沼地のある森を抜けて (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (523ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101253398

感想・レビュー・書評

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  • 梨木さんの世界。

    はじまりは「ぬかどこ」。
    世界に一つしかない細菌叢の世界。
    しかも時間とともに変化し続ける。

    一つの細胞から細胞膜、細胞壁、細菌、麹菌、動物、人。
    脈々と続く時間の流れ。
    境界のない世界。
    とても大きな世界感。

    人と人の結合がこのように語られるのか と驚き。
    「かつて風に靡く白銀の草原があったシマの話」もすごい伏線だと思う。

    子どもの頃は100年なんて想像もできなかったけれど、梨木さんの世界に触れることで、今は1000年単位でも理解が出来るような気がします。

    この本も大切な一冊になりました。
    老若男女におすすめです。

    で、読み終わってすぐですが、もう一度読み返しています。。

  • 壮大な連綿と続く生命の繋がりを、酵母菌などといった生化学と融合させたお話。
    1つ1つが繰り返しで、けれど1つとて同じものは無く、全てがオリジナル。

    圧巻でした。
    生きること、生きていることに自信を失くしたとき、きっと心の支えとなってくれる。

  • 物語としては、「ぬかどこ」から始まる不思議なお話ではあるのだが、読んでいくうちに、現実の生命現象がすでに不思議な存在であることを再認識することになる。

    生命とは、性とは、個とは。現代の生物学的知識を踏まえた上でも、語り切れるものではない。では、その先、我々はどう考えたらよいのだろうか? その問いに対して、本書は、ひとつの方向性を示してくれるだろう。

  • ☆5じゃ足りないです
    読み終わって世界の見え方が少し変わるような 
    自分の心や体の様子とともに周囲に五感を働かせてみよう
    読後、ぬか床に挑戦したくなる!?

  • どんな哲学書よりも、間違いなくためになる哲学書。
    と、私は思う。
    哲学と言うか、倫理と言うか、摂理と言うか、生命と言うか、
    とにかく繋がっている、そしてひとつである。
    ひとつであれ。
    光であれ。

    私もいつかそんな出会いができるだろうかと悩む今日この頃。


    2013.7.21追記
    改めて読んだけど、読むほどに謎が深まる。
    けど、改めて思ったのは、
    「ひとり」であっても、「孤独」ではなくて、
    「ひとつ」であっても、生命はすべてつながっているということ。

    『あなたの手のぬくもり/命ということ』とは谷川俊太郎さんの詩だったかしら。なんだかふと思い出した。

  • 糠床にまつわるファンタジーなんだと思って読んでいたら、どんどん物語が壮大になってきちゃって慌てる。
    発想が面白いし、読みやすいし、楽しかったです。
    ただラストがムリクリ感動でまとめられてしまったような。
    私が求めていたラストはこれじゃないんだけど、感動。みたいな。

  • ‪沼地のある森を抜けて 梨木香歩‬
    ‪ぬか床から人がってのでファンタジー?と思ってたら人が死んでるってのでホラー?そこからトラウマとかルーツ探し?と読み進めると、最後壮大な生命と再生の物語‬
    ‪この最後を読む為に今までの鬱々としたのがあったのね、と‬
    ‪言葉にできないほどにカタルシス凄い‬


    "解き放たれてあれ
    ‪母の繰り返しでも、父の繰り返しでもない。先祖の誰でもない、まったく世界でただ一つの、存在なのだから、と"‬

    ‪もういないのに傷つけられた記憶と対人恐怖症だけ残ってる私には‬
    この本はとてもよかった‬

    この壮大な再生を言葉で表現して本で主人公と一緒に体験できるのがすごい
    ひっそりととても良い本ですと
    万人向けではないかもしれないけど、こじらせてる大人にはオススメです

  • 何書いても余計になる気がするけど、書いてみたいから書く。
    読み進めていくと、綺麗な情景や人間との関わり(個人的にそう感じた)と相対するように生物の底なしの存続への渇望が醜く表現されすごく絶妙な話だと思った。
    最後、風野さんと久美ちゃんはどういう結末を迎えたんだろうか。
    きっとしばらく経ってから読み返すべき話だ。
    私には少し早すぎたのかもしれない。

  • 生生しく体をかき回されるような描写に取り込まれて、官能小説のようだなと思った。
    ぬか床をかき回したくなる。

  • ぬか床から始まる日常物かと思いきや、どんどん話が膨らんでいき、最終的には生命の深淵をのぞき、そして読者にも問いかけるような内容となっている。

    後半から挿入される「かつて風に靡く白銀の草原があったシマの話」はかなり抽象的だが細胞壁=ウォールを持つ生き物とそこに入り込んできた似て非なる生命のお話で(だと思っている)同じテーマをあつかっている。

    もとはひとつの生命が生まれ、壁を作り、それを壊し、そしてまたひとつになることの不可思議さと奇跡、または呪いや祈り。
    自分が何者かの定義の曖昧さもあれば、確固たる
    自分の意思もあるような気がするその線引きの危うさと自由さ。
    そういったものを深く考えさせられた。

    誰もが良いと思う作品ではないと思うが、個人的に
    忘れられない作品となった。

  • これほど「シ」を美しく描かれることはあるだろうか。

    代々受け継がれてきた「ぬか床」という「ダサい」ものを囲んで次々と現れる「命」。この根源のある「沼」に辿り着くまでに、様々な人や歴史をたどっていく。
    これほど古臭いものが美しいラストを描けるって素敵。


    私は恋愛に「褪めて」しまった人が振り回される話がとても好きみたい。

  • 全ては、細胞の見た夢。

    遺伝子を運ぶ船、種が生き残るための戦略の一つ。
    それよりもっとスケールの大きいはなし。

    今生きていること全てが、最初の1つが望んだことの結果かもしれない。
    それは、ある意味では「私」の「生」自体を揺るがすような事実かもしれない。


    なのに、語られているのは、絶望でもなく虚無感でもなく、希望だ。
    孤独は、他を求めることの原動力。
    孤独は、他への愛の原動力。
    そのことは、私だって知ってるんだ。


    まだ、全てを飲み込むには未熟だ。
    時間をおいて、全てを飲み込んでみたい。

  • ぬか床から始まる物語。そこからまさか、微生物レベルの話になるとは思わなかった。
    そもそもぬか床を話の主柱に置いた話に出会うのが初めてかもしれない。

    「おなじぬか床はふたつとない。しかもそれは変わりつづける。あとから少しづつ違うものが加わることで、オリジナリティが更新されていく。」というのが良い。人や個、も同じ。
    私は父の繰り返しでも、母の繰り返しでもない。

    私たちにまとわりつく「孤」の原点は宇宙で初めて現れた細胞の持っていた孤独。ひとつのものから分裂して出来たそれぞれの個も、少し離れてみるとすべては大きく、緩やかにひとつのものとして考えられる。

    かなり壮大な物言いにも思われるけれど、この解釈はなんだか好きだ。
    自分というものをポイ、と呑気に手離してしまえるような気持ちになる。

    フリオが自らを沼の人ではないか、と言い出すシーンと、
    島の村に向かう車中でのシーンが特にすき。
    だんだんと増殖する細胞のように、
    広がりをみせる久美の物語に
    ぐっと引き込まれる。

    そこまで甘すぎず、ファンタジック過ぎない本作、梨木さんの作品の中でも特にお気に入り。

  • まさか「ぬか床」から生命の起源に持っていくとは。。。梨木さんの懐の深さに脱帽。梨木さんの頭の中はどうなってるのだろう。
    不可思議な話しだけど、ぐいぐい引き込まれてとんでもないところに連れてかれて、読み終わってなんか分からんけど幸せな気持ちになる。
    私の語力ではこの話しの良さを表現できないのが歯がゆい。。。
    「リカさん」がまた読みたくなった。

  • 2010.06.13

  • 分厚いから躊躇ってたけど、読み始めたら止まらなかったです。
    孤独、孤独かぁ。

  • 2009/04/19

  • 梨木ワールド全開。おもしろかったー!

  • 一言で言うと、村上春樹の世界の終りとハードボイルドワンダーランド。
    ですが、テーマは違うし、ラストの昇華の仕方はほとんどま逆と言ってもいいような感じなので、それなりに楽しめましたし、味わい深かったです。
    とりわけ、変性菌たちや酵母、そういったものの生命の脈動が読み進めるにつれて強く感じられてきました。なぜか、常にぬか床のにおいを感じながら読み終えた小説だったりもします。
    彼女の小説は、日本人形、面、染め物、ジャム作りなど、古くからの営みのようなものが強く印象に残ります。この古くからの営みは、とても魅力的に書かれているので、彼女の作品を読むと、必ずその分野について深く知りたい、と言う気持ちになります。そしてまた、小説の中でもわかりやすく魅力的にそれらが活躍してくれるので、ストーリーとはまた別に、そのような部分について深く知りたい気持ちがページをめくる手を促すような気もします。
    私たちはなぜ、この地球に存在し、また一人ではなく、男と女があるのだろうか。そのような誰でも一度は抱えたことのある、素朴な疑問に対して変わった切り口から答えを見せてくれた小説だと思います。もう一度読みたい。

  • この手の壮大な物語が好きな人は大友克宏のAKIRAもお薦め。個人的には「生命の偉大な勇気」という想像力に賛辞。WEBでレビューしました。http://www.first-priority.yi.org/~siza/blog/2009/01/post_100.html

著者プロフィール

1959年生まれ。小説作品に『西の魔女が死んだ 梨木香歩作品集』『丹生都比売 梨木香歩作品集』『裏庭』『沼地のある森を抜けて』『家守綺譚』『冬虫夏草』『ピスタチオ』『海うそ』『f植物園の巣穴』『椿宿の辺りに』など。エッセイに『春になったら莓を摘みに』『水辺にて』『エストニア紀行』『鳥と雲と薬草袋』『やがて満ちてくる光の』など。他に『岸辺のヤービ』『ヤービの深い秋』がある。

「2020年 『風と双眼鏡、膝掛け毛布』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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