沼地のある森を抜けて (新潮文庫)

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  • 新潮社
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レビュー : 231
  • Amazon.co.jp ・本 (523ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101253398

感想・レビュー・書評

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  • 壮大な連綿と続く生命の繋がりを、酵母菌などといった生化学と融合させたお話。
    1つ1つが繰り返しで、けれど1つとて同じものは無く、全てがオリジナル。

    圧巻でした。
    生きること、生きていることに自信を失くしたとき、きっと心の支えとなってくれる。

  • これほど「シ」を美しく描かれることはあるだろうか。

    代々受け継がれてきた「ぬか床」という「ダサい」ものを囲んで次々と現れる「命」。この根源のある「沼」に辿り着くまでに、様々な人や歴史をたどっていく。
    これほど古臭いものが美しいラストを描けるって素敵。


    私は恋愛に「褪めて」しまった人が振り回される話がとても好きみたい。

  • 全ては、細胞の見た夢。

    遺伝子を運ぶ船、種が生き残るための戦略の一つ。
    それよりもっとスケールの大きいはなし。

    今生きていること全てが、最初の1つが望んだことの結果かもしれない。
    それは、ある意味では「私」の「生」自体を揺るがすような事実かもしれない。


    なのに、語られているのは、絶望でもなく虚無感でもなく、希望だ。
    孤独は、他を求めることの原動力。
    孤独は、他への愛の原動力。
    そのことは、私だって知ってるんだ。


    まだ、全てを飲み込むには未熟だ。
    時間をおいて、全てを飲み込んでみたい。

  • ぬか床から始まる物語。そこからまさか、微生物レベルの話になるとは思わなかった。
    そもそもぬか床を話の主柱に置いた話に出会うのが初めてかもしれない。

    「おなじぬか床はふたつとない。しかもそれは変わりつづける。あとから少しづつ違うものが加わることで、オリジナリティが更新されていく。」というのが良い。人や個、も同じ。
    私は父の繰り返しでも、母の繰り返しでもない。

    私たちにまとわりつく「孤」の原点は宇宙で初めて現れた細胞の持っていた孤独。ひとつのものから分裂して出来たそれぞれの個も、少し離れてみるとすべては大きく、緩やかにひとつのものとして考えられる。

    かなり壮大な物言いにも思われるけれど、この解釈はなんだか好きだ。
    自分というものをポイ、と呑気に手離してしまえるような気持ちになる。

    フリオが自らを沼の人ではないか、と言い出すシーンと、
    島の村に向かう車中でのシーンが特にすき。
    だんだんと増殖する細胞のように、
    広がりをみせる久美の物語に
    ぐっと引き込まれる。

    そこまで甘すぎず、ファンタジック過ぎない本作、梨木さんの作品の中でも特にお気に入り。

  • まさか「ぬか床」から生命の起源に持っていくとは。。。梨木さんの懐の深さに脱帽。梨木さんの頭の中はどうなってるのだろう。
    不可思議な話しだけど、ぐいぐい引き込まれてとんでもないところに連れてかれて、読み終わってなんか分からんけど幸せな気持ちになる。
    私の語力ではこの話しの良さを表現できないのが歯がゆい。。。
    「リカさん」がまた読みたくなった。

  • どんな哲学書よりも、間違いなくためになる哲学書。
    と、私は思う。
    哲学と言うか、倫理と言うか、摂理と言うか、生命と言うか、
    とにかく繋がっている、そしてひとつである。
    ひとつであれ。
    光であれ。

    私もいつかそんな出会いができるだろうかと悩む今日この頃。


    2013.7.21追記
    改めて読んだけど、読むほどに謎が深まる。
    けど、改めて思ったのは、
    「ひとり」であっても、「孤独」ではなくて、
    「ひとつ」であっても、生命はすべてつながっているということ。

    『あなたの手のぬくもり/命ということ』とは谷川俊太郎さんの詩だったかしら。なんだかふと思い出した。

  • 糠床にまつわるファンタジーなんだと思って読んでいたら、どんどん物語が壮大になってきちゃって慌てる。
    発想が面白いし、読みやすいし、楽しかったです。
    ただラストがムリクリ感動でまとめられてしまったような。
    私が求めていたラストはこれじゃないんだけど、感動。みたいな。

  • この作品をきっかけにぬか床を始めた。笑

    「自分」の境界をめぐる話。
    からくりからくさ、ピスタチオなどと繋がる、自己の在り方、在り様と、世界との繋がり。
    読後、消化不良になったり壮大さにクラクラしてしまう人は上記の二冊から入れば分かりやすいかな、と思う。

    他の梨木作品に比べて「いや〜な」人物も出てくるけれど、きちんと作用してゆく。
    酵母の嫌気性の話は自分の中のものすごく深いところに入っていった。

  • 2009年2月16日~17日。
     ミクロが作りだすマクロな世界って感じか。
     とても壮大な物語を読んだ気がする。
     誕生と死、圧倒的な孤独、細胞の夢。
     抽象的でもあり、非常に科学的でもある。
     ぬか床なんて庶民的な小道具を持ちだしてきて、こんな世界を作ってしまうんだからなぁ。
     ついでに言ってしまうと、僕が最近興味を持っているもの、性、存在、始まり、なんてものとリンクしている。
     リンクしているなんてもんじゃない。
     読んでいてビックリするほどに符合する。
     まさにシンクロニシティ。
     まぁ、これなんかは完全に個人的な感想なんだけど。
     正直、難しかった。
     いずれもう一度読み返すことになると思う。
     難しかったが、いや、難しかったが故にたまらなく面白かった。

  • 壮大な物語だった・・・
    生と死。
    それも細胞レベルでの生と死、形を変えながらも永遠とめぐっていく命がテーマなのかなと思いました。
    途中で入ってくる『かつて風に靡く白銀の草原があったシマの話』。
    最初は正直、良く分からないしこれいるのかな?と思っていたのですが最終章を読んで、何となく繋がったような気がしました。
    それまでは本編とサイドストーリーという感じだったのが、最後の最後にしてきれいに合わさったという感じ。
    うまく言葉にできないですが、パズルの最後のピースがパッチっとはまった時の喜びとも快感ともつかないような感覚を覚えました。

    そして、登場人物の人が主人公に問う、「自分って、しっかり、これが自分って、確信できる?」のセリフ。
    個性とは、自分とは何なのか。
    考えさせられるものがありました。

    最初の1日で1章・2章を読んで、えっ?!ホラー?と思い、読みすすめようかどうしようかと思ったのですが、しっかり最後まで読んで良かったと思います。

著者プロフィール

梨木 香歩(なしき かほ)
1959年、鹿児島県生まれの小説家、児童文学作家、絵本作家。
『西の魔女が死んだ』で日本児童文学者協会新人賞を受賞。映画化もされたこの受賞作が最も著名な代表作となる。
ほかに新美南吉児童文学賞、小学館文学賞を、『裏庭』で児童文学ファンタジー大賞、『渡りの足跡』で読売文学賞随筆・紀行部門をそれぞれ受賞。
受賞作以外の代表作として、『家守綺譚』、『沼地のある森を抜けて』、『ぐるりのこと』などがある。

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