登山の黎明期に木暮理太郎や田部重治がたどった道や、かつて若狭湾から京都まで鯖を一気呵成に運んだ道、加賀藩士らが巡視のために歩いた立山の裏道などなど、忘れられた歴史上の道を、できるだけ当時の装備で歩いてみようとした記録。

    プロローグにある、廃道に入って行くときのある種の恐怖感や「自分が自分のものになっていく」感覚、北米の先住民がいう「山を軽々しくゆびさしたり」してはいけない(自分より大きなものはいつも用心してきちんと扱わなくてはならない)という教えなどにワクっとしながら読み始めた。

    ふと、筆運びのやたらな上手さと、口絵等にある写真の美しさが気になって奥付を見ると、著者は岳人の編集者。山行はカメラマン同行だという。これらは雑誌(岳人だけではない)に掲載された記事なのだった。

    なんだ、企画かよ・・・というのが正直な感想で、何だか白けてしまった。

    時代の考証や背景の考察は面白く、読み応えがある一方、旅は途中で切り上げられたり割愛されたりしている。実践が薄いのである。

    もちろん、どんな山歩きも企画であり実践なんだし、また著者の力量を疑うとかそういう話でもないんだけど、雑誌なら短期間に一定の成果が必要だよなあとか思うと、読前期待したほどには楽しめなかった。

  • 迷いがあり、でもそれに愚直に向き合う姿勢がこの本を傑作にしていると思った。

  • こういう山の歩き方いいなぁ、とつくづく思いました。

  • 作者の行為自体に憧れてしまう。自分ができない分余計にそう思ってしまう。もっともっとチャレンジしてほしい。角幡さんのGPSなしの北極行きに通じるものがある。

  • 日本の登山体系黎明期の山歩きを再考し、実際にその検証を試みた記録。

    一通り読んでいく中で、移動手段がほぼ徒歩に限定されていた当時の大人は現代人より圧倒的に健脚であったのだろうとつくづく思った。笹尾根の下山地点が氷川(奥多摩駅)ではなく青梅で、氷川~青梅の25km、歩いて半日が”すぐ近く”という感覚には意外と納得できた。

    本書は登山をいくらか経験してから読むのがおススメかなと。登山や沢登りや登攀や難所の情景を想像できるとより楽しめるなって思った。

  • サバイバル登山の服部文祥。主に「岳人」など雑誌が初出の記事を集めたもの。テーマ自体は、百年前とは限らないが昔の山行をなぞってみるということで統一されている。

    里山というような地域は、今よりずっと奥の人が生業のために入っていた。ただ生業でない登山は輸入品で珍しかった。

    小浜から京都までの鯖街道。ただし一昼夜で鯖を運んだというのは後年の作話らしい。

    加賀藩による黒部奥山廻り。国境画定などの意味合いがあったと。お侍さんたちによる極地法的な山行。装備・技術に対して相対的に難易度が高いと極地法をとらざるを得ない。

    灯油を燃やすブラスストーブ。今はガスが主流。精密部品がないシンプルさ。

    あとがきで鹿の「鹿性」についてなど狩猟について語る。本編でも狩猟への言及はあるが少しだけ。

  • 古道歩きや登山道開拓の話ではあるのだが、一歩間違えるとテクノロジー批判になりかねない。
    そこの塩梅は難しいのだな。題材(というか道)は素晴らしい。

    生活(狩猟採集・炭焼き・物流)の為の道とトレイルへの変化。
    オイルストーブ(プリムスといえば通じるのか)と極地探検・トレイルの開拓の相関性は、ちょっとおもしろ。

  • カクハタ氏の解説も含めて、自分の共鳴する文明批評の真髄の一冊と言える。

  • 先人の偉業に思いを馳せ、当時と極力同じ方法で山中に分け入る、という何とも趣き深いテーマの作品。
    それは決して誰にでも出来る事ではなく、サバイバル登山家として経験豊富な服部氏だからこそ成し得た、ある意味離れ業的な山行である。

    著者も作品中で紹介しているとおり、私たちの生活に石油が使われ始める以前は、山に生えている樹木がほぼ唯一の燃料であり建材だったのだ。自然から生活の糧をいただく古来の日本人にとって、山は身近な存在であると同時に、畏敬の対象でもあった事だろう。

    あとがきも含め、本書の要旨については服部氏自身も、文章で表現する事にかなり苦労しているように感じられた。でも、冒険家の角幡唯介氏が書いた文庫版解説によって、かなり的確に表現されたのではと思う。

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著者プロフィール

1969年生まれ。登山家、作家。世界第二の高峰K2などに登頂したのち食糧を現地調達する「サバイバル登山」を開始。著書に『サバイバル登山家』『狩猟サバイバル』『サバイバル登山入門』『息子と狩猟に』など。

「2022年 『お金に頼らず 生きたい君へ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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