- Amazon.co.jp ・本 (412ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101253312
感想・レビュー・書評
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率直に感動した。大作だった。
己の傷と対峙することのどれほど険しく難しいことか。傷との融合の話でもあったのかと思う。印象に残る文が多くて、それぞれの箇所について感想を言い合いたくなる。
日本の家庭って、家に庭って書くんだね。その庭をどう手入れし育み作り上げていくかは庭師次第なのだと。
エピローグ後の展開も気になるけど、それはそれぞれ私たちの中でまた育てていくものなんだろう。
最後に河合隼雄氏の解説があるのもよき。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
一日中のんびりと本を読みました。梨木香歩「裏庭」です。児童文学ファンタジー賞を受賞した作品です。大作という感じで読み込むのにかなり力が必要でした。ファンタジーの部分が多く、この前に読んだ「西の魔女が死んだ」の方がシンプル(一つ一つの心情などはすごく深いですが)で素直に心の中に入ってきました。
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中学時代に梨木さんの「西の魔女が死んだ」を読んで、他の作品も興味を持ち購入。
家族旅行の際にこの本を持っていき、夜ホテルで読み始めると、先が気になって、ページを捲る手が止まらなくなり、ほぼ徹夜をして読んでしまったことは今でも覚えています。
学生時代の私に良い読書体験をもたらしてくれた、かけがえのない作品です。近々、再読したいです。 -
もう随分昔に読んだ本で、細かいことは忘れているのだけれど(汗)
英国ファンタジーにハマっていた頃に「日本にこんなファンタジーが書ける人がいるなんて!」と驚いた記憶だけがやたらと残っている。
もうそれだけでワタシ的には☆5つ。 -
読書好きの友人から貰った本。いい本を頂きました。ありがとうございました。
1995年の第1回児童文学ファンタジー大賞の受賞作。文庫版は2001年1月の発行から20年間で37刷のロングセラー。そんなことは知らずに、友人から貰ったというだけで、内容も全く知らずに読み始めましたが、一気読みでした。
戦前、英国人一家の別荘だった荒れ果てた洋館。現在、その裏庭は近所の子どもたちの絶好の遊び場。そこで双子の弟を死なせてしまったという辛すぎる思い出を持つ13歳の少女、照美。ある出来事がきっかけで照美は裏庭の奥に入り込みます。照美の冒険が始まりました。
この小説の中盤まで、この物語の主題は「死」であり、「再生」の物語かと思っていました。大事な人を失った場合、「死」は死んでしまった人だけでなく、残された我々にも大きなダメージを与えます。その手の物語は多くありますが、「裏庭」は「再生」で完結するような単純な物語ではなく、現世で生きる人間、死んでしまった人間をも巻き込む照美の「魂」の冒険譚です。
本書は照美が「裏庭」の世界で繰り広げる冒険ファンタジーのパートと現実の世界のパートが並行して展開されます。2つの世界の中で家庭、孤独、団欒、優しさ、冷酷さ、安心、不安、友情、信頼など、感情における矛盾が渦巻きのように描かれます。物語は荒唐無稽。しかし、最後はこれ以上ないような座りの良さになっています。最後の2行では、不覚にも泣いてしまいました。
著者は「西の魔女が死んだ」の梨木香歩さん。本書の中でも色々な仕掛けが組み込まれています。その仕掛けの数々が物語の中枢部分に絡んできます。小説の技巧が楽しめました。
この複雑な物語は、やはり「再生」の物語です。ただ、それに気づくのは最後の方で、ストーリー展開は決して気持ちのいいものではありません。それでも、読んで良かったという満足感を本書は与えてくれ、読書っていいなぁと改めて感じさせてくれました。 -
自分をいつの間にか息苦しくさせてしまう衣装のようなもの
その存在に気付き、それを使いこなすようになっていく そういう印象
自分を取り巻く世界にはどうしようもないことが多い
どんな親の元に生まれてくるか、ということからして
その親だって生まれてくるところを選ぶことなどできず、その人の人生を生きていた
どうしようもないこと、の中で自分が生きやすくなるには自分で選んだ衣装を精一杯使うこと、使いこなせれぱいいよね
香歩さんの作品が心に引っ掛かるのは、そのどうしようもないものに対してどうこうしないこと
おせっかいもしないし、怒りを感じても責めるでもない
そのものとの関係のなかで自分はどうか、どうしたいか考える
ぜんぜん読んですっきりはしないんだけど、埋み火のような熱を感じる