ラブレス (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
4.09
  • (145)
  • (161)
  • (71)
  • (14)
  • (3)
本棚登録 : 1096
レビュー : 155
  • Amazon.co.jp ・本 (413ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101254814

作品紹介・あらすじ

謎の位牌を握りしめて、百合江は死の床についていた――。彼女の生涯はまさに波乱万丈だった。道東の開拓村で極貧の家に育ち、中学卒業と同時に奉公に出されるが、やがては旅芸人一座に飛び込んだ。一方、妹の里実は道東に残り、理容師の道を歩み始めた……。流転する百合江と堅実な妹の60年に及ぶ絆を軸にして、姉妹の母や娘たちを含む女三世代の凄絶な人生を描いた圧倒的長編小説。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 姉妹として生まれた百合江と里実。
    ふたりはまったく違った人生を歩んできた。
    姉の百合江は思うがままに生き、けれど宝物のような思いはじっと胸に秘めたままに。
    里実は地に足をつけた堅実で平和で、誰もが幸せだろうと感じるような生き方を。

    過去があって今がある。
    今があるから未来がある。
    そんな当たり前のことをあらためて感じさせてくれた物語だった。
    哀しみも苦しさも、辛さも後悔も、すべてはやがて過去になっていく。
    その過去に支えられたり、だからこそ前に向かって生きていこうと思えたり、つながりあっていく時間の中で紡がれていく人生という物語。
    期待せずに読み始めたけれど思っていた以上に入り込めた物語になった。
    終わりよければすべてよしではないけれど、人生の最後に誰かに泣いてもらえるような生き方はやはり幸せな人生と呼んでもいいのでは?と感じた。
    長編だけれど長さを感じさせない物語だった。

  • 久しぶりに泣けました。

  • 最初は辛くて最後まで読むことができるのか
    ページを繰る手が滞りそうになったりも。

    辛いながらも
    ラブレスというよりもむしろ
    愛に包まれているゆっこの人生。
    親や姉妹、子どもや恋人、様々な愛の形をとおして
    人生を見つめる作品だったように思う。

    自分勝手気ままに生きていくにも
    覚悟を決めて腹をくくることには変わりはない。
    自分を全うする生き方の悲しみが浮き彫りになったけれど
    それはそれで
    不幸じゃないと思った。

  • 裏表紙の内容紹介に、「女三世代の凄絶な人生を描いた圧倒的長編小説」とあったので、ある程度覚悟しながら読み始めたら、主に百合江の生涯についてに焦点を絞った内容でした。

    百合江の身に起こった綾子の事件については、今の私にはかなりこたえた。そんな状況になったら私はきっと半狂乱になって暴れまくると思う。そしてきっと精神病院にほりこまれるのでしょう。

    「ラブレス」というタイトルをどうしてつけたのか?
    カタカナの響きと、昭和の時代を描いている内容がなんだか似合わない気がするのは私だけですか?

    愛が無いということかしら?
    でも結局は愛があったんじゃないかな。

    いろいろな点が自分の人生のそれぞれのシーンと少し重なる部分があって興味深かった。

    時代があちらに行きこちらに行きするので悲惨さが軽減されているのだと思う。

    そして百合江は苦労したかもしれないけれどそこそこ自由で幸せな人生を送ったと思う。

  • タイトルから現代的な恋愛ものかと思いきや、意外にも骨太な女三代記でした。北海道での貧しい生活から旅芸人の一座へ飛び込んだ姉の波乱万丈の恋と人生を軸に、堅実な妹や苦労人の母、そしてそれぞれの娘世代との確執まで掘り下げてあって、なかなか重厚な読み応え。想像してたイメージとは違ったけれど、とても面白かったです。

    難を言えば、なぜか登場人物の女性たちの名前が全然頭に入ってこなくて困りました(年のせいか?苦笑)。平凡な名前なのに、誰が誰の娘だったかちょいちょい混乱。百合江の娘が理恵、里実の娘が小夜子、それだけなんだけど。(やっぱ年のせいですかね?苦笑)

  • 北海道を舞台にした三世代の物語です。
    文学賞もとっているので、読んだ方も多いのかもしれません。
     
    今と過去を交差する物語です。今、位牌を握りしめて、死の淵にある女性、百合江の過去に戻っていきます。
     
    百合江の父はDV、アルコール依存、母はアルコール依存です。
    今はこのような言葉が存在するので、背景や影響も想像できると思います。昭和初期はどうだったのでしょうか。
    朝から酒を飲んで、暴力を振るう父と無口で殴られ続けて、隠れて酒を飲む母。
     
    子どもは5人いて、典型的なアダルトチルドレンの環境です。
    貧しい開拓民であり、百合江は奉公に出されています。
     
    かなり後の方になりますが、父と母はどのような出会いをして、結婚し、北海道に来たのかを母から語られます。
    なぜ、暴力をしてしまうのか、なぜ、依存してしまうのか。
    ぼんやりした理由、背景が見えてきます。
      
    親というのは不思議な物で(親がいなかった方は施設、親戚など育ててくれている方)、気づいたら一緒に暮らしていて、彼らの人生を知りません。
    結果としての行動は見えますが、そこに至るまでの行動、選択の理由は何もしらないまま、知ろうとせずに日常は過ぎていきます。
    それを知る時はかなり時を経ってしまうように感じます。
     
    百合江の恋愛事情にも、突っ込みたくなりますが、だから彼は出てったんだよとか。
    「女は選べるんだもの。産んでやり直す人生と、生まずにやり直す人生と。どっちも自分で選べば、誰も恨むこともないんじゃないの。」
    ネタバレになるので、深く言えないですが、辛い経験あったけど、これがわかってるなら、失敗したことも良かったのではないかと思いました。
     
    以前、自分は「自分は自分の人生を生きていいんだ」と気づきました。つまり、それは今まで生まれのせいにしたり、何かのせいにしたり、誰かのいいなりになって、生きてきたけど、何をどう言おうが、困るのは自分であり、自分の人生に自分が責任をとって生きていかなければいけないと思ったことです。
     
    だから、百合江は百合江なりに幸せを感じていたのではないかと感じました。
     
     
     

    ラストはファンタジーです。ファンタジーで終わりました。
    レビューでも賛否別れていますが。
    素直に受け取ると私は題名通りだと受け取ってしまいます。
     

  • 人生が幸せだったかとは、他人がどうこう言って決まるものではないとはいうものの、かなりふしあわせに思えてくる人もいる。でも、死に際に大好きだった人に、囁いてもらえるのってかなり幸福だったと言えるのかも。妹の里美の、腰が抜けてしまった時彼女はどのように感じたのだろう

  • 久々に強烈な読後感を味わっています。
    「杉山百合江」を中心に、彼女を取り巻く親兄弟、そして彼女を時に支え、突き放す男性達。時代を行き来しながら、その登場人物の誰しもが腹に抱えるものを持ち、また心の弱さを持ち合わせながら、陰鬱な雰囲気を終始漂わせ物語は核心に迫っていく。
    道東に足を運ぶ機会の少なくない私としては、あまりにも描写が生々しく、正直、途中読み進めるのが辛いほどだった。
    題名である『ラブレス』…(愛のない)というのは、ここに登場するキャラクター達を象徴しつつ、最後はハッピーエンドではないが、細やかな充足感で終わる事で決してラブレスでは無かったことを敢えて対比的に題名にしたのではないだろうかと考えた次第です。

  • 評価は5.

    内容(BOOKデーターベース)
    謎の位牌を握りしめて、百合江は死の床についていた―。彼女の生涯はまさに波乱万丈だった。道東の開拓村で極貧の家に育ち、中学卒業と同時に奉公に出されるが、やがては旅芸人一座に飛び込んだ。一方、妹の里実は地元に残り、理容師の道を歩み始める…。流転する百合江と堅実な妹の60年に及ぶ絆を軸にして、姉妹の母や娘たちを含む女三世代の凄絶な人生を描いた圧倒的長編小説。

    時折誰が話した言葉なのか分からなくなるような場面もありつつ、読む手が止まらなくなる内容だった。単なる恋愛小説では無く深かった・・・。

  • 桜木紫乃の文章はいつも悲しくて優しい。本作もまた北の大地を舞台に、3世代に渡る女たちの人生を描く。標茶での極貧生活のなか、百合江は生き別れた妹の里美との再会に希望を抱く。豊かな暮らしに慣れていた里美は肉親との生活に絶望する。里美と百合江の関係はその後の青年期で変わってくるが、なぜそこまで里美が百合江に世話を焼くのかが少しぴんとこない。百合江はアル中の父親の借金の肩代わりで薬局に奉公に出されるが、祭りで観た歌手に魅了され弟子入りを決意し、旅芸人一座に加わる。その後の百合江の人生はまさに流転だ。物語は時代を行ったり来たりしつつも、明確な章で分かれていないので、読んでいていつの間にか時代が変わっている。そしてそれぞれの人生の境遇が微妙に重なっていく。最後までぐいぐいと引き込まれた。

全155件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1965年北海道生まれ。2002年「雪虫」で第82回オール讀物新人賞を受賞。07年、同作を収録した『氷平線』で単行本デビュー。13年、『ラブレス』で第19回島清恋愛文学賞、『ホテルローヤル』で第149回直木三十五賞を受賞。『ワン・モア』『起終点駅(ターミナル)』『ブルース』『それを愛とは呼ばず』『霧(ウラル)』『裸の華』『氷の轍』『ふたりぐらし』『光まで5分』『緋の河』等、著書多数。

「2020年 『砂上』 で使われていた紹介文から引用しています。」

桜木紫乃の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
伊坂 幸太郎
有効な右矢印 無効な右矢印

ラブレス (新潮文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする
×