エンジェル・エンジェル・エンジェル (新潮文庫)

著者 : 梨木香歩
  • 新潮社 (2004年2月28日発売)
3.47
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  • Amazon.co.jp ・本 (156ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101253350

エンジェル・エンジェル・エンジェル (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 旧漢字や古い言い回しを使うことで
    単行本版よりも場面転換も入りやすく、
    昔の景色がより濃く広がる文庫版。

    古い時代のお茶摘みの楽しさ、
    川で冷やされたお茶の景色、
    塀に沿って咲いたフランス菊、
    明るい陽射しと土間の危ういコントラスト。

    誰しの心にもある特別ではない「悪」が
    目に見えない振り子のように次第に
    大きな振動を伴って不穏な影のように圧迫する。

    どこにも逃げられない閉塞感に迫られ、
    やがてくる破壊の後のどこまでも広く
    心も体も空と溶け合うかのように
    昇華される開放感は圧倒的。

    水槽の濾過装置のように時を越えて
    同じ闇にもがくもう1つの心を
    自分が悪を引き受けることで救い、
    その姿に過去の自分を重ね、
    自らも清らかに救われ罪が緩む。

    時空を超えて得た2人の姉妹と木彫りの天使。
    さわちゃんの翼はきっと力強く美しい。

  • 梨木香歩さんの本はこれで二冊目。

    この小説の中には「天使」という言葉が何度か出て来ますが、場面
    ごとに少しずつ意味が違います。
    一番重要なのは「おばあちゃんは天使みたいだ」という、ママの言
    葉。
    お話は主役である少女「コウコ」によって語られます。
    しかし、昔語りで語られるおばあちゃんの話も交互に出てきます。
    寝たきりになって、意識がこの世とあの世を行き来している状態で、
    それは深い水の底をのぞくような不思議な気分にさせられます。
    どこでどう繋がっていくのか、ひとつひとつの挿話を巧みに織り交ぜ
    最後には美しい一遍のファンタジーとなって仕上がっていることに
    気づかされます。

    覚醒したときに話すコウコとの会話。
    静かな繰り返しに、読み手もシンと心が静まります。
    たっぷりの伏線が敷かれ、最後まで読んでやっとパズルが完成した気に
    なるのですが、テーマは重いのです。
    「私が悪かったねえ。おまえたちを、
     こんなふうに創ってしまって」
    創造主の懺悔が聞こえて来ると、人は生命を全うするのだろうか??

    梨木さんの本は、魂との会話をさせてくれます。
    少女に語らせるという偽装をして、実は心の奥底に語りかけてくる、
    ある意味危険な小説。

  • コウコと寝たきりのおばあちゃんとの夜の秘密の交流。
    現在とおばあちゃん、さわちゃんの過去とが聖書と熱帯魚、古びたテーブルを介して混ざりあう…。
    最後、コウコの何気ない言葉により何十年ごしの後悔からおばあちゃんは救われます。
    ツネが彫った天使様がテーブルから出てきたとき、ツネの優しさにホロリとさせられました。そしてその木彫りの天使が体現している、天使のような心を持ち続ける難しさですよね…

    神様が悪魔をどう思っていたか、自分のなかの醜い部分がこのお話を読んで少し救われたように思います…

    読みやすいのにすごく深い、というか重いという印象のお話です。

  • 「聖書・神・悪」祖母の過去と現在の主人公をリンクさせているお話し。

    ちょうど半年前に読んだ時とまた違って感想を持つことができ、梨木さんの魅力をより知ることができました。

    嫉妬や悪意、人を困らせる言動。

    反省・後悔することの重さ。

    この作品もまた繰り返し読もうと思う一冊。
    次回は自分なりにどのような感想を持つことができるのかと思うと楽しみ。

  • 本当になぜなんでしょうか。

    神さまは天使ばかりでなく、悪魔も必要だったのでしょうか。

    光があたるところ闇が出来、朝が来れば夜が来る。
    夏が過ぎ去れば、やがて冬が訪れ、この世には男と女が生まれる。

    宇宙に存在する、ありとあらゆるもの。森羅万象。
    片方が欠ければ、もう片方も存在することが出来ないといいます。

    コウコと娘時代の記憶を彷徨うさわちゃん。
    二人の会話は、すれ違っているようで結びついている。

    いくつものエンジェルが出会い、別れ、また交差する。
    その影には、必ず悪魔の存在。

    「おまえもかわいそうなことをした」
    わたしのなかの悪魔を抱きしめましょう。

  • 孫である公子(コウコ)がおばあちゃんの夜の世話をすることで、
    熱帯魚を飼うことになるお話。
    コウコとおばあちゃんのお話と、
    おばあちゃんの女学生時代の話が
    交互に展開されます。

    解説にからくりのあるお話とあったので、
    1回目は順番に、2回目はコウコの話だけ、
    おばあちゃんの話だけと読んでみました。

    隠されたからくりというのはわからなかったけれど、
    おばあちゃんが女学生の時にした罪を
    孫のコウコの言動によってゆるされたんだということがわかって、
    なんだか心がほっとするお話でした。

    途中、熱帯魚が殺戮を犯したり、残酷な描写も多少あったとは思いますが、
    私は読み終わった後にさわやかな、ほっこりした気持ちになりました。

    あっさりと読めたところもよかったです。

  • ちょっと良すぎた。120冊目、これにすればよかった。何度も読み返したい。『西の魔女が死んだ』の時のそれより、こちらの孫・祖母関係の方がつぼ。
    悪魔的天使である人間。カフェイン中毒、熱帯魚の殺戮。すべてが着地すべきところに着地している。センスの良い骨董品のよう。セピア色の記憶に、私自身の曽祖母の赤絨毯の部屋がふと、頭をよぎった。
    タイトルの「エンジェル・エンジェル・エンジェル」、読後解釈のし甲斐がある。

  • いやあ……もう……。西の魔女も良いけど、こっちももう……。すごい。

  • 風神招き、和紙のはたきで障子の桟を掃除する音、ほうじ茶で作った茶粥。
    記憶の奥底にはあるかもしれない、でも見たことはない、美しさが沁みてくるような一つ一つのこと。
    高野文子の作品を思い出したのは、私だけでしょうか?
    ばばちゃまの少女時代、同性の先生と友達に対する思慕、それが裏切られたと知った時の悲しみ。
    そして自分が望んだ通りの不幸が起こった時...
    そんな邪悪な存在である自分でも、神に赦されていると感じた時に得られる慰さめ。
    エンジェルという名の繋がりの中で、ばばちゃまにもたらされる慰さめを描いている、奇跡のような作品。

  • 死を間近に控えた「ばあちゃん」と、孫娘のコウコ、そして彼女が飼い始めた熱帯魚をめぐる物語。

    梨木作品には印象的な老女たちがいる。
    「西の魔女が死んだ」「りかさん」のような、知恵の象徴のような人たち。
    この物語でも、さわこの「おばばちゃま」はそんな感じ。
    一方、ここでは、さわこが年老いて、認知症の症状も出、死を迎えようとする状態の老女として出てくる。
    物語はさわこの少女時代と現在を往還しながら進んでいく。
    さわこばあちゃんは、少女時代、心を悪魔に売り渡した、つらい経験を背負い、今もまだその痛みから恢復していないようだった。
    物語の終盤、ツネの残した机の引き出しから手彫の天使が出てくる。
    これがさわこばあちゃんの人の救いになっていてくれるといいのだけれど、ばあちゃん自身はそれを知っていたのだろうか。
    安易にカタルシスを与えてくれないところが、梨木さんのいいところだと思う。

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