裏庭 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (412ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101253312

感想・レビュー・書評

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  • 文章と世界観はあいかわらず好き。ただ一度読んだだけではわからないかな。もう一度読みたくなる作品

  • 破滅と再生。それが両極ではなく、同じものであることに、共感した。

    醜さと美しさ。それは表裏ではなく、時空を超えて同じものが見せる姿であることが、なぜか腑に落ちた。

    テルミィの成長を描いた寓話…私はこのファンタジーをそう読み解いた。そうして、1人の人間の成長に、どれだけ多くの人の時間が、それに悲しみや喜びが詰め込まれているのかを、肌で味わった。

    恐ろしく、むごたらしいものをこよなく美しく、純粋なものをとてつもなく汚らしく、くるりくるりと変幻させてゆく梨木香歩の魔法の言葉たち。

    このファンタジーは、一度や二度読んだくらいでは味わい尽くせないように思う。

    レイチェルやジョージがそうしたように、私も人生の終焉を迎える頃、もう一度、裏庭を訪ねてみよう。

  • 2014 5/10

  • そういうジャンルなのかもしれませんが、内容がメルヘンチックというか、現実感が無さすぎて、全く面白くなかったです。早く読み終わりたいと思いながら本を読んだのは初めてかも。

  • 読書好きの職場の上司から貸していただいた本第二弾。
    梨木先生は、なにか母親に対して思うところがあるのかなと、『エンジェル~』から続けて読んで思いました。

    個人的には、よくわからなかったなと。
    私の読解力が足りないのもあるのでしょう。
    主人公の目線で描かれているのか、なんなのか。
    いきなり母親が”さっちゃん”と表記されるようになったり、読んでいて少し困惑しました。
    それぞれの登場人物の想いが淡々としすぎていて、誰にも感情移入できなく。
    裏庭での話は、夢のようなものなのかなと思いながらも、その場面をうまく想像することができませんでした。
    少し残念です。

  • 小説の世界ではときどき
    「この作品は閉じている」とか
    「この作品は開いている」と
    表現されたりすることがあります。

    明確な定義はないようなのですが、
    閉じている物語の代表として
    この作品を紹介されたの読んでみました。

    タイトルからはあまり想像がつかないですが、
    思いのほかしっかりとファンタジーでした。
    各国のさまざま童話・伝承が入り混ざって
    混然たる世界が構築されています。

    何をもって閉じているのか、
    私にもはっきりとわかりませんが、
    あくまでも心の内面、内面へと突き進んでいくさまは
    確かに閉じている世界と言えるのかもしれません。

    視点が切り替わり、世界が切り替わり、
    重厚な文章もあってやや読みにくかったですが、
    少女の成長と救済にぐっと心が惹きつけられました。

  • 大好きな梨木さんの本なのになぜか今まであえて避けてきた。読んでみて理由がわかった。愛に飢えて傷つけあっていた母・娘・孫娘。心が痛かった。
    でも三人のお婆は言う。「傷を恐れるでないぞ。」「自分の傷に自分自身を乗っ取られてはならないよ。」「傷を、大事に育んでいくことじゃ。そこからしか自分というものは生まれはせんぞ。」

    『真の癒しは鋭い痛みを伴うものだ。さほどに簡便に心地よいはずがない。傷は生きておる。それ自体が自己保存の本能をもっておる。真の癒しなど望んでおらぬ。ただ同じ傷の匂いをかぎ分けて、集いあい、その温床を増殖させて、自分に心地よい環境を整えていくのだ。』
     同じ傷を持つ者同士の癒しは、自分に都合の良い面だけで傷=事実を覆い、都合の悪いことから目をそらしておける利点を持つ。本来傷というのは自分がただ傷つけられるだけでなく、自分も責めを負うべきところがあるはずなのだ。その部分に真正面から向き合うことによってのみ、心の傷は昇華する。しかし人間はかわいそうな自分をもうこれ以上傷つけたくないという思いから、我が身の闇と向き合わない。

    『癒しとは傷を持つ人間には麻薬みたいなものだ。そしてその周辺から抜け出せなくなる。』
     麻薬に浸りきっている弱い人間は、真の癒しは望んでいない。まだ鎧が必要なのだ。

     この物語を読んでわかったこと。さらに傷つくことを受け入れる勇気を持ったとき、ひとは心の傷のトラウマから解放される。赦せ、されば赦される。自分も、受けた傷以上にひとを傷つけてきたことがわかり、そういう醜い自分を受け入れることで、鎧を脱ぐことができる。

    最後の河合隼雄による解説で、「現代のわが国では、自分の心のことは放っぽりだして、他人の「心のケア」に奔走しているつもりで、実は他人の心の傷口を広げるようなことをしている人もいる。」と書かれている。痛烈な批判である。傷を持つ人間を嗅ぎ当てて、自覚なく自分の麻薬に利用しているようなカウンセラー・支援者のことであろう。私自身、心しなければならないと思った。

  • 中学の頃に読み等身大の主人公に共感して辛かった。でもその辛さを乗り越えたからこその成長があるということを実感できる話。

  • こちらの作品は、「書店員が選ぶなんちゃら」という企画の帯に惹かれて購入しました。
    読んでいると、母になんの本?と尋ねられ表紙を見せたところ、母が受けている講習を開いている協会(?)で高く評価された本だということを話してくれました。

    主人公の女の子は、物語が始まった時は本当に頼りなくて、
    「え?本当に中学生なの?小学生に上がったばかりじゃないの?」
    といった具合に、とてもじゃないけど、読んでいてハラハラしました。
    しかし、後半に近付くに連れて、まさに目を疑うような成長を遂げていきます。
    「子供の成長は早い」とはよく聞きますけども、
    この過酷な冒険はものすごいスピードで、しかし着実に彼女を大人にしていきます。

    そんな一人の女の子の成長を、時には心配をし、時には胸を熱くしながら見守るような作品でした。
    児童文学ということですが、年代に拘らずにぜひ一読してみてほしいです。

  • まるで外国の映画のようなファンタジー作品。
    バタバタした現実からしばし離れて冒険ができる楽しい時間となりました。

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著者プロフィール

1959年生まれ。小説作品に『西の魔女が死んだ 梨木香歩作品集』『丹生都比売 梨木香歩作品集』『裏庭』『沼地のある森を抜けて』『家守綺譚』『冬虫夏草』『ピスタチオ』『海うそ』『f植物園の巣穴』『椿宿の辺りに』など。エッセイに『春になったら莓を摘みに』『水辺にて』『エストニア紀行』『鳥と雲と薬草袋』『やがて満ちてくる光の』など。他に『岸辺のヤービ』『ヤービの深い秋』がある。

「2020年 『風と双眼鏡、膝掛け毛布』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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