硝子の葦 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (303ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101254821

感想・レビュー・書評

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  •  女性はミステリアスなほうが魅力的だと男性は言う。
     けれども、それは「男性にとって理解しうる範囲のミステリアス」なんだろうなと思った。

     ヒロインの節子は、この物語の主軸であり最大の謎なのだが、もう怖い怖い。節子のやることなすことは、男性にしてみれば、恐ろしいことばかりなのだ。
     節子それ愛やない、情やって言いたくなる。

     この本と直接の関係が無いけれども、「つまをめとらば」で男性作家の描く「怖い女」を知り、「田舎の紳士服店のモデルの妻」で女性作家の描く「普通のヒロインの奥深さ」を知り、そしてこの作品である。
     われながらタイミングが見事だ。

  • ひとの繋がりの空虚さと尊さ。節子は強い。拒まず受け入れ、でも芯は失わない強さ。
    ホテル経営者の男性と、母子二代で彼と関わる女性と。かなしい強さ。

  • この人のっていつも湿度が高い感じでドロドロと…

  • グイグイ引き込む…黒と陰の切り返しの表現・単語、、見破られない狡猾な星々の女性陣の逞しさ。無駄を削ぎ落とした分、深みを増すミステリーサスペンス♪。

  • したたかに幸せになる女性の話のようだけど、辛いこと全てを背負って生きていかなければならない、辛くて優しい女性の話のようにも思える。

  • 比較的早い段階で節子の企みが理解できます。
    そこに至る過程がこの物語の全てではないのです。
    DV、殺人の共犯、継子との関わり、特に"まゆみ"の描写がイイ。とても内容は濃いです。
    ところが読んでいて気付いたのですが、文章に無駄がないばかりか、相当省略されているような気がしました。
    その点は解説の池上冬樹さんも書かれていて、納得しました。
    読み終えた後『その後どうなったの!?』...。
    犯罪者なのですが、節子の無事を願わずにはいられませんでした。
    それと澤木は情けない奴です。

  • 道東・釧路で『ホテルローヤル』を営む幸田喜一郎が事故で意識不明の重体となった。年の離れた夫を看病する妻・節子の平穏な日常にも亀裂が入り、闇が溢れ出した――。愛人関係にある澤木と一緒に彼女は、家出した夫の一人娘を探し始めた。短歌仲間の家庭に潜む秘密、その娘の誘拐事件、長らく夫の愛人だった母の失踪……。次々と謎が節子を襲う。驚愕の結末を迎える傑作ミステリー。

  • 母の愛人と結婚した女、節子、30歳。焼身自殺をしたところから話が始まる。愛人はラブホの社長。自分の浮気相手はラブホの税理事務所の所長。元上司。交通事故で夫がベジタブル。
    母が夫と関係を戻していた。

    「ずっと続いていた」の言葉にキレて母を殺してしまう。
    自分が自殺したとみせかけて母の遺体を燃やす。
    浮気相手の澤木(事務員時代の所長)が遺言どおり散骨。
    刑事が気がつき、捜査開始。節子の実母の行方を探している

    夫が死ぬ。ホテルで働く女を社長になるように説得。
    使途不明金が1000万円を帳簿上ごまかす
    逃走先と思われる釧路へ。夫と別れ、暮らしている友人のパン屋でパン職人として暮らしている、整形手術をしていた。

    短歌サークルの知り合いの女性がDVをうけていた。
    小学生の娘にもDV。小学生が自分に助けてを求めている。
    夫の実の娘を見つけて預ける。小学生が保護されて誘拐事件に発生。
    DVの夫を睡眠薬で眠らせ、風呂に入れ、自殺にみせかけて殺す。

    失踪先は、この女の家。

    ラブホテルの名前は、ホテルローヤル

  • 釧路のラブホテルを経営している夫が事故にあってから、主人公の人生が崩れ始めるはなし。読んでいてすがすがしい話ではないし、どうなるのどうなるの?というような激しい展開もないけれど、淡々と進んでいく感じ。うすぐらーい曇り空のような内容だった。

  • 火災が起こるところから物語は始まります。
    ヒロイン節子には歳の離れた夫がいて、その夫はかつて自分の母親と愛人関係にあり、自分自身も税理士の澤木との身体の関係が切れていない。
    夫の事故からその歪んだ関係が動き出し、この状態からどうして冒頭への火災へと繋がるのだろうかと思いながら読み進めた。
    中盤以降、桐野夏生さんの「OUT」ばりのクライムサスペンスといった様相を見せてくると、もう先が気になって結局睡眠時間を削って読んでしまいました。
    最低の母親に育てられたとはいえ、澤木と関係を持ちながら喜一郎と結婚し、結婚後とも澤木との関係が切れないそんなヒロインは好きになれないけど、その一方で強かな彼女のことを応援したくなってくる。
    ラストは澤木と同じようにどうか逃げ切ってくれと思うようになった。
    作者さんが削りに削ったと語っていたとおり、早い展開で間延びせずに読めたのが良かった。
    この作者さんの作品を読むのは2作目だけど、人間の澱んだ感情を表現するのが上手いなあと感じた。
    情景や心理描写に陰鬱な印象を持ってしまうので、精神的に落ち込んでいる時に読むとしんどそうな感じ。
    「ラブレス」も持っているので、元気な時に読もうと思います。

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著者プロフィール

一九六五年釧路市生まれ。
裁判所職員を経て、二〇〇二年『雪虫』で第82回オール読物新人賞受賞。
著書に『風葬』(文藝春秋)、『氷平原』(文藝春秋)、『凍原』(小学館)、『恋肌』(角川書店)がある。

「2010年 『北の作家 書下ろしアンソロジーvol.2 utage・宴』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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