硝子の葦 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 527
レビュー : 80
  • Amazon.co.jp ・本 (303ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101254821

作品紹介・あらすじ

道東・釧路で『ホテルローヤル』を営む幸田喜一郎が事故で意識不明の重体となった。年の離れた夫を看病する妻・節子の平穏な日常にも亀裂が入り、闇が溢れ出した――。愛人関係にある澤木と一緒に彼女は、家出した夫の一人娘を探し始めた。短歌仲間の家庭に潜む秘密、その娘の誘拐事件、長らく夫の愛人だった母の失踪……。次々と謎が節子を襲う。驚愕の結末を迎える傑作ミステリー。

感想・レビュー・書評

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  • シリアスな人間ドラマでありミステリであり、素直に面白い小説だった。

    とある事情により幼い頃から知っている、父親ほどの年齢のラブホテル経営者・喜一郎と結婚した女・節子。彼女は元上司である澤木と結婚前から交際していて、結婚後も途切れてはいなかった。
    夏のある日喜一郎が交通事故に遭い昏睡状態に陥る。看病が続く日々の中、節子は短歌会の仲間である倫子が抱える家庭の事情に巻き込まれる。
    そして喜一郎の事故から数日後、節子の実家であるスナックで爆発事件が起き、一体の女性の遺体が発見される。

    “身体は繋がっても、心が繋がることはない”そういう孤独が漂う小説。
    節子はその生い立ちから気が強く男に頼ることはない性格で、人と群れることを好まず、どこか醒めている。
    澤木はそんな節子に惹かれて、彼女が結婚した後も彼女の助けになりたいと思い続けているのに、芯の部分では通い合うことが出来ない。身体では求め合って繋がっても、節子の本心はいつまで経っても見えない。
    一歩踏み込むことを躊躇うのはお互いを思うからなのだけど、その一歩の足りなさが二人の大きな距離になっているのが切ない。

    様々な面倒事に巻き込まれた後、節子がした選択。起こした行動が、ミステリの大筋になっていく。
    肉欲、暴力、嘘、怨恨、様々な想いが渦巻いているのに作品自体の温度は低い。
    実家がラブホテルだったという作者の桜木さんが、ラブホテルという場所に対して思うこと(恐らく)が登場人物の言葉を介して表されたりしていて、そこもまた興味深かった。
    この小説に出てくる“ローヤル”というラブホテル。桜木さんが直木賞を受賞した小説も「ホテル・ローヤル」だけどまたそれとはまったくの別物らしく、次に桜木さんの小説を読むならこれだ、と思った。

    節子の生き様を見ていると、女とは恐ろしい、と思う。業の塊で、欲深くて。
    でもそういう部分を偽らず格好つけずに「私は私」というスタンスで生きる様はとても潔い。
    そしてこの小説の中で一番恐ろしいのは、ある幼い子ども。女は幼い頃からやっぱり女なのだ。そんなことを思った。

  • なんだこの小説は。素晴らしすぎる。
    桜木紫乃は砂上だけ読んだが、こちらはそれとは違って本格ミステリの感もある。
    骨太で厚みのある人物描写はそのままに、第一級のエンターテイメントに仕上げている。おもしろい。
    後半の幾度ものどんでん返しの波に読みながらさらわれる心地がした。
    行ったこともない北の大地の海に、冷たいグレーの空に、古いけれども客入りのいいホテルに、頭のなかを占領された。そのくらいの立体感。
    このひとの作品はほんとうに丁寧で、慎ましやかだ。美しいと思う。

  • ひきこもりGWの読書その1
    この人の作品を初めて読んだけど、すごく面白かった。ミステリーとしてだけでなく、北海道の空気感や登場する人物(とくに女)がどんどんイメージできて、ページをめくる手が止まらなかった。
    同じ作者の直木賞受賞作「無垢の領域」をさっそく予約してみた。GW後半に読みたい。

  • 最近、桜木紫乃さんの本が面白い!と思っていたところなのですが、この本は…

    ホテルローヤルが舞台とのことで、楽しみに読み始めましたが、なかなか進まない…
    ホテルローヤルと関係はあるけれど、舞台という感じではないような気が…

    桜木さんの本はお気に入りのものもあるので、また他の本を読んでみることにしましょう!

  • 淡々と話が展開されるが、中身なかなかの話。女性作家特有の空気感っていうのかな、けだるさっていうのかな、これがたまんないんだよね。初桜木紫乃だったけど、やはり好きな作家になりそうな予感。ホント女性作家ばかりだな(笑)
    最初にある程度の結末が描かれてるから、これをどうやって繋げるのだろう?って感じで引き込まれた。なかなか上手い手法だな(^^)/

  • 最後まで読んで、また序章に戻って完読です。
    女性の内面、奥底は女性にしか分からないと認識しました。

  • 一気に読み終わった。凄い。淡々と続く男女のこじれたストーリーを、淡々と流しあるく主人公。
    ラストに巡るまさかの展開までの伏線がとにかく凄い。

    淡々と進みすぎて驚く場所を見失うほどです。

    黙々と読み続け、読み終わってホッとしたあとに、


    ひっ!!!!!!

    となるなんとも言えない読後感。新しい。油断させまくります。まさか、サスペンスだったなんて!!!!!!!!!の、ホテルローヤルで有名な作者の一冊。かなりオススメです!!!

  • 内容はもとより、表現・文章力がよかった。文学的というか。ちょっとしつこいくらいだったけど。寒いを寒いと書かない美しさ。

  • 再読。、結末を知ってるから、この部分は主人公はこういう気持ちだったんだなと思いつつ読む事が出来た。主人公の一見ひょうひょうとしながら内面にくすぶっている激しさが色々な行動に結びついてるのかなと思う。

  • ホテルローヤルがとても好きで、続けてラブレスと凍原を読みとても引き込まれました。その流れで来ると硝子の葦は、こういうのも書くんだ〜みたいな新鮮な驚きです。

    この人の本、暗いんだけど案外湿気を帯びない感じが好きなのかなぁ。

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著者プロフィール

1965年北海道生まれ。2002年「雪虫」で第82回オール讀物新人賞を受賞。07年、同作を収録した『氷平線』で単行本デビュー。13年、『ラブレス』で第19回島清恋愛文学賞、『ホテルローヤル』で第149回直木三十五賞を受賞。『ワン・モア』『起終点駅(ターミナル)』『ブルース』『それを愛とは呼ばず』『霧(ウラル)』『裸の華』『氷の轍』『ふたりぐらし』『光まで5分』『緋の河』等、著書多数。

「2020年 『砂上』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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