西の魔女が死んだ (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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レビュー : 4540
  • Amazon.co.jp ・本 (226ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101253329

作品紹介・あらすじ

中学に進んでまもなく、どうしても学校へ足が向かなくなった少女まいは、季節が初夏へと移り変るひと月あまりを、西の魔女のもとで過した。西の魔女ことママのママ、つまり大好きなおばあちゃんから、まいは魔女の手ほどきを受けるのだが、魔女修行の肝心かなめは、何でも自分で決める、ということだった。喜びも希望も、もちろん幸せも…。その後のまいの物語「渡りの一日」併録。

感想・レビュー・書評

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  • 『おばあちゃんの思い出』、この言葉を聞いただけで目頭がなんだか熱くなる方は多いのではないでしょうか。2000年3月に公開されたドラえもんの同名映画を思い出す人もいるかもしれません。私にとってもおばあちゃんは特別な人でした。共働き家庭で育った私は、おばあちゃんと過ごした時間が両親との時間より格段に長かったこともあり、両親にも相談できないこともおばあちゃんになら話せる、両親に話すことでも事前におばあちゃんに話して意見を聞いてからにする。そういう日常を送っていました。でも、今思えば話しやすいが故に、そんなおばあちゃんには随分とわがままを言ったようにも思います。親しいからこそ何でも話す、わがままも言う。でも、そんな私が話すあんなこと、こんなことをいつも『そうだな。』『がんばったな。』『よくやったな。』と静かに聞いてくれたおばあちゃん。おばあちゃんの思い出は誰にとっても特別じゃないでしょうか。

    『西の魔女が死んだ』唐突な書き出しで始まるこの作品。『英国人と日本人の混血であるママは、黒に近く黒よりもソフトな印象を与える髪と瞳をしている』というママ。だから、おばあちゃんは英国人という主人公・加納まい。そんなおばあちゃんを『西の魔女』と呼んでいた まい。『回りの世界から音と色が消えた。失った音と色は、それからしばらくして徐々に戻ったけれど、決して元のようではなかった。二度と再び、まいの世界が元に戻ることはなかった』というおばあちゃんの死という現実に向き合いながら、ママと、おばあちゃんの家に急ぐ まい。そんな途上、二年前に一ヶ月の生活をともにしたおばあちゃんとの思い出が記憶に蘇ります。小学校を卒業し、中学校に入ったばかりのその時期に『わたしはもう学校へは行かない。あそこは私に苦痛を与える場でしかないの』とママに訴える まい。ママは、そんな娘を無理に学校へと追いやるのではなく、おばあちゃんの家に連れて行く決意をします。

    『まいと一緒に暮らせるのは喜びです。私はいつまでもまいのような子が生まれてきてくれたことを感謝していましたから』と喜んで迎えてくれたおばあちゃん。『「今日は裏山で働いてみましょう」おばあちゃんが突然言い出したので、まいはびっくりした』というそんなおばあちゃんとの二人暮らしが始まりました。そんな中、『まいは、魔女って知っていますか』と尋ねるおばあちゃん。『魔女』という言葉にとても興味を持ち自分も魔女になれるのかと問う まい。そんな まいにおばあちゃんは『それではまず、基礎トレーニングをしなければ』と答えます。そして、おばあちゃんが見守る中で まいの魔女修行が始まりました。

    『櫟や樫、榛の木や栗の木などの点在する陽当たりのいい雑木林』という森、『木のまばらなその林の床一面、真っ赤なルビーのような野いちごの群生』という野苺畑などの絶妙な表現。また、ホトトギス「テッペンカケタカ」、こじゅけい「チョットコーイ」、鶏「コケコッコー」という鳥の鳴き声のリアルな描写。おばあちゃんの家の周りのあんな情景、こんな情景が、読書という文字からしか得ることができない状況にもかかわらず、目の前に森が大きく広がるのが見え、また、耳に鳥のさえずりまでが聞こえてくる。まるで自分がその場にいるかのようなとても臨場感を感じられる描写に満ち溢れていて、思わず私も深呼吸したくなりました。

    ママからは『昔から扱いにくい子だったわ。生きていきにくいタイプの子』と言われていた まい。学校生活に馴染めず今も苦しんでいる中学生も数多くいるこの社会。それは今も昔も変わらないこの国の現実なのかもしれません。でも一方で核家族化という言葉が変化ではなく、もはや当たり前となった時代には、以前より子供に逃げ道が少なくなったように思います。私は、かつておばあちゃんと長い時間を過ごすことができました。喜び、怒り、哀しみ、そして楽しみの全ての感情を共にする中で、どんなに救われたかわかりません。今の自分があるのはおばあちゃんがいたから、大袈裟でも何でもなく、自信を持ってそう言いたいと思います。でも、おばあちゃんは何も特別なことを教えてくれたわけではありません。魔女修行をする まいにもおばあちゃんは語ります。『いちばん大事なことは自分で見ようとしたり、聞こうとする意志の力ですよ。自分で見ようとしないのに何かが見えたり、聞こえたりするのはとても危険ですし、不快なことですし、一流の魔女としてあるまじきことです』。自分の意志の大切さ。自分が自分であるために。大人への階段を自分の力でのぼっていくために。そう、そんな時代を送る子どもたちに向けたとても印象的な言葉だと思いました。

    もうため息が出そうになるくらいに澄み切った美しい森の描写と、柔らかなぬくもりの感じられるおばあちゃんの まいに対するあたたかい眼差し。そこで紡がれる人の優しさと、慈しみ。『おばあちゃん、大好き』という まいに、『いつも微笑んで、「アイ・ノウ(知ってますよ)」、と応えた』というおばあちゃん。その静かな結末に、悲しさと切なさを超えて、愛おしいさと懐かしさを感じることのできる、とてもかけがえのない時間を綴られた梨木さん。素晴らしい作品に出会えました。ありがとうございました。

  • ずっと読んでみたかった。一気読み。あったかい世界観。風景とかも想像しやすくて凄く入り込めた。魔女ってゆうからもっと意地悪なおばあさんかと思ったら、とても素敵なおばあちゃん。
    "死んだら魂は……"そうであってほしい。その方が美しいな。ヒガシのマジョになっていてほしい。

  • 「西の魔女が死んだ。」という冒頭の部分から、こわごわ読んでみると、そこには孟宗竹やら楓など大自然に囲まれた描写がどんどん広がってきて、心地よい世界に浸ることができた。
    裏山の雑木林の床一面に覆われた、真っ赤なルビーのような野いちごの群生。
    その野いちごで、おばあちゃんと一緒に作った鍋いっぱいのジャム。
    大鍋でお湯を沸かして布巾を煮沸し、たらいの中で足踏みをして洗ったシーツなど。
    山の中でまいがおばあちゃんと一緒に過ごした日々が、とてもうらやましく思えた。
    「人は死んだらどうなるの」という問いにも真摯に答えてくれた、素敵なおばあちゃん。
    まいが学校へ行かなくなった本当の理由も、おばあちゃんには素直に話すことができ、私もまいと一緒に清々しい気持ちになることができた。
    お気に入りの一冊がまた増えてうれしいです。

  • 大好きな本!
    学校での人間関係に疲れたまいは、田舎のおばあちゃんのうちで療養することに。そこでの生活がまいを「魔女」として成長させていくストーリー。
    おばあちゃんの大樹のような安心感・どっしりと包み込んでくれるような優しさが大好きです。
    まいも「扱いづらい子」と言われ傷ついていたけど、自分で物事を考えられる素晴らしい子だと感じました。

    おばあちゃんの暮らし方は、今で言う【ミニマリスト・丁寧に暮らす】系。まいの両親がそれを時代に逆行していると感じている部分もあり、また違った発見があった読書でした。

    多感期の子供が「死」についてちゃんと向き合えるように、おばあちゃんが自分の信じている事を話す場面が好き。ラストのおばあちゃんの思いやり・約束のは果たし方が最高にカッコいい。素敵です。こんなおばあちゃんになりたい!

  • 西の魔女と過ごした
    宝物のような短い日々。

    心と体はひと繋ぎであり、心の健康は
    体の健康によって培われ強く輝くことを
    言葉ではなく、ゆるやかに体と心に染み込ませ
    気づかせてくれる。

    眠ること、食べること、作ること、
    育てること、生活のリズムをとること。
    特別なことではなく、基本の大切さや
    心を直感や私情で滞らせることなく
    柔らかに動かすことであらゆる問題を解いていく
    道筋を教えてくれたおばあちゃん。

    大好きな花や草木、鳥たちがいっぱいで、
    風の音が、匂いが、朝露が感じられ、
    まいちゃんのように魔女の優しさに包まれて
    いつの間にか全身がほぐれていく。
    本を開くたび西の魔女からのプレゼントのように
    いつでもここに優しさと光が待っている。
    かけがえのない1冊になりました。

  • 自分の祖母を思い出した。
    家や学校にちょっと疲れた時、簡単に日常から離脱できる場所、それが祖母の家。

    たっぷりした朝食。
    庭に椅子を並べて、背もたれに渡すように布団を干した景色。
    梅をザルに並べて土用干し。
    どれも慌ただしい自分の毎日とは全く違う。
    懐が広く、ちょっと辛辣で、一人の生活を楽しんでいた祖母。

    この話の主人公のまいにも、心を預けられるおばあちゃんがいて良かった。

    私も自分の生活を愛せるおばあちゃんになれるだろうか。

  • 梨木香歩 著

    あまりに有名な「西の魔女が死んだ」を今更ながら
    読了。タイトルはまるで絵本のような作品を想像してしまう…惹かれるタイトル。
    淡々としているが、わりとリアル…でも、西の魔女がいる世界(おばあちゃんの家)では、気持ちの良い風が吹いていて…自然との営みの中の暮らしが、とても心地良い。
    梨木さんの作品は(と言っても、まだ2作目なんだけど…)花や植物たちの息遣い、そこにある林や緑
    の情景が手にとるように感じられるのが、すごいと思う。
    しかも、花や草木、鳥の名前まで、色々知れて楽しくてワクワクしてしまう。ジャムの作り方やエプロンの作り方まで、そこで、おばあちゃんに伝授されてるような親近感を持って読んでいられる。
    まず、何より、おばあちゃんの居なかった私には、羨ましい限りだった。(こんな、素敵なおばあちゃん居ていいなぁと素直に感じる場面が多くて…)
    大好きなおばあちゃんといた幸せな時間に、心のしこりを残したまま、お別れするのは悲しかったけど、人はいつでも生きてるうちは、まだまだ、時間も残っていて、やり直すのに十分な時間があると思ってしまうものだ…まさか、死んじゃうなんて、それは、とても呆気なくて、残された者は後悔しか残らない。どんなに生きてる間に、よくしても後悔は残るものだと私なりの持論はあるが、
    「ニシノマジョ カラ ヒガシノマジョ へ
     オバァチャン ノ タマシイ、ダッシュツ、
     ダイセイコウ」というメッセージ見た時は
    心から良かったって思った。
    人は自身も含め、残念ながらお別れのサインを送る事は…なかなか出来ないものだから。
    この魔女のようなお話にすんなり入っていけたのは、私自身、子どもの頃から少し霊感がある…なんて言えば、気味悪く思われそうだが(実は、みんな、子どもの時は持っているんだ、少し、感じ方が敏感か?どうかだけで…)子どもの時は 何か、不思議な体験しても、自分もまわりの子どもたちも、全く不思議な感じがなくて…素直に「すごい!」なんて言われて、得意になった事もある しかし、大人になるにつれ、勘が強い ここの空間にうけつけないものを感じるという感覚くらいで、絶対に霊感強いなんて思われては駄目だって思うようになった
    気味悪がられるだけだと気づいたからだ。
    だんだん…子どもの頃より不思議な体験はしなくなったし、大人になるにつれ、感も当てにならなくなったので、何故か安心していたのだ、、しかし、
    なくならないものが一つだけある 友達や親や身近な存在で付き合ってる人が遠くに行ってしまう時、必ず、前夜か当夜に夢で見てしまうのだ〔ディジャブみたいな感じ〕本当にそれは、転勤であったり、(転勤だとか引越しだと、ほっとする)亡くなる前だったり…こんな才能とも呼べない嫌な予感の夢は…とても残念だが、いつも当たっており、嫌になる。でも、この作品読んでると、人には皆んなそれぞれの悩みや…厄介事があるって事なんだなぁと妙に感慨深く、感じた。
    余談が多くなり過ぎたが、知っていても、おばあちゃんがそうしたように、答えを示すのではなく、自分で考えて自分で決めるのを見守ってくれる優しい存在になることが大切だと思えた。
    解説で 裸足で立ってみて下さいと書いてあった
    「靴と靴下を脱ぐのは、最初ちょっと抵抗あるかもしれませんが、きっと何かが目覚めるような感覚を体験出来ると思います」
    そして…私は思い当たった 随分前に 沖縄宮古島に旅行に行った時、砂山ビーチに出るまでの間、狭い砂利道のような所から、騙されたと思って 靴と靴下を脱いで歩いてみて下さい!本当に気持ちいいから…とバスガイドさんに言われ、嫌々というかグズグズととりあえず、脱いで歩いてみた
    それがもう、一気に子どもの時の解放的な気分と心地良い感覚に感動した
    そうなんだ!文句ばかり言ってないで、いいという事は試した方がいいし、妙に勘が、勝手に働く私でも、自然と寄り添って生きていけば、大丈夫って気持ち!!

  • おばあちゃんの暮しは、自然と動物を大事にしながらやさしく生きること。
    やり遂げること。自分で決めること。大事に生きること。自然のささやきに耳を傾けること。
    木苺をバケツにいっぱい採ってきてジャムにするところなんて、うちのくらしに似ている。娘はいきいきとしてるし、そんな姿を見る親も幸せになる。自然いっぱいの中で育ってくれただろうか。いつかそう思ってくれるときがくるだろうか。そう、いつかダシュツに成功したときに。
    共感できるところがたくさんあるお話でした。
    あとがきが、とてもいいです。

    (後日談)
    映画を観ました。
    う~ん、今一つかなぁ。本のほうが数段感じるものがあったかも。

  • おばあちゃんと孫の話。
    どこか絵本を読んでいるような感覚だった。

    心に傷を負った少女は祖母の家で暮らし始める。
    田舎で暮らす中で、魔女なおばあちゃんと自然に囲まれた生き生きとした生活のリズムを体感する。

    少女はある日、家族と暮らす為に祖母の家を離れる。
    2年後、祖母のが亡くなった。

    おばあちゃんは少女に大切なものを教え、残した。孫の為に死を前向きなものとして変容させた。
    大好きなおばあちゃんは不思議な力を持った魔女でした。おしまい。

  • 2019.10.06 読了
    もっと早くに読んでおけば良かったと後悔。死を描きつつも、感傷に浸り過ぎず、清々しく暖かな気持ちにしてくれる本。大切なのは自分で決め、それをやり遂げる意志の力。

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著者プロフィール

1959年生まれ。作家。『西の魔女が死んだ』で日本児童文学者協会新人賞、新美南吉児童文学賞、小学館文学賞を受賞。他の小説作品に『沼地のある森を抜けて』(紫式部文学賞)『裏庭』(児童文学ファンタジー大賞)『ピスタチオ』『海うそ』『f植物園の巣穴』『椿宿の辺りに』など。エッセイに『春になったら莓を摘みに』『水辺にて』『渡りの足跡』(読売文学賞随筆・紀行賞)『エストニア紀行』『鳥と雲と薬草袋』『やがて満ちてくる光の』『風と双眼鏡、膝掛け毛布』など。児童文学作品に『岸辺のヤービ』などがある。

「2020年 『Station』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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