これはペンです (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 82
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  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101257716

作品紹介・あらすじ

叔父は文字だ。文字通り。文章自動生成プログラムの開発で莫大な富を得たらしい叔父から、大学生の姪に次々届く不思議な手紙。それは肉筆だけでなく、文字を刻んだ磁石やタイプボール、DNA配列として現れた――。言葉とメッセージの根源に迫る表題作と、脳内の巨大仮想都市に人生を封じこめた父の肖像「良い夜を持っている」。科学と奇想、思想と情感が織りなす魅惑の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 第145回芥川賞候補。選考委員の石原慎太郎が全否定した作品。何故か自分は石原慎太郎が強くけなす作品を好きになる傾向がある。

  • 難解な2作品収録

    表題作「これはペンです」
    自動筆記について。姿を見せない叔父と姪の往復書簡。叔父は実在するのか?姪の手紙で綴られる姪の行動や会話は事実か?分かったような分からないようなストーリー。
    とりあえず叔父の筆記バリエーションを楽しむ

    「良い夜を待っている」
    超記憶能力を持つ父についての話。認識した世界の尽くを瞬時に記憶し途切れることの無い人間の知覚する世界について。こちらも設定の緻密さ独特さを楽しんで終わり…という印象。自分は正しく理解出来ていない…

  • ■「これはペンです」
    叔父は文字だ。文字通り。

    ■「良い夜を持っている」
    目覚めると、今日もわたしだ。

    それぞれの書き出しだが、短く端的で膨らみがある。
    そこから始まるのはどちらも物語というよりは、徒然なレポートのようなもの。
    叔父や父といった近親者が、妙に遠く、特殊な存在である。
    自動文章生成の叔父、
    超記憶のため二重写しの街に心漂わせる父。
    飄々と孤高に生きることをしている。
    さらにスポットは語り手自身の意識にも亘る。
    最終的には書くこと考えることについての小説になっている。
    やはりこの作者の書くものは素敵だ。

  • とてもとっつきにくいと感じてしまい、なかなか進みませんでした。手紙を読むのにこんなに苦労させられるなんて、主人公のように調べる意欲がかなり必要ですし、定期的に来るとなるとついていくのは難しいですね。

  • 「良い夜を待ってる」 再読必須

  • 「叔父は文字だ。文字通り」の書き出しに惹かれて読んでみた。磁石だったりDNA配列だったり血文字だったり、その気になればどんなものでも書けるのだが、では「書く」とは何だろうとなり、姪と一緒に叔父ワールドでさまようはめになる。2話目はサヴァン症候群の気配が漂うが、これを読むと表題作である1話目に戻っていける。そしてこの2話目は、自分には恋愛小説に見えた。どちらにしても、内包されているものが一読しただけでは消化しきれないので、いつか機会があれば再読したい。

  • 何について述べているのか、何がどうなるのかなんともわからないままひたすらページを捲り、本も後半になった頃急にわかった!と思った次の瞬間、やっぱりよくわからんとなりました。
    他人の頭の中はよくわからないことを久しぶりに思い出し、他人を無理に理解しようとするのはよくないなと再認識出来た一冊です。

  • 比較的読み易かった。「これはペンです」:叔父の正体はちゃんと分かったし、「良い夜を待ってる」:あらゆることを記憶し忘れないという父の主観を文章にする手法が面白かった。ボルヘス好きなんだろうなぁ

  • 『これはペンです』
    文字に飲み込まれるように読んだが面白かった。言いたいことや内容はなんとなく理解することもできた。しかし誰かに説明しろと言われたら説明することはできないだろう。でも面白かったことは確かなのだ。きっと読んだ人ならこの感想が通じるはず。
    小説内で感情を示す表現は少ないが、主人公は叔父のことが大事な人だということはひしひしと伝わってきた。主人公とのやり取りが、叔父にとっての愛情表現なのかもしれない。

    『良い夜を待ってる』
    これはペンですの続編ともとれる作品。こちらもこれはペンです同様に難しく、脳を使うのでお腹が空く作品だった。
    理系の人が愛を言語化するとこんな感じになるのかなと思い、少し笑ってしまった。

  • いつも通りの変態的なメタ小説。タイトルから察しはつくが「書くこと」について書いた小説で、OjiがMoji。ユーモアが冴える。セルフリファレンスエンジンの時はむちゃくちゃ笑えたが、しかし今作はそれだけではなく叙情的でもあり、世界とか空気とか、そういうものが味わえる小説になっていた。表題作「これはペンです」は白眉。もうひとつの「良い夜を待っている」もかなり良くてラストはむちゃくちゃ好きだが、ちょっと雑な感は否めない。難解な議論や問題を引用するのがいいが、いちいち「ややこしい部分は専門家に任せるが、」みたいな注をつけられるとさすがに鬱陶しい。

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著者プロフィール

1972年北海道生まれ。東京大学大学院博士課程修了。2007年「オブ・ザ・ベー
スボール」で文學界新人賞受賞。『道化師の蝶』で芥川賞、『屍者の帝国』(伊
藤計劃との共著)で日本SF大賞特別賞

「2023年 『ねこがたいやきたべちゃった』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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