裏庭 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (412ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101253312

感想・レビュー・書評

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  • 穏やかそうな装画から受ける印象に反して、とても壮大なファンタジーだった。
    家族との関係性が希薄で孤独を感じている小学生の照美が、打ち捨てられた洋館の裏庭に迷い込んで、冒険しながら自分自身や様々なつながりを取り戻す話。
    図書館ではティーンズ文庫のコーナーにあったけど、大人でも結構難し目の話で、読みながら現実と対比させて考えることが沢山あった。

  • 伊集院静さんの描く「生と死」は、「からっと無常観、さらっと諸行無常」って感じがするんだけど、
    梨木香歩さんの描く「生と死」は、「輪廻転生、現世と来世、魂の救済」ってところを強く感じました。
    静謐な世界と、持続低音の響く世界の違いというか、「ぴーん」と「ぴちょん」の違いというか。
    (これでは余計わからなくなる)

    3代にわたって祖母、母、子どもと引き継がれる「業」が、ねっちょり感をだしています。
    あちら側とこちら側を行ったりきたりしながら、心の中にあるどろどろしたものを浄化していきます。
    そういうところを深く読んでしまうと、ちょっと苦いかも。

    冒険小説としての読み方もできます。
    謎解きの要素もたくさんあって、面白いです。
    スナッフの正体はすぐにわかりましたが、おかっぱの少女の正体にはかなり驚きました。
    おかっぱの少女の正体を知ると、話し全体がさらに光り輝きます。

    2013/03/31

  • 裏庭の複雑な地形の描写、たくさんの登場人物のバックグラウンド、伏線が細かく書かれた作品でした。冒険の終盤に差し掛かって裏庭の世界が、住人が複雑にかつ抽象的に(まさにファンタジーに)描かれてるところから必死に頭の中で想像しながら読んでましたが、結局理解が乏しく最後はフワッとしたまま読み終わってしまいました。

  • 梨木香歩さん『裏庭』は全編のほとんどがファンタジー。ミステリー好きのわたし、つじつまが合わないのはダメ(笑)つくづくわたしはファンタジーが苦手なのがわかった。

    ストーリは主人公の女の子が古い西洋館の鏡から不思議の国に入ってしまい、いろいろ面妖な経験をして、その夢のような冒険から女の子は成長を遂げ戻ってくる。テーマは「母と娘」のかかわり。

    というわけで「母と娘」。

    母娘も親子。もちろん愛情でつながれている。幼いうちは子が全人格を預けている。でもこの小説のように母の愛情が幼い娘にとって薄いように思ってしまったら、それは少々寂しい。

    しかしいつかはお互いに1個の人格がある者として自覚しあう時期が来る。

    なかなか来ない人もいるが(笑)友達親子とか姉妹親子とかいって愉しく仲良くしているらしい母娘が。一生そのような母娘がいるかもしれない。

    同性であるがゆえ「なれ」やすい。「なれ」には「慣れ」と「馴れ」と「狎れ」がある。

    だからこのファンタジーのように中学一年生で親離れ(親を理解)をしたのはいいことである。

    わたしなど40歳になるまで意識しなかったもの。おかげで自覚した時は気まずかった。それは遅すぎ。恥ずかしいかぎり。

    性格もあると思う。母は頼る性格、それを親というころもを着て私に依存していたので、一心同体とわたしも、母も思ってしまったのはおかしいことであった。

    そのことで、いろいろな不都合が母が亡くなった今ごろ起きて困惑しているのである。

    ま、小説には「母娘」のテーマが多い。これからも読むであろうよ。

  • 梨木さんの作品は物語の中の登場人物と一緒に不思議な体験ができる感覚。特に本作品は、主人公の女の子「照美」が生死の境を彷徨うような壮絶な体験をし、それを一緒に見守るかのような読書体験でした。

    照美が迷い込んだ鏡の中の裏庭の世界は、ファンタスティックでどこかディストピアな感じ。RPGのような世界観でした。登場人物はどれも象徴的で、逃げるおかっぱの少女や、おばば、庭師と呼ばれる少年、一つ目の龍、邪悪なトカゲなど、現実世界の写しと想像させるものばかりでした。

    何が何を表していたのか、全てがはっきり分かるように描かれているわけではないけど、それらと向き合うことで、照美が、自分や他人の心の傷を見つめ、受け入れる強さなどを身につけて一回り成長したということがよく分かりました。

    心の傷からは、逃げても誤魔化してもいけない。全てが真実だから受け行けるしかない。あらゆる命の積み重ねの上に、醜い自分も優しい自分もいる。そこに自分なりの世界を新たに作っていくしかない。

  • 昔は英国人一家の別荘だったものの、今では荒れ放題の洋館。そこは近所の子供たちにとって絶好の遊び場となっていた。その庭を久しく避けていた少女・照美はある出来事がきっかけに洋館の秘密の「裏庭」へと入りこみ、とある声を聞くが、その声を境に照美は不思議な世界へと迷い込んでしまう。元の世界に戻るために裏の世界で出会った人々と者たちと「竜の骨」を探す旅へと出る。

    テーマは「傷」。裏世界の住人たちは元いた世界の人物たちとリンクし、それぞれが傷を抱えている。旅の道中で各々は試練や葛藤を経て自身の傷と向き合っていく。「傷」は深ければ深いほど時間を掛けて自分自身で向き合うもの、そして自分で解決するもの。それは決して一人で抱え込むという意味でもなく、周囲に素直に吐き出すことで、自身も周囲も救われることがある。

  • 壮大な奥深いファンタジー
    裏庭はバックヤードなのかガーデンなのか

    小さな伏線がたくさん織り込まれている

    「傷」はひとつじゃないし、誰もが皆傷ついているのだと感じた
    傷ついていることに気がつかないほどに。
    あたりまえのことだけれど今更ながらに思い出す一冊

    傷を恐れるな
    傷に支配されるな
    傷を大事に育んでいけ

  • 【2022年90冊目】
    ファンタジーやSFを読まないので、話の中に自分を持っていくのになかなか苦労しました。裏庭と表の世界でフォントが変わるため、わかりやすくてよかったですが、話の視点が時折ころりと変わるので違和感を感じたりもしました。

    文字で読むよりも映像化した方が良いかも、と思ったのとストーリーのボリュームが大きいのに描写が少なくて、イマイチ頭の中で映像化できないなという感想を抱きました。

    絵本とかなら良いかも。

  • とても内容の深いファンタジー、読むのに時間がかかってしまった。一度読んだだけで理解するのは私の想像力では難しかった。映像化されたものを観てみたい。
    時間をおいて読み返したら次はどう感じるかな…

  • 「西の魔女が死んだ」がとても好きなので、梨木香歩さんの小説を読んでみようと手に取りました。
    ファンタジーの世界観が理解しにくく、私にはあまり響かなかったです。

  • ファンタジー感は素敵でした。終盤お話についていけなくなってしまいましたが。

  • 2022.7.19
    ダークな村上春樹のようだった。
    子供なのにゾッとするような事に気付いたりするので目が覚める瞬間がポロポロある。
    自分が求めてるものよりかなり抽象的だったけど良本だと思います。

  • 全部きれいに回収してまとめてくれるから、落ち着いて読了できた。
    ファンタジーなので情景を想像するのが難しいシーンもあった。最後の、私が永遠に落ちてくシーンあたりは、話がめちゃくちゃ長く感じた。
    スナッフはずっとスナフキンのイメージで再生された。私がいい感じに冷めてるというか、人間味のあるリアルな温度のキャラクターで好き。

  • 内容を知らずに読んだ。
    ハートウォーミング系の話かなと思ったらファンタジーだった。

    うーん、面白かったが根の国の所が長すぎてダラダラした印象。

    綾子のおじいさんと、照美の関係はホッコリで好き。
    亡くなったおじいちゃんに会いたくてなったー!

  • 面白かったです。多少残酷な表現はありましたが、どんどん読み進めることができました。個人的にラストは微妙に思いました。あと、タイトルの通り花や草木の名前がたくさん出てきます。僕はその辺は全く教養がありませんが、詳しい人は想像力が掻き立てられて、より楽しめるのかなと思います。

  • ちょっと設定が特殊過ぎて日本の感じが薄いなあ…と乗らない感じで読み始めたけど、裏庭に入ってからは普通にハラハラ読んだ。

  • うーーん……魔法やファンタジーにも理屈が欲しい人間からすると、よくわからない、まとまってない一冊に思えてしまったな。その曖昧さこそこの本の良いところなのかもしれないけれど。

  • 一味変わったファンタジー。最後はなかなかの重さ。

  • タイトルの印象からやはりファンタジー要素が満載でした。軽く読めるものと思っていましたが、注意して読まないと登場人物の区別がつかなくなることがありました。
    伏線をきっちり理解しておかないと意外と難解な作品です。

  • 文章と世界観はあいかわらず好き。ただ一度読んだだけではわからないかな。もう一度読みたくなる作品

  • 破滅と再生。それが両極ではなく、同じものであることに、共感した。

    醜さと美しさ。それは表裏ではなく、時空を超えて同じものが見せる姿であることが、なぜか腑に落ちた。

    テルミィの成長を描いた寓話…私はこのファンタジーをそう読み解いた。そうして、1人の人間の成長に、どれだけ多くの人の時間が、それに悲しみや喜びが詰め込まれているのかを、肌で味わった。

    恐ろしく、むごたらしいものをこよなく美しく、純粋なものをとてつもなく汚らしく、くるりくるりと変幻させてゆく梨木香歩の魔法の言葉たち。

    このファンタジーは、一度や二度読んだくらいでは味わい尽くせないように思う。

    レイチェルやジョージがそうしたように、私も人生の終焉を迎える頃、もう一度、裏庭を訪ねてみよう。

  • 2014 5/10

  • 小説の世界ではときどき
    「この作品は閉じている」とか
    「この作品は開いている」と
    表現されたりすることがあります。

    明確な定義はないようなのですが、
    閉じている物語の代表として
    この作品を紹介されたの読んでみました。

    タイトルからはあまり想像がつかないですが、
    思いのほかしっかりとファンタジーでした。
    各国のさまざま童話・伝承が入り混ざって
    混然たる世界が構築されています。

    何をもって閉じているのか、
    私にもはっきりとわかりませんが、
    あくまでも心の内面、内面へと突き進んでいくさまは
    確かに閉じている世界と言えるのかもしれません。

    視点が切り替わり、世界が切り替わり、
    重厚な文章もあってやや読みにくかったですが、
    少女の成長と救済にぐっと心が惹きつけられました。

  • 中学の頃に読み等身大の主人公に共感して辛かった。でもその辛さを乗り越えたからこその成長があるということを実感できる話。

  • ファンタジー作品.しかし,悪者が出てきて倒すとかではない.
    現実世界の常識とは異なる,裏庭の常識は照美にとって「なぜそうなるのかよくわからないもの」であるが,その「よくわからないもの」をありのまま受け入れることで道を開いていく.受け入れる過程で照美は成長していく.

    この作品には,あまりに多くのテーマが入っているため,時折見失ってしまった感がある.
    自分が感じたことをひとつ見つけて,そこに,河合隼雄さんの解説やここのレビューを読むことで,「なるほど!!」と視野が広がったように思えるのが楽しい.

  • 途中挫折してしまいそうな箇所も多かったが、時間をかけて読み終わった。
    結構グロテスクな描写もあったけど、自分自身の心の傷と向き合う、その大変さと苦しさを物語で表現するとああいうふうになるんだろうな、と思った。
    自分自身の傷も顧みて、向き合っていきたい。傷と向き合うことはすごく辛いことだけど、向き合った先に希望を見出せるような、そんな作品
    なんとなくジブリの作画を思い浮かべながら読み進めていた

  • 2022.07.20読了。
    今年14冊目。

  • 難しいけど少しおもしろかった

  • なかなか抽象的でむつかしい内容。
    裏庭=心の内側という世界観で、自分の心と向き合いながら、自分の心である『裏庭』を冒険する。

    自分は誰からも必要とされていない、そんな孤独感を持って読んだ時、また違った共感を得られるのかもしれないなぁ。
    終盤は本当に抽象的で、ポンポンと場面も風景も変化していって前半とはまた全然別の物語を読んでいるような気にさえなりました。

    最後、レイチェルとジョージが裏庭へと旅立つシーンで終わりとなりましたが、人はいくつになっても自分の持つ『裏庭』と向き合わなければいけないんだなぁ。。
    一度旅を終えた照美でさえも、きっと。そんな風に考え込んでしまう、でもいやじゃない読了感でした。

  • 久しぶりに小説を読んだ
    小説を読まなくなってから頭の想像力が欠けているような気がしたので、定期的に読んでいきたいとおもった

著者プロフィール

1959年生まれ。小説作品に『西の魔女が死んだ 梨木香歩作品集』『丹生都比売 梨木香歩作品集』『裏庭』『沼地のある森を抜けて』『家守綺譚』『冬虫夏草』『ピスタチオ』『海うそ』『f植物園の巣穴』『椿宿の辺りに』など。エッセイに『春になったら莓を摘みに』『水辺にて』『エストニア紀行』『鳥と雲と薬草袋』『やがて満ちてくる光の』など。他に『岸辺のヤービ』『ヤービの深い秋』がある。

「2020年 『風と双眼鏡、膝掛け毛布』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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