裏庭 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (412ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101253312

感想・レビュー・書評

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  • 孤独な家庭に育ち弟を亡くした照美が友人の祖父から聞いた英国屋敷の鏡の世界に入り、導かれて成長する物語。
    鏡の中で主人公は忘れていた傷と向き合い受け入れて成長していきます。傷は忘れているつもりでも心のどこかで血を流し続けているのだからちゃんと真っ向から向き合って受け入れる、難しいけれど大切なことを伝えられました。

    言葉使いや表現が心地良く、一気に読めました。

  • 主人公の照美は、双子の弟を6年前に亡くし、忙しい両親にもかまってもらえず、そんな境遇を寂しく受け入れている。友達のおじいさんと親しくなり、その彼が子供の頃に経験した「裏庭」の話に興味を持つ。やがて照美自身が「裏庭」に入っていくという話。裏庭とは人それぞれの持つ内面の比喩になっていて、照美はそこで様々な試練を受け、他人から受け継いだ庭を自分のものとして再生する。西洋と日本の伝承文学も見え隠れし、同じ作者の「冬虫夏草」が日本的で重厚なのに対し、こちらはもっと汎世界的で軽やかな感じ。しかし、テーマは重厚だ。

    照美が双子であること、登場するコロウプという種族(?)が「対」になって生まれてくることなど、日本と英国、数え上げたらきりのない「対」の探求も面白い。コロウプはコロボックルから来ているのかな?コロウプの貸衣装屋の名前がふるっていておかしい。だからダメなんだ。それでもいいんだ。座右の銘にしたいくらいだ。

  • 少女が主人公のファンタジーですが、物語がインナーチャイルド(幼少期の満たされなかった想い、傷ついた経験)を克服するようなプロセスになっていて、読んでいるだけで、自分の心が癒されるような感じがしました。

  • 梨木さんの作品は物語の中の登場人物と一緒に不思議な体験ができる感覚。特に本作品は、主人公の女の子「照美」が生死の境を彷徨うような壮絶な体験をし、それを一緒に見守るかのような読書体験でした。

    照美が迷い込んだ鏡の中の裏庭の世界は、ファンタスティックでどこかディストピアな感じ。RPGのような世界観でした。登場人物はどれも象徴的で、逃げるおかっぱの少女や、おばば、庭師と呼ばれる少年、一つ目の龍、邪悪なトカゲなど、現実世界の写しと想像させるものばかりでした。

    何が何を表していたのか、全てがはっきり分かるように描かれているわけではないけど、それらと向き合うことで、照美が、自分や他人の心の傷を見つめ、受け入れる強さなどを身につけて一回り成長したということがよく分かりました。

    心の傷からは、逃げても誤魔化してもいけない。全てが真実だから受け行けるしかない。あらゆる命の積み重ねの上に、醜い自分も優しい自分もいる。そこに自分なりの世界を新たに作っていくしかない。

  • 身近な人の死を消化しきれず、自分の気持ちを誤魔化しながら生きている人は多い。何かの形が残ればまだしも、日々はそれまでと変わらず続く。過去と、そして自分と向き合う必要性を痛感させられる。ただし、その勇気を持てるかどうかは、照美もさっちゃんもレイチェルも含め、自分次第。庭のメタファーで、自然と、そして地球と向き合うこととも重なった。

  • 小さい頃は単なるファンタジーとして読んだけど、再読したらいろいろ分かって大人になったな、と冷静な気持ちで読めたのが感慨深かった。

    自分の心が傷を持っていることを自覚しないとその傷を自分のものにすることはできない。認めて次に進むこともできない。
    傷ついていることをごまかして、見せかけの癒しに頼ったり、向き合わずに他の人に同調して自分の正直な気持ちを失って生きていくのでは解決にならない。
    大人になったって傷つくことはあるし、悲しかったら泣いてもいい。その経験も含めて自分は自分なんだと、堂々と生きて行ったらいい。
    悲しいことに直面したときに認めるのは難しいけど、傷ついていないふりをしていると、楽しいことにも鈍感になってしまう。喜怒哀楽を感じられる、そのうえで自分をコントロールできる大人でいたいと思う。

  • 再読必須。

  • 2009年2月13日~14日。
     児童文学ファンタジー大賞受賞作とのこと。
    「はは、子供の本か」と笑うような輩がいたら、ぜひ自分の目でこの本を読んでみてほしい。
     そんな文句は言えなくなるはずだ。
     村上春樹氏を思わせるという感想が多いが、それはこの物語の重層構造が「世界の終わりとハード・ボイルド・ワンダーランド」を思わせるからだろう。
     ファンタジーであるし、やはり児童文学ということで割と判りやすい表現を使っている箇所もあるが、内容はかなり重く、そしてかなりシビア。
     大人の目線で読むと、特に父や母の目線で読むと、全然違った風景が見えてくるはず。
     何度か読み返したくなるような本である。

  • 久々にファンタジーを読んだので、もう読んでるだけでとても楽しかったのだけれど、そういえば日本人作家の長編ファンタジーは初めて手にしたのかもしれないと思い、その不思議な世界においてこそ浮き彫りになる現実感に納得したような気持ちになった。ファンタジーというカテゴリに関わらず、推理小説よりも"現実"を読んでいるようで、ワクワクドキドキというよりも、目が醒めるような冴え冴えとした心持ちで読み進めることになったが、ファンタジー特有の、理解を通り越して心で納得する快感は全編に通じていたように思う。とても栄養価の高い物語。

  • ある洋館の秘密の裏庭を舞台に、様々な人々の想いが響きあって物語が進んでいく。

著者プロフィール

梨木 香歩(なしき かほ)
1959年、鹿児島県生まれの小説家、児童文学作家、絵本作家。
『西の魔女が死んだ』で日本児童文学者協会新人賞を受賞。映画化もされたこの受賞作が最も著名な代表作となる。
ほかに新美南吉児童文学賞、小学館文学賞を、『裏庭』で児童文学ファンタジー大賞、『渡りの足跡』で読売文学賞随筆・紀行部門をそれぞれ受賞。
受賞作以外の代表作として、『家守綺譚』、『沼地のある森を抜けて』、『ぐるりのこと』などがある。

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