エストニア紀行 森の苔・庭の木漏れ日・海の葦 (新潮文庫)

  • 新潮社 (2016年5月28日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (240ページ) / ISBN・EAN: 9784101253428

作品紹介・あらすじ

昔の生活が残る小さな島の老婆たち。古いホテルの幽霊。海辺の葦原。カヌーで渡る運河の涼やかな風。そして密かに願ったコウノトリとの邂逅は叶うのか……。北ヨーロッパの小国エストニア。長い被支配の歴史を持つこの国を訪れた著者が出会い、感じたものは。祖国への熱情を静かに抱き続ける人々と、彼らが愛する自然をつぶさに見つめた九日間の旅。

感想・レビュー・書評

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  • すっかり梨木香歩さんにハマってしまっている。

    梨木さんがガイドさんとエストニアに取材。
    ただの海外取材ではなく、きちんと梨木さんの動植物、料理に対しての深い知識と想い、世界観が込められている。

    もうすっかりエストニアには行ったことがあるような気分。
    そして、今度はゆっくりと滞在したいと思ってしまう。
    コロナが治まったら絶対に行くぞ!!

    • 地球っこさん
      いるかさん、こんにちは。

      わたしもエストニア行きたいです。

      写真がどれも素敵でしたよね。
      また読みたくなってきました。

      ...
      いるかさん、こんにちは。

      わたしもエストニア行きたいです。

      写真がどれも素敵でしたよね。
      また読みたくなってきました。

      あのホーンテッドマンションのようなホテルはご遠慮したいけど、オーナーの親戚?だったっけ、男の子のいたホテルには行ってみたいです。
      あと、80代のおばちゃんがマウンテンバイク乗ってたりとか、そうそう電柱のうえのコウノトリの巣の写真とか覚えてます。

      いるかさんが書かれているように、梨木さんの世界観にもう一度触れたくなってきました。
      また読んでみます(*^^*)

      素敵なレビュー、ありがとうございました。

      2021/01/19
    • いるかさん
      地球っこさん こんにちは。

      コメントありがとうございます。
      本の中程に納められている写真たち、穏当に素敵です。

      あの恐ろしいホテルは私に...
      地球っこさん こんにちは。

      コメントありがとうございます。
      本の中程に納められている写真たち、穏当に素敵です。

      あの恐ろしいホテルは私には絶対無理です。でも梨木さんは。。

      あの巨大なコウノトリの巣。しかもコウノトリは旅立ってしまっていたのに、それに対しての梨木さんの考え方も素敵でした。

      エストニア 絶対に行ってみたい。出来ればサーレマー島でしばらく暮らしてみたい と思いました。

      いつも本当にありがとうございます。
      2021/01/19
  • 『ときどき立ち止まり、遠くでシカの鳴く声を聞いたり、鳥たちが木々の間を騒いで飛んで行くのを見送ったりした。森の気配にもっと浸りたくて、径を外れ、しっとりと水気を含んだミズゴケを踏みしめながら歩く。やがて泥炭の色をした湿地にさしかかり、そこを行き過ぎると、ちょうどいい椅子のように倒れた丸太が転がっていた。辺りを見回してから腰を下ろす。しばらくじっとして、森の声に耳を傾ける。ゆっくりと深呼吸して、すこしだけ目を閉じる。右斜め前方から、左上へ、それから後方へ、松籟の音が走っていく。走っていく先へ先へと、私の意識が追いつき世界が彫られていく。北の国独特の乾いた静けさ。』

    ああ、この場面が好きだ。
    揺蕩いながら森と重なっていく……、そんな梨木香歩さんの自然に接する姿が好きなのだ。

    はじめて読んだときよりも、いっそう大好きになった梨木さんの『エストニア紀行: 森の苔・庭の木漏れ日・海の葦 』。
    当時は、おとぎの国のようなエストニアの写真に一目惚れしたこともあって、観光気分で読んでいたと思う。だからだろう、印象に残っていたのは、電柱の上のコウノトリの巣や、首都に巡らされた不思議な地下通路、ホーンテッドマンションのようなホテルなど、目に見えるものがほとんどだった。
    だけど今回は、それらのエピソードに加えて、もっと心の奥底から微熱のようなじんわりとした温かい何かが湧いてくる。それはたぶん、梨木さんの描く物語世界に感化される機会が増えたことや、ブク友さん方のレビューに触れたりすることによって、自分の中で梨木さんの眼差しの先にあるものを自分も見つめたい、考えたいという思いが芽生えてきたからだろう。
    わたしの眼差しは梨木さんの言葉を通じて、たしかにそこに在るはずの目に見えないものへと注がれる。エストニアの旅には、何があるのか、何が待っているのか。
    アフリカへ渡るコウノトリの視点でみること。それはずっと見失っちゃいけない、忘れちゃいけないことなんだ。

    数年前に『エストニア紀行』は、図書館で借りて読んだのだけれど、ブク友さんのレビューからもう一度読みたくなって、今回は文庫本を購入。これでいつでも好きなときに好きなページを開けられるぞ。
    いるかさん、そんな機会を与えてくださり、ありがとう。
    いつの日かサーレマー島で会いましょう……ね♪

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      地球っこさん
      電柱の上のコウノトリ。アンゲロプロスの映画にも出て来て、大き目の鳥と人が共生しているみたいだ。と思ったのでした、、、
      コウノト...
      地球っこさん
      電柱の上のコウノトリ。アンゲロプロスの映画にも出て来て、大き目の鳥と人が共生しているみたいだ。と思ったのでした、、、
      コウノトリではありませんが、大きな鳥(鷺かな)が猫の棲む近所の橋の街灯の上に巣を作っていめしたが、25年くらい前に、橋を改修し街灯の型が変わってからは見なくなりました、、、残念。
      2021/01/25
    • 地球っこさん
      猫丸さん、こんばんは。

      わたしは映画には(だけではありませんが……)疎いので、アンゲロプロスの映画も残念ながら観てないのですが、このエ...
      猫丸さん、こんばんは。

      わたしは映画には(だけではありませんが……)疎いので、アンゲロプロスの映画も残念ながら観てないのですが、このエストニアでもコウノトリと人々が共生しているようでした。
      コウノトリは エストニアの人々にはとても親しみのある鳥だそうです。

      猫丸さんのご近所に、そんな大きな巣があったのですね。きっとその鳥もエストニアのコウノトリのように「人間の生活する近くに住みたがる」鳥だったのかもしれませんね。

      わたしの家にはツバメやスズメが巣を作ります。ちっちゃい鳥です 笑
      ツバメの雛が返ると、どこからか一羽のカラスが、いつも雛を狙っているかのように定位置に現れます……
      一応カラスよけのネットを掛けますが、カラスもキライじゃないので複雑です……

      あんまり関係ないコメントになりましたね。
      失礼しました(*^^*)
      2021/01/25
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      地球っこさん
      素敵です!
      近隣からツバメが減り。見るコトがなくなってしまうかも?と思いながら、毎年巣ができるお宅の軒下を覗いています、、、
      ...
      地球っこさん
      素敵です!
      近隣からツバメが減り。見るコトがなくなってしまうかも?と思いながら、毎年巣ができるお宅の軒下を覗いています、、、
      可愛いスズメの話もあるのですが、それは別の機会に
      2021/01/26
  • 梨木香歩さんによる、エストニアへの旅の記録。この人の文体は、物語でもエッセイでも好きだ。ファンとしてはそろそろ物語の新作を読みたいところである。

  • 梨木香歩さんが2008年初秋にエストニアを訪れた際の紀行文。梨木さんの本を読むのは『村田エフェンディ滞土録』に続く二冊目だが、今回は小説ではなく紀行文。
    一人旅ではなく、編集者やカメラマンと一緒に、現地のガイドさんも手配しての旅。エストニアには実はタリンの旧市街のみ、ヘルシンキから駆け足で訪れたことがあったが、それゆえに旧市街の外がどうなっているのか興味深く手にした本。
    タリンをはじめ、素晴らしい自然のある郊外、バルト海にある島など、エストニアのディープな場所に連れて行ってくれる本だった。梨木さんが一人で森の中を散歩した時の描写などは、お伽話の中にいるのではないかと錯覚するようだった。曰く付きの古い館を改装したホテルに泊まった時のエピソードも手に汗を握った。島で連綿と伝統的な生活を続ける女性たち、1日1組のお客限定の丘の上の料理屋の主人など、いろいろな人が登場。全体的に穏やかな梨木さんの語り口で淡々と進む旅行記は、エストニアの豊かな自然を表しているようだった。本書では、昔ながらの暮らしをする人々が多く出てきたが、エストニアはインターネット無料電話スカイプの発祥地であり、非常にIT分野が発達している国とも聞いたことがある。別の角度から見ると全く違った印象の国になるのだろうと思った。

  • 『エストニア紀行』読了。
    紀行エッセイものでした。エストニアは名前は知っていても、あまりよく知らない国だったので読んでいて面白かった。
    エストニアは自然や人々の生活が溶け込んでいるようだった。時代の激動に翻弄されながらも動じず普段通りの生活を大切にしている人々が印象的だった。
    エストニアという国を知るきっかけになってよかった。
    一番印象的だったのがマウンテンバイクを乗りこなす81歳のお茶目なおばあさんが元気だなぁ〜って思った。
    そのおばあさんたちが「自給自足は出来ても、お金持ちになれない」という言葉に対する梨木さんの解釈が素敵だった。
    多様な生命に畏敬の念を抱くことを忘れずに生活していきたいなって思った。
    忘れてしまいがちだけど、自然に生かされているんだよな。

    2020.9.23 (1回目)

  • 2008年にエストニアを旅した際のエッセイ。
    中世の城壁が残る街並みや、エストニアの歴史など、知らないことばかりで興味深い。
    それに、私の生活圏とは違う動植物がたくさん出てくるのに惹かれる。すごく遠い地という感じがして、憧れが増すのかもしれない。
    森や川などの自然に触れている描写は、その気配を感じられるような気がして思わず深呼吸してしまう。
    写真も素敵だ。サーレマー島の羊の群れがこちらを見ている写真が特に。
    実際の距離は分からないけれど、こんなに見つめ合ったらちょっと目が離せないと思う。

    そうやって自然に魅力を感じているのに、いちばん印象に残っているのはホーンテッドマンションのような古いホテルでのエピソードだ。
    不気味な絵画に「アメリア」と呼びかける著者の感性。
    全体的に静かなエッセイという感じなのがここだけは少しバタバタしていて、すごく盛沢山な体験してるなあ。
    私は絶対体験したくないけれど、人の話として読むのは面白かった。

  • 梨木香歩さんのエストニアという被支配の歴史を歩んできた国を旅する紀行文。
    エストニアの可愛いおばあちゃん、手付かずのままの自然などなどと出会い交流する数日間。
    結局出会えなかった国境を持たない渡り鳥(コウノトリ)や、夜ホテルで読むアフリカ諸国の独立についての書籍についても背景に絡めながら旅は続く。歴史があって、人の営みがあって、豊かな自然があって、、梨木さんの目を考えを通してたどる旅程は美しくて少しさみしかった。
    この方の物事の捉え方や人へ向ける眼差しというか、押し付けがましくない理解の仕方が、自分にとってやはり憧れだと感じる。

  • 飾ることのないエストニアの歴史と今を、静かだけれど熱をもった文章で伝えてくれる、9日間の旅の記録。

    あとがきを読んでようやく、著者がエストニアに惹かれる理由がわかりました。
    大国の狭間で長き支配に堪えてきた国は、"境界"をテーマのひとつにされている著者にとって、特別な土地だったのでしょう。
    他国の支配の最中でも、祖国への愛情を静かに、けれど確かに抱き続けたエストニアの人々。
    どんなときでもポジティブに日々を楽しむ、という強さ。
    その強さが国の土台を支えていることの頼もしさに打たれました。

    チェルノブイリ原発事故後の汚染地域が、現在は野生動物の聖地となっているという話題に苦しくなりました。
    動物たちは、放射能よりも人間のいる土地を避けたのか。
    「人間が暮らす」ということの地球に与える影響の大きさを思い知らされました。

  • 北ヨーロッパの小国エストニアを、作家である梨木香歩さんが旅した記録です。ブクログでレビューを拝見したのをきっかけに読了しました。

    実は、エストニアに関する本では、4年ちょっと前に『未来型国家エストニアの挑戦』を読んでいて、「9分25秒で会社が設立できる国って凄い!」というレビューを書いておりました。
    上記を踏まえつつ、本著を読んで感じたのは、「あれ…?あのエストニアで合ってるんだよね?」というもの(笑
    政府にCIOがいて、行政電子化が進んでいて、でも、庭にはハリネズミが出て、みんな茸採りが大好きで・・・いや、もちろん何も矛盾している訳ではないのですが、本著を読みながら、これはどう自分の中で消化したものだろうなぁと思ってしまいました。

    旅行記というのは不思議なもので、見た景色を緻密に描写することも大事なのでしょうが、それ以外に「著者がその景色を見て何を感じたのか」が書かれていることで、読み手がより深い理解に至ることができると言うか…
    本著では、例えば著者が鳥を見るために車を降りた場所で、エルダーベリーの黒い実を見つけ、そこから2ページほどゼリーづくりの話になります。これ自体はエストニアの話ではないのですが、旅を通じて小さな何かが変わった瞬間をしっかり描写していて、人は単に景色を見るためだけに旅をしているんじゃないんだというコトを感じさせてくれます。
    あと、個人的に特に印象に残った記述は、「ヒトはここまで嫌われているのだ。」という一文に至る記述。これまでの文章で著者がいかに自然を愛し、知り、触れてきたかが窺われるからこそ、重い言葉なのだと感じました。

    本著の中でたびたび触れられるエストニアの祖国愛。ひょっとすると、電子政府化を進めることができた要因には、祖国への熱情や、他国に支配されてきた歴史からくる危機感があったりするのかもしれません。
    ただ、本著はそんなコトとは関係なく、素晴らしい自然や人との出会いと、それを著者という素晴らしいフィルターを通すことでより素敵なものとして感じられる良著だと思います。

  • 駅ピアノでやっていたタリンの国。ヒトが生活するだけで多くの種が絶滅に追いやられる。自然にとっては人間の経済活動よりも放射能汚染の方がまだまし。多様性と言いながら大量虐殺を止めることなく地球を破壊し続けるヒトへの絶望感。多くのことを考えさせられました。さすがはプロの作家さんの紀行文で読まされました。素人のガイドブック擬きとは全く違います。

  • 波 2012年10月号より 旅の「心残り」を埋める(田中比呂之)
    梨木香歩 『エストニア紀行―森の苔・庭の木漏れ日・海の葦―』 | 新潮社
    https://www.shinchosha.co.jp/book/429907/

    新潮社のPR
    首都に巡らされた不思議な地下通路。昔の生活が残る小さな島の老婆たち。古いホテルの幽霊。海辺の葦原。カヌーで渡る運河の涼やかな風。そして密かに願ったコウノトリとの邂逅は叶うのか……。北ヨーロッパの小国エストニア。長い被支配の歴史を持つこの国を訪れた著者が出会い、感じたものは。祖国への熱情を静かに抱き続ける人々と、彼らが愛する自然をつぶさに見つめた九日間の旅。
    https://www.shinchosha.co.jp/book/125342/

  • 梨木香歩の世界観が満載の紀行記。彼女の着眼点が顕になることによって、あの独特の作風の根を垣間見ることができる。良作。

  • 梨木さんが、エストニアへ行った時の出来事をつづったエッセイ。現代社会から取り残されたような、ゆったりとした時間の流れるエストニアの情景にとても憧れる。
    古いホテルでのちょっと怖い話や、「風」をゼリーにする感性がとても美しい。これらの出来事が梨木さんの作品に影響を与えているんだと随所にみられて、これだけで一つの作品になっているようです。

  • エストニアの空気が伝わってくるような、そんな文章。
    長く続いてきた歴史とそこで生きてきた人々と。
    行ってみたいなぁ

  • 著者がエストニアを尋ねた際の紀行文。北欧の小さな国の穏やかな様子、自然の豊かさや厳しさが描かれる。きっといい本だろうなと思いながら、なぜかなかなか入り込めなかった気がする。
    著者はずいぶん世界のあちこち行ってるみたいだけど、そのなかでなぜエストニアについて書いたんだろうというところが読み取れなかった。コウノトリが好きなの? 
    チェルノブイリのように人間がかかわらなくなったことで希少動物の自然繁殖が進んだというエピソードなど、人間がいることで地球やほかの生物に迷惑をかけている、嫌われているということ。著者も「ヒトはここまで嫌われているのだ。/ヒトが生活する、ただそれだけで、多くの種が絶滅に追いやられている。放射能汚染より遥かにシビアに。/薄々は気づいていた事実だったが、こうもはっきり知らされると愕然とする。」(p.149)と書いているが同感。著者はこう感じながら、ヒトの生活圏で生息するコウノトリにすくいを求め、コウノトリを探しにエストニアまで行ったということなのかな。

  • 酸いも甘いも包み隠さず書かれたエッセイ。
    鳥を見たとか鹿を見たとかについつい羨ましがっちゃう梨木さんがかわいい。

  • エストニア旅行をお膳立てした編集者、通訳、カメラマンに土地ごとの現地ガイドも絡んでの旅行記。慌ただしい日本人の旅行の印象。ちょっとらしくないと思う。
    確かに、この編集女史は有能な人なんだなというのは、判るんだけど。

    エストニアと云われて、頭にイメージが沸かない。解説に「境界」を訪ねる旅とある。「ぐるりのこと」も境界に関するエッセイというか思考の本だったな。

    一人森の中に入っていたり、ゆっくりカヌーを漕いだりする文章が梨木さんらしい。
    そして、月毎の風のゼリーを木の実やハーブから作る記述は、いかにもという印象。

    チェルノブイリ放射能の汚染で立入禁止になった地域に、バイソン、モウコノウマ、イヌワシ、ビーバー、オオヤマネコ、ノロジカ、アカシカが繁殖したいう。
    (引用)
    ヒトはここまで嫌われているのだ。
    ヒトが生活する、ただそれだけで、多くの種が絶滅に追いやられている。放射能汚染より遥かにシビアに。

    中世の街並みや森のキノコ採り、民族衣装など自然と歴史を感じさせてくれる文章。バルト海は塩分濃度が低く、海岸線に葦原が続くという。
    昔、読んだ本に日本も昔は湿地帯に葦原が続き、それが日本人の原風景になっているとあった。琵琶湖の周辺、近江八幡で巡った水路を思いだながら、この水紀行を読んだ。

  •  梨木さんの他作を読んでいた頃にたまたま紀行エッセイが読みたくなったので、おあつらえ向きに購入した。エストニア自体、バルト三国の北の方の国、という程度の認識しかなかった。
     スウェーデン、ドイツ、ロシア、ソ連と、長きに渡り代わるがわる他国からの支配を強いられてきた小国であること、1991年に悲願の独立回復を果たしたことをこの本を通して知った。また、調べてみればIT先進国として非常に発展した国であることも分かった。
     だが、梨木さんが出会ったエストニアの人々は皆、素朴で親しみを持てる人たちばかりで、交流の一つひとつに心が温まった。移動や散策の描写でも、曇天の下、穏やかで静謐な時間を思い浮かべた(ご本人は設定されたスケジュールの中でタイトな行動をせざるを得なかったようだが)。離島の方では他国の支配による影響もなく、古来からの文化がいまだ息づいているようで興味深かった。
     純粋に、もっと世界のことを、歴史のことを知りたいと今更ながら感じた。

  • 数々の自然に対する造詣が深い梨木香歩のエストニア紀行文。エストニアがどこにある国なのか先ず確認する作業は厭うまでもなく、ページを開くと直ぐに地図が現れます。北欧のバルト海に面したロシアと隣合わせた位置でした。その旅の紹介は行きの飛行機内での様子から始まります。副題に「森の苔・庭の木漏れ日・海の葦」とあり、林の向こうに大きな虹が架かる写真がこの本の表紙。その国の歴史を知らなければ、旅はただ通り過ぎるものだけになってしまうけど、案内人のお話や人柄の紹介もあり臨場感溢れる展開。市街地から郊外へ向かううちに段々と梨木さんの興味ある植物や、渡り鳥や小動物が登場します。森の中に住む蛭で治療するおじいさんのお話や怪談話が似合いそうな不気味なホテルに泊まるお話。そしてバルト海に浮かぶ島々の見事なまでに保たれた自然のこと…本気で後半生をこの島で過ごすことを考えたという梨木さんの言葉にいかに其処が素敵なところなのか…
    旅に携える本のこと。生垣に成る木の実や植物で「12か月の風」を作ってみようと思ったという記述に彼女の優れた感性を改めて感じたのでした。所々に素敵な写真入りで異国情緒が味わえます。

  • 人間が自然を破壊しているという考えが正しいかどうかは考慮の余地があると思うし、人間はそのうち滅んで自然に飲み込まれるんだから人間は自然に勝てないよ
    それはともかく変なおじさんがいたり、変なホテルがあったりするのは面白かった

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著者プロフィール

作家。小説に『西の魔女が死んだ 梨木香歩作品集』『丹生都比売 梨木香歩作品集』(新潮社)、『家守綺譚』(新潮文庫)、『海うそ』(岩波書店)、『椿宿の辺りに』(朝日新聞出版)など。エッセイに『ほんとうのリーダーのみつけかた』(岩波書店)、『炉辺の風おと』(毎日新聞出版)など。児童文学作品に『岸辺のヤービ』(福音館書店)、絵本に『蛇の棲む水たまり』(ブルーシープ)などがある。

「2025年 『森のはずれの美術館の話』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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