西の魔女が死んだ (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.82
  • (4481)
  • (4280)
  • (5731)
  • (574)
  • (136)
本棚登録 : 33332
レビュー : 4312
  • Amazon.co.jp ・本 (226ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101253329

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  •  不登校になった中学生の女の子が、田舎で一人暮らしを営む祖母のもとで、逆に(?)社会性を育む話。

     うまく社会や集団に溶け込めない主人公が、非日常に触れることにより成長し、目の輝きを取り戻す。そうした物語はそれこそ世界にいくらでも溢れている。そんな中でこの小説の特徴を挙げるとするならば、まいの自己肯定感の低さと聞き分けの良さだろうか。

     主人公のまいは、中学校のクラスにおいてグループを作る風土とそのいずれかに属するというシステムにうまく馴染めず、学校に行けなくなってしまう。母親が父親と電話で自分のことを「生きていきにくいタイプの子」「昔から扱いにくい子だった」と評しているのを聞き、まい自身それを自覚している。
     聞こえるように言っちゃう親もどうなの?と思わないでもないが、母親自身がハーフでクラスに馴染めなかった過去があるらしく、母親の子どもに対する公正な態度ともとれる。特に、この物語では、母親の持つ強さと祖母の持つ強さの二つを掛け合わせて、まいという人物が成長する様が描かれるのだ。ただ、まいとしては、ママは立派に頑張ったのに私は……という自己嫌悪に陥ってしまうのだろうか。
     私も同じような年齢の時に周りに馴染めず悩む時期があったが、自己肯定感は半端なく強く、自分は賢く周りが愚鈍なため自分が浮いてしまっているだけであり、この先の人生で成功するのは私であり、周囲の馬鹿共は一生田舎で惨めに〇〇(職業差別)でもしながら死んでいけ、くらいのことを本気で思っていた。明らかに歪んだ思想ではあるが、自分を鼓舞するためのカンフル剤として、「うまくいかない」は機能していたように思う。
     ただ、独善的に過ぎる当時の私がまいの立場にいたら、ゲンジさんを毒草で亡き者にしていただろう。物語を読んでいる時は、てっきり伏線かと思っていた。

     そんなわけで、まいは非常に自己肯定感の低い少女のように見える。だが、祖母との「魔女の基礎トレーニング」と称する生活の中で、自分で決めることの大切さを学ぶ。物語の中盤から後半に至るまで、前半では見られなかった彼女の意志が見えるようになり、その炎は祖母をも揺らすことになる。そこが良かった
     まだまだ中学生という立場において、群れの持つ効用や孤独が齎してくれるものについて前向きに向かい合うことができることができるようになったのは、祖母による自立の促進と、両親が見せるフラットな態度の相互効果だったように思う。無理解な母と優しい祖母という構図ではなく、両親の立派な背中も、祖母が過去のものとなった価値観を抱えていることも、この小説では描かれている。

     私にとっては、まいのような危機は乱暴ではあるが通り過ぎたものであり、今度は同じように苦しむ人にどんな言葉をかければよいのか、自分に何ができるのかと考える立場になる。この小説は、そんな側から色々考えさせられる本だった。

  • 自分で決める。当たり前のようで当たり前じゃない。その意志の力を日常に落とし込み、愛するおばあちゃんはやっぱり最強だと思う。

  • 初めて読んだのは学生の頃。
    大人になって読んでも、やっぱり一番好きな本。
    当たり前のことだけれど、忘れてしまっていることを思い出させてくれる。

  • 「まい」がおばぁちゃんである「西の魔女」と共に過ごしていく過程で成長していく物語。

    草木、花、森、鳥、虫、雨などなど。自然の描き方が本当に美しくまるでその場にいるように思われるほど。そしてその自然の美しさに包まれた魔女との生活に浄化される「まい」。

    しかし、ゲンジさんに対しての食い違いにより「魔女」と仲違いに陥り、悩む「まい」。しかし、それも「魔女」への癒着からの自立であり、「魔女としての修行」の一環であったのかもしれない。

    自分の居場所である切り株がある「あの場所」。そこに侵入してくるゲンジさん。「まい」は「魔女」にすがる。「魔女」がいなくなったとき初めて、泣いている美しい(卑しくない)ゲンジさんをその目で見て、今までのことを考え直したに違いない。あの女の裸の雑誌も「誤解」では無かったのだろうか、と。「誤解は人生を彩る」のである。
    キンレンカの葉を抜かずに食べる。ゲンジさんを見直す。
    学校に行く。彼女は努力し、「魔女」になれたのかもしれない。(最後の、自分の思い通りに行くことを「魔法」と表現している)

    しかし、これは自明であったのかもしれない。

    「星一つない空と境目のない海」(p.59)から「西へ」と言われ、「西」にいる魔女へのもとで新しい経験をした「まい」。他の部分でも「西の方からは、濃い灰色の雲が流れてくる」(p.165)(おばぁちゃんの行先の不安を表しているのでは)と、「西」が強調されてる部分が多く見られる。

    分かりきっていることかもしれないが、「西」というのは「魔女」のことを表しており、それに対して「東」は「まい」のことを表しているのではないか。

    そこで、
    「ニシノマジョカラヒガシノマジョヘ」
    とおばぁちゃんの言葉があるが、
    これは紛れもなく「まい」が「魔女」であることを
    認めており、「まい」の心身の成長の果実である。

    お母さんが産んでくれ、体があるからこそ、
    生きている幸せを感じることができる。
    母に、そして、生きていることに感謝。




  • 主人公のまいの様に、私も学校に足が向かなくなった時期があった。そんな時に、西の魔女のような家族がいたら、知り合いがあったのなら何か違ったのだろうか。じぶんが西の魔女のような大人になって、将来、子どもを持った時に助けてやりたいと思った。
    p.73 「もう永久に何も変わらないんじゃないかと思われるころ、ようやく、以前の自分とは違う自分を発見するような出来事が起こるでしょう。」

  • 不登校の女の子がおばあちゃんの家で過ごす。

    何回読んでも内容を忘れるけれど、リラックスできるはなしだった記憶はある。

  • 「精神力を強く」
    朝は何時に起きるのか
    一日をどう過ごすのか
    自分で決めて、それを守っていく
    外でおきたことに、感情を翻弄させない
    いま、私にも必要な取り組みであった。

    後日譚のまいは、「まるで魔法をかけたように、事態がまいの方に好転していく」と。
    修行が実っているのだろう。

    死ぬことは蟹が脱皮するようなこと
    久しぶりにお風呂に入ったようにスッキリするという解釈は素敵です。

  • こんなおばあちゃんがいたらいいんだろうね。
    都会に疲れて、仕事に疲れて、人間関係に疲れたら、おばあちゃんのところで人間本来のような生活をしたい。
    規則正しい生活をして、新鮮な野菜を食べて、掃除洗濯をして。。。
    この先、こんな田舎暮らしをしながら、合間にネットで仕事するような若者も出てくるのかもしれない。

  • 西の魔女が死んだ。西の魔女と呼ばれるその人は、マイのおばあちゃん。

    マイが2年前、学校へ行かないと決めたときおばあちゃんと一緒に過ごした。

    そこで教わった魔女の心得。
    それは簡単なようで難しい、自分で決めたことはやりきる力。。
    「最初は何も変わらないように思います。そしてだんだんに疑いの心や、怠け心、あきらめ。投げやりな気持ちが出てきます。それに打ち勝って、ただ黙々と続けるのです。そしてもう永久に何も変わらないんじゃないかと思われるころ、ようやく以前の自分とは違う自分を発見するよあな出来事が起こるでしょう。そしてまた、地道な努力を続ける、退屈な日々の連続で、また、或る日突然、今までの自分とは更に違う自分を見ることになる、それの繰り返しです。」このおばあちゃんの言葉を繰り返し繰り返し読みました。ああ、その通りなんだろうな、私はまだ、何も、何もやりきったことがないからわからないけど、きっとそうなんだろうな、味わいたいな、私も、私も頑張ってみようかな。そう思えました。

    おばあちゃんとの生活はきっと映画に出てくるようにキラキラと木漏れ日が眩しく、草は青々とし、木苺は真っ赤に色づき。ジャムの甘い香り、お日様とラベンダーの香りの真っ白なシーツ。そんな感じなんだろうなと想像できて、どこか懐かしいような安心した気持ちになりました。

    結局は読者である私もマイのように知らない間におばあちゃんに誘導されてたのかもしれないね

全4312件中 101 - 110件を表示

著者プロフィール

梨木 香歩(なしき かほ)
1959年、鹿児島県生まれの小説家、児童文学作家、絵本作家。
『西の魔女が死んだ』で日本児童文学者協会新人賞を受賞。映画化もされたこの受賞作が最も著名な代表作となる。
ほかに新美南吉児童文学賞、小学館文学賞を、『裏庭』で児童文学ファンタジー大賞、『渡りの足跡』で読売文学賞随筆・紀行部門をそれぞれ受賞。
受賞作以外の代表作として、『家守綺譚』、『沼地のある森を抜けて』、『ぐるりのこと』などがある。

西の魔女が死んだ (新潮文庫)のその他の作品

西の魔女が死んだ 単行本 西の魔女が死んだ 梨木香歩
西の魔女が死んだ ハードカバー 西の魔女が死んだ 梨木香歩

梨木香歩の作品

ツイートする